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Home > 物流用語辞典 > 倉庫・在庫管理> シングルピッキング

シングルピッキングとは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:シングルピッキング(摘み取り方式)とは、1つの注文ごとに倉庫内を巡回し、該当する商品を直接集める手法です。仕分け工程がないため、注文内容が顧客ごとに異なる多品種少量発送に適しています。
  • 実務への関わり:仕分けが不要なため検品・梱包へスムーズに移行でき、誤出荷を防ぎやすいメリットがあります。一方で、作業者の歩行距離が長くなりやすいため、WMSやハンディターミナルを活用した導線最適化や、生産性を測るKPIの設定による現場改善が有効です。
  • トレンド/将来予測:物流業界における労働力不足や法規制強化を背景に、単なる手作業からデジタル技術を組み合わせたシングルピッキングの効率化が加速しています。今後はAIによる最適なピッキングルートの自動生成や、ロボットとの協働によるさらなる省力化が進むと予測されます。

1受注(1オーダー)ごとに倉庫内の保管エリアを巡回し、該当する商品を必要数だけ集めていく「シングルピッキング(以下、摘み取り方式)」。仕分け工程を挟まずに検品・梱包へ移行できるため、出荷先ごとに注文内容が異なる多品種少量発送の現場において標準的な手法として採用されてきました。しかし、取扱商品(SKU)の増加や出荷ボリュームの拡大に伴い、作業者の歩行距離が伸びて生産性が低下するという課題に直面する現場も少なくありません。

本稿では、自社の出荷データ(LPTやSKU数)から導き出す最適なピッキング方式の判定基準、デジタル技術(WMSやハンディターミナル)を組み合わせた具体的な効率化手順、生産性を測定するKPI設計までを専門的な視点から解説します。

目次
  • 1. シングルピッキング(摘み取り方式)とは?トータルピッキングとの根本的な違い
  • シングルピッキング(摘み取り方式)の基本定義
  • トータルピッキング(種まき方式)との決定的な違い
  • 第3の選択肢「マルチピッキング」との関係性
  • 2. シングルピッキングを採用するメリット・デメリットと実務上のトレードオフ
  • 誤出荷防止と緊急対応力を高める3つのメリット
  • 作業者の歩行距離増大と生産性低下を招く2つのデメリット
  • 3. 【自社適正判定】シングルとトータル、どちらのピッキング方式を選ぶべきか?
  • シングルピッキングが最適な現場特性(EC物流・多品種少量)
  • トータルピッキングへの切り替えを検討すべき分岐点
  • 4. WMSとデジタル技術を活用したシングルピッキングの効率化・DX手順
  • WMS(倉庫管理システム)連携による歩行動線の最短化
  • ハンディターミナルやデジタルデバイスを用いた誤出荷防止とスキルレス化
  • 5. 法規制強化と労働力不足に対応するピッキング作業改善チェックリスト
  • 生産性を可視化するKPI(UPH・LPH)の設定と計測方法
  • 明日から使える「シングルピッキング改善チェックリスト5項目」

1. シングルピッキング(摘み取り方式)とは?トータルピッキングとの根本的な違い

シングルピッキング(摘み取り方式)の基本定義

シングルピッキング(摘み取り方式)とは、1件の発送オーダー(注文)ごとに倉庫内の保管エリアを巡回し、該当する商品を必要数だけ集めていくピッキング手法です。畑から必要な野菜をその都度摘み取る様子に似ていることから、この別名がついています。

アパレル商材を扱うEC物流を例に挙げます。顧客から「スニーカー1足、Tシャツ1枚、ソックス3足」の注文が入った場合、ピッキング担当者はWMS(倉庫管理システム)から送信された指示に基づき、ハンディターミナルを携えて棚を回ります。指示されたスニーカー、Tシャツ、ソックスをそれぞれの棚からピッキングし、そのまま梱包スペースへと直接持ち帰ります。この一連の作業が、シングルピッキングの最も標準的なプロセスです。

1回の巡回で1つのオーダーを完結させるため、仕分けという中間工程を必要とせず、ピッキング完了後に即座に検品・梱包へと移行できる点が最大の特徴です。そのため、出荷先ごとに注文内容が異なる多品種少量発送の現場で広く採用されています。

トータルピッキング(種まき方式)との決定的な違い

シングルピッキング(摘み取り方式)と対照的なアプローチをとるのが、トータルピッキング(種まき方式)です。これは、複数のオーダー分の商品を一度にまとめて棚からピッキング(総量ピッキング)し、その後、仕分けエリアにおいて注文ごとに分配(種まき)する手法です。

