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事例・インタビュー 2026年5月26日

積載率38%台を脱却する三菱食品らの共同配送は2026年必須対応

積載率38%台を脱却する三菱食品らの共同配送は2026年必須対応

「運賃が高騰し、トラックを確保できない」
多くの倉庫管理者や実務担当者が、この深刻な悩みに直面しています。

しかし、その一方で、苦労して手配したトラックの荷台がスカスカの状態で走ってはいないでしょうか。
この、積載効率が極めて低い「空気を運んでいる」状態を、業界では「空気輸送」と呼びます。

空気輸送は、単なるコストの無駄遣いにとどまりません。
法改正によって荷主の効率化が義務づけられた現代において、企業が早急に解決すべき重大な「リスク」なのです。

この課題に対し、国内食品卸最大手の三菱食品で最高物流責任者を務める田村幸士CLO(取締役)は、革新的な方針を打ち出しました。
それが「空気輸送を共同物流で埋める」というアプローチです。

本記事では、三菱食品・田村CLOが主導する最先端の共同物流事例を紐解きます。
そして、一般の倉庫や物流現場が「空気輸送」を解消し、コストを削減するための具体的な3ステップを徹底解説します。


なぜトラックは「空気を運ぶ」のか?物流現場が抱える限界

国土交通省のデータが示す「積載率4割」の衝撃

多くの物流現場で、毎日当たり前のようにトラックが発着しています。
しかし、その積載効率の実態は、驚くほど低いのが現実です。

国土交通省の統計データによると、日本の営業用トラックの平均積載率は約38%から39%台で低迷しています。
つまり、トラックの積載空間の「約6割」は、何も載せていない空気輸送の状態なのです。

倉庫の現場では、以下のような非効率が日常的に発生しています。
* 「翌日着」の厳しい納期を守るため、スカスカの荷台のまま長距離トラックを走らせる。
* 日用品のように「かさばるが軽い」商材ばかりを積み、容積は一杯だが重量に余裕がある。
* 食品や書籍のように「小さくて重い」商材ばかりを積み、最大積載量に達したが荷台の上部がガラガラである。

このような「個別最適」の限界が、慢性的な空気輸送を生み出す原因となっています。

単独での効率化に潜む限界と2024年問題の圧力

これまでも、多くの倉庫管理者が「単独」での積載率向上に挑んできました。
しかし、自社の商品や納品先の条件だけでは、パズルのピースを完璧に組み合わせることは不可能です。

さらに、時間外労働の上限規制(2024年問題)に加え、2026年には「改正物流効率化法」が施行されます。
これにより、一定規模以上の荷主企業には、物流統括管理者(CLO)の選任と、中長期的な物流効率化計画の策定が義務づけられます。

つまり、空気輸送を放置し、非効率な配送を続ける企業は、法的な是正勧告や罰則の対象となるリスクを負うのです。
自社単独での取り組みが限界を迎えた今、他社と連携する「共同物流」へのパラダイムシフトが、現場の生き残りをかけた必須条件となっています。

参考記事: CLOが担う「物流の経営課題化」と組織改革のステップ【2026年04月版】


三菱食品・田村CLOが挑む「空気輸送を埋める」新アプローチ

自社完結型の古い物流モデルから脱却し、業界全体の全体最適を目指す三菱食品。
同社の田村幸士CLOは、他社を巻き込んだ巨大な共同物流網の構築を進めています。

その具体的な取り組みの代表例が、共同配送コンソーシアム「CODE」と「三菱食品×日清食品」のデータ連携です。

異業種9社が集結した共同配送コンソーシアム「CODE」の衝撃

2026年4月に本格始動を予定している「CODE(Cargo Owners’ Data-driven Ecosystem)」は、花王と三菱食品が幹事を務める共同配送コンソーシアムです。
食品、日用品、医薬品、出版といった、通常では交わることのない異業種大手9社が参画しています。

