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Home > 事例・インタビュー> 物流コスト20%削減に直結するSUBARUのCLO主導改革
事例・インタビュー 2026年6月8日

物流コスト20%削減に直結するSUBARUのCLO主導改革

物流コスト20%削減に直結するSUBARUのCLO主導改革

「夕方になって急に、営業から特急便の手配指示が入って現場が混乱する」
「どれだけ倉庫内のピッキング動線を改善しても、突発的な出荷波動のせいで残業が減らない」
「長時間のトラック荷待ちが発生し、運送会社から契約を打ち切られないかヒヤヒヤしている」

倉庫管理者や実務担当者の皆様は、日々このような「現場の努力だけでは解決できない壁」に突き当たっていませんか。

どんなに現場が汗を流してWMS(倉庫管理システム)を駆使し、無駄のないオペレーションを構築しても、他部門がもたらすイレギュラーな要求によって、すべての努力が水の泡になってしまうケースは少なくありません。

この構造的な課題の根底にあるのが、社内の「部門間の壁(サイロ化)」です。
物流部門が「コストセンター」として下請けのように扱われ、営業や生産部門の都合に振り回される旧態依然とした体制が続く限り、根本的な改善は不可能です。

さらに、2026年4月に本格施行された改正物流総合効率化法により、年間輸送量3000万トンキロ以上を目安とする「特定荷主」に対し、役員クラスの「物流統括管理者(CLO)」の選任や中長期計画の作成、定期報告が法的に義務付けられました。対応を怠れば、社名公表などのコンプライアンスリスクに直面し、運送会社から選ばれない「物流難民」へと転落する危険性も高まっています。

この危機を乗り越え、物流を「競争力の源泉」へと生まれ変わらせるための強力なロールモデルが存在します。
それが、自動車メーカーの株式会社SUBARU(スバル)が推進する、物流本部を新設し役員クラスのCLOを配した組織改革です。

本記事では、「CLO特集/SUBARU CLO就任、物流本部新設から1年の現在地」を徹底分析。
現場主導でCLOを動かし、全社最適なサプライチェーン改革を断行して、物流コスト20%削減と現場の負荷軽減を実現するための具体的な手法を解説します。


SUBARUが示す「物流本部新設とCLO体制1年」の現在地

物流改善を社内の「聖域」にまで踏み込ませるためには、経営層のコミットメントが不可欠です。
SUBARUが実行した「物流本部新設」と「役員クラスのCLO就任」から1年が経過した今、その現在地から学ぶべき経営改革の本質を紐解きます。

1. 「物流本部」という独立組織によるサイロ化の破壊

SUBARUはかつて、製造や販売の各部門に分散していた物流管理機能を一本化し、「物流本部」として独立した新組織を立ち上げました。
さらに、経営の意思決定に直接関与できる役員クラスをCLO(物流統括管理者)として配置しました。

従来の「物流部長」クラスでは、営業本部長や工場長に対して「リードタイムを延長してほしい」「直前発注をやめてほしい」と進言しても、「売上が下がる」「工場の稼働率が落ちる」という反論に屈せざるを得ませんでした。

しかし、SUBARUのCLO体制では、経営トップ直轄の強い権限(物流改善命令権)を職務権限規定に明文化しています。
これにより、営業・生産・物流の利害対立を経営会議で対等に調整し、部門間のサイロ化を完全に打破することに成功したのです。

2. 「生産と物流の同期化」による出荷波動の平準化

SUBARUの改革で最も特筆すべき現在地は、「生産と物流の同期化」です。
自動車の完成車輸送において、各エリアの積載率や車両確保状況といった「物流キャパシティ」のリアルタイムデータを、工場の生産計画(アセンブリラインの計画)へ直接フィードバックする体制を整えました。

物流が運べないペースで生産し、港や倉庫に車両を長期滞留させる「過剰在庫」を未然に防ぐため、生産枠自体を物流キャパシティに合わせて微調整(同期化)します。
これにより、倉庫や出荷場の混雑が解消され、現場の作業波動は極めて低く平準化されました。

3. デジタルを武器にした「共通言語としてのデータ可視化」

SUBARUは、国内外の複雑なサプライチェーンに散在していた輸送データやコスト、荷待ち時間をデジタルで一元管理する「データ基盤」を構築しました。
「どのエリアで・どの車種が・どれだけ待機しているか」というファクトを可視化し、経営層や他部門がいつでも確認できるダッシュボードを整備しています。

