東京流通センター(TRC)は2026年9月25日、同社を拠点とする「平和島自動運転協議会」が第3回総会と自動運転車両見学会を同月11日に開催したことや、参画企業・団体が合計60団体へ拡大したと発表しました。住友倉庫やヤマトモビリティ&Mfg.など新たに11社・団体が加わり、敷地面積15万㎡の構内における棟間横持ち輸送や荷役工程の無人化に向けた共同実証体制を一段と強固にしています。
平和島自動運転協議会が推進する構内RaaSと横持ち実証の展開
平和島自動運転協議会は、物流施設構内におけるテナント間や棟間の搬送作業を自律化する「RaaS(Robovan as a Service)」の国内初の実装を目指し、技術検証と運用モデルの構築を進めています。2026年9月25日に公表された第3回総会の開催内容では、車両単体の自動走行にとどまらず、運行管理システムや高精度3次元地図、バース予約管理を統合した実証の進展が示されました。
実証実験と見学会で公開された運行技術
2026年9月11日に東京流通センター(TRC)構内で実施された見学会には、協議会の会員関係者など約150名が参加しました。見学会で実演された技術構成および検証内容は以下の通りです。
| 検証項目 | 採用技術・機材 | 提供・開発企業 | 現場での実証内容 |
|---|---|---|---|
| 構内自動走行 | 自動運転EV「Z10」 | ゼロステック(シンガポール) | 敷地内の実稼働エリアにおける自律走行の検証 |
| 遠隔運行管理 | 運行管理システム「everfleet」 | 株式会社マクニカ | 会議室モニターへの自車位置・周辺映像のリアルタイム伝送 |
見学会では、ゼロステックの自動運転車両「Z10」にマクニカの遠隔運行管理システム「everfleet」を搭載し、TRC構内の実ルートを自律走行させました。運行管理者に見立てた室内のモニターへ走行中のカメラ映像やセンサー情報を遅延なく集約し、遠隔からの監視・管制が実稼働環境で成立することを公開しています。
国交省補助事業としての横持ち輸送無人化
協議会での議論と並行し、株式会社ひとまいる、株式会社東京流通センター、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社、株式会社マクニカの4社が共同提案した「自動運転車両を用いた物流施設内の横持輸送実証事業」は、2026年9月4日に国土交通省の令和8年度「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業費補助金」に採択されました。協力事業者として株式会社Hacobuが参画し、5社体制で運用検証を進めています。
この実証では、TRCの南東京センター(A棟)から平和島センター(B棟)の間において、ひとまいるが取り扱う飲料空容器の棟間搬送をレベル4対応の自動運転車両で代替します。Hacobuの「MOVO Berth」が把握するバースの空き情報を基に、ダイナミックマッププラットフォームの「インフラ協調型モビリティ基盤」が空きバースへの最適ルートを計算し、マクニカの「everfleet」を通じて自動運転車両へ指示を出します。入居テナントの日常業務が稼働している実環境下で、有人トラックや作業員と交錯しながら安全に自律走行を完遂させる点が本事業の中核です。
参考記事: TRCの自動運転実証実験!15万㎡構内でレベル4横持を検証
参考記事: [Hacobuら15万㎡のTRCで横持ち自動化、レベル4実証が始動](https://logishift.net/2026/09/08/post-8862/)
協議会発足から第7次参画に至る活動の経緯
平和島自動運転協議会は、2025年5月の立ち上げ以降、段階的に参画組織と検証領域を広げてきました。これまでの推移は以下の通りです。
| 年月 | 主な出来事・取り組み内容 |
|---|---|
| 2025年5月 | 東京流通センター構内を実証フィールドとして「平和島自動運転協議会」が発足 |
| 2025年12月 | 第4次参画企業・団体を決定、参画事業者の多様化が進む |
| 2026年3月 | 第2回総会を開催。自治体として大田区が協議会へ参画 |
| 2026年6月 | 第6次参画として14団体が加わり、会員数が計50団体(うち16社がTRC入居企業)に到達 |
| 2026年7月 | 従来の3つの作業部会に加え、「公共交通ワーキンググループ(WG)」を新設 |
