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燃料サーチャージが下がらない理由|輸入物価と転嫁ラグ推移グラフ【2026年最新】

レポート更新日: 2026年9月15日

この記事の要点
  • 概要:2026年7月の輸入原油(円ベース、2020年平均=100)は365.2(前年同月比+68.92%)に対し、道路貨物輸送のSPPIは112.9(同+4.54%)と価格転嫁に大きな遅れが生じています。
  • 実務への影響:政府補助金(32.5円/L相当)を除いた軽油の実勢価格は191.9円/Lに達し、燃料サーチャージの導入率は23.2%にとどまります。オールイン契約を見直し、公的指標に連動したサーチャージ条項の導入が必要です。

軽油価格の高止まりと輸入物価指数の乖離が招く運賃転嫁の遅延

日本銀行が公表した2026年7月の輸入物価指数によると、輸入・原油(円ベース、2020年平均=100)は365.2となり、前年同月比で68.92%上昇しています。同じく輸入・石油石炭天然ガス(円ベース、2020年平均=100)も318.8と前年同月比で53.71%上昇しており、輸入エネルギー価格は高い水準で推移しています。一方で、トラック輸送の取引価格を示す企業向けサービス価格指数(SPPI)の道路貨物輸送(2020年平均=100)は112.9にとどまり、前年同月比の上昇率は4.54%にとどまります。

国際的な一次産品の市況価格に一服感が見られる局面であっても、国内の燃料サーチャージや軽油価格の推移:燃料コストと燃料サーチャージの根拠データは期待されるほど下がっていません。この背景には、原油などの輸入契約に使う通貨建ての価格と、それを円換算した価格との間に生じている大幅な差、すなわち為替の円安影響があります。

物流現場において、燃料費はトラック運送業の運送原価の約2割を占めます。全日本トラック協会の試算によれば、軽油価格が1リットルあたり1円上昇すると、運送業界全体で年間約160億円のコスト増につながります。国際航空貨物ではNCA、8月16日より米欧宛サーチャージ163円に大幅値上げ|物流コスト直撃のように市況を受けた改定が進む一方、国内陸上輸送における燃料サーチャージとは?仕組みから計算方法・価格交渉のポイントまで解説の導入率は約2割にとどまっています。運賃と燃料費を一体で扱う取引慣行が残る中、荷主企業と運送事業者の間における適正なコスト分担が求められています。

指標が示す実態:為替乖離と運賃転嫁における3つのタイムラグ

2026年7月における主要な物価・サービス価格指数の動向は下表の通りです。

指標名 分類・カテゴリ 対象期間 最新値(2020年平均=100) 前期比(2026年6月比) 前年同月比(2025年7月比)
輸入物価指数(円ベース) 輸入・原油 2026年7月 365.2 -0.71% +68.92%
輸入物価指数(円ベース) 輸入・石油石炭天然ガス 2026年7月 318.8 +0.54% +53.71%
輸入物価指数(契約通貨ベース) 輸入・原油 2026年7月 240.5 -1.80% +52.50%
輸入物価指数(契約通貨ベース) 輸入・石油石炭天然ガス 2026年7月 212.6 -0.56% +39.14%
輸入物価指数(円ベース) 輸入・液化天然ガス 2026年7月 252.5 +17.06% +26.57%
国内企業物価指数 総平均 2026年7月 135.8 +0.15% +7.18%
サービス価格指数(SPPI) 道路貨物輸送 2026年7月 112.9 +0.36% +4.54%
原油・エネルギー輸入物価における為替影響と内外価格差の推移比較
出典:日本銀行 企業向けサービス価格指数・企業物価指数

円ベースと契約通貨ベースの乖離が示す為替の影響

契約通貨ベースは輸入契約に使う通貨(原油なら主に米ドル)建ての価格で為替の影響を含まず、円ベースはそれを円に換算した価格で為替の影響を含みます。

2026年7月の輸入・原油において、円ベースの指数(365.2、2020年平均=100)は契約通貨ベース(240.5、2020年平均=100)の約1.52倍です。これは、為替要因が国内調達時のコスト負担を約52%押し上げていることを示しています。前年同月比の変化率を見ても、円ベースの上昇率(+68.92%)は契約通貨ベース(+52.50%)に比べ、比率で約1.11倍(1.6892÷1.5250=約1.108)となっており、円安要因が前年比ベースで調達コストの上昇幅を約10.8%上乗せしている計算になります。

輸入エネルギー価格と国内運賃指数のタイムラグ

輸入・原油(円ベース)が前年同月比+68.92%、輸入・液化天然ガス(円ベース)が前期比+17.06%、前年同月比+26.57%と上昇しているのに対し、物流コスト上昇の実態:企業向けサービス価格指数が示す荷主負担の変化でも確認できる通り、SPPI道路貨物輸送の前年同月比上昇率は+4.54%にとどまります。この指数の動きには以下のタイムラグが存在します。

