- キーワードの概要:港湾において海上貨物の受け取り、引き渡し、積卸し、保管などを一元的に行う専門業者のことです。港湾運送事業法に基づき国土交通大臣の許可を得た事業者であり、歴史的には「乙仲(おつなか)」という通称でも広く知られています。
- 実務への関わり:輸出入を行う荷主企業に代わり、港湾の保税地域での貨物管理や通関手続き、さらに国内輸送へつなぐためのドレージ(コンテナ陸送トラック)の手配などを代行し、複雑な港湾実務をスムーズに進行させる役割を担います。
- トレンド/将来予測:物流の2024年問題に伴うトラックドライバー不足を背景に、ドレージの自社確保・手配力を持つ海貨業者の重要性が高まっています。また、国際物流のセキュリティと迅速化を両立する「AEO認定通関業者」としての信頼性を持つ業者への委託ニーズがさらに拡大しています。
日本の輸出入貨物の99%以上は海上輸送が占めています。この膨大な港湾物流を、水面下で支えている専門業者が「海貨業者(海運貨物取扱業者)」です。一般には「乙仲(おつなか)」という通称でも知られますが、その法的な定義や、フォワーダー、通関業者との明確な違いを正確に説明できるでしょうか。本記事では、海貨業者の役割、歴史的背景、実務の業務フロー、さらには信頼できる委託先の選定基準までを、物流専門メディアの視点から徹底的に解説します。
- 海貨業者(海運貨物取扱業者)とは?法的な定義と「乙仲」と呼ばれる歴史的背景
- 港湾運送事業法に基づく「海貨業者」の定義と本来の役割
- なぜ今も「乙仲」と呼ばれるのか?戦前まで遡る歴史的ルーツ
- 混同しやすい「フォワーダー」「NVOCC」「通関業者」との実務上の違い
- 「フォワーダー(NVOCC)」と「海貨業者」の運送責任と事業範囲の差
- 「通関業者」と「海貨業者」のライセンス(根拠法)による役割の違い
- 【業務フロー図解】海貨業者が主導する輸出入プロセスの実務手順
- 【輸出フロー】船積予約(ブッキング)から通関・船積み完了までの流れ
- 【輸入フロー】本船入港から保税蔵置・国内配送までの引き取りプロセス
- 委託先をどう選ぶ?荷主企業が信頼できる海貨業者を選定する3つの評価軸
- 評価軸1:得意とする「貨物特性・輸送ルート」と港湾での現場対応力
- 評価軸2:2024年問題を見据えた「ドレージ(コンテナ陸送)」の自社確保・手配力
- 評価軸3:税関手続きを迅速化する「AEO認定通関業者」としての信頼性
- 海貨業者への就業・転職を目指す人が備えるべき資格と実務スキル
- 貿易実務の唯一の国家資格「通関士」の重要性と市場価値
- 現場で求められる「ビジネス英語力」とステークホルダー間の調整スキル
海貨業者(海運貨物取扱業者)とは?法的な定義と「乙仲」と呼ばれる歴史的背景
港湾運送事業法に基づく「海貨業者」の定義と本来の役割
港湾における海運貨物のハンドリングを行う事業者は、法的に「海貨業者(海運貨物取扱業者)」と位置づけられています。この事業を営むためには、港湾運送事業法に基づき、国土交通大臣から「一般港湾運送事業」などの許可を得る必要があります。同法は港湾における秩序維持と運送の円滑化を目的に制定されており、許可を得た海貨業者のみが港湾区域内での貨物の受取、引き渡し、積卸しといった実務を元請けとして行うことができます。
海貨業者の本来の役割は、海上輸送と陸上輸送の結節点である港湾において、荷主の代わりに貨物の物理的なハンドリングと付随する実務を一元管理することです。具体的には、本船から荷揚げされた貨物を税関の輸出入許可が下りるまで「保税地域」へ搬入・保管し、自社に所属する「通関士」を通じて税関へ輸出入申告を行います。さらに、国内輸送へとつなぐために、海上コンテナ専用の牽引車である「ドレージ」を手配する実務も担います。トラックドライバー不足や、段階的に適用される時間外労働規制を見据え、港湾地域でのスムーズな荷役と確実なドレージ確保を行う海貨業者の調整力は、荷主企業のサプライチェーン維持に直結する重要な要素となっています。
なお、実務において混同されやすい「フォワーダー(NVOCC含む)」や「通関業者」との関係性について、その定義上の違いは以下の通りです。
