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倉庫管理・WMS 2026年6月17日

日本倉庫協会が2026年6月11日に総会、営業倉庫の中継ハブ化が加速

日本倉庫協会が2026年6月11日に総会、営業倉庫の中継ハブ化が加速

日本の物流インフラは今、かつてない激動の渦中にあります。2024年に施行された時間外労働の上限規制(年960時間)による「物流2024年問題」に続き、2026年はさらなる規制強化を伴う「改正物流効率化法」が本格施行を迎えます。政府の「総合物流施策大綱」では、国内の物流需要が回復した場合、2030年度には輸送力の約25%(約7.2億トン分)が不足するという衝撃的な需給ギャップが警告されています。

この極めて緊迫した局面において、業界を代表する団体である日本倉庫協会(日倉協)は2026年6月11日、東京都内で総会を開催しました。役員改選により、住友倉庫の小野孝則会長が新会長に就任。小野新会長は、迫り来る2030年の物流危機に立ち向かうため、荷主企業と物流事業者が一体となった「商慣習の見直し(オーダーカット時間の前倒し)」と「適正な価格転嫁」の定着を最優先課題として掲げました。

さらに、改正物流効率化法の施行に合わせ、営業倉庫を単なる「保管場所」から、持続可能な「中継輸送のハブ(中継拠点)」へと再定義し、国交省と連携して税制特例や開発許可の配慮を推進する方針を表明。深刻な労働力不足に対しては、従来の生産性向上に加え、新たに「外国人特定技能・育成就労制度」の受け入れ支援を活動の柱に据えることを宣言しました。この総会での決定は、日本の倉庫業が「輸送を支える戦略拠点」へと構造改革を遂げるための、明確なゲームチェンジの号砲を意味しています。


ニュースの背景・詳細:日倉協2026年度総会と小野新体制の全貌

2026年6月11日、一般社団法人日本倉庫協会が開催した総会では、役員の改選が行われ、住友倉庫会長の小野孝則氏が新たな会長に就任しました。また、前会長の藤倉正夫氏(三菱倉庫会長)は副会長に退き、理事長には中村広樹氏が新任されました。

小野新会長は就任挨拶において、中東情勢の緊迫化に伴う軽油・電力・資材(ストレッチフィルム等)の高騰といった外部環境の悪化が、会員企業の経営を厳しく圧迫している現状を報告。その上で、持続可能な物流体制の構築に向けて、国、荷主、運送会社、そして倉庫事業者が一枚岩となって取り組むべき構造改革プランを提示しました。

本総会の決定事項、および倉庫業界が直面する制度改革と2030年に向けたタイムラインを以下のテーブルに整理します。

日本倉庫協会 2026年度総会の基本情報と決定事項

項目 詳細内容 現場への影響と留意点
開催日と場所 2026年6月11日、東京都内 業界のトップが一堂に会し、今後の5年を左右する重要方針を可視化。
新役員体制 会長:小野孝則氏(住友倉庫) 理事長:中村広樹氏 住友倉庫のトップが日倉協の舵を取り、法改正やDX対応の陣頭指揮を執る。
最優先の商慣習改革 オーダーカット(受注締め切り)時間の前倒し定着 倉庫内の作業平準化や、トラックの荷待ち・荷役時間削減の必須条件となる。
人手不足への新方針 「外国人特定技能・育成就労制度」の活用支援 従来のDX導入や生産性向上に加え、海外人材の受け入れ支援を新たな柱へ。

倉庫業界が直面する制度改革と2030年に向けたタイムライン

時期 主な法規制・出来事 営業倉庫に求められる実務対応
2026年5月公布・年内施行 改正物流効率化法(本格施行) 営業倉庫を「中継拠点」として機能させるための設備投資と計画申請。
2026年6月 外国人「特定技能」に物流倉庫が本格追加 倉庫管理システム(WMS)や自動搬送ロボット(AMR)の導入が受け入れ要件。
2026年度末 軽油引取税の課税免除の期限 燃料価格高騰が続く中、日倉協として免除の「延長」に向け全力でロビー活動を展開。
2030年度 総合物流施策大綱の目標年度 輸送力25%不足の回避に向け、中継ハブ化と共同配送を完全定着させる必要。

業界への具体的な影響:各プレイヤーの役割はどう変わるか

今回の日本倉庫協会の新方針と改正物流効率化法の動きは、サプライチェーンを構成する主要プレイヤーに対し、地殻変動とも言える構造変化を迫ります。

1. 倉庫事業者・3PL:単なる「保管」から「中継ハブ」への転換とDX要件

これまで、営業倉庫は「荷主から託された物品を雨風から守り、安全に保管する空間」として位置付けられてきました。しかし今後は、その定義が「長距離輸送を物理的に分断・中継し、ドライバーの長時間労働を防ぐための『中継ハブ』」へと大きく変貌します。