CODEの最大の特徴は、これまで「複雑なローカルルールがあり共同化は不可能」と聖域化されていた「支線配送(中近距離輸送)」に切り込んだ点にあります。
田村CLOは、「解決は無理だと思いこんできた課題に対する概念の枠を外し、どうすれば一緒に運ぶことができるかを考えるために集まった」と語っています。

CODEでは、以下のデータ駆動型アプローチを採用しています。
* Snowflakeの活用:
各社の出荷・配送データを外部のセキュアなクラウドプラットフォーム「Snowflake」に集約します。
独占禁止法や機密情報の漏洩リスクを完全に排除しつつ、データを共有します。
* ダイナミック配車マッチング:
集まったビッグデータをAIなどのコースマッチングツールで処理します。
「面と面が重なる」配送コースを自動で抽出し、最適な共同配送計画を立てます。
* 異業種混載によるパズルの解決:
軽い日用品(容積勝ち)と、重い食品や書籍(重量勝ち)を同じトラックに混載します。
車両の「容積」と「重量」の双方を限界まで使い切り、空気輸送を極限まで減らします。

すでに、花王と三菱食品による先行定期運行では、年間で約300台相当のトラック運行を削減し、約10トンのCO2排出量を削減する実績を上げています。

参考記事: 花王・三菱食品ら9社が挑む!共同配送「CODE」が支線配送にもたらす3つの影響

製造・卸売の垂直連携をデータでつなぐ「三菱食品×日清食品」

もう一つの革新的な事例が、三菱食品と日清食品が取り組む「共創型データ連携プロセス」です。

従来の共同物流は、メーカー同士が横に並ぶ「水平連携」が主でした。
しかし、三菱食品(卸売)と日清食品(製造)は、製造・卸売・小売の縦のつながりをデータで結ぶ「垂直連携」に挑んでいます。

この取り組みでは、長年ブラックボックス化されていた「需要予測」と「発注業務」にAIを導入。
両社の発注計画や物流実績をシームレスに連携させることで、事前に荷量を平準化します。
さらに、お互いが持つ倉庫(物流アセット)やトラックを相互に共有・活用します。

この垂直のデータ連携により、サプライチェーン全体で配送トラック台数を約30%削減できるという驚異的な試算が示されています。

参考記事: 三菱食品×日清食品データ連携!トラック30%削減を生む3つの影響


空気輸送をゼロにする共同物流「3つの実践プロセス」

大企業の事例は規模が大きすぎるように思えるかもしれません。
しかし、そこで使われている「データを共有し、荷台の隙間を他社の荷物で埋める」という本質は、中小・中堅の物流現場でも十分に実践可能です。

現場の倉庫管理者や実務担当者が、明日から自社の「空気輸送」を解消し、共同物流を導入するための「3つの実践プロセス」を以下のテーブルに整理しました。

手順 具体的な実務内容 現場で必要なシステム・ツール 成功に導くための実施ポイント
STEP 1 自社データの可視化 自社のトラック運行ごとの実質的な積載率や実車率、配送ルートを可視化する 倉庫管理システム(WMS)や運行管理・動態管理ツール 走行距離に対してどれだけ空気を運んでいるか、空車時のロスを明確な数値で把握する
STEP 2 協調パートナーの探索 配送エリアや納品頻度が重なり、商材特性が補完関係にある企業(他社)を見つける 共同物流マッチングプラットフォームや地域コンソーシアムへの相談 自社が「容積勝ち(軽い荷物)」なら、パートナーは「重量勝ち(重い荷物)」の企業を探す
STEP 3 共同配車の運用設計 積み替え場所や荷役ルールを標準化し、トラブル時の責任分担や運賃の配分ルールを定める 共通の標準パレット(T11型等)やデータ共有用のクラウド ゲインシェア(効率化で浮いたコストの適切な分配ルール)を最初に取り決め、不公平感を防ぐ

