- キーワードの概要:固定ロケーションとは、倉庫内の特定の製品に対して、あらかじめ決まった保管場所(棚やアドレス)を1対1で割り当てる、最も基本的な在庫管理手法です。商品を住所のように管理するため、誰でも迷わずに目的の保管場所にたどり着ける仕組みを持っています。
- 実務への関わり:作業員の経験や習熟度に頼らず、指示書やハンディターミナルに従って迷いなくピッキングができるため、作業効率の大幅な向上と誤出荷の防止に直結します。一方で、在庫が減った際にも他の商品を保管できず、デッドスペースが生じやすい特性もあります。
- トレンド/将来予測:近年はWMS(倉庫管理システム)やバーコードを活用したデジタル化が進んでいます。固定ロケーションの良さとフリーロケーションの柔軟性を融合したハイブリッド運用や、ピッキングエリアと保管エリアを切り分けるダブルトランザクションの採用により、保管効率とピッキング効率を両立させる動きが主流となっています。
固定ロケーションは、特定の商品に対してあらかじめ倉庫内の決まった保管場所を1対1で割り当てる、在庫管理の最も基本的な手法です。本記事では、固定ロケーションの構造やフリーロケーションとの違い、それぞれのメリット・デメリットを整理した上で、出荷頻度(ABC分析)や商品特性に応じた選択基準、さらにこれらを組み合わせた「ダブルトランザクション」などの実践的な運用方法について、WMSを活用したデジタル化の手順とともに解説します。
- 固定ロケーションの仕組みと特徴――「住所」に例える基本構造とフリーロケーションとの根本的違い
- 固定ロケーションの仕組みと倉庫内における「住所(アドレス)」の役割
- フリーロケーションとの違いを示す3つの評価軸(保管効率・配置変更の柔軟性・管理負荷)
- 固定ロケーションのメリット・デメリット――ピッキング効率とデッドスペースのトレードオフ
- 現場の教育コストを下げ、ピッキング効率を最大化するメリット
- デッドスペースの発生と「棚の虫食い状態」を招くデメリットとその要因
- 自社に適したロケーション管理の選び方――商品特性と出荷頻度(ABC分析)による判断基準
- 取扱商品の特性(サイズ・有効期限・SKU数)から導く適性判断
- 出荷頻度(ABC分析)を活用したレイアウト配置と固定・フリーの適性
- 現場の課題を解決する「ハイブリッド運用」と「ダブルトランザクション」の具体策
- 固定とフリーの強みを融合した「ハイブリッドロケーション」の運用設計
- ピッキングエリアと保管エリアを分離する「ダブルトランザクション」の実装手順
- WMS(倉庫管理システム)とバーコードを活用した誤出荷防止・デジタル化の手順
- バーコードやハンディターミナルを用いたリアルタイム在庫管理と誤出荷防止の仕組み
- ロケーション管理をデジタル化するWMS選定で重視すべき要件
固定ロケーションの仕組みと特徴――「住所」に例える基本構造とフリーロケーションとの根本的違い
固定ロケーションとは、特定の商品に対してあらかじめ倉庫内の決まった棚や保管場所(ロケーション)を1対1で固定して割り当てる在庫管理の手法です。
固定ロケーションの仕組みと倉庫内における「住所(アドレス)」の役割
固定ロケーションの概念は、「倉庫内の住所(番地)」に例えることで直感的に理解できます。私たちの生活において、市区町村、番地、マンション名、部屋番号が確定していれば、どのような配達員でも迷わず目的地にたどり着けるのと同様に、倉庫内でも各棚に独自の「アドレス」を割り当てて管理します。
具体例として、アパレル商材や日用品を扱う倉庫でのアドレス設計を見てみましょう。エリア、棚、列、段(高さ)を組み合わせた、以下のようなアドレスコードを体系化します。
- A:エリア(例:Aゾーン、Bゾーンなど)
- 03:棚(列番、通り番号)
- 02:列(棚を正面から見たときの左からの位置)
- 04:段(下から数えて4番目の棚板)
このルールに基づき設計されたアドレスコード「A-03-02-04」に、特定の商品(例:白の無地Tシャツ・Mサイズ)を固定で紐付けます。これにより、作業員はWMS(倉庫管理システム)から出力されたピッキング指示書や、ハンディターミナルに表示されたコードを見るだけで、迷うことなく対象の棚へ直行できるようになります。