改正物流効率化法に基づき、営業倉庫が「中継拠点」として認定されることで、事業者には物流拠点税制における固定資産税や登録免許税の軽減措置(倉庫特例)、都市計画法上の開発許可の配慮などの実利的なメリットがもたらされます。

しかし、これは同時に、事業者に対する「踏み絵」でもあります。税制優遇を受けるためには、単にスペースを提供するだけでなく、以下の取り組みが必須となります。

  • 「荷待ち時間目標20分以内」をクリアするためのバース予約システムの導入
  • トラックの到着と庫内作業をジャスト・イン・タイムで同期させるWMS(倉庫管理システム)の高度化
  • 作業員の省人化と、スピード検品・ピッキングを実現する自動化マテハン(AGV/AMR等)の継続活用

つまり、デジタル技術への投資を行わない従来型のアナログ倉庫は、特例の対象から除外され、競合との生存競争において深刻な不利を被る局面に入ったのです。

参考記事: 倉庫税制完全ガイド|令和6年度改正のポイントと失敗しない特例活用法

2. 行政・規制当局:点と線をセットで効率化する拠点政策の推進

国土交通省をはじめとする行政は、従来の「トラック輸送の規制(線)」と「倉庫の立地・税制(点)」を個別に捉えるアプローチから、双方がシームレスに連携した「サプライチェーン全体の最適化」へと舵を切っています。

総会に登壇した佐々木紀国土交通副大臣が「保管や入出庫などトラックとの連携において大きな強みを持つ営業倉庫は、まさに中継拠点の代表例だ」と発言したように、国は営業倉庫を中継輸送の核として利用することを強く推奨しています。

今後は、中継拠点としての適合性審査が厳格化される一方で、基準を満たした先進的倉庫に対しては、開発許可のプロセスを短縮するなど、行政手続きの面での強力なバックアップが行われることになります。

参考記事: 中継輸送とは?2024年問題・2026年問題を乗り越える導入ガイドと3つの方式

3. 製造業者・メーカー:「オーダーカット前倒し」と適正価格転嫁への対応

小野新会長が「依然として十分に浸透しているとは言えず、改善の途上にある」と指摘したのが、荷主企業による「オーダーカット(受注締め切り)時間の前倒し」です。

従来、荷主は夕方遅くや夜間に受注したデータを倉庫側に送り、翌朝一番の出荷を要求するような、超過酷な商慣習を倉庫事業者に強いてきました。これが、庫内スタッフの夜間労働を常態化させ、トラックドライバーの突発的な早朝荷待ちを誘発する最大のボトルネックとなっていました。

オーダーカット時間の前倒し(例えば、締め切りを17時から12時へ引き下げる、あるいは翌々日配送への変更)が定着すれば、以下のような効果が生まれます。

  • 倉庫事業者は、日中の明るい時間帯に計画的なピッキングと荷揃えを行うことができる。
  • ドライバーは、あらかじめ指定された時間(予約バース)に接車し、20分以内の荷待ち時間で速やかに積み込んで出発できる。

荷主企業(メーカー・小売)は、物流側の悲願であるこの商慣習改革に対し、「他社より遅れれば顧客を奪われる」という昭和型のマインドを完全に捨て、サプライチェーン全体のデジタル化と時間管理の徹底(CLOの主導による体制構築)を進めることが不可避となります。また、資材不足や軽油高騰分、さらにはこれまで「保管料コミコミ」として無償化されがちだったラベル貼りや仕分け等の「附帯作業費」についても、正当な価格転嫁(サービスフィーの支払い)に応じなければ、物流難民化するリスクが極めて高くなります。

参考記事: 物流総合効率化法を徹底解説|2024年法改正の背景と実務担当者が知るべき対応策


LogiShiftの視点:構造的変化が導く倉庫業の「二極化」と生き残り戦略

日本倉庫協会の総会方針と、一連の法改正がもたらす本質的なメッセージを、LogiShiftでは「国と業界を挙げて、アナログで労働集約的な『昭和型倉庫』を計画的に淘汰し、技術集約的な『次世代ハブ倉庫』へ一極集中させようとしている」と分析します。

この構造的変化を生き抜くために、事業者が取るべき3つの戦略的アプローチを解説します。

「中継ハブ機能」の有無による倉庫事業者の峻別と二極化

今後、倉庫業は「輸送効率化に寄与する多機能中継ハブ」と、「単にモノを置いてスペースを切り売りするだけの従来型倉庫」に、残酷なほど二極化します。

中継ハブとしての機能(シャトル輸送のドライバー交代、トレーラー交換、共同配送の混載など)を持たない、またはそのためのシステム・設備投資を行えない倉庫は、政策的な支援(税制優遇、補助金)から取り残されます。さらに、2030年に向けて深刻化するドライバー不足の波において、運送会社から「あの倉庫は待たされるし中継もできないから行きたくない」と敬遠され、荷主からも選ばれなくなるスパイラル(淘汰リスク)に陥ります。