両者には、処理プロセス、対象となる商材やオーダーの特性、必要となる作業スペース、および作業者の歩行距離において明確な違いがあります。具体的な対比は以下の通りです。

比較項目 シングルピッキング(摘み取り方式) トータルピッキング(種まき方式)
処理プロセス 1オーダーごとに商品を棚から直接ピッキングし、そのまま梱包・出荷へ回す。仕分け工程がない。 複数オーダー分の総量を一括でピッキングし、仕分けエリアに運んだ後にオーダーごとに分類する。
対象となるオーダー・商材の特性 多品種少量、注文ごとの組み合わせがバラバラなEC物流など。SKU(最小管理単位)数が多く、1注文あたりの購入数が少ない場合。 少品種多量、または特定の売れ筋商品に注文が集中する場合。店舗別の出荷や、同一商品を多数の配送先に送る場合。
必要な作業スペース 仕分け用の専用スペースが不要なため、保管エリアと梱包エリアのみで運用可能。小規模なスペースでも稼働しやすい。 一括回収した大量の商材をオーダー別に仕分けるための、広い仕分けエリア(ソーターや種まき棚など)が必要。
歩行距離 オーダー数に比例して、保管棚と梱包エリアを往復するピッキング担当者の歩行距離が長くなりやすい。 1回のピッキングで複数オーダー分をまとめて回収するため、保管棚エリアでの歩行距離は大幅に短縮される。

例えば、1日に500件の注文を処理する化粧品ECサイトにおいて、全注文の8割に「同一の美容液」が含まれている場合、トータルピッキング(種まき方式)を採用すれば、保管棚からまとめて400本の美容液を1回で引き出すことができるため、棚と梱包エリアを何度も往復する必要がありません。一方で、500件の注文のすべてが異なるアイテムの組み合わせである場合は、仕分け工程自体が煩雑になり、作業ミスやタイムロスが生じるため、シングルピッキング(摘み取り方式)で1件ずつ集める方が全体のリードタイムを短縮できます。

第3の選択肢「マルチピッキング」との関係性

シングルピッキング(摘み取り方式)は、仕分け工程がなくシンプルな運用が可能である反面、オーダーごとに棚を回るため「歩行距離が長くなり、作業効率が低下しやすい」という構造的な課題を抱えています。この課題をクリアし、ピッキング効率化と誤出荷防止を両立させるために登場した第3の選択肢が「マルチピッキング(複数オーダー同時処理)」です。

マルチピッキングは、1名の作業者がハンディターミナルやWMSを搭載したカートを押し、複数(一般的には3〜6件程度)のオーダーを同時にピッキングしていく手法です。カートの上に複数のバケット(箱)を載せ、それぞれのバケットを個別の注文に紐付けます。保管棚から商品を取り出す際、ハンディターミナルの画面指示に従って、指定されたバケットへその場で仕分けながら投入していきます。

このマルチピッキングは、シングルピッキング(摘み取り方式)のメリットである「後工程での仕分け不要(梱包スペースへ直行可能)」という特性を維持しつつ、トータルピッキング(種まき方式)のメリットである「歩行距離の短縮」を部分的に取り入れたハイブリッドな手法と言えます。

トラックドライバーの時間外労働規制強化(いわゆる物流2024年問題)に伴い、倉庫内での生産性向上は物流事業者にとって急務となっています。月間5,000件以上の出荷を抱えるような、多品種少量かつオーダー数の多い物流現場においては、単純なシングルピッキングからマルチピッキングへとシステム移行することで、作業者の移動時間を約30%削減しつつ、WMSと連動したバーコード検品により高い精度で誤出荷防止を実現する運用が主流になりつつあります。

2. シングルピッキングを採用するメリット・デメリットと実務上のトレードオフ

シングルピッキングの最大のメリットとデメリットは、表裏一体の関係にあります。出荷先ごとに完結するこの手法は、シンプルさゆえの強みを持つ一方で、保管エリアが拡大し、出荷ボリュームが増加するにつれて物理的な限界に突き当たります。自社の倉庫規模や出荷特性に合わせ、トータルピッキングとのトレードオフを適切にコントロールすることが、ピッキング効率化と生産性向上の鍵を握ります。