特に、1日に1,000件以上の出荷を処理するEC物流センターなどでは、作業員の習熟度に関わらず作業スピードを維持するピッキング効率の向上が求められます。固定ロケーションを採用し、棚に「A-03-02-04」といった明確な番地表示と現品票を掲示しておくことで、ピッキング時の判断迷いを排除し、目視による現物確認が容易になります。この仕組みが、ピッキングミスを物理的に防ぎ、誤出荷防止に直接貢献するインフラとなります。
フリーロケーションとの違いを示す3つの評価軸(保管効率・配置変更の柔軟性・管理負荷)
固定ロケーションに対して、空いているスペースに順次商品を保管していく手法がフリーロケーションです。両者の根本的な構造的違いは、商品と保管場所の紐付けが「1対1(固定)」か「1対多(フリー)」かという点にあります。
この構造の違いから生じる特徴について、「保管効率」「配置変更の柔軟性」「管理負荷」の3つの評価軸から比較した内容が以下の通りです。
| 評価軸 | 固定ロケーション | フリーロケーション |
|---|---|---|
| 紐付け構造 | 1対1(商品と保管場所が常に同一) | 1対多(同じ商品が複数の場所に存在) |
| 保管効率 | 低い(欠品時や在庫減の際にデッドスペースが生じる) | 高い(空きスペースを常に有効活用できる) |
| 配置変更の柔軟性 | 低い(取扱商品変更時に再レイアウトが必要) | 高い(空いたスペースに任意の商品を保管可能) |
| 管理負荷(システム依存度) | 低い(目視確認が容易で、アナログ運用も一部可能) | 高い(WMSによるリアルタイムのロケーション管理が必須) |
固定ロケーションは、商品の在庫がゼロになってもその場所を他の商品のために使うことはできません。特定商品の欠品時には棚が空きスペースとなり、デッドスペースが発生します。一方、フリーロケーションは空いたスペースへ別の商品を自由に保管できるため、倉庫内の保管効率(容積充填率)を極限まで高めることができます。
しかし、同じ商品が複数の異なる棚に分散して保管されるフリーロケーションは、リアルタイムで正確に保管場所を追跡しなければピッキングが不可能です。そのため、高精度なWMSの導入と、ハンディターミナルを用いた入出庫時のバーコードスキャン徹底が必須条件となり、システム側の運用管理負荷が高まります。これら両者の特徴を応用した「ダブルトランザクション」と呼ばれる運用手法については、後述するハイブリッド運用のセクションで解説します。
固定ロケーションのメリット・デメリット――ピッキング効率とデッドスペースのトレードオフ
固定ロケーションは、「どの商品がどこにあるか」をあらかじめ指定して管理する手法です。定位置管理とも呼ばれるこの運用は、倉庫内の整理整頓を促進する基本として広く採用されています。しかし、この直感的な管理方法には、作業の生産性と倉庫の保管効率という、相反する要素のトレードオフが存在します。実務において固定ロケーションを選択するべきか否かを判断するためには、そのメリットとデメリットを具体的な現場の状況に基づいて理解する必要があります。
現場の教育コストを下げ、ピッキング効率を最大化するメリット
固定ロケーションを導入する最大のメリットは、作業者の熟練度に依存しない業務の標準化にあります。商品ごとに決まった住所(番地)が割り当てられているため、倉庫管理や在庫管理の経験が浅いスタッフであっても、指示書に書かれたロケーションコードを頼りに直感的に目的の商品へたどり着くことができます。
特に実務上、以下のような明確な利点が得られます。
- 教育コストの削減と即戦力化:
例えば、季節ごとのセール時や繁忙期に、日雇いの派遣スタッフを1日あたり10名新規に導入する現場を想定します。固定ロケーションが機能していれば、スタッフは「棚の配列ルール」を理解するだけで、即座にピッキング作業を開始できます。作業習熟に要する時間は数時間程度となり、教育コストを低く抑えることが可能です。 - ピッキングルートの最適化:
商品の配置が固定されているため、WMS(倉庫管理システム)などのデータを活用して「重い商品を最初にピッキングし、軽い商品を最後にピッキングする」といった、荷崩れを防ぐ最適なルートを組み立てやすくなります。無駄な往復動線が削られることで、ピッキング効率を最大化できます。 - 誤出荷防止への直接的効果:
フリーロケーションのように同一の間口(棚)に異なる商品が混在することがないため、「取り間違い」による誤出荷リスクを物理的に低減できます。特に、JANコードがない商品や外観が酷似している類似品を扱う場合、固定ロケーションによる定位置管理は極めて有効な誤出荷防止の仕組みとして機能します。
