ラピュタロボティクスは2026年10月21日、NIPPON EXPRESSホールディングス傘下の日本通運が運営する国内物流拠点2か所において、自在型自動倉庫「ラピュタASRS」が本格稼働したと発表した。本設備は帳票や現品票を含む既存の現場運用フローを変更せず、既設の倉庫管理システム(WMS)と直接連携することで初期の大規模改修を回避している。
日本通運における「ラピュタASRS」導入の概要と設備仕様
日本通運が運営する2つの物流拠点では、保管効率の向上とともに、荷主企業の物量増減や保管仕様の変更に追従できる柔軟な物流体制の構築が求められていた。今回稼働した「ラピュタASRS」は、アンカーボルトによる床固定を必要としない構造を持ち、設置後の拡張・解体・再設置に対応するモジュール型の自動倉庫システムである。
今回の導入概要および設備の特徴は以下の通りである。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発表主体 | ラピュタロボティクス株式会社 |
| 導入事業者 | 日本通運株式会社(NIPPON EXPRESSホールディングス傘下) |
| 稼働発表日 | 2026年10月21日 |
| 対象拠点数 | 日本通運が運営する国内物流拠点 2か所 |
| 導入設備 | 自在型自動倉庫「ラピュタASRS」 |
| システム連携 | 既存WMS(倉庫管理システム)との直接データ連携 |
| 構造的特徴 | 拡張・解体・再設置が可能なモジュール構造 |
従来の自動倉庫はスタッカークレーンや固定ラックを床面にアンカー固定する方式が主流であり、一度設置した設備のレイアウト変更や移設には多大な工事期間とコストを要していた。これに対し、ラピュタASRSはブロック状のラックとロボットを組み合わせる構造を採用しており、最小限の保管ユニットからスモールスタートし、取扱量の拡大に合わせて段階的に保管棚やロボットを追加できる。
さらに、導入にあたって現場の現品票や指示帳票などの既存帳票類を変更せず運用できる仕組みを整え、既存WMSとの連携インターフェースを標準化することで、ソフトウェア改修費用と現場教育にかかる期間を抑制している。
日本通運とラピュタロボティクスの協業経緯
日本通運とラピュタロボティクスは、ピッキングアシストロボット(AMR)の試験導入から協業を重ねており、自動化の適用範囲を搬送支援から立体自動保管へと拡張してきた。
| 時期 | 経緯・実績 |
|---|---|
| 2018年10月〜2019年7月 | 日本通運の物流拠点でラピュタ製協働型ピッキングロボットの実証実験を実施 |
| 2020年5月 | 日本通運の拠点へ協働型ピッキングロボットのサブスクリプション商用導入を開始 |
| 2023年8月 | ラピュタロボティクスが自在型自動倉庫「ラピュタASRS」の提供を開始 |
| 2025年10月 | 日本通運「NX小牧流通センター」にラピュタPA-AMRを本格導入し出荷生産性が約2.5倍に向上 |
| 2026年9月 | ラピュタASRSの累計受注・採用が30拠点以上、実稼働が10拠点以上に到達 |
| 2026年10月 | 日本通運の国内2拠点にて「ラピュタASRS」が本格稼働 |
ラピュタロボティクスは協働型ピッキングロボットの市場で導入実績を積み重ねており、2026年8月時点で同社製ロボットの稼働数は約2,000台、ラピュタASRSの発注実績は30件を超えている。今回の日本通運2拠点での稼働は、複数拠点への横展開モデルとしての性格を持つ。
参考記事: Rapyuta ASRSとは?柔軟なモジュール設計でピッキングを自動化するクラウド型自動倉庫
参考記事: 自動倉庫の仕組みと種類を解説|導入メリットや失敗しない選定基準まで
物流サプライチェーン各層への具体的な影響
日本通運のような総合物流大手が、固定型ではなく可変型の自動倉庫を複数拠点で本稼働させたことは、倉庫事業者、システムベンダー、庫内現場のそれぞれに運用面での影響を与える。
倉庫事業者・3PL:契約期間に応じた段階投資が可能に
3PL事業者にとって、荷主との受託契約期間(通常3〜5年程度)と、従来の固定型自動倉庫の減価償却期間(10年前後)の不一致は、設備投資における最大の障壁となっていた。荷主の契約満了や物量減少が発生した場合、専用設計された自動倉庫は転用が難しく、空きスペースが固定費リスクとなるためである。