| 2026年9月4日 | 5社連携による構内横持ち輸送実証が国土交通省の補助事業に採択 |
| 2026年9月11日 | 第3回総会およびレベル4自動運転車両・遠隔監視システムの見学会を開催 |
| 2026年9月25日 | 第7次参画11社・団体を発表、会員数が計60社・団体(うち17社がTRC入居企業)に拡大 |
協議会内では「TRC建物内の自動運転走行WG」「循環型ラストマイル配送WG」「フィジカルAI荷役WG」に加え、2026年7月に「公共交通WG」が新設されました。敷地内の物流動線だけでなく、就業者や周辺住民の移動インフラとしての自律走行モビリティ活用も視野に入れた検討が進められています。
第7次参画11社・団体の内訳と専門領域
今回新たに加わった11社・団体によって、ロボティクス、保険、AI、通信、コンサルティングなど、現場オペレーションを多角的に支える専門領域が補強されました。
| 新規参画組織名 | 主な事業領域・協議会における関連技術 |
|---|---|
| 住友倉庫 | 総合物流・倉庫保管・港湾運送オペレーション |
| ヤマトモビリティ&Mfg. | 車両整備・モビリティ製造・集配車両ソリューション |
| プラスオートメーション | ロボティクス・RaaS(Robotics as a Service)プラットフォーム |
| あいおいニッセイ同和損害保険 | テレマティクス損害保険・自動運転向けリスク補償設計 |
| ジオサーフ | 衛星測位・GNSS計測システム・高精度測位デバイス |
| デロイトトーマツ | 経営戦略コンサルティング・物流サプライチェーン改革 |
| TELUS International AI Japan | AIモデル開発・データアノテーション・画像認識学習 |
| 東京電制工業 | 電子制御装置・車載制御システム設計 |
| NOVION | モビリティ関連技術・運行オペレーション支援 |
| PwCコンサルティング | デジタル変革支援・自動運転モビリティ戦略策定 |
| レシップ | 運行管理機器・バス・モビリティ向け電装機器 |
参画団体のうち17社はTRCの物流施設またはオフィスビルに入居している企業です。テストコース等の隔離環境ではなく、実際の入居企業が日常の入出庫作業を行っている15万㎡の拠点空間において、制度や運用設計を現場起点で擦り合わせる体制が整っています。
参考記事: 三菱地所が2026年7月からTRCで自動運転トラック誘導実証、施設DXが加速
物流サプライチェーン各層に生じる具体的な影響
構内横持ち輸送と荷役の自動化検証が進むことは、施設保有者、倉庫オペレーター、システム開発会社の各プレイヤーに直接的な業務変革をもたらします。
物流施設デベロッパー:インフラ協調基盤による不動産価値の再定義
物流施設デベロッパーにとって、本取り組みは不動産賃貸事業の競争軸を物理的スペックからデジタル受入設備へとシフトさせる契機となります。従来の大規模マルチテナント型施設は、床荷重、天井高、ランプウェイの勾配、インターチェンジへの近さといったハードウェアの条件が賃料の決定要因でした。
しかし、構内での自動運転搬送が日常化するにつれ、敷地内の高精度3次元地図データの完備状況や、建屋内部でGNSS電波が遮蔽される環境を補う外部センサーの配置、バース予約管理と連動する管制APIの提供有無が入居判断の直接的な基準となります。共用部における走行空間の提供とデジタルインフラの共通化をデベロッパー側が担うことで、個別テナントが多額のシステム投資を行うことなく自律搬送の恩恵を受けられる環境が整い、競合施設に対する差別化要素となります。
参考記事: 三菱地所ら3社が自動運転物流施設連携を2026年7月13日開始、幹線とラストマイル接続が加速
倉庫事業者・3PL:棟間横持ちの定着による複数棟の一体運用
3PLや倉庫事業者にとって、構内の棟間横持ち作業は、短距離の移動でありながら有人ドライバーやフォークリフトオペレーターの工数を拘束し続ける要因でした。TRCのように複数棟から構成される大規模拠点では、保管エリアと流通加工エリア、出荷バースが別の棟に分かれているケースが多く、定常的な横持ち輸送の要員確保が日常の運用コストを圧迫しています。
自動運転車両によるRaaSが定着すれば、棟間のシャトル輸送が無人化され、作業員はピッキングや流通加工、検品といった庫内の付加価値作業へ集中できるようになります。また、従来は有人搬送の手間を理由に敬遠されていた「別棟への分散保管」が容易になり、敷地内の空きスペースをパズル状に組み合わせて運用する柔軟なオペレーション設計が可能となります。