デッドスペースの発生と「棚の虫食い状態」を招くデメリットとその要因
一方で、固定ロケーションの運用において避けて通れない最大の課題が、倉庫内の保管効率の低下です。固定ロケーションでは、対象商品の「最大在庫量」を想定して棚のスペース(間口)を確保しなければなりません。これが、保管効率の低下を招く直接的な要因となります。
実務で直面する主なデメリットは以下の通りです。
- 「棚の虫食い状態(デッドスペース)」の発生:
例えば、最大在庫数が100個ある特定商品のために用意した棚スペースは、在庫が10個に減少したとしても、他の商品を保管するために流用することができません。残りの90個分のスペースは「空き領域」のまま残ることになります。これが倉庫内のいたるところで発生する「棚の虫食い状態」であり、スペース効率を著しく悪化させます。 - ロケーション再設計に伴う管理者負担の増大:
アパレル製品や日用品などのように、季節変動によって取扱商品(SKU)が大きく入れ替わる現場や、新商品が頻繁に投入される現場では、固定ロケーションの維持に多大な手間がかかります。シーズンオフになって在庫がゼロになった棚をそのままにしておくと無駄が生まれるため、その都度、棚割り当ての再設計を行い、WMS上の登録情報を変更しなければなりません。この再設計ワークには管理者の工数が奪われ、業務負荷が急増します。
このように、固定ロケーションはピッキング効率や誤出荷防止において大きな威力を発揮する一方で、限られた倉庫スペースを有効活用するという観点では大きなデメリットを抱えています。このトレードオフを解消するために、倉庫内の保管エリアにフリーロケーションを採用し、ピッキングエリアのみを固定ロケーションにする「ダブルトランザクション」などの応用的な手法が実務では検討されます。
自社に適したロケーション管理の選び方――商品特性と出荷頻度(ABC分析)による判断基準
自社に最適な在庫管理手法を決定するためには、感覚的な判断ではなく、取扱商品の物理的特性や出荷動向を定量的に分析する必要があります。固定ロケーションとフリーロケーションは、どちらか一方が絶対的に優れているわけではありません。それぞれの特性を正しく理解し、ピッキング効率の向上と誤出荷防止を両立させるためには、客観的なデータに基づいた選択基準が求められます。
取扱商品の特性(サイズ・有効期限・SKU数)から導く適性判断
ロケーション運用の向き不向きを決定づける第1の要因は、取り扱う商品そのものの属性です。具体的には、「SKU数(商品アイテム数)」「商品のサイズや重量」「有効期限(消費期限・ロット管理)の有無」の3点から適性を評価します。各商品特性におけるロケーションの適性は以下の通りです。
| 商品特性 | 固定ロケーションの適性 | フリーロケーションの適性 |
|---|---|---|
| SKU数 | 少(100SKU未満など) | 多(1,000SKU以上など) |
| 商品のサイズ・重量 | 大型・重量物(保管場所が限定される商品) | 小型・軽量(棚のどこにでも収まる商品) |
| 有効期限・ロット管理 | 不要(期限による先入れ先出しの必要性が低い) | 必要(WMSのシステム制御で期限管理を行う) |
| 商品ライフサイクル | 長い(定番品、リピート商材) | 短い(季節物、トレンド商材、新陳代謝が激しい) |
SKU数が少なく、1SKUあたりの在庫ボリュームが大きい場合は、固定ロケーションが適しています。棚の位置と商品を1対1で固定できるため、作業者が保管場所を直感的に記憶でき、ピッキング効率の向上が図れます。一方で、アパレルやEC商材のように、季節ごとに数千〜数万SKUの入れ替えが発生する現場では、固定ロケーションを採用すると「空き棚があるのに新しい商品が置けない」というデッドスペースが発生します。この場合は、空いているスペースに順次保管していくフリーロケーションを導入することで、限られた保管エリアを最大限に活用できます。
さらに、食品や医薬品のように有効期限管理(先入れ先出し)が厳密に必要な商品は、フリーロケーションとWMS(倉庫管理システム)の組み合わせが効果を発揮します。同じSKUであっても、入荷日やロットが異なる在庫を異なるロケーションにバラバラに保管し、WMSがシステム上で古いロットから順にピッキング指示を出すことで、目視による確認ミスを防ぎ、確実な在庫管理が可能になります。