誤出荷防止と緊急対応力を高める3つのメリット

シングルピッキングが多くのEC物流や多品種少量発送の現場で選ばれ続ける背景には、作業工程の「シンプルさ」と「柔軟性」があります。実務上極めて重要な3つのメリットを解説します。

  • 1. 仕分け工程の不要化による「誤出荷防止」の実現
    シングルピッキングは、1つの出荷先(注文)ごとに必要な商品を保管棚から直接ピックするため、ピッキングが完了した時点で荷合わせが完了しています。トータルピッキングのように、ピッキング後に仕分け用の棚やコンテナに移し替える「種まき」の工程(2次仕分け)が発生しません。工程数が少ないことは、ヒューマンエラーが入り込む余地を根本から排除することに繋がります。ハンディターミナルを用いたバーコード検品と組み合わせることで、ピッキング時に商品の取り違えや数量間違いをその場で検知でき、出荷精度の極めて高い運用を維持できます。
  • 2. 急な注文キャンセルや変更に対する高い「緊急対応力」
    出荷間際における「送り先住所の変更」や「注文キャンセル」は、EC物流において避けて通れない現場課題です。シングルピッキングでは、処理対象のオーダーが個別の出荷先単位で独立しているため、該当するピッキングリストやハンディターミナルのデータをWMS(倉庫管理システム)上でキャンセル・変更するだけで、即座に現場の作業を止められます。一方、トータルピッキングでは、複数注文分をまとめてピッキングした後に仕分けるため、特定の注文だけを仕分け前の山から探し出すのが極めて困難になります。
  • 3. 特別なマテハン機器に頼らない「運用の柔軟性」
    ソーターやデジタルアソートシステム(DAS)といった大規模な仕分け用マテハン設備を導入しなくても、ハンディターミナルと台車、ピッキング棚があれば即座に運用を開始できます。荷主の入れ替わりが激しい3PLや、取扱商品(SKU)が頻繁に変動するアパレル・雑貨などの現場でも、レイアウト変更に柔軟に対応できるため、初期の投資リスクを最小限に抑えられます。

作業者の歩行距離増大と生産性低下を招く2つのデメリット

個別対応に特化しているというシングルピッキングのメリットは、そのまま大量出荷時における生産性の足かせとなります。現場の物理的制約となる2つのデメリットを解説します。

  • 1. 同一動線の重複による「歩行距離」の増大と生産性低下
    最大の問題は、作業者が倉庫内を歩き回る物理的な距離が長くなる点です。例えば、100件の注文に対して、すべて同じ商品「A」が含まれていたとします。シングルピッキングでは、1回のピッキングで1件分の注文しか処理しないため、商品「A」が保管されている棚へ最大100往復する必要があります。
    保管エリアが数百坪以上に広がる倉庫では、作業者が1日の労働時間の大部分を「移動(歩行)」に費やすことになり、実質的な稼働率が低下します。この歩行ロスの増大は、深刻な労働力不足の中で、限られた人員での生産性向上を阻む要因となります。
  • 2. 多品種少量出荷における非効率性とスペースの制約
    取り扱うSKU数が多く、かつ1回あたりの出荷数量が極めて少ない「多品種少量」のEC物流においては、シングルピッキングの非効率性がさらに際立ちます。注文ごとに異なる棚へ長距離アクセスする必要があるため、移動時間が指数関数的に増加します。これを解決するために、複数の注文を1回の歩行で同時にピッキングする「マルチピッキング」を検討せざるを得なくなりますが、これには台車上に複数の仕分け間口(ボックス)を設ける必要があり、新たな仕分けミス(間口への入れ間違い)のリスクが発生し、シングルピッキング本来の「誤出荷防止」という強みが薄れることになります。

3. 【自社適正判定】シングルとトータル、どちらのピッキング方式を選ぶべきか?

シングルピッキング(摘み取り方式)とトータルピッキング(種まき方式)のどちらを採用すべきかは、現場の勘や経験ではなく、自社の出荷データから算出できる定量的な指標に基づいて判断する必要があります。持続可能な生産性を維持するためには、出荷データの特性に合致した方式を選定しなければなりません。

ピッキング効率化と誤出荷防止を両立させるための、具体的な適正判定基準は以下の通りです。

評価指標 シングルピッキング(摘み取り方式)が適する基準 トータルピッキング(種まき方式)が適する基準
1オーダーあたりの平均行数(LPT) 1.0〜2.0行(低LPT) 3.0行以上(高LPT)
出荷SKU数 1,000SKU以上(多品種) 100SKU以下(少品種)
1日の出荷件数 100件〜3,000件(個別配送中心) 3,000件以上(特定の納品先への大口配送)
得意とする出荷先特性 個人宅(EC物流)、多品種少量発送 店舗配送、ルート配送、定期便発送