  • 精製・流通の遅延(1〜2か月): 輸入された原油が精製され、給油所や運送会社のインタンク(自家用給油設備)に軽油として配送されるまでに時間を要します。
  • 価格交渉の遅延(3〜6か月): 運送事業者が燃料仕入れ価格の上昇を確認した後に見積書を提出し、契約改定協議を経てフレート(運賃)の仕組みと計算方法を解説|サーチャージやコスト最適化のポイントやサーチャージの改定に至るまでに交渉期間を要します。
輸入燃料価格の高騰と道路貨物輸送価格(SPPI)への転嫁ギャップ
出典:日本銀行 企業向けサービス価格指数・企業物価指数

政府補助金による市場価格の影響

軽油の店頭価格が抑えられている要因として、経済産業省資源エネルギー庁による「燃料油価格激変緩和対策事業」があります。2026年8月31日時点の全国軽油店頭平均価格は159.4円/Lですが、政府の補助金(支給額32.5円/L相当)がない場合の実勢試算価格は191.9円/Lに達します。この支援措置によって末端価格の上昇が緩和されているものの、補助金の縮小や終了時には実勢価格へ移行する構造となっています。

運賃交渉の実務と現場の影響:二極化する転嫁構造

燃料調達コストの上昇は、荷主企業とトラック運送事業者の双方に実務上の課題をもたらしています。

運送事業者の財務への直接的影響

全日本トラック協会の経営分析報告書によると、トラック運送業界の平均営業利益率は約0.7%と低い水準です。4トントラックを30台保有する中規模運送事業者の場合、軽油価格が150円/Lから157円/Lへわずか7円上昇するだけで全社赤字へ転落する水準です。

TDB調査、価格転嫁率39.9%へ低下|物流費34.5%の壁と打開策にもある通り、価格転嫁が進まない状況が続いています。運送会社が自前のインタンクで調達する大口価格が、補助金が給付される店頭給油価格を上回る「価格逆転現象」も発生しており、調達チャネルによるコスト管理が重要になっています。

荷主企業が直面する輸送力確保のリスク

東京都トラック協会の調査によると、国内トラック輸送における燃料サーチャージの導入率は23.2%です。基本運賃に燃料費を含める「オールイン契約」が多いため、燃料費上昇分を運送事業者が負担する事例が見られます。

SBSホールディングス提言、軽油190円台突入で価格転嫁が必須対応にで示されているように、コスト負担が限界に達した事業者の事業縮小や撤退は、荷主企業にとって輸送枠(キャパシティ)の喪失に直結します。国土交通省・公正取引委員会・中小企業庁の3省庁は2026年3月27日、荷主関係団体に向けて燃料サーチャージの導入と適正な転嫁を要請しています。

現場ドライバーの処遇と運行効率

運送事業者の収益悪化は、2024年4月から適用されているドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間)への対応と重なります。トラックドライバーの賃金推移:賃金構造基本統計が示す給与水準と労働時間の実態が示すように、燃料費負担による収益圧迫は賃金原資の確保に影響を与え、人員確保の難度を高める要因となっています。

今後の動向予測と定点観測すべき重要指標

① 短期〜中期の影響予測(3〜12か月)

  • 下振れケース: 為替の円安傾向が継続し、輸入物価指数(契約通貨ベース)が上昇を再開した場合です。政府の激変緩和措置が縮小された場合、軽油店頭価格は実勢水準である190円台へ近づきます。オールイン契約のままでは運送事業者の財務負担が増大し、地方幹線輸送を中心に輸送枠の確保が難しくなる懸念があります。
  • 安定ケース: 原油の契約通貨ベース価格が安定し、為替相場の変動が落ち着く場合です。大手物流企業を中心に燃料サーチャージの導入が進み、公的指標に基づく自動改定が定着することで、輸送能力が維持されやすくなります。

② ウォッチすべき指標・政策・スケジュール

運賃およびサーチャージ交渉の根拠として、以下の指標を定期的に確認することが有効です。

指標名・政策名 公表元 公表頻度 実務での活用目的
石油製品価格調査(軽油店頭価格) 資源エネルギー庁 毎週水曜日 サーチャージ基準価格の算定
輸入物価指数(原油・石油製品:円/契約通貨) 日本銀行 毎月中旬 為替要因と国際市況の動向把握
企業向けサービス価格指数(道路貨物輸送) 日本銀行 毎月下旬 運賃転嫁の業界水準確認
燃料油価格激変緩和対策事業の支給単価 資源エネルギー庁 毎週 補助金縮小リスクの把握
物流効率化中長期計画の提出 国土交通省・経済産業省 2026年10月末期日 改正法に基づく体制整備