| 事業者種別 | 根拠法および許可・登録 | 主な役割と定義 | 運送責任(B/L発行) |
|---|---|---|---|
| 海貨業者 | 港湾運送事業法(国土交通省許可) | 港湾地域における貨物の積卸し、保管、沿岸実務、受渡の代行 | 原則として負わない(船会社B/Lを使用) |
| フォワーダー | 貨物利用運送事業法(国土交通省登録・許可) | 自らは輸送手段(船・航空機)を持たず、実運送人を利用して国際間の一貫輸送(NVOCC業務等)を引き受ける事業者 | 自らハウスB/Lを発行して運送責任を負う(NVOCCの場合) |
| 通関業者 | 通関業法(財務大臣許可) | 荷主に代わって税関に対する輸出入の申告および通関手続きを代行する事業者 | 負わない(行政手続きの代理人のみ) |
実務においては、大手・中堅の海貨業者の多くが、自社グループ内に通関部門(通関士)を有して通関業者を兼ねているほか、貨物利用運送事業の登録を行いフォワーダーとしても機能しています。このように各機能が1社に統合されて提供されるケースが多いため、実務担当者の間ではそれぞれの言葉が同様の意味合いで使われることがあります。
なぜ今も「乙仲」と呼ばれるのか?戦前まで遡る歴史的ルーツ
貿易実務や物流の現場では、海貨業者のことを「乙仲(おつなか)」と呼ぶ慣習が今なお根強く残っています。この言葉は現在の法律(港湾運送事業法)には一切登場しません。そのルーツは、戦前の1939年(昭和14年)に制定された「海運組合法」にあります。
当時の海運組合法において、荷主と船会社の間に立って貨物の取り次ぎを行う「海運仲立業」は、取り扱う貨物の種類や運行形態に応じて、法的に「甲種」と「乙種」の2つに区分されていました。
| 法的な区分 | 戦前の法律上の名称 | 取り扱い対象貨物と業務 |
|---|---|---|
| 甲種 | 甲種海運仲立業者(甲仲) | 不定期船(トランパー)の貨物(石炭、鉱石、穀物などのバルク貨物)の仲介 |
| 乙種 | 乙種海運仲立業者(乙仲) | 定期船(ライナー)の貨物(個別の一般梱包貨物や製品など)の仲介 |
一般の商社やメーカーなど、多くの荷主が輸出入する製品は、スケジュールが固定されている「定期船」を使って輸送されていました。そのため、荷主が日常的に実務を依頼する窓口は、定期船貨物を取り扱う「乙種海運仲立業者」、すなわち「乙仲」となりました。この親しみやすさと実務における接触頻度の高さから、荷主の間で「港湾の手続きを依頼する先=乙仲」という呼称が定着しました。
1947年(昭和22年)、戦後の改革に伴い海運組合法が廃止されたことで、法的な「乙仲」という区分は消滅しました。その後、1951年(昭和26年)に港湾運送事業法が制定され、現在の「海貨業者」が誕生することになります。しかし、長年にわたり貿易業界や港湾関係者の間で使われ続けた「乙仲」という言葉は、法改正後も業界の共通言語として機能し続けました。現在でも、信頼と実績を積み重ねてきた海貨業者に対して、敬意や親しみを込めて「乙仲さん」と呼ぶ商習慣が引き継がれています。
混同しやすい「フォワーダー」「NVOCC」「通関業者」との実務上の違い
「フォワーダー(NVOCC)」と「海貨業者」の運送責任と事業範囲の差
貿易実務において、貨物の国際輸送全体をコーディネートするフォワーダーと、港湾エリアの実務を担う海貨業者は、果たすべき役割と法律上の運送責任において明確に区別されます。
フォワーダーは貨物利用運送事業法に基づき、自らは船舶などの輸送手段を持たずに荷主から貨物を引き受け、国際一貫輸送を手配する事業者です。その中でも自ら船荷証券(B/L)を発行して輸送責任を負う事業者はNVOCC(非船主系共同運送人)と呼ばれます。フォワーダーの主たる業務範囲は、海外のパートナー企業と連携した発地から着地までのドア・ツー・ドアの輸送設計であり、荷主に対して一括した輸送運賃を請求します。