出荷頻度(ABC分析)を活用したレイアウト配置と固定・フリーの適性
ロケーション選定における第2の判断基準は、商品の出荷頻度です。すべての在庫を一律に扱うのではなく、出荷実績データに基づき商品をA(高頻度)、B(中頻度)、C(低頻度)の3グループに分類する「ABC分析」を活用することで、ピッキング効率の大幅な向上と誤出荷防止を実現できます。
全体の出荷数の約70%〜80%を占める「Aランク(高頻度出荷商品)」には、固定ロケーションの適用が効果的です。出荷頻度が高い商品の保管場所を作業動線の最短ルートに固定しておくことで、ピッキングにかかる歩行距離を最小限に抑えられます。固定された場所から常にピッキングを行うため、作業者の習熟度も上がりやすく、出荷精度の安定化を図ることができます。
一方で、出荷頻度が極めて低い「Cランク(低頻度出荷商品)」、いわゆるロングテール商品に対して固定ロケーションを割り当ててしまうと、動かない在庫が棚を長期にわたり占有することになり、保管効率が大幅に低下します。そのため、Cランク商品はフリーロケーションで管理し、空いている奥まったエリアや高い位置の棚へ柔軟に格納するのが鉄則です。中頻度の「Bランク商品」については、物量の波や季節変動に応じて、固定とフリーの運用比率を柔軟に調整します。
こうした出荷頻度ごとの特性をレイアウトに落とし込む具体的なアプローチとして、高頻度品を扱うピッキングエリアと、低頻度・大量在庫を扱う保管エリアを分ける手法があります。1日の出荷数が3,000件を超えるような大規模なEC物流倉庫などでは、ピッキングエリアへの補充作業をWMSで自動管理することで、限られたスペースの有効活用と出荷作業のスピードアップを両立させています。
現場の課題を解決する「ハイブリッド運用」と「ダブルトランザクション」の具体策
「固定ロケーションは保管効率が悪く、フリーロケーションは作業効率が落ちる」という二者択一の悩みを解決する手法が、「ハイブリッドロケーション」と「ダブルトランザクション」の運用設計です。現場の限られたスペースを有効活用しつつ、ピッキング効率を維持・向上させるための実務プロセスを詳しく解説します。
固定とフリーの強みを融合した「ハイブリッドロケーション」の運用設計
ハイブリッドロケーションとは、同一倉庫内で物品の出荷頻度や特性に応じて、固定ロケーションとフリーロケーションを使い分けるレイアウト設計です。これを正しく機能させるためには、出荷頻度(ABC分析)に基づいた明確な配置基準を設ける必要があります。
以下に、月間出荷件数が15,000件規模のEC倉庫をモデルとした、出荷ランク別のロケーション割り当て基準を示します。
| 出荷ランク(ABC分析) | 適用するロケーション | 設計・運用の狙い | 誤出荷防止・効率化の具体策 |
|---|---|---|---|
| Aランク(上位20%・高頻度) | 固定ロケーション | ピッキング動線の最短化と作業スピードの向上 | 同一棚に類似型番を隣接させず、視覚的に判別しやすい配置にする。 |
| Bランク(中頻度・季節変動) | フリーロケーション(一部固定) | 時期による在庫量の増減に柔軟に対応 | 入庫時にWMSで空き棚を自動引当てし、ハンディターミナルでの実績登録を徹底する。 |
| Cランク(低頻度・ロングテール) | フリーロケーション | デッドスペースの削減と保管効率の最大化 | 保管エリアを集約し、ピッキングエリアから切り離して管理する。 |
この運用を成立させる前提として、リアルタイムの在庫管理が欠かせません。フリーロケーションエリアでは物品の保管場所が流動的に変わるため、入出庫のたびにWMSへロケーション情報を正確に登録する必要があります。バーコード検品をルール化し、システム上のデータと実在庫を完全に一致させることで、作業者の記憶に頼らない誤出荷防止体制が確立されます。
ピッキングエリアと保管エリアを分離する「ダブルトランザクション」の実装手順
ダブルトランザクションとは、倉庫内を「ピッキングエリア(動線が短く、作業しやすいエリア)」と「保管エリア(高層ラックなどを用いて高密度に保管するエリア)」の2つに完全分離する運用手法です。これにより、ピッキング効率の維持と保管効率の最大化を両立させます。SKU数が5,000を超え、パレット単位の入荷とバラ単位の出荷が混在するサードパーティ・ロジスティクス(3PL)の現場を想定し、システムを用いた具体的な実装手順を5つのステップで解説します。
