イオンネクストは2026年10月22日、東京都八王子市でネット専用スーパー「Green Beans」の物流拠点「八王子CFC(顧客フルフィルメントセンター)」の本格稼働を開始した。利用者の約75%を占める東京・神奈川エリアへの配送距離短縮を狙い、千葉県の誉田CFCに続く首都圏2拠点目の大型自動倉庫として整備された。
八王子CFCの施設仕様とオカド連携による冷凍自動化の進展
八王子CFCは、イオンが英国Ocado Group(オカドグループ)との独占パートナーシップ契約に基づいて開設した、国内2拠点目の顧客フルフィルメントセンターである。2023年7月に千葉市緑区で稼働した1拠点目の「誉田CFC」に続く大型投資であり、東京都八王子市滝山町の敷地に建設された複合商業施設「イオン八王子滝山」のCFC棟(North)に位置する。
| 項目 | 詳細情報 |
|---|---|
| 施設名称 | イオンネクスト八王子CFC(顧客フルフィルメントセンター) |
| 所在地 | 東京都八王子市滝山町1-885-1 |
| 本稼働日 | 2026年10月22日 |
| 敷地面積・延床面積 | 敷地面積:約5万4,000㎡ / 延床面積:約4万㎡(建築面積:約2万4,000㎡) |
| 構造規模 | 鉄骨造・地上4階建て |
| 主要自動化設備 | Ocado製AutoFreezer、ピッキングマシン、LexxPluss製Lexx500・LexxTug |
八王子CFCにおける設備面での進化は、マイナス20度以下の極低温環境下における自動化システム「AutoFreezer」の導入である。オカド社が開発した同システムは、グリッド(格子状レール)上をロボットが自走してコンテナを吊り上げ、保管と出庫を自動制御する。これにより、誉田CFCの運用実績と比較して冷凍入出庫処理能力は約2.7倍に向上し、格子状の高密度保管によって保管面積を約50%削減した。同時に在庫保管量は約1.5倍に拡大している。
冷凍エリアの保管・ピッキング工程が自動化された結果、作業員が極低温下で作業する時間は従来の5%以下まで削減された。また、冷蔵エリアの搬送業務にはLexxPluss製の自動搬送ロボット「Lexx500」および台車脱着インターフェース「LexxTug」が採用され、カゴ車や台車の工程間搬送も無人化されている。これらの自動化設備の拡充により、施設全体の生産性は誉田CFC比で約115%向上する見通しである。
首都圏2拠点体制の確立に至る経緯
「Green Beans」の利用者は東京都が全体の約60%、神奈川県が約15%で、合計で約75%を占める。同社は需要拡大に向けて2拠点体制を構築し、配送距離の短縮と物流効率化を図る。
| 年月 | 出来事 | オペレーションへの影響 |
|---|---|---|
| 2019年11月 | イオンと英オカドが提携契約締結 | 国内における次世代ネットスーパーの物流基盤設計に着手 |
| 2023年7月 | 千葉県に「誉田CFC」を開設・稼働 | 初のCFC稼働により「Green Beans」サービスを本格開始 |
| 2025年6月 | 誉田CFCに新ロボット設備を導入 | ピック&パック工程の自動化を強化 |
| 2025年11月 | 八王子CFCへAMR「Lexx500」導入発表 | 冷蔵帯における台車自動搬送の導入を決定 |
| 2026年6月 | 「イオン八王子滝山」商業棟が先行開業 | 体験型ラボ「Green Beans Park」をオープン |
| 2026年10月 | 「八王子CFC」が本格稼働 | AutoFreezerを稼働し首都圏2拠点体制を確立 |
千葉の誉田CFC単独運用時、西東京や神奈川方面への配送は長距離の幹線輸送とスポーク(中継デポ)経由のピストン輸送に頼っていた。利用者の約60%が東京都、約15%が神奈川県に集中している消費実態に対し、西東京の八王子に2拠点目を配備したことで、需要密集地への幹線輸送距離とラストワンマイルの走行距離を同時に圧縮する体制が整った。
参考記事: 自動倉庫の仕組みと種類を解説|導入メリットや失敗しない選定基準まで
サプライチェーン構成プレイヤーに及ぼす影響
八王子CFCの稼働と高度自動化の導入は、庫内作業の労働環境、ネットスーパーを運営するEC事業者、ラストワンマイルを担う運送事業者の各領域に直接的な影響を与える。
倉庫内作業員:極低温環境の拘束時間が5%以下へ激減
冷凍倉庫におけるピッキング作業は、マイナス20度前後の環境下で手作業を行うため、作業員の身体的疲労が激しく、一定時間ごとの暖房室待機が必要になるなど作業効率と定着率に課題を抱えていた。八王子CFCでは「AutoFreezer」がコンテナの格納・取り出し・仕分けを無人で行うため、作業員が冷凍庫内に入る時間は全体の5%以下に制限される。
現場作業員の役割は、過酷な冷気の中での荷役から、定温エリアにおけるロボットの運行監視、エラー解除、システムメンテナンスへと移行する。凍傷や転倒といった労働災害リスクが抑制され、作業負荷が平準化されることで、庫内スタッフの採用要件と定着率の安定につながる。
