株式会社ひとまいる、株式会社東京流通センター、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社、株式会社マクニカが共同提案した実証事業が、2026年9月4日に国土交通省の令和8年度「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業」に採択されました。協力事業者の株式会社Hacobuを含む5社体制により、敷地面積15万㎡を誇る東京流通センター構内において、飲料空容器の横持輸送を対象とした自動運転レベル4の実装およびシステム連携の検証が行われます。
国交省事業採択で進むTRC構内レベル4自動横持実証の全貌
物流業界における深刻な労働力不足への対策として、幹線輸送の自動運転化と並行し、物流施設内における定型的な輸送作業の省人化が強く求められています。今回の実証実験は、物流施設という私有地環境を最大限に活かし、車両の自律走行だけでなく、施設側のバース予約管理システムや高精度3次元地図基盤を統合させた実践的な試みです。
実証実験の基本仕様と枠組み
本事業は、物流施設構内における日常的な横持輸送オペレーションを、デジタルインフラと連携した自動運転車両によって代替・最適化することを目的としています。実証の主要な構成要素は以下の通りです。
| 構成項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 事業名 | 自動運転車両を用いた物流施設内の横持輸送実証事業 |
| 採択事業 | 国土交通省 令和8年度「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業」 |
| 発表日 | 2026年9月4日 |
| 実証場所 | 東京流通センター(TRC)構内(東京都大田区平和島6-1-1) |
| 対象ルート | 南東京センター(A棟)〜 平和島センター(B棟)間 |
| 対象貨物 | 株式会社ひとまいるが取り扱う飲料の空容器 |
| 自動運転レベル | レベル4(特定条件下における完全自動運転) |
参考記事: 横持ちとは?物流・建設現場で発生するコスト増加を防ぐ削減ノウハウ
参画5社が担う技術領域と連携アーキテクチャ
本実証の大きな特徴は、自動運転車両単体の走行にとどまらず、施設の管理データ、道路・空間情報、遠隔運行管理をシームレスに結合させる点にあります。参画する5社の役割分担は以下のように整理されています。
| 企業名 | 本実証における主な役割・提供システム | 企業の強み・事業領域 |
|---|---|---|
| 株式会社ひとまいる | 実証対象貨物(飲料空容器)の提供、現場オペレーションの検証 | 「なんでも酒やカクヤス」等を展開するラストワンマイル・販売プラットフォーム企業 |
| 株式会社東京流通センター(TRC) | 実証フィールド(敷地面積15万㎡・総延床約12万坪)の提供、施設管理連携 | 首都圏の物流ハブを支える物流施設・オフィスビルの運営管理企業 |
| ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 | インフラ協調型モビリティ基盤および高精度3次元地図データの提供 | 国内外で自動運転・ADAS向け高精度3次元データを展開するデジタル地図プラットフォーマー |
| 株式会社マクニカ | 自動運転車両の提供、遠隔運行管理システム「everfleet」の運用 | 半導体・ネットワークおよび自動運転・AI等の先端テクノロジーを統合するソリューション企業 |
| 株式会社Hacobu(協力事業者) | トラック予約受付サービス「MOVO Berth」のバース予約・満空情報連携 | クラウド物流管理ソリューション「MOVO」を展開する物流DXパートナー |
システム連携の流れとしては、まずHacobuの「MOVO Berth」が保有するリアルタイムのバース予約および満空情報を、ダイナミックマッププラットフォームの「インフラ協調型モビリティ基盤」が取得します。この基盤上でバースの在空状況と高精度3次元地図データが組み合わされ、目的バースの位置情報および最適な構内走行経路情報が動的に生成されます。
生成された運行指示データは、マクニカが提供する遠隔運行管理システム「everfleet」を経由して自動運転車両へ送信されます。これにより、車両は人の手を介さずに指定されたバースまでレベル4で自動走行し、施設間の横持輸送業務を自律的に遂行します。
参考記事: トラックバース予約管理システムとは?荷待ち時間の可視化やWMS連携でバース割り当てを効率化する機能を解説
平和島自動運転協議会を起点とした実装の時系列