シングルピッキングが最適な現場特性(EC物流・多品種少量)

EC物流における個人向け発送の多くは、1オーダーあたり1〜2点、LPTに換算すると1.2〜1.5行程度という「多品種少量・低LPT」の特性を持ちます。このような現場では、シングルピッキングが標準的な選択肢として機能します。

低LPTの現場にトータルピッキングを導入した場合、一度に総量をまとめてピッキングした後に、オーダーごとに仕分ける二次仕分け(種まき作業)が発生します。1オーダーあたりの購入点数が少ないと、この二次仕分けに要する工数とスペースのコストが、一括ピッキングによる歩行距離短縮のメリットを上回ってしまい、全体の生産性が低下します。その点、シングルピッキングはピッキングした商品をそのまま梱包・出荷工程に回せるため、二重ハンドリング(二度手間)が発生しません。

歩行距離の増加というシングルピッキング特有の課題に対しては、同一ゾーンの複数オーダーを一度に集約してピッキングする「マルチピッキング」を組み合わせることで解決可能です。1バッチあたり6〜8オーダーをハンディターミナルで制御しながら同時に摘み取ることで、作業者の歩行距離を約30%〜40%削減できます。

トータルピッキングへの切り替えを検討すべき分岐点

自社の取扱商品や出荷構造が変化し、一定の基準に達した場合は、トータルピッキングへの移行、あるいはハイブリッド運用の検討が必要になります。移行を検討すべき明確な分岐点は、LPT(1オーダーあたりの平均行数)が「3.0行以上」に上昇し、かつ出荷SKU数が「100SKU以下」と限定的な状況において、1日の出荷件数が「3,000件以上」に達したタイミングです。

例えば、特定の定番アパレル製品や、同一仕様のキャンペーン販促品を多数の配送先に届けるような業務では、ピッキング対象となるSKUが極めて少なく、1回のピッキングで大量の同一商品をまとめて回収できます。この場合、作業者が棚と梱包台を何度も往復するシングルピッキングを継続すると、歩行距離が不必要に長くなり、現場の作業効率が頭打ちになります。

トータルピッキングへ切り替えることで、倉庫の保管エリアから出荷エリアまでの移動回数を最小限に抑えられます。ただし、切り替え時には、仕分け作業を行うための広範な仕分けスペース(ソーターや仕分けラック)の確保が必要になる点、および仕分け作業時の見落としによる誤出荷リスクに対して、デジタルアソートシステム(DAS)などのマテハン機器導入コストが伴う点を十分に考慮しなければなりません。

4. WMSとデジタル技術を活用したシングルピッキングの効率化・DX手順

シングルピッキングは、出荷作業がシンプルで完了後すぐに梱包・出荷できるメリットがある一方で、1受注ごとに倉庫内を回るため、トータルピッキングに比べて「歩行距離が長くなり、作業効率が低下しやすい」という弱点があります。この課題をクリアし、生産性向上と誤出荷防止を両立するためには、WMS(倉庫管理システム)や各種デジタルデバイスの導入によるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する必要があります。

WMS(倉庫管理システム)連携による歩行動線の最短化

シングルピッキングの歩行距離を短縮する上で、WMSによるロケーション管理とピッキングルートの最適化は極めて有効なアプローチです。人感や経験則に頼った棚割や歩行ルートをシステム化することで、無駄な往復移動を徹底的に排除できます。

具体的な手順と仕組みは以下の通りです。

  • フリーロケーション管理の導入:固定の棚に特定の品番を固定するのではなく、出荷頻度の高い商品(Aランク品)を出荷場や通路の近くに動的に配置します。WMSが出荷データをリアルタイムに分析し、常に最適な配置(ロケーション最適化)を指示することで、ピッキング時の基本的な移動距離を圧縮します。
  • 最適ピッキングルートの自動算出:作業者がピッキングを開始する際、WMSが同一注文内の商品の位置情報を瞬時に計算し、一筆書きで最も効率よく回れる最短の「動線」を割り出し、端末に指示します。