EC・小売事業者:高密度保管と115%の生産性向上がもたらす採算ラインの改善
ネットスーパー事業は、小口多頻度なピッキングコストと低温管理コストが利益を圧迫しやすい構造にある。八王子CFCでは、自動化設備の導入により誉田CFC比で約115%の生産性向上を見込んでいる。
生産性の向上が見込みどおりに進めば、1オーダーあたりの出荷処理コスト(フルフィルメント単価)が下がる。大量のSKUを欠品なく短時間で仕分けるキャパシティが確保されれば、受注締め切り時間の延長や即日配送枠の拡大が可能となり、ネットスーパー事業の採算分岐点の引き下げに寄与する。
運送事業者:走行距離短縮による車両回転率向上と幹線輸送の効率化
配送需要の約75%を占める東京都・神奈川県に対して、西東京の八王子に拠点が新設されたことは、運送実務における走行時間と拘束時間の圧縮を意味する。従来の誉田CFCから都内西部や神奈川方面へ向かっていた長距離ルートが八王子発へ切り替わることで、首都高速道路の渋滞巻き込まれリスクが低減する。
配送拠点(スポーク)への幹線輸送距離が短縮されることで、1台のトラックが1日に運行できる便数(車両回転率)が増加する。また、配送ドライバーの移動時間が減ることで、1運行あたりの配達件数を増やせる配送密度が向上し、配送委託先を含めた輸配送ネットワークの安定稼働が担保される。
参考記事: イオンネクストデリバリー、MOVO Vista導入で発着転記を月60時間削減
LogiShiftの視点:需要地近接の「分散型CFC」と極低温自動化の投資回収モデル
八王子CFCの本稼働が示す物流構造の転換点は、単なる拠点の増設ではなく、大型オートメーション拠点を「需要地の東西で挟み込む分散配置」へ踏み切った点と、「最も自動化が難しかった極低温帯のフルオートメーション化」を実装した点にある。
ネットスーパーの配送網設計では、巨大な1拠点で広域をカバーする集中型と、店舗や小型デポから出荷する分散型の間で議論が続いてきた。集中型は自動化によるスケールメリットが得られる反面、末端のラストワンマイル配送距離が伸びて運送コストが肥大化する。八王子CFCは延床面積約4万㎡という巨大スケールを維持しながら、顧客の75%が存在する東京・神奈川の直近に位置させたことで、「自動化による出荷コスト低減」と「配送距離短縮によるラストワンマイルコスト抑制」を両立させる配置を選択した。
さらに、物流業界において自動化投資の障壁となっていたのが冷凍帯のハードウェア制約である。低温下でのバッテリー劣化や潤滑油の凝固、結露によるセンサー誤作動から、これまで冷凍ピッキングは人手に依存せざるを得なかった。八王子CFCがOcado製「AutoFreezer」を導入して人手作業を5%以下に抑え、処理能力を約2.7倍に引き上げた実績は、コールドチェーンにおける設備投資の費用対効果(ROI)の基準を引き上げる事実である。
改正物流法に基づき荷主企業には荷待ち時間の削減や積載効率向上が義務付けられ、ドライバーの時間外労働規制によって長距離配送網の維持コストは上昇している。イオンネクストの取り組みは、拠点間輸送を「MOVO Vista」などの動態管理システムで可視化しつつ、幹線輸送自体の物理距離を縮めるために大型CFCを消費地近郊へ多点配置していく、都市型低温コールドチェーンの成立要件を示している。
参考記事: コールドチェーンとは?仕組み・メリットと現場のDX実装ポイントを徹底解説
まとめ:明日から意識すべき現場改善の要点
八王子CFCの実装内容を自社の物流戦略に落とし込むため、以下の実務ポイントを意識して見直す必要がある。
- 温度帯別ピッキング工程における人手作業時間の棚卸し
冷凍・冷蔵エリアで作業員が庫内に滞在している延べ時間を計測し、暖房室での待機時間や作業効率の低下が全体の労務コストに与えている影響を可視化すること。極低温下の手荷役から自動化搬送機器や外部システムの導入余地を検証する。
- 配送先エリアの密度と幹線輸送距離の再計算
自社ECや店舗配送における受注データの地域別構成比を再集計し、特定エリアへの配送集中に対して拠点位置が適切かを評価すること。中継デポへの幹線便の走行距離とラストワンマイルの配送効率を照合し、拠点分散による運行時間短縮の費用対効果を算出する。
- 庫内自動化設備と配送管理システムのデータ連携検証
自動倉庫やロボットの出庫能力引き上げが、トラックの配車・積み込みスケジュールと同期しているか確認すること。庫内の処理速度向上をトラックの待機時間削減や積載率向上に直結させるため、動態管理ツールとのステータス連携体制を整備する。
参考記事: ラストワンマイルとは?物流現場の課題と効率化に向けた再構築ステップ
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 流通ニュース
出典: PR TIMES
出典: LOGISTICS TODAY



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