拡張や再設置が可能なASRSの導入により、受託初期は荷主の最低保証物量に合わせた規模で立ち上げ、物量増やSKU増加に応じてラックや搬送機を追加するスケーラブルな投資計画が成立する。契約終了時にも他拠点へ移設して再利用できるため、賃貸倉庫(借床)であっても原状回復コストを抑えた設備投資が可能になる。
参考記事: ロジスティード東日本、ラピュタASRSを2027年5月導入|メザニン活用で集約
SaaS・テクノロジーベンダー:アドオン型インターフェースが標準要件へ
従来の物流自動化では、マテハン機器の導入に伴いWCS(倉庫制御システム)やWES(倉庫実行システム)の新規構築、および既存WMSの大規模な改修開発が必要となり、数千万円規模のIT追加投資が発生していた。
今回の事例のように、既存のWMSのデータ構造や現品票の出力を変えずに外部接続できるアドオン型自動倉庫の需要が高まることで、システムベンダー側にも「既存システムと摩擦なく連携できる標準API」の提供が強く求められる。ハードウェア単体の処理能力だけでなく、上位システムとの疎結合性や改修レスでの立ち上げ速度が、機器選定の評価基準として定着しつつある。
参考記事: NTTロジスコ1700㎡自動倉庫導入!WMS開発ゼロで実現する投資削減2つの鍵
倉庫内作業員:作業手順の維持による立ち上げ摩擦の最小化
自動化機器の導入初期においては、ハンディターミナルの操作手順やピッキング動線の大幅な刷新により、現場オペレーターの習熟遅れや出荷エラーが頻発するリスクがある。
本件では、作業員が目にする現品票やピッキングリストのフォーマットを変更せずに運用できるため、オペレーション移行に伴う現場の学習コストが低く抑えられる。作業員は商品の探索・歩行業務から定位置での仕分け・検品業務へとシフトしつつ、業務上の判断基準をそのまま引き継げるため、稼働初期の出荷遅延リスクを回避できる。
参考記事: 加藤産業がラピュタASRS導入、70%省人化と保管効率化を両立する戦略
LogiShiftの視点:物流インフラの「固定資産」から「可変モジュール」への転換
日本通運によるラピュタASRSの2拠点同時稼働は、物流センターの設備設計思想が「10年単位で償却する固定的な大型インフラ」から「事業変動に応じて組み換えるモジュール型インフラ」へ移行していることを示している。
2025年4月に施行された改正物流効率化法により、荷主・物流事業者の双方に荷待ち・荷役時間の削減や積載率向上の努力義務が課され、特定事業者には中長期計画の策定が義務付けられている。こうした法規制に対応するためには庫内の入出庫能力を高める自動化が不可欠だが、EC比率の変動や荷主企業のサプライチェーン再編が頻発する環境下では、将来の物量ピークを過大に見積もった固定設備投資は過剰設備化を招くリスクが高い。
ラピュタASRSのように、アンカーレスで床面改修を抑え、既存WMSへのアドオンで段階拡張できる設備構成は、需要予測の不確実性に対する有効なヘッジ手段となる。事業規模の急激な拡大や拠点統廃合が発生した場合でも、設備を物理的に分割・移設して別拠点に再配置できる柔軟性は、物流拠点の資産流動性を高める要因となる。
まとめ:明日から意識すべきこと
可変型自動倉庫の普及が進む物流環境において、拠点の自動化を計画する実務担当者は以下の点を確認する必要がある。
- 現行WMSの外部連携性とデータ入出力フォーマットの棚卸し
既設WMSの大規模改修を避けつつロボティクスを導入するため、現在のシステムが出力する出荷指示データや入出庫実績データの連携仕様(API、CSV連携機能など)を事前に確認する。
- 賃貸借契約期間と設備の投資回収期間(ROI)の整合性検証
3PL拠点や賃貸倉庫において設備投資を行う際、固定型設備の一括償却を前提とせず、契約期間内で回収可能な最小構成のスモールスタート案と段階的拡張計画を策定する。
- 現場の現品票・帳票フローと自動化機器の適合性確認
自動化設備を導入する工程において、現行の帳票運用をそのまま流用できるか、あるいは業務プロセスの再設計が必要になるかを洗い出し、現場の移行負荷を定量的に見積もる。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: ラピュタロボティクス プレスリリース
出典: LOGI-BIZ online



