日本製紙は2026年10月28日、グループの物流業務を担う子会社3社を統合し、新会社「日本製紙グループロジ」を発足させると発表した。日本製紙物流を存続会社として南光運輸と旭新運輸を吸収合併し、2027年7月1日付で資本金7000万円の全国一本化体制へ移行する。
地域分散から全国一元管理へ移行する物流再編の骨子
今回の再編では、これまで地域ごとに分担されていた物流機能を1社へ集約する。従来は旭新運輸が北海道、南光運輸が東北、日本製紙物流が関東以西の輸送や荷役をそれぞれ担当していた。
3社が統合して誕生する日本製紙グループロジは、全国規模の配送拠点と配車網を一括管理する体制をとる。統合の基本情報は以下の通りである。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年10月28日 |
| 発足予定日 | 2027年7月1日(定時株主総会の特別決議後) |
| 存続会社 | 日本製紙物流株式会社(埼玉県草加市) |
| 消滅会社 | 南光運輸株式会社(宮城県石巻市)、旭新運輸株式会社(北海道苫小牧市) |
| 新会社名・資本金 | 日本製紙グループロジ株式会社 / 資本金7000万円 |
| 株主構成 | 日本製紙株式会社 100% |
日本製紙グループは2017年6月に中間持株会社として日本製紙ロジスティクスを設立し、子会社間の連携強化を試みてきた経緯がある。今回は持株会社による緩やかな連携から踏み込み、法人の完全な吸収合併によって指揮系統を一本化する。
紙需要の構造的減少と生産拠点集約への追従
物流体制を再編する直接の要因は、ペーパーレス化やデジタル媒体の普及に伴う国内紙需要の継続的な落ち込みにある。日本製紙連合会が公表したデータによると、国内の紙・板紙出荷量は減少傾向が続いており、グラフィック用紙を中心に市場縮小が進んでいる。
日本製紙は2026年5月28日に公表した「中期経営計画2030」において、バランスシートの最適化、構造改革の断行、収益性の向上を基本方針に据えた。新聞用紙や出版向け印刷用紙の需要減速に合わせて生産拠点の統廃合を進めており、これに伴い工場から消費地へ向けた物流ルートの統廃合が避けられない状況となっていた。
生産拠点が集約されると、特定工場からの輸送距離が延伸し、地域ごとに閉じた従来の輸配送網ではトラックの空車回送や積載効率の低下が発生しやすくなる。北海道、東北、関東以西に分かれていた配車機能と倉庫管理を統合することで、長距離幹線輸送の効率化や全国規模での配車調整を迅速に行う体制を整える。
モーダルシフトとバース運用の実績を全国へ横展開
日本製紙はこれまでにも輸送効率化の個別施策を実施してきた。海上輸送では、大王製紙などと連携し、愛媛県から首都圏へ運航するRORO船の復路(首都圏から関西圏)スペースを日本製紙が活用するラウンド輸送を導入した。陸上輸送ではトラック予約受付システム(MOVO Berth)を各工場へ展開し、岩沼工場での原料受け入れ改善を皮切りに、全拠点で2時間を超える荷待ち・荷役時間を大幅に削減した実績を持つ。
3社の法人格が一本化されることで、こうした海上モーダルシフトの枠組みや拠点荷役の効率化システムを、北海道から九州までの全拠点へ一元的に導入・管理できるようになる。
参考記事: 日本紙パルプ商事ら3社が5月25日共同輸送を強化し紙物流の効率化が加速
サプライチェーン関係者への具体的な影響
自社物流網を全国規模で統合し、外部顧客の開拓を打ち出した日本製紙の動きは、荷主メーカー、3PL事業者、運送事業者の各層に実務上の変化を与える。
製造業者・メーカー:縮小市場におけるアセット再編の先例
素材・製造業の多くは、国内需要の成熟や原材料価格の変動に直面している。工場や配送デポを個別に維持したままでは、固定費負担が営業利益を圧迫する。
日本製紙による子会社3社の吸収合併は、地域販社や地域物流子会社を抱える製造業にとって、構造改革の設計モデルとなる。製品出荷だけでなく原燃料調達の物流網まで含めて全国1社へ集約することで、拠点間の在庫再配置や運行管理の意思決定速度が上がる。製造ラインの統廃合に連動して物流拠点の統廃合を迅速に行える体制は、固定費削減と積載率改善を両立させる前提条件となる。
参考記事: パナソニックホールディングス、関東3拠点再編で自社倉庫活用率100%へ
倉庫事業者・3PL:重量物・大型輸送基盤を持つ外販競合の台頭
新会社の日本製紙グループロジは、自社製品や原材料の運送にとどまらず、外部顧客の貨物を取り込む外販・3PL事業の拡大を明言している。