今すぐ自社の拠点が「中継拠点」としてのポテンシャル(インターからのアクセス、ドックレベラーや十分な駐車・待機スペース、車番認証カメラ、WMSの有無など)を備えているか、緊急のアセスメント(実態調査)を行う必要があります。

「特定技能・育成就労」をフックにした「技術集約型オペレーション」への昇華

小野新会長が「人材不足対応の新たな柱」と位置づけた外国人人材の受け入れ支援。2026年1月に在留資格「特定技能」に物流倉庫分野が正式追加されたことは、現場にとっての救世主です。育成就労の3年と特定技能の5年を合わせ、最長8年間にわたる長期のキャリアパスを構築できるようになりました。

しかし、ここでも国交省は「WMSの利活用」や「自動搬送マテハン機器の導入」を外国人受け入れの必須条件として課しています。これは、単に「安い外国人労働者を人海戦術のコマとして使うこと」を認めない、国の強い意志の表れです。

先進的な企業では、すでに「入国前教育(Pre-departure Training)」に投資を始めています。例えば、来日前の東南アジア現地機関と提携し、日本の安全ルールやフォークリフト操作の基礎、やさしい日本語を教え込んでから即戦力として配置する仕組みです。

さらに一歩進んだ戦略として、エヌ・ピー・ロジなどの事例に見られる「海外大学直結採用」のように、大学卒業の優秀な外国人材を採用し、特定技能から「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザへの切り替えを提示する企業も現れています。彼らを単なる作業員ではなく、WMSやAMRを使いこなす「システムオペレーター」や「将来の現地幹部候補」として育成する。このような、テクノロジーとグローバル人材が共生する「技術集約型」の現場を設計できる企業だけが、選ばれる存在となります。

参考記事: 特定技能に物流倉庫追加!DX必須化が各プレイヤーに与える3つの影響

参考記事: 在留期間最大8年へ!特定技能と育成就労の連携が促す倉庫業のDX推進

リスクシェア契約(SLA)と「価格交渉」のプロフェッショナル化

2026年5月、政府備蓄米70万トンの短期一斉出庫によって、全国の定温倉庫が「空」状態となり、深刻な経営危機に陥ったニュース(定倉協の訴え)は記憶に新しいところです。この問題は、荷主都合による入出庫の激しいボラティリティ(変動)リスクを、これまで倉庫事業者が一方的に背負わされてきた歪んだ構造を浮き彫りにしました。

今後は、倉庫業においても「レベニューマネジメント」の考え方が不可欠です。

  • 急な出庫や保管期間短縮に対する「キャンセル料金」の設定
  • 将来の保管スペース確保に対する「仮押さえ料金(予約料)」の導入
  • 燃料価格や電力料金の高騰に対応した「サーチャージ制」の明文化

これらを、単なるお願いベースではなく、WMS等から抽出した客観的なデータ(稼働率、作業マンアワー、待機時間)をエビデンス(証拠)として荷主に提示し、対等な立場で「新・標準倉庫寄託約款」に基づく価格転嫁・価格交渉を勝ち取る姿勢こそが、経営の健全化に向けた最大の生存戦略となります。

参考記事: 株式会社天職市場が6月16日に示す物流倉庫での外国人採用の必須対応

参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須


まとめ:明日から倉庫現場・経営層が意識すべき3つの実践ステップ

日本倉庫協会の定時総会での小野新会長の表明は、単なる業界内のニュースではなく、改正物流効率化法の施行と2030年問題(輸送力25%不足)のタイムリミットに直面した、倉庫業界全体の「生存のための最後通告」です。

明日から、現場リーダーや経営層が直ちに着手すべき3つの具体的なアクションを提言します。

  1. 自社倉庫の「中継ハブ機能・DXインフラ」の緊急自己監査を行う
    自社の拠点に、WMS(倉庫管理システム)、バース予約システム、AMR等の自動化設備、車番認識カメラがどれだけ整備されているか、また改正物流効率化法における中継拠点としての税制優遇要件を満たせるかを、直ちに棚卸しする。
  2. 「特定技能・育成就労」の受け入れ要件となるシステム投資計画の策定
    人手不足解消の切り札となる外国人材受け入れのために、国が求める「DX推進要件」をクリアするための予算措置とシステム選定(API連携可能なクラウド型WMSなど)を早期に進める。
  3. 客観データに基づく「荷主との価格転嫁・商慣習交渉」のシミュレーション
    オーダーカット時間前倒しの効果や、実費で発生している検品・流通加工(附帯作業)にかかるマンアワーを正確に測定し、「新・標準倉庫寄託約款」を武器に、荷主との契約(SLA)の全面的な見直し・改訂に向けた交渉ロードマップを敷く。

「荷物をただ預かる場所」から、「持続可能な物流ネットワークの戦略ハブ」へ。この急激な変化をチャンスに変え、デジタルとグローバル人材の協働によって新たな付加価値を創出できる企業だけが、2030年のその先へと勝ち残る切符を手にするのです。


出典: カーゴニュースオンライン

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監修者プロフィール
近本 京

近本 京

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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