これに対し、海貨業者は港湾運送事業法に基づき、国土交通省の許可を得て特定の港湾区域内における作業を代行する事業者です。かつて戦前の海運組合法において「乙種海運仲立業(通称:乙仲)」と呼ばれていた歴史的背景を持ち、主な役割は港に到着した貨物の船積み・陸揚げ、保税地域への搬入・保管、バンニング・デバンニングといった港湾荷役の実務にあります。海貨業者自体は独自のハウスB/Lを発行して輸送責任を引き受けることは原則として行わず、船会社が発行するマスターB/Lの授受や、港から目的地までのドレージ(コンテナ専用トレーラー)の手配といった実務代行に特化します。特に、労働時間規制の強化に伴う輸送力不足の影響を受け、港湾から荷主の倉庫までのドレージ車両をいかに確保するかという局面において、地元の輸送会社やドレージ業者と強固なパイプを持つ海貨業者の実務力が活きてきます。
「通関業者」と「海貨業者」のライセンス(根拠法)による役割の違い
実務担当者が次に混同しやすいのが、税関への申告を行う通関業者と海貨業者の関係です。これらは依拠する法律が異なり、業務を行うために必要な国家資格の有無にも違いがあります。
通関業者は通関業法に基づき、財務大臣の許可を得て、荷主に代わって税関への輸出入申告や関税の納税申告を代理で行う専門職です。実際の申告実務には、専門知識を持った通関士の審査と署名が不可欠であり、HSコード(輸出入統計品目番号)の特定や関税率の計算といった法的適合性の担保に特化しています。税関からの事後調査への対応や、保税地域内で貨物の検査に立ち会うのも通関業者の固有業務です。
一方、海貨業者は前述の通り港湾運送事業法を根拠とし、港湾における物理的なモノの移動や保管のオペレーションを統括します。ただし実務上は、多くの大手海貨業者が通関業のライセンスもあわせて取得しており、自社内に通関士を抱えて「海貨業務から通関手続きまでの一括受託」を行っています。この二重の体制があるため、荷主からは「海貨業者と通関業者は同じもの」と誤解されがちですが、ライセンスの根拠法と業務の本質は異なります。例えば、内陸のインランド・デポ(保税蔵置場)での通関に特化した事業者の場合、港湾運送事業法に基づく海貨業のライセンスを持たずに、通関業法のライセンスのみで業務を遂行しているケースが存在します。
【業務フロー図解】海貨業者が主導する輸出入プロセスの実務手順
海貨業者(海運貨物取扱業者)は、港湾における貨物の積み卸し、搬出入、保管、さらには通関手続きまでを一貫して担う実務の主役です。実際の輸出入実務では、海貨業者がフォワーダーや通関業者の機能を兼ね備えているケースが多く、荷主にとっては窓口が一体化されています。以下に、海貨業者が主導する具体的な輸出入のプロセスをフローに沿って解説します。
【輸出フロー】船積予約(ブッキング)から通関・船積み完了までの流れ
輸出実務において、海貨業者は貨物の集荷から本船へ積み込まれるまでの全工程を管理します。具体的なワークフローは以下の手順で進行します。
1. 船積予約(ブッキング)
荷主から出荷指示(S/I: Shipping Instruction)を受け取った海貨業者は、船会社に対して船腹(スペース)の予約を行います。NVOCC(非船主系共同運送人)の機能を持つ海貨業者の場合、自社が発行するハウスB/L(自社船荷証券)を用いて、より柔軟な混載仕立ての提案が可能です。
2. 保税地域への搬入と貨物検査
荷主の工場や倉庫から出発した貨物は、港湾コンテナターミナルに隣接する保税地域(CFSやCY)へドレージ(コンテナ専用トレーラー)等によって陸上輸送されます。海貨業者は、貨物が保税地域に到着した時点で、外装のダメージ有無や数量の検収を港湾運送事業法に準拠した手続きで行います。万が一、コンテナのシール番号に不一致がある場合や外装異常が発覚した際は、荷主へ即座に状況を写真付きで報告し、船積みの可否を現場で判断します。
3. 輸出通関申告
貨物が保税地域に入ったことを確認(搬入確認)後、海貨業者内の通関部門に所属する通関士が、インボイス(仕入書)やパッキングリスト(梱包明細書)を基に輸出申告書を作成し、税関に対してNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を通じて申告します。税関による書類審査や必要に応じた現物検査を経て、輸出許可書(Export Permit)が交付されます。