月間3万件、取扱SKU数5,000点規模の多品種少量型EC物流倉庫におけるシミュレーションでは、作業者が自身の経験則で倉庫内を歩行していた運用(1オーダーあたりの平均歩行距離約80メートル)に対し、WMSによるロケーション最適化と最短動線指示を適用した結果、平均45メートルまで短縮されました。歩行距離が約44%削減されたことで、作業者1人あたりの1日のピッキング件数は大幅に増加します。深刻な労働力不足に対応する省人化対策としても、こうした動線カットのアプローチは極めて実用的です。

ハンディターミナルやデジタルデバイスを用いた誤出荷防止とスキルレス化

シングルピッキングにおけるもう一つの現場課題は、類似した商品の取り違えによる誤出荷の発生です。特に、サイズやカラーバリエーションが豊富なEC物流では、目視だけに頼るピッキングはミスの温床となります。デジタルデバイスの導入は、このリスクを最小化し、同時に作業の標準化(スキルレス化)をもたらします。

導入デバイス 具体的な仕組み・活用方法 得られる効果
ハンディターミナル 指示された棚のバーコードと商品のJANコードをスキャン。不一致の場合はアラート音が鳴る。 照合精度の向上による誤出荷防止(エラー率0.001%以下への抑制)。
デジタルピッキングシステム(DPS) 棚に取り付けられた表示器が光り、ピッキングすべき対象と数量をデジタルで指示する。 文字を読む必要がなくなり、倉庫に慣れていない派遣スタッフや新人でも初日から即戦力化。
スマートグラス(ウェアラブル端末) 視野上に次にピッキングすべき棚の位置と商品画像が投影され、ハンズフリーで作業可能。 両手が自由になるため、重量物や複数個数のピックスピードが向上。

さらに、マルチピッキングを行う場合も、デジタル技術が力を発揮します。仕分けカートに液晶モニターやスキャナー、重量センサーを搭載することで、「どの棚から商品を摘み取り、手元のどのバケットに入れるべきか」をシステムが指示します。投入バケットの間違いをセンサーが検知してブザーで知らせる仕組みを構築すれば、検品工程を意識することなく、ピッキングと同時に高精度な仕分け作業が完了します。

ハンディターミナルとマルチピッキングを組み合わせた現場では、従来発生していた出荷前ダブルチェック工程そのものを廃止することが可能になりました。ピッキング時のスキャンによって実質的な検品がその場で完了しているため、梱包スペースへ直行させることができます。結果として、出荷リードタイムが短縮され、作業ミスによる手戻りコストもゼロに近づきます。誰が作業しても同じスピード、同じ精度を維持できる環境を整えることこそが、デジタル技術を掛け合わせたシングルピッキングの最終的なゴールです。

5. 法規制強化と労働力不足に対応するピッキング作業改善チェックリスト

労働力不足や人件費の高騰への対応が急務となる中、倉庫内の作業効率、特にシングルピッキングにおける無駄を省くことは即効性の高い解決策となります。具体的な数値目標の設定方法と、現場ですぐに実践できる具体的なチェックリストを用いて現状を評価します。

生産性を可視化するKPI(UPH・LPH)の設定と計測方法

シングルピッキングのピッキング効率化や生産性向上を進めるには、現在の作業スピードを定量的に測定し、ボトルネックを特定する必要があります。客観的な指標として、UPH(Units Per Hour:1時間あたりのピッキング個数)とLPH(Lines Per Hour:1時間あたりのピッキング行数・オーダー行数)の2つを設定します。多品種少量発送が主流のEC物流では、1回のピッキングで扱う商品の種類数(行数)が変動するため、双方を並行して計測しなければなりません。

具体的な測定と計算の手順は以下の通りです。

  • ステップ1(対象の設定):測定するピッキングエリア、作業従事者、時間帯(例:午前中のコア稼働時間など)を明確にします。
  • ステップ2(実作業時間の計測):朝礼や休憩時間、他業務への応援時間などを除いた「純粋にピッキングカートを押して歩行・作業していた時間」のみを積算します。
  • ステップ3(実績データの抽出):WMSの出荷実績データから、該当時間内にシステム上でピッキング完了した「総個数」と「総行数」を抽出します。

月間1万件の出荷を処理する現場において、スタッフ3名が合計12時間(1名あたり4時間)ピッキング作業を行い、総ピッキング個数が1,440個、総ピッキング行数が720行であった場合の計算式は次のようになります。

  • UPHの算出:1,440個 ÷ 12時間 = 120 UPH(作業者1名が1時間に120個ピッキング)
  • LPHの算出:720行 ÷ 12時間 = 60 LPH(作業者1名が1時間に60行分ピッキング)