共同物流がもたらす定量的・定性的ベネフィット

共同物流を導入することで、倉庫の現場や配送オペレーションは劇的に改善されます。
導入前(Before)と導入後(After)の変化、および期待される効果を以下のテーブルに整理しました。

評価指標 共同物流導入前(Before) 共同物流導入後(After) 現場で期待される具体的なメリット
トラックの平均積載率 約38パーセントの低水準で推移 異業種混載や双方向輸送により約70パーセント以上に向上 1車あたりの輸送コストを大幅に抑制でき、運賃上昇の圧力を相殺可能
配車管理・調整工数 配車マンが長年の経験と勘(暗黙知)で個別に行うため、属人化が深刻 クラウドやAIによる自動コースマッチングへ移行し、配車を最適化 業務の脱属人化が実現し、配車担当者の負担と調整時間が劇的に削減
荷待ち時間(待機時間) 各社が個別の時間指定で納品先に殺到するため、数時間の待機が発生 複数企業の荷物が1台に集約され、納品先への入場回数が激減 ドライバーの拘束時間が短縮され、改正改善基準告示の労働規制をクリア
環境対応とコンプライアンス 個別の非効率な運行が続き、CO2排出量が多く、改正法への対応も困難 トラック台数が大幅に削減され、CO2排出量を大幅にカット 法令遵守(改正物流効率化法への適合)が容易になり、企業の評価が向上

参考記事: 花王ら異業種9社でCODE始動!支線配送を根本から変革する3つの影響


実務担当者が明日から始めるべき「共創」への一歩

「共同物流をやりたいが、何から手をつければいいか分からない」
そう感じる実務担当者は少なくありません。

田村CLOをはじめとする先進企業の事例から学ぶべきは、「完璧な準備が整うのを待つのではなく、まず動き出す」という姿勢です。
明日の現場改善に向け、以下の3つのアクションから始めてみてください。

1. 営業部門と物流部門の「サイロ」を取り払う

現場の空気輸送を生み出している原因の多くは、「営業が無理に受注した短納期小口配送」や「生産が作りすぎた過剰在庫」にあります。
まずは社内で、販売実績データと物流手配データを突き合わせるプロジェクトを立ち上げましょう。

2. 自社に不足している「積載の性質」を言語化する

「自社の荷物は軽いのか、重いのか」「荷姿は段ボールなのか、パレットなのか」。
これらを明確にすることで、他社と連携する際に「自社の空気(隙間)を埋めてくれる最適なパートナー」の条件が浮き彫りになります。

3. 荷主としての「標準化」を急ぐ

共同物流にいつでも合流できるよう、伝票の電子化、パレットサイズの標準化(11型への統一)、商品マスターコードの整備を進めておきましょう。
システムと荷姿の標準化こそが、共同物流という社会インフラへ相乗りするための「パスポート」となります。


まとめ:概念の枠を外し、持続可能なロジスティクスを築く

三菱食品の田村CLOが示した「空気輸送を共同物流で埋める」という挑戦は、日本の物流が抱える「無駄」を宝の山に変えるための羅針盤です。

これまで、多くの企業は「ライバルにデータを見せたくない」「商習慣が違うから混載は無理だ」という概念の枠に囚われていました。
しかし、2024年問題や2026年問題という未曾有の危機を前に、そのような古いサイロ(壁)は維持できません。

物流を「競争」ではなく「共創」の領域として捉え直すこと。
データを共有し、お互いの荷物で空気輸送を埋め合うこと。
これこそが、ドライバー不足に負けず、持続可能なサプライチェーンを維持するための唯一無二の生存戦略です。

まずは自社の荷台の「隙間」を見つめ直すことから、新たな共創の一歩を踏み出してみませんか。


参考記事: 名古屋青果など19組織が共同物流協議会を設立、5万トン集約で供給網再編が加速

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監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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