感情論や「現場が大変だ」という精神論ではなく、客観的なデータを「共通言語」とすることで、他部門の行動変容を促す論理的な交渉(商物分離の徹底)が可能になりました。

参考記事: CLOが担う「物流の経営課題化」と組織改革のステップ【2026年06月版】


現場からCLOを動かす「3つの実践プロセス」

SUBARUのような大規模な組織改革は、経営トップの決断だけで進んだわけではありません。
現場の管理者や実務担当者が「ファクト(事実)」を揃え、CLOへ適切な判断材料をボトムアップで提示し続けたからこそ、真の変革が実現しました。

倉庫管理者や現場リーダーが明日から実践すべき「3つのステップ」を解説します。

ステップ1:ファクトに基づく物流データの共通言語化

変革の第一歩は、社内の全部門が同じ現実を見られるようにすることです。
現場の「営業の無理な指示が多くて困っている」という愚痴を、定量的な数値データ(ファクト)へ変換します。

具体的な手順

  • WMS(倉庫管理システム)やトラック予約受付システム(バース予約)から、拠点ごとの出荷実績やトラックの待機時間データを抽出する。
  • 突発的な特急便手配によって発生した「追加配送料(チャーター費)」や「現場の残業時間」を月次で集計する。
  • WMSやBIツールを活用し、経営層やCLOがいつでもスマートフォン等で確認できる「物流ダッシュボード」を構築する。

「特定顧客に対する小口多頻度配送のせいで、配送コストが○%跳ね上がり、粗利益が赤字になっている」といったファクトを提示することで、CLOが他部門へ切り込むための武器を提供します。

ステップ2:物流コストの「他部署への配賦」による責任明確化

どれほどデータを見せても、自分の部門の財布が痛まなければ、営業や生産部門の行動は変わりません。
これまで全社一括で「物流費(販管費)」として処理され、ブラックボックス化していたコストの責任を明確にします。

具体的な手順

  • 営業活動のミスや、顧客への過剰サービスとして発生した「緊急特急便」の費用を、物流部門の経費から切り離す。
  • 特急料金を、手配の原因となった営業部門の損益(P/L)へ100%直接配賦するルールへと改定する。
  • 生産部門の予測ミスによる長期滞留在庫の「外部倉庫保管料」や「横持ち運賃」も、生産部門のコストとして配賦する。

このコスト配賦ルールの改定は、現場の権限では実行できません。
ステップ1で蓄積したデータをもとに、CLOからトップダウンで制度を制定してもらうのが正攻法です。
自部門の利益(賞与評価)に直結するとなれば、営業担当者は安易な即日配送の約束を自制するようになります。

ステップ3:納品条件の再設計とパートナーシップ構築

社内の仕組みが整ったら、顧客や運送会社を巻き込んだ、サプライチェーン全体の適正化(商物分離)に着手します。

具体的な手順

  • これまで「受注の翌日納品(D+1)」が当たり前だった取引条件を、営業と連携して「翌々日納品(D+2)」へ緩和するための交渉を行う。
  • パレット単位での最小発注ロット(MOQ)を設定し、倉庫でのバラピッキング(手荷役)の手間を削減する。
  • 物流効率化によって削減できたコストや利益を自社で独占せず、運送会社へ「適正運賃」として還元し、強固なパートナーシップ(ホワイト物流)を築く。

リードタイムに余裕が生まれれば、配車計画の最適化が可能になり、トラックの平均積載率を劇的に引き上げることができます。

CLO導入と全体最適化に向けた3つの実践手順

ステップ 期間 実行主体 必要なアクションと活用するデータ
ステップ1 1〜30日 物流部門・CLO WMSやバース予約システムから荷待ち時間や出荷データを可視化する
ステップ2 31〜60日 経営層・CLO 特急便や長期保管の費用を発生させた他部署へ100%直接配賦する
ステップ3 61〜100日 営業・物流部門 納品リードタイムを緩和し最小発注ロットを設定して共同配送を推進する