紙製品を扱う物流インフラは、重量勝ちの貨物を安全に積載・荷役するための設備や、ロール紙・平判パレットを保管する大型倉庫、特殊クレーンなどを備えている。これらのアセットを自社貨物だけで満杯にできない場合、同業他社や建材・化学品・飲料といった重量物・大ロット貨物を扱う異業種荷主へ保管・輸送スペースを外販する動きが強まる。
既存の3PL事業者にとっては、全国規模のトラック網と自社倉庫群を保有するアセット型プレイヤーが、外販市場で競合相手として本格参入してくることになる。
参考記事: 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは?導入メリットと失敗しない選定ポイントを解説
運送事業者:配車の一元化による実車率向上と帰り荷マッチング
各地域に分散していた車両アセットと協力運送会社のネットワークが一元管理されることで、実運送の運行計画には実質的な合理化がもたらされる。
従来は北海道から本州、あるいは東北から関東へ製品を輸送した車両が、復路の荷物を十分に確保できず空車で戻る、もしくは地域子会社間での調整に手間取るケースがあった。全国1社体制になれば、北海道・東北・関東・西日本の全域で発生する出荷・調達データが1つの配車システム上に集約される。幹線輸送便に対する復路貨物の割り当てが容易になり、実車率の向上と運行あたりの採算改善が進む。
参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説
LogiShiftの視点:コストセンターから外販3PLプラットフォームへの転換
大手製造業が地域物流子会社を統合する動きの根底には、物流部門を「製品を運ぶためのコストセンター」から「自ら稼ぎ輸送能力を自活させるプロフィットセンター(3PL事業者)」へと転換させる構造的要請がある。
2026年4月に全面施行された改正物流効率化法により、年間取扱貨物重量が9万トンを超える特定荷主には、物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の作成、トラックの積載率向上措置が義務付けられた。紙パルプ業界のように重量物を大量に長距離輸送する産業は、積載率の低下やドライバー拘束時間の超過が法規制上の重大なリスクとなる。
自社製品の出荷量が国内市場の縮小に伴って減少していく局面において、自社専用のトラック便や倉庫設備を単独維持することは積載率の悪化を招き、改正法の努力義務・判断基準への適合を困難にする。日本製紙が資本金7000万円の新会社へ3社を束ね、外販機能を前面に打ち出す理由はここにある。他社貨物を取り込んで混載率を高め、自社物流アセットの稼働率を底上げしなければ、幹線輸送網そのものを維持できなくなるためである。
今後は、日本製紙グループロジが自社の製紙サプライチェーンを支えつつ、大王製紙とのRORO船共同輸送のように競合他社や異業種の荷物をどれだけ柔軟に自社ネットワークへ組み込めるかが、輸送原価の低減と収益化の成否を分ける。
参考記事: ロジスティクス・プロバイダーとは?1PL〜4PLの差異と最適な委託先を選ぶ評価軸
明日から意識すべきこと
自社物流網の見直しや輸送能力の確保に向けて、各実務担当者は以下の点を確認する必要がある。
- 自社物流子会社および主要委託先における地域分断の検証
工場別・支社別に物流子会社や運送会社との契約が分断されていないか棚卸しを実施する。配車機能や受発注データが地域ごとに孤立している場合、全国横断での帰り荷確保や共同輸送の機会損失が発生している可能性がある。
- 車両・倉庫アセットの外販余力と他社荷物の受入可能性の検討
生産拠点の統廃合や物量波動によって発生する遊休スペース・空車回送を把握する。自社貨物だけで満杯にできない幹線便については、近隣の同業・異業種メーカーとの混載や、アセット型3PLとしての外販ルート開拓を運行計画の選択肢に入れる。
- 法規制への適合に向けた積載率データの把握
改正物流効率化法への対応として、自社の年間輸送重量および運行ごとの実車率・積載率を定期測定する運用を確立する。空車運行が多いルートを特定し、モーダルシフトや中継拠点の活用による運行効率化を先行して進める。
出典: 日本経済新聞
出典: nipponpapergroup.com
出典: lnews.jp
出典: itmedia.co.jp
出典: hacobu.jp
出典: newprinet.co.jp