今回の実証採択は、単発の計画ではなく、TRCを中心とする産官学連携の取り組みが段階的に進展した結果として位置付けられます。実証に至る主な経緯は以下の通りです。
| 年月 | 出来事・取り組みの推移 |
|---|---|
| 2025年5月 | TRC構内を実証フィールドとする「平和島自動運転協議会」が発足。自動運転の社会実装に向けた協調領域の形成を開始。 |
| 2025年7月 | 株式会社カクヤスグループが「株式会社ひとまいる」へと商号変更。物流を中核とするプラットフォーム企業への変革を加速。 |
| 2026年1月 | 平和島自動運転協議会内に「フィジカルAI荷役ワーキンググループ(WG)」が発足。車両走行と荷役を連動させた現場モデルの検討に着手。 |
| 2026年2月〜3月 | 国土交通省が令和8年度「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業」の執行団体を公募、日本能率協会コンサルティング(JMAC)に決定。 |
| 2026年3月 | 平和島自動運転協議会に東京都大田区が参画。地域交通や物流課題解決に向けた官民連携基盤を強化。 |
| 2026年4月〜6月 | JMACによる同補助金(上限5,000万円)の公募が実施され、5社による共同提案を策定。 |
| 2026年9月 | 国土交通省の令和8年度事業として「自動運転車両を用いた物流施設内の横持輸送実証事業」が正式採択。 |
参考記事: 三菱地所が2026年7月からTRCで自動運転トラック誘導実証、施設DXが加速
改正物流効率化法と「2030年問題」が迫る横持輸送の改革
本実証の背景には、物流業界が直面している構造的な供給力不足があります。国土交通省の『令和6年版 交通政策白書』によると、何ら追加的な対策を講じなかった場合、2030年度には営業用トラックの輸送能力が需要に対して約34%不足すると試算されています。
法制度面においても、改正物流効率化法の施行により、2025年4月からは荷主・物流事業者に対して荷待ち・荷役時間の短縮が努力義務化されました。さらに2026年4月からは、年間取扱貨物重量が9万トン以上の「特定荷主」に対し、中長期計画の作成や定期報告の提出、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられ、施設内業務の合理化は法令遵守の観点からも避けられない課題となっています。
物流施設構内における「横持輸送」は、倉庫間の在庫バランス調整や空容器の回収・再配置など、サプライチェーンの維持に欠かせない定型作業です。しかし、短距離の反復運行であるにもかかわらず、専任のドライバーと車両を拘束し続けるため、人手不足下における大きなコスト要因となっていました。私有地という法的・安全管理上の障壁が比較的小さい環境を活用し、レベル4自動運転とバース管理を連携させる本実証は、実効性の高い現場改善モデルとして期待されています。
参考記事: 荷待ち時間とは?発生原因と法的リスク・DXによる削減手法を徹底解説
横持輸送の自動化が物流バリューチェーンにもたらす3つの影響
TRCで進められる構内自動横持の実証は、単一の拠点内改善にとどまらず、倉庫運営、施設開発、物流ITの各レイヤーに大きな変革を促します。
1. 倉庫事業者・3PL:定型作業の無人化とバース運用の最大化
倉庫事業者や3PL企業にとって、日々発生する建屋間の横持業務は、有人トラックの稼働を奪う大きな負担でした。特に飲料物流では、製品輸送に伴って大量の空容器が発生し、その回収や別棟への移送作業がバースやヤードの混雑を慢性化させる要因となっていました。
本実証のように、バースの予約・空き状況に連動して自動運転車両が自律的に配車・接車される体制が整えば、横持専任のドライバーを配置する必要がなくなります。貴重な人的リソースを出荷検品や長距離運行などのコア業務へ再配置できるだけでなく、バースの空き時間を極小化し、施設全体の回転率(スループット)を底上げすることが可能になります。
参考記事: サントリーロジと豊田自動織機、28年実稼働へ爪切替AGFで荷役自動化
2. 物流施設デベロッパー:高精度地図と通信インフラを備えた「知能化拠点」への進化
大規模物流施設を開発・運営する不動産デベロッパーにとって、施設の競争力基準は「立地と床面積」から「自動化への適応度」へとシフトしています。
敷地内で自動運転車両を円滑に走らせるためには、施設内の高精度3次元地図データが常に最新状態に保たれていることや、車両と管制システムを繋ぐ高速通信網、さらには死角を補うセンシングインフラの整備が欠かせません。TRCのように、敷地全体をオープンな実証環境として位置付け、自動運転インフラを先行して実装する施設は、入居を検討する先進テナントに対して強力な優位性を持つことになります。