4. 本船への積込・荷役作業
輸出許可が下りると、貨物は船積書類(CLP: Container Load Planなど)と共に船会社およびステベ(船内荷役業者)に引き渡されます。ガントリークレーンを用いてコンテナが本船に積み込まれ、船会社からB/L(船荷証券)またはその受領証が発行された時点で、海貨業者の輸出実務プロセスは完了します。
【輸入フロー】本船入港から保税蔵置・国内配送までの引き取りプロセス
輸入においては、海外から到着した貨物を迅速に引き取り、国内の指定納品先まで遅滞なく配送するコントロールタワーの役割を果たします。
1. 本船入港とコンテナの陸揚げ
船会社からアライバルノティス(入港案内)が届くと、海貨業者は荷受人(インポータ―)に代わって引き取り準備を開始します。本船が着岸すると、港湾運送事業法に基づきライター(はしけ)運送や沿岸荷役の手配を行い、コンテナをコンテナターミナル(CY)へと陸揚げします。
2. 保税蔵置とデバンニング
コンテナ扱い(FCL)の場合はそのままCYに蔵置されますが、小口混載貨物(LCL)の場合は、海貨業者の手配により保税地域内のCFS(コンテナ・フレイト・ステーション)へと運ばれ、コンテナから貨物を取り出す「デバンニング」作業が行われます。ここで海貨業者は、輸入貨物の個数や状態を現物で確認し、保税台帳に記録します。
3. 輸入通関申告と納税
海貨業者の抱える通関士が、船積書類(B/L、インボイス、パッキングリスト、原産地証明書など)を精査し、正しい実行関税率や消費税額を算出の上、税関へ輸入申告を行います。輸入においては関税等の納付(または担保提供による納税猶予)が完了して初めて輸入許可書(Import Permit)が下ります。この通関スピードが遅れると、1日あたり数万円規模のデマレージ(コンテナ超過保管料)が発生するため、通関士の正確かつ迅速な書面審査能力が極めて重要です。
4. 国内配送(ドレージ)と納品
輸入許可後、貨物は「外国貨物」から「国内貨物」へとステータスが変わり、引き取りが可能になります。海貨業者は自社、あるいはパートナー企業のトレーラーを手配し、コンテナをターミナルから引き出します。ドライバー不足に起因するドレージ確保難に対応するため、海貨業者は事前にコンテナターミナルの混雑状況を予測し、配送予約システムを駆使して効率的な運行管理と待機時間の削減に努めています。荷主の倉庫へ配送され、デバンニング(またはコンテナ返却)が完了することで、一連の輸入プロセスが完結します。
委託先をどう選ぶ?荷主企業が信頼できる海貨業者を選定する3つの評価軸
かつて「乙仲」と呼ばれ、港湾手続きを代行してきた海貨業者ですが、複雑化するグローバルサプライチェーンにおいては、単なる手続き代行を超えた役割が期待されます。荷主企業の物流担当者が最適なパートナーを比較検討する際、実務上の成果(リードタイム短縮やコスト削減)に直結する3つの具体的な評価軸を解説します。
評価軸1:得意とする「貨物特性・輸送ルート」と港湾での現場対応力
海貨業者にはそれぞれ得意とする「貨物特性」と「輸送ルート」があります。例えば、化学品などの危険物、温度管理が必須な冷凍・冷蔵食品、あるいは重量物やプラント設備といった特殊貨物は、それぞれ取り扱いや保管に関するノウハウが大きく異なります。フォワーダーやNVOCC(非船舶運航事業者)として機能する事業者であっても、すべての貨物種別に対応できるわけではありません。
ここで鍵となるのが、輸出入の要所となる港湾近隣の「保税地域(保税蔵置場)」や自社倉庫の有無、そして港湾での現場対応力です。自社またはグループ内で保税地域を運営している海貨業者であれば、コンテナの入出庫や加工作業をスピーディーに行うことができ、港湾混雑時にも臨機応変なスケジュール調整が可能になります。例えば、月間50TEUの輸入リーファーコンテナ(冷凍・冷蔵)を動かす場合、港湾近隣に自社グループの冷凍保税蔵置場を持つ海貨業者に委託することで、コンテナのデマレージ(超過保管料)発生リスクを年間で約15%削減することが可能です。自社の主力貨物と同種の取り扱い実績がどれだけあるかを事前に数値で確認することが、現場でのトラブルを防ぐ最善の手立てです。
