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Home > 事例・インタビュー> 100%子会社の静神運輸事例に学ぶ原価データ提示と運賃交渉の必須対応
事例・インタビュー 2026年7月23日

100%子会社の静神運輸事例に学ぶ原価データ提示と運賃交渉の必須対応

長年続いてきた高速道路料金の自己負担や休日割増・車両指定料の未請求といった、中距離輸送における採算悪化に頭を悩ませていませんか。
静岡県沼津市の静神運輸株式会社は、アセンド株式会社の運送管理システム「ロジックス」を活用して距離帯や車格別の原価を可視化し、客観的なデータを提示することで、長年の課題であった附帯料金の要望額全額受け入れを達成しました。

静神運輸が実現した「原価データの可視化」と交渉成功の全貌

物流事業者において「荷主に運賃の値上げを提示しても受け入れてもらえない」という悩みは根深く存在します。
静岡県沼津市に本社を置く静神運輸は、自社のコスト構造を精緻なデータで証明することにより、この課題をクリアしました。

赤字に悩んでいた従来の中距離輸送と「勘や経験」による交渉の限界

静神運輸は売上の大きな割合を中距離輸送が占めていました。
しかし、その運行では赤字が発生している路線が少なくありませんでした。

赤字を招いていた主な要因は、以下のような取引慣行にありました。

  • 高速道路利用料金の自己負担
  • 休日割増料金の未請求
  • 車両指定料金の未請求

同社では従来も荷主との運賃交渉を行っていました。
しかし、その根拠は一般的な物価推移や「勘と経験」に応じる形にとどまっていました。
自社の実態に基づく定量的なコストの提示が不足していたため、対等な交渉のテーブルに着くことが困難だったのです。

アセンド「ロジックス」を活用した距離帯・車格別原価の特定

この状況を打開するため、静神運輸はアセンド株式会社が提供する運送管理システム(TMS)「ロジックス」を導入しました。
システム上に日々の配車や運行、請求のデータを一元化し、距離帯別および車格別に詳細な原価を算出する仕組みを整えました。

可視化を行った結果、どの路線がどのような理由で原価割れを起こしているのかが明確になりました。
特に高速道路代の自己負担や未請求の附帯作業が収支を圧迫している事実が数字で特定されました。

この客観的な数値を根拠として荷主に交渉へ臨んだところ、提示した要望額の全額受け入れという成果につながりました。

静神運輸の企業概要と現場での定着に向けた取り組み

静神運輸は静岡県沼津市に本社を置き、水産物卸売大手の羽野水産株式会社の100%子会社(羽野グループ)として安定した経営基盤を持っています。
重電機製品や鮮魚・冷凍食品の全国輸送を手掛けており、現場でのデータ入力やデジタル化にも早期から取り組んできました。

単にツールを導入しただけではありません。
同社では社内体制の整備とデジタル化の定着を並行して推進しました。

改善項目 従来の課題 「ロジックス」導入後の変化
荷主交渉の根拠 一般的な物価推移や経験則 路線・車格ごとの精緻な原価データ
現場の連絡体制 電話やホワイトボードによる口頭連絡 全ドライバーへタブレット支給し指示一元化
部署間連携 配車・請求・労務が個別管理 クラウド基盤で全部署がリアルタイム情報共有

全ドライバーにタブレットを支給して指示書や運行情報を一元化することで、口頭連絡のミスを防ぎ、正確な運行実績データがリアルタイムで集まる環境を構築しました。

なぜ今、データに基づく運賃交渉が不可欠なのか?

物流業界を取り巻く環境は、従来の「どんぶり勘定」を完全に許容しない局面へと突入しています。
法改正や国の制度設計が進む中で、事業者が生き残るための前提条件が変化しています。

2026年問題と物流統括管理者(CLO)設置義務化の影

物流業界では「2024年問題」に続き、2026年以降も構造改革が加速しています。
改正物流効率化法(改正流通業務総合効率化法)により、特定荷主企業(年間輸送量の多い大手企業など)に対して「物流統括管理者(CLO)」の設置が義務付けられました。

CLOは自社サプライチェーンにおける物流効率化やトラックの待機時間削減、荷役作業の改善に責任を持ちます。
そのため、荷主側にとっても運送事業者からの正確な運行データや時間コストの提示は、自社のコンプライアンス遵守のために欠かせない情報となっています。

国土交通省による「適正原価」の告示と法規制の強化

国土交通省は、従来の目安であった「標準的な運賃」から一歩踏み出し、トラック運送事業者が遵守すべき「適正原価」の告示および制度設計を進めています。
適正原価を下回る低運賃での取引は、安全対策費用の不当な削減や下請法・独占禁止法違反に該当するリスクが高まっています。

行政による監視体制である「トラック・物流Gメン」の活動も強化されており、根拠のない安値の強要や買いたたきに対して厳しい指導が行われています。

参考記事: 国土交通省が2028年6月適正原価を全面施行、取引見直しが必須に

どんぶり勘定の終焉と「データ主導型取引」への構造変化

これまでの中小運送会社は、1運行あたりの人件費や燃料費、待機時間などのコストをあいまいにしたまま、荷主の言い値で引き受けるケースが多く見られました。
しかし、コスト上昇分を転嫁できなければ、ドライバーの賃上げを行えず、人材流出によって事業継続が困難になります。