- ステップ1:エリア設計とロケーション区分の登録
ピッキングエリア(手の届きやすい下段ラックなど)を「固定ロケーション」として設定し、各SKUに1つだけの専用ロケを割り当てます。一方、上段ラックや倉庫奥のバックヤードを保管エリア(リザーブエリア)とし、パレット単位やケース単位で高密度に保管できる「フリーロケーション」としてWMSに登録します。 - ステップ2:補充閾値(最小・最大在庫数)の策定
WMS内で、各固定ロケーションの「最小在庫数(補充点)」と「最大保管数」を設定します。例えば、ある化粧品の1日の平均出荷数が100個の場合、最小在庫数を「150個(1.5日分)」、最大保管数を棚に収まる限界値である「500個」と登録します。これにより、在庫切れによるピッキング作業のストップを防ぎます。 - ステップ3:補充トリガーの自動化と補充指示の出力
ピッキングエリアの在庫数が最小在庫数を下回った瞬間、WMSが自動的に検知し、保管エリアからの「補充指示(ロケーション移動指示)」を出力します。システムが保管エリア内にある「同一ロットかつ期限の古いもの(先入れ先出し)」を自動で引き当て、作業者に保管エリアの番地と補充数量を指示します。 - ステップ4:補充オペレーションの標準化
補充作業は、原則として出荷ピッキングのピーク時間帯を避けて実施します。例えば、午前中に出荷ピッキングが集中する現場では、補充作業を前日の夜間バッチ、または当日の早朝にスケジュール化します。補充担当者は、保管エリアからケース単位でフォークリフト等を用いて取り出し、ピッキングエリアへ搬送してバラ解きを行います。 - ステップ5:スキャンによるリアルタイム在庫移動と確定
補充担当者は、ピッキングエリアの固定ロケーションに商品を棚入れする際、必ずハンディターミナルで「保管エリアのバーコード」「商品のバーコード」「ピッキングエリアのロケーションバーコード」の3点スキャンを行います。この処理によりWMS上の在庫データがリアルタイムで移動し、ピッキング担当者が古い在庫データを参照して誤出荷を引き起こすリスクを排除します。
このように、ルール化された補充サイクルをWMSによる制御と組み合わせて運用することで、ピッキング担当者は常に一定の場所から迷わず商品を取り出すことができ、保管担当者は空きスペースを無駄なく活用できます。このダブルトランザクションの徹底こそが、属人化を排除し、出荷リードタイムを短縮するための極めて有効なアプローチとなります。
WMS(倉庫管理システム)とバーコードを活用した誤出荷防止・デジタル化の手順
労働力不足が深刻化する物流現場において、経験の浅いパート・アルバイトスタッフであっても初日から即戦力として稼働できる環境づくりは急務です。例えば、月間1万件の出荷を処理するEC倉庫では、ピッキング作業者のスキルや記憶に依存したアナログな管理を行うと、配置転換や繁忙期の人員増強時にピッキング効率が著しく低下し、誤出荷率の上昇を直接的に招きます。人手不足が深刻化する2024年以降の物流現場を見据え、WMS(倉庫管理システム)とバーコードを導入してロケーション管理をデジタル化することは、作業者の「記憶」や「勘」に頼る属人化を排除し、人為的ミスを物理的に防ぐ「ポカよけ」の仕組みを構築するために不可欠なプロセスです。
バーコードやハンディターミナルを用いたリアルタイム在庫管理と誤出荷防止の仕組み
バーコードとハンディターミナルを用いたリアルタイムな在庫管理は、誤出荷防止とピッキング効率向上に直結します。具体的な運用手順は以下の3ステップに分類されます。
- ステップ1:ロケーションと商品のバーコード化
倉庫内の棚(固定ロケーションまたはフリーロケーション)のすべてに、列・連・段・枝番を表すアドレスバーコードを貼り付けます。同様に、取り扱う商品自体、または外箱にも商品バーコード(JANコードなど)を付与し、すべての位置情報と商品情報をデジタルデータ化します。 - ステップ2:入庫・棚入れ時のリアルタイム紐付け
商品を入庫する際、作業者はハンディターミナルで「棚のアドレスバーコード」と「商品のバーコード」を連続してスキャンします。これにより、WMS上のデータベースへ「どのロケーションに、どの商品が、何個あるか」がリアルタイムに登録され、在庫管理の精度が100%に近づきます。 - ステップ3:ピッキング時の「ポカよけ」スキャン