SaaS・テクノロジーベンダー:個別最適から統合プラットフォームへの接続
遠隔監視システム、動的バース管理、高精度地図、車両制御などを手掛けるテクノロジーベンダーにとっては、スタンドアローン型のプロダクト販売から、他社システムと常時接続するオープン型プラットフォームへの適応が求められます。
自動運転車両を施設内で稼働させるには、Hacobuの「MOVO Berth」のような上位の予約管理SaaSからダイナミックマッププラットフォームの空間基盤へデータが渡り、それがマクニカの「everfleet」を経由して車両の走行制御へ変換されるといった、リアルタイムのAPI連携が前提となります。自社単独での機能完結に固執するベンダーは排除され、標準プロトコルに準拠して異種システムや多様な車載ハードウェアと遅延なく通信できるベンダーが、物流DX基盤としてのシェアを拡大することになります。
参考記事: サントリーロジと豊田自動織機、28年実稼働へ爪切替AGFで荷役自動化
LogiShiftの視点:幹線とラストマイルを寸断させない「中間結節点」の標準化
平和島自動運転協議会による構内自動化の取り組みは、物流業界が長年抱えてきた「自動化技術の分断」を解消する重要な転換点です。これまで物流の自動化は、倉庫内部におけるAGV(無人搬送車)やオートストアなどの「庫内自動化」と、高速道路を中心とする「幹線自動運転トラック」という、物理的に隔絶された2つの領域で個別に開発が進められてきました。
2027年度頃に高速道路でのレベル4自動運転トラックの実装が計画される中、最大のボトルネックとして浮上しているのが、高速道路を降りたトラックが物流施設へ進入し、バースへ接車して荷下ろしを行う「インターチェンジからバースまで」の区間です。高速道路区間が無人化されたとしても、施設敷地内へ入った途端に有人ドライバーへ交代しなければならず、さらにバース接車後の荷役作業を手動フォークリフトに頼る構造が残れば、幹線自動化による人件費削減や運行効率化の効果は相殺されてしまいます。
平和島で進められている実証の核心は、この断絶地帯である「物流施設構内」を協調領域としてデジタル化し、外部の幹線輸送と施設内部の保管システムを滑らかに結ぶハブ機能を構築している点にあります。高精度3次元地図、在空把握センサー、遠隔運行管理基盤を個社ごとに抱え込まず、住友倉庫やプラスオートメーションといった荷主・3PL・ロボティクス企業が共通プラットフォームとして実証に参加している構造は、将来の業界標準プロトコルを形成する土台となります。自律物流の成否は、車両の知能化だけでなく、車両を受け入れる拠点側のインターフェースがいかに標準化されるかにかかっています。
明日から意識すべきこと
構内横持ちや荷役の自動化が実証段階から社会実装へ移行しつつある中、物流現場の管理者が明日から着手すべき具体的なアクションは以下の通りです。
- 自社拠点内で発生している「横持ち工程」の工数とコストの完全可視化
棟間やフロア間、保管場所とバース間など、敷地内をトラックやフォークリフトで移動させているだけの作業時間・待機時間を定量的に抽出し、自律走行車両へ代替した場合の投資対効果の測定基準を策定すること。
- バース管理・入退場プロセスのデジタル化と外部データ連携の準備
自動運転車両やAGFを配車・誘導するための前提条件として、自社施設のバース予約や入出庫管理がアナログ管理(紙や電話)になっていないかを点検し、API連携が可能なバース管理システムの導入を優先して進めること。
- 2027年度以降を見据えた施設要件の確認
将来的な自動運転トラックの乗り入れや構内搬送の無人化に対応できるよう、自社が賃借または新設を検討している施設について、床面の平滑性や3次元地図データへの対応力、構内通信環境(ローカル5GやWi-Fi 6等)の整備状況をチェック項目に加えること。
構内自動化の波は、個別の設備導入にとどまらず、拠点間の運行設計そのものを根本から変える力を持っています。現場の入退場・荷役データを早期にデジタル化し、協調基盤への接続準備を整えることが、次世代の物流ネットワークから取り残されないための必須要件となります。
出典: logi-today.com
出典: 株式会社東京流通センター
出典: 株式会社マクニカ