この基準値を測定しておくことで、ロケーションの再配置やハンディターミナルの導入といった改善施策を行った際、どの程度歩行距離が短縮され、作業効率が向上したかをパーセンテージで正確に評価できるようになります。また、トータルピッキングからシングルピッキングへ、あるいはその逆への移行を検討する際の客観的な判断材料になります。

明日から使える「シングルピッキング改善チェックリスト5項目」

計測した数値を改善するためには、現場の物理的な環境や運用ルールを見直す必要があります。以下は、明日から倉庫内で即座に確認・実行できる5つのチェック項目です。現在のピッキング環境と照らし合わせながら確認してください。

評価項目 現状の確認ポイント 具体的な改善アクション
1. Aランク(高頻度出荷)商品の配置 出荷頻度が高い商品が、梱包エリアから遠い棚や、脚立が必要な高所・屈まないと届かない低所に保管されていないか。 過去30日間のWMS出荷データを抽出し、出荷量の多い上位20%の商品を、梱包エリアに最も近い「ゴールデンゾーン(作業者の肩から腰の高さの棚)」へ再配置する。
2. ピッキング経路(動線)の一方向化 作業者が同じ通路を何度も往復(後戻り)したり、狭い通路で他の作業者と交差・衝突したりして歩行距離が無駄に伸びていないか。 ロケーションの番号順に歩くだけで、ピッキングが「一筆書き」で完了する一方通行ルールを策定する。棚の側面に進行方向を示す矢印シートを貼付して動線を視覚化する。
3. ハンディターミナルによる電子化 紙のピッキングリストによる目視確認のみに頼っており、棚探しの迷い時間や、誤出荷防止のためのダブルチェックに余計な時間がかかっていないか。 バーコードスキャンによる照合が可能なハンディターミナルを導入する。指示された棚のバーコードと商品バーコードをスキャンすることで、目視確認の時間を削減し誤出荷防止を徹底する。
4. 保管容積の最適化と補充管理 ピッキングエリアの棚が「在庫切れ」を起こしており、作業中に補充を待つ時間発生や、段ボールがはみ出して取り出しにくい状況になっていないか。 棚ごとの適正在庫量(ミニマム・マックス)を設定し、ピッキング時間外に自動で補充作業が実行される仕組みを構築する。間口サイズを作業しやすい適正容量に調整する。
5. マルチピッキングへの拡張性 1回の巡回で1注文(1オーダー)分しか処理しておらず、同様の商品を何度も別々に取りに行くような非効率が発生していないか。 仕切り付きのピッキングカートやWMSのバッチ処理を活用し、1度の巡回で複数オーダー分(例:最大6オーダー分など)を同時に摘み取る「マルチピッキング」を部分的に導入し、歩行距離を削減する。

これらの項目を1つずつクリアすることで、属人的な作業の偏りが解消され、新人作業者であっても高い生産性を発揮できるようになります。現状の数値を測定した上で、最も改善余地が大きい項目から優先的に着手してください。

よくある質問(FAQ)

Q. シングルピッキング(摘み取り方式)とはどのような作業ですか?

A. シングルピッキングとは、1つの注文(オーダー)ごとに倉庫内を巡回し、該当する商品を必要な数だけ集めていく手法です。「摘み取り方式」とも呼ばれます。集めた商品をそのまま検品や梱包工程へ回せるため、仕分けの手間がかからず、出荷先ごとに注文内容が異なる「多品種少量発送」の現場に適しています。

Q. シングルピッキングとトータルピッキングの違いは何ですか?

A. 最大の違いは「仕分け工程の有無」です。シングルピッキングは注文ごとに商品を集めるためピッキング後の仕分けが不要ですが、作業者の歩行距離が長くなりやすい性質があります。一方、トータルピッキング(種まき方式)は複数注文分をまとめて回収した後に仕分けるため、移動距離を減らせる代わりに、仕分け用のスペースや時間が必要です。

Q. シングルピッキングのデメリットと効率化の方法を教えてください。

A. デメリットは、取扱商品(SKU)の増加や出荷量拡大に伴い、作業者の歩行距離が伸びて生産性が低下することです。効率化するには、WMS(倉庫管理システム)を導入して最短の歩行動線を自動算出する方法や、ハンディターミナルを活用して誤出荷を防ぎつつ作業をスキルレス化する方法が極めて有効です。

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