参考記事: スバルに学ぶ!CLOを動かし物流サイロ化を打破する現場改善3ステップ


CLO体制への移行が現場にもたらす「Before/After」

SUBARUの事例や先進企業のデータが示す通り、CLOが実質的な権限を持って機能することで、物流現場と経営財務の双方に劇的な変化が生まれます。

CLO導入前の課題(Before)と、導入後の成果(After)を比較テーブルで整理しました。

CLO導入による倉庫現場と経営層の変化

改善項目 導入前(Before)の課題 導入後(After)の効果 経営・財務へのインパクト
特急便の手配 営業の指示により毎日突発的にチャーター便が発生 事前申請制とコストの部門配賦により特急便が激減 庸車費用や無駄な追加運賃を20%以上削減
出荷の波動 月末や週末に物量が極端に集中し現場が混乱 全社的な生産・出荷計画の同期化による平準化 残業時間の半減と誤出荷などのミスを撲滅
納品リードタイム 顧客の要望を優先した翌日午前着(D+1)の強要 翌々日納品(D+2)への緩和と発注ロット標準化 平均積載率が40%台から70%以上へ向上
現場の待機時間 トラック到着時間が不明確で長時間の荷待ちが発生 バース予約システムの導入による到着分散と車両管理 待機時間の原則1時間以内達成と運送会社からの選別回避

1. 定量的な効果:コスト20%削減と業務効率化

積載率の向上や特急便の削減により、企業全体の総物流コストを20%以上削減することが十分に可能です。
また、電話やFAXによるアナログな調整や確認作業をデジタル化することで、事務員の連絡業務を月間50時間以上削減できた事例(ホクシン株式会社)も存在します。
倉庫スタッフの無駄な残業時間が削減されることで、労務コストの適正化も実現します。

2. 定性的な効果:作業品質の向上と「ホワイト物流」の実現

突発的な「ねじ込みオーダー」がなくなり、計画通りに庫内作業を進められるようになるため、焦りから生じる誤出荷やピッキングミスのヒューマンエラーがほぼゼロになります。
さらに、トラックドライバーの待機時間が大幅に削減され、倉庫バースでの荷役作業もスムーズになるため、運送会社から「選ばれる荷主」としての地位を確立し、物流難民化のリスクを完全に回避できます。

参考記事: 2026年4月法改正へ日清食品のCLO選任後アクションで物流効率化が加速


まとめ:成功の秘訣は完璧を求めない「6割のスタート」

「CLO特集/SUBARU CLO就任、物流本部新設から1年の現在地」から私たちが学ぶべき最大の教訓は、「最初から100%完璧な体制を求めないこと」です。

サプライチェーンには、社内の営業や生産部門、さらには顧客、3PL、運送会社など、数多くのステークホルダーが複雑に絡み合っています。
最初から全員の完全な合意を得ようとすれば、議論は膠着し、計画は必ず頓挫します。

日清食品の深井CLOも提唱しているように、まずは「特定の主要拠点」や「1つの大口配送ルート」に絞り、「6割の完成度」でアジャイルにスタート(クイックウィン)することが極めて有効です。
そこで得られた小さな成功体験と、可視化された定量的な改善データ(コスト削減額や積載率向上幅)を武器にして、社内の抵抗勢力や経営陣を説得していきます。

成果が目に見えるファクトとして提示されれば、他部門や取引先も自然と協力的な姿勢へと変わっていきます。

物流を単なる「削るべき販管費(コストセンター)」として放置するのか、それとも企業の持続可能性を支える「プロフィットセンター(価値創造の源泉)」へと昇華させるのか。
それは、現場の管理者や実務担当者が一歩を踏み出し、正確なデータを武器に経営層(CLO)を動かす「覚悟」にかかっています。

2026年の義務化というタイムリミットに怯えるのではなく、自社のサプライチェーンを強靭化する最大のチャンスと捉え、まずは明日から自社倉庫の「荷待ち時間」や「緊急輸送費」のデータをエクセルやシステムから集めることから始めてみましょう。

参考記事: 【2026年義務化】CLO(物流統括管理者)設置で企業価値を高める3つの対策


出典: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた対象基準と実務対応を徹底解説
出典: スバルに学ぶ!CLOを動かし物流サイロ化を打破する現場改善3ステップ
出典: 2026年4月法改正へ日清食品のCLO選任後アクションで物流効率化が加速
出典: CLOが担う「物流の経営課題化」と組織改革 of ステップ【2026年06月版】
出典: 日清食品CLOが語る!物流部門を成長の核へ変える3つの実践任務

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監修者プロフィール
近本 京

近本 京

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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