WMSから出力されたピッキング指示に基づき、作業者はハンディターミナルに表示されたロケーションに向かいます。該当棚から商品を取り出す際、商品のバーコードをスキャンします。もし指示と異なる商品、あるいは異なるロケーションから取得しようとした場合、ハンディターミナルが即座にエラー音とバイブレーションで警告します。この仕組みにより、目視確認に頼らない確実な誤出荷防止が実現します。
特に、出荷頻度の高い商品をピッキングエリア(固定ロケーション)に配置し、バルク保管エリア(フリーロケーション)から補充するダブルトランザクション運用においては、ハンディターミナルを用いたリアルタイムな棚卸移動処理が欠かせません。デジタル化により、保管効率を維持したままピッキング効率を最大化させることが可能になります。
ロケーション管理をデジタル化するWMS選定で重視すべき要件
WMSを導入・リプレイスする際は、自社の商材特性や今後の物量増加に伴う保管方法の変化(固定ロケーションからフリーロケーションへの移行など)に柔軟に対応できるシステムを選定しなければなりません。以下に、WMS選定時に実務責任者が確認すべき要件をまとめたチェックリストを提示します。
| 項目 | 評価基準 | なぜ重要か(導入効果の裏付け) |
|---|---|---|
| ロケーション管理方式の柔軟性 | 固定ロケーション、フリーロケーション、ダブルトランザクションの各運用を単一システム内で混在・設定できるか。 | 商材の出荷頻度(Aランク・Cランク)に応じてロケーション割り当てを柔軟に使い分けることで、作業歩行距離を短縮しピッキング効率を高めるため。 |
| リアルタイム在庫更新機能 | ハンディターミナルのスキャンと同時に、WMS上の在庫データやロケーション情報が秒単位で同期されるか。 | 在庫の引き当てミスや、同一棚への重複ピッキング指示を防ぎ、現場の混乱とタイムロスを排除するため。 |
| 一括ロケーション変更機能 | CSVインポートや棚卸データの一括アップロードにより、ロケーションのマスター情報を一括更新できるか。 | 季節波動やセール等に伴う大規模なレイアウト変更時、手動入力を省いてマスター更新の手間を削減し、翌日からの実務に遅延なく適応させるため。 |
| エラー警告(ポカよけ)機能 | ピッキング時に異なるロケーションや商品コードをスキャンした際、視覚・聴覚的に明確な警告を発するか。 | 現場作業者が直感的かつ瞬時にミスを認識し、その場で修正行動を取れるようにすることで、誤出荷防止のプロセスを標準化するため。 |
実務責任者が次に取るべき具体的なアクションは、自社倉庫の「商品ごとの出荷頻度(ABC分析)」を実施し、どのエリアに固定ロケーションを適用し、どのエリアにフリーロケーションを適用すべきかのゾーニング計画を策定することです。その上で、上記のチェックリストを要件定義のベースとして各システムベンダーに提示し、適合率を比較検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 固定ロケーションとは何ですか?
A. 固定ロケーションとは、倉庫内で特定の商品に対してあらかじめ決まった保管場所(アドレス)を1対1で割り当てる在庫管理手法です。商品ごとに固定の「住所」があるため、直感的に配置を覚えやすく、作業者が迷わずに商品をピッキングできるのが特徴です。
Q. 固定ロケーションとフリーロケーションの違いは何ですか?
A. 最大の違いは、商品の保管場所が固定されているか、空きスペースに柔軟に変更するかです。固定ロケーションは管理がシンプルで初心者向きですが、デッドスペースが生じやすい特徴があります。一方、フリーロケーションは保管効率を最大化できますが、WMS(倉庫管理システム)などを用いたリアルタイムな位置情報のデジタル管理が必須となります。
Q. 固定ロケーションのメリットとデメリットは何ですか?
A. メリットは、保管場所が常に一定のため作業員の教育コストを下げ、ピッキング効率を最大化できる点です。デメリットは、商品が売れて在庫が減った際に棚に無駄な空きスペース(虫食い状態)が発生し、倉庫の保管効率が低下する点です。この課題に対しては、フリーロケーションとのハイブリッド運用やダブルトランザクションが有効な解決策となります。