参考記事: 構内物流の完全自動化へ!イブオートノミー新製品発表が示す物流DXの未来)
3. SaaS・テクノロジーベンダー:個別最適から「API連携エコシステム」への主導権争い
今回の実証において特筆すべきは、Hacobuの「MOVO Berth」、ダイナミックマッププラットフォームの「インフラ協調型モビリティ基盤」、マクニカの「everfleet」という、異なる専門領域を持つ3つのシステムがシームレスに結合している点です。
バース管理システム市場で国内シェア首位(デロイト トーマツ ミック経済研究所調査で2024年度拠点数シェア57.2%)を持つMOVO Berthのデータが、外部の自動運転管制基盤へ直接受け渡される仕組みは、今後の物流DXの標準像を示しています。単一のアプリケーションを提供するだけでなく、外部のモビリティシステムやWMS(倉庫管理システム)と標準化されたAPIで連携できるオープンなエコシステムを構築できるかが、テクノロジーベンダーの命運を分けることになります。
参考記事: MOVO BerthにAI搭載!トラック自動誘導で荷待ち時間を削る3つの影響
LogiShiftの視点:私有地レベル4が切り拓く「インフラ・車両・施設」の完全同期
本実証の意義について、LogiShiftは「私有地からの段階的実装」と「物理・デジタルの完全同期」という観点から分析します。
現在、新東名高速道路などを中心に大型トラックの自動運転幹線輸送実証が進められていますが、一般公道におけるレベル4走行には、法規制や天候急変時の対応、混在交通への配慮などクリアすべき課題が依然として多く存在します。一方、TRCのような物流施設内は私有地であり、運行管理者のもとで通行ルールや進入車両を一定程度コントロールできます。
法規制のハードルが比較的低い私有地において、ひとまいるの飲料空容器という実荷の反復輸送をターゲットに選んだ点は、社会実装を最短距離で進める極めて現実的なアプローチです。
さらに重要なのは、バース予約システム(Hacobu)と高精度地図(ダイナミックマッププラットフォーム)、遠隔監視・運行管理(マクニカ)が結びついた点です。どれほど自動運転車両自体のセンサーが高性能であっても、「どのバースが何分後に空くか」という施設側のリアルタイム情報と連動していなければ、構内での無駄な待機や交錯は防げません。
施設管理(バース情報)と空間管理(地図基盤)、そして運行制御(車両管制)がAPIを介して完全同期するこのアーキテクチャこそが、将来の幹線自動運転トラックを施設へ迎え入れる際にも必須となる基幹構造です。本実証は、構内横持の自動化にとどまらず、輸送網全体がデータで連動する次世代物流の縮図と言えます。
参考記事: 自動運転トラックの幹線最適化が加速、経済産業省が8月3日に公募開始
まとめ:構内物流の無人化時代に向け現場リーダーが明日から取り組むべき3つのアクション
東京流通センターにおける自動運転レベル4の横持輸送実証は、施設内オペレーションの無人化が実用段階に入ったことを示しています。将来的な構内自動化の波を見据え、物流実務者が明日から着手すべきアクションを提示します。
- 自社拠点における横持輸送のコストと拘束時間の可視化
自社施設内、あるいは近隣拠点間で行われている定型的な横持作業について、1日あたりの運行回数、拘束されているドライバー数、フォークリフト作業時間、待機時間を定量的に計測する。自動化によって削減可能なリソースの規模を把握し、将来的なROI(投資対効果)を試算する材料を整える。
- バース管理システムをはじめとする拠点データのデジタル化推進
自動運転車両やAGVなどの外部モビリティを受け入れる前提条件は、バースの満空状況や車両の入退場履歴がリアルタイムにデータ化されていることである。紙やホワイトボード、目視による属人的なヤード運用を脱却し、クラウド型のバース管理システム導入を進めることで、将来の自動誘導システムと接続可能な情報基盤を整える。
- 敷地内レイアウトと安全動線の標準化・棚卸し
自動運転車両の導入に際しては、有人フォークリフトや歩行作業員との交錯をいかに防ぐかが最大の論点となる。自社ヤード内の走行ルート、一時停止位置、荷捌きスペースの白線引きや段差の有無を再点検し、インフラ協調型センサーや高精度地図の導入に対応しやすい構内環境を整備する。
出典: 河北新報オンライン
出典: 株式会社Hacobu プレスリリース(2025年12月11日付)
出典: 株式会社東京流通センター プレスリリース(2026年1月22日付)
出典: 東京都大田区 プレスリリース(2026年3月24日付)
出典: 株式会社ひとまいる プレスリリース(2025年7月1日付)
出典: 国土交通省 報道発表資料(2026年2月16日付)