政策面では、2026年4月に改正物資流通効率化法が全面施行されました。一定規模以上の荷主企業および運送事業者は「特定事業者」に指定され、物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画の提出(初年度は2026年10月末期日)が義務付けられています。

③ 先行事例と公的枠組みの活用

大手物流企業では、燃料価格の変動を基本運賃から切り離す動きが進んでいます。

  • ヤマトホールディングス: 2026年4月30日の決算会見にて、法人向け宅配便運賃を対象とした「燃料サーチャージ」の導入検討を公表しました。
  • SGホールディングス(佐川急便): 2026年5月8日の決算会見にて、宅配運賃へのサーチャージ導入に向けた社内検討の開始を発表しています。

また、東京都の「運輸事業者向け燃料費高騰緊急対策事業」や愛知県の「貨物自動車運送事業者燃油価格高騰対策支援金」など、自治体による支援制度も実施されています。実務においては、国土交通省の「標準的な運賃」に示された燃料サーチャージ制度(基準価格120円/L設定)を準用した契約改定が実用的な選択肢となります。

今後の対策:オールイン契約からの脱却と指標連動の実装

輸入・原油(円ベース)の前年同月比+68.92%に対し、SPPI道路貨物輸送の上昇率は+4.54%と、コスト上昇が国内陸上運賃へ十分に反映されていません。補助金による一時的な価格抑制を前提とせず、市場価格に連動した契約体制を整備することが求められます。

荷主企業が今後取り組むべきこと

  • オールイン契約の見直しとサーチャージの別建て化: 基本運賃と燃料費を分離し、軽油価格推移グラフ|店頭・インタンク実勢と燃料サーチャージ対策【2026年最新】などの公的データを基にしたスライド方式を取り入れてください。
  • 輸送効率の改善: 改正物流効率化法に基づき、積載率の向上や荷待ち時間の削減を進め、輸送全体での燃料消費量を抑制してください。
  • 適正な価格協議への対応: 運送事業者からの燃料費改定協議に対し、3省庁のガイドラインに沿って客観的データに基づく協議を進めてください。

物流事業者が今後取り組むべきこと

  • 公的統計を用いた見積書の作成: 国土交通省の「標準的な運賃」の燃料サーチャージ区分表や日銀の物価指数を活用し、論理的な価格改定案を提示してください。
  • 調達方法の最適化と公的支援の申請: インタンク調達価格と店頭給油価格の差を確認し、各自治体の燃料高騰対策支援金を活用してください。
  • 燃費データの可視化: デジタルタコグラフ等の運行管理データを整理し、省燃費走行の実績を示しながら荷主との協議を進めてください。

まずは現在の輸送契約書を確認し、軽油価格が120円/Lを超えた場合に自動適用される「公的指標連動型燃料サーチャージ条項」の導入について、荷主・運送事業者間で協議を始めてください。


出典: 日本銀行 時系列統計データ(企業向けサービス価格指数・企業物価指数) / 統計最終更新: 2026年7月

よくある質問(FAQ)

Q. 原油価格が一服しても国内の軽油価格が下がらないのはなぜですか?

A. 為替の円安影響が大きいためです。2026年7月の輸入原油は、ドル建て等の契約通貨ベース指数(240.5)に対し、円換算した円ベース指数(365.2)が約1.52倍に達しており、為替要因が国内調達コストを約52%押し上げています。また、輸入から国内給油所に流通するまでに1〜2か月のタイムラグがあることも要因です。

Q. なぜ燃料サーチャージの導入や運賃への転嫁は遅れるのですか?

A. 国内トラック輸送では、基本運賃に燃料費を含める「オールイン契約」の慣行が根強く、サーチャージ導入率が約2割にとどまるためです。また、燃料仕入れ価格の上昇を確認してから見積書の提出、協議を経て改定に至るまでに通常3〜6か月程度の交渉期間を要することも、道路貨物輸送価格への反映が遅れる要因となっています。

Q. 燃料費高騰に対して荷主企業と運送事業者はまず何から始めるべきですか?

A. まず現在の輸送契約を見直し、基本運賃と燃料費を切り離す覚書の締結を進めてください。具体的には、国土交通省の「標準的な運賃」が定める基準価格(120円/L)や、資源エネルギー庁が公表する石油製品価格調査に自動スライドしてサーチャージ額が改定される公的指標連動型の条項を盛り込むことが実務的な第一歩となります。

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この統計レポートは政府統計局公開(e-Stat)に基づき、LogiShift が独自に解析・生成したものです。

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