今や物流市場は、データをもとにコストを透明化し、客観的エビデンスを提示しながら適正価格を決定する「データ主導型取引」へ構造変化を遂げています。

参考記事: 適正原価制度に対応!アセンド株式会社の7月6日開講講座が事業存続の鍵

精緻な原価データ提示がもたらす具体的なメリット・効果

静神運輸の取り組みは、原価データの可視化が単なる社内の管理業務に留まらず、外向きの強い「営業力・交渉力」になることを証明しました。

定量成果:荷主から要望額全額の承諾と適切な収支改善

最大の直接的成果は、長年未請求だった附帯料金の全額受け入れを達成した点です。
具体的には以下のコストが適正に反映されるようになりました。

  • 実費で発生していた高速道路利用料金の全額荷主負担化
  • 休日運行における割増料金の別建て徴収
  • 車両指定が発生した際の指定料の適正収受

定量的データに基づくプレゼンテーションを行ったため、荷主側も提示された数値を否定できず、スムーズな合意形成に至りました。
これにより、原価割れを起こしていた中距離路線の収支が大きく改善されました。

定性成果:数字で語れる経営判断と配車・指示業務の属人化脱却

定量的な収支改善に加え、社内の経営体制や現場業務にも定性的なメリットが生まれています。

  • 迅速で客観的な経営判断
  • 経営陣が「どの路線がどれだけの利益を生んでいるか」をリアルタイムで把握でき、不採算取引の見直しや新規営業の戦略決定を迅速に行えるようになりました。
  • 配車・運行管理の脱属人化
  • ベテラン担当者の頭の中にあった運行ノウハウや配車情報がデジタル化され、全社で共有できる体制が整いました。
  • ドライバーの労働環境向上
  • タブレットを活用したペーパーレス化と正確な指示伝達により、連絡漏れによるトラブルが減少しました。

参考記事: 労務費100%転嫁を実現!統計と自動計算で運賃交渉を成功させる3つのデータ活用術

データ駆動型交渉(データドリブン・ネゴシエーション)を成功させる3ステップ

静神運輸のように、荷主から納得を得て運賃改定や附帯料金の全額改定を成功させるためには、段階的なプロセスを踏む必要があります。

ステップ1:配車・運行ログをデジタル化し一次データを蓄積する

最初のステップは、交渉の根拠となる基礎データをデジタル形式で漏れなく記録することです。
紙の日報や記憶に基づく手入力では、荷主に対する説明力が弱くなります。

  • 運送管理システム(TMS)やデジタルタコグラフを導入する
  • 配送先ごとの到着時刻・出発時刻・待機時間を自動記録する
  • 荷役作業やラベル貼りなどの附帯作業にかかった時間を正確にデータ化する

まずは社内の運用を整理し、日々のデータが勝手に溜まる仕組みを作ることが重要です。

ステップ2:距離帯・車格・ルート別に原価割れの原因を数値で特定する

データが蓄積されたら、自社の原価構造を細かく分解して分析します。
会社全体の損益を見るだけでは、どの荷主のどの路線に問題があるのか特定できません。

  • 車格別の固定費算出
  • トラックの車両償却費や保険料、税金などを車格ごとに1日あたりの固定費として算出する。
  • 距離帯別の変動費算出
  • 燃料費や高速道路代、タイヤ消耗費などを走行距離に応じて算出する。
  • 荷主・ルート別の採算チェック
  • 1運行あたりの受託運賃から上記のコストおよび労務費を差し引き、採算性を可視化する。

この分析により「高速道路代が請求できていないため、距離帯Bの大型車ルートが赤字になっている」といった具体的な課題が明確になります。

ステップ3:公的統計や客観的データを踏まえた協調的プレゼンテーション

準備したデータを持って荷主との交渉に臨みます。
このとき、単に「自社が赤字だから値を上げたい」という対立的な態度を取るべきではありません。

荷主の持続可能性やコンプライアンス維持に寄与する「協調型の提案」として持ち込むことが成功のコツです。

  • 公的指標との照合
  • 国土交通省が示す「標準的な運賃」や公的な物価・燃料統計を比較対象として提示する。
  • ファクトベースの課題提示
  • 「御社の〇〇センターでの平均待機時間が〇〇分発生しており、その分の労務費が運賃を上回っています」と事実のみを伝える。
  • 効率化案のセット提案
  • 「待機時間を〇〇分短縮していただければ、運賃の引き上げ幅を抑えられます」といった相互メリットになる解決策を提示する。

参考記事: 全ト協・令和8年度運賃交渉支援事業の全貌!適正利益を確保する3つの実践ステップ

まとめ:物流事業者が今すぐ取り組むべき次のアクション

静岡県沼津市の静神運輸が達成した附帯料金の全額受け入れ事例は、「荷主が強いから価格改定できない」という物流業界の固定観念を覆すニュースです。

「勘と経験」に依存した経営から脱却し、精緻な原価データを武器にした「データ駆動型交渉」へシフトすることが、今後の激動期を生き抜くための鍵となります。

まずは自社の運行データや原価構造がどの程度可視化できているかを点検してください。
自社のコストを1円単位で説明できる準備を整えることが、適正な利益の確保と持続可能な事業運営に向けた最初の確実な一歩となります。

出典: 物流ニュース LNEWS
出典: PR TIMES
出典: LOGISTICS TODAY

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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