評価軸2:2024年問題を見据えた「ドレージ(コンテナ陸送)」の自社確保・手配力
2024年4月から本格化したトラックドライバーの時間外労働規制(2024年問題)に起因するドライバー不足は、港湾から最終目的地へコンテナを運ぶ「ドレージ(コンテナ陸送)」の手配難に直結しています。どれだけ迅速に通関手続きを完了させても、コンテナを引き取るドレージが確保できなければ、貨物は港に滞留し、リードタイムの遅延や余計な保管料の発生を招きます。したがって、海貨業者がどれだけ強力なドレージの確保力・手配力を有しているかは、荷主企業にとって死活問題となります。
評価の基準となるのは、海貨業者が「自社ドレージ部門(シャシーおよびドライバー)」を保有しているか、あるいは強固な専属協力会社ネットワークを有しているかという点です。例えば、関東圏の主要港から内陸の工場へ毎日10本のコンテナを陸送するケースでは、自社で30台以上のドレージシャシーを運用する海貨業者と年間契約を結ぶ。これにより、繁忙期(12月や3月)であっても配車漏れを防ぎ、工場の生産ラインを止めることなく安定した供給体制を維持できます。委託先を選定する際は、単に「手配可能」という口約束ではなく、保有車両台数や、繁忙期における実質的な配車成功率を数字で提示してもらう必要があります。
| 選定時の確認項目 | 手配力が高い業者の特徴 | 手配力が不足している場合のリスク |
|---|---|---|
| ドレージの保有・提携状況 | 自社グループでシャシーを保有、または専属の陸送会社と年間契約がある。 | スポット手配に依存するため、繁忙期に車両が確保できず貨物が港に滞留する。 |
| 配送ルートの柔軟性 | 配送効率化に対応した、中継輸送やラウンドユース(往復利用)の提案ができる。 | 片道輸送のみの提案となり、ドレージ料金が高騰するほか、急な予定変更に対応できない。 |
評価軸3:税関手続きを迅速化する「AEO認定通関業者」としての信頼性
輸出入の関門となる税関手続きにおいて、手続きを主導する「通関業者」としての実績と資格は、リードタイム短縮とコンプライアンス確保の両面から重要な評価軸です。ここで確認すべき客観的な指標が、財務省関税局から認定を受けた「AEO認定通関業者(特定通関業者)」のステータスの有無です。
AEO認定通関業者に業務を委託することで、法令遵守体制が整備された事業者として税関からの信頼が得られ、通関審査や検査の簡素化・迅速化が図られます。具体的には、輸入貨物において、納税申告の前に貨物の引き取りが可能になる「引取申告制度」を利用できるようになり、リードタイムを半日から1日程度短縮できます。また、社内に国家資格を持つ「通関士」が適正に配置されているか、および税関とのシステム連携(NACCS)が構築されているかも実務能力に直結します。多品種の化学品を輸入し、厳格な品目分類(HSコードの特定)が求められる状況では、AEO認定通関業者に所属する専任の通関士が事前教示制度を活用することで、通関時の審査保留を極力排除し、突発的な輸入ストップを回避する体制が整います。自社が輸出入する品目に対して専門知識を持つ通関士の有無と、AEO認定という公的な信頼性の掛け合わせこそが、不必要な審査遅延を防ぐ最大の防御策となります。
海貨業者への就業・転職を目指す人が備えるべき資格と実務スキル
港湾運送事業法に基づき、港湾での貨物取扱を行う海貨業者(かつて乙仲と呼ばれた事業者)や、自社で船を持たずに輸送を担うNVOCC(フォワーダー)の業務は、輸出入の現場において非常に多岐にわたります。保税地域での貨物管理から、税関への申告、ドレージの手配まで、一連のフローを円滑に進めるためには、専門的な知識と高度な調整スキルが不可欠です。未経験からこの業界でキャリアを築くために、どのような資格やスキルが求められるのか、具体的に解説します。
貿易実務の唯一の国家資格「通関士」の重要性と市場価値
海貨業者の多くは、財務省から許可を得た通関業者として通関業務を内製化しています。この通関業務において、輸出入申告書類の審査や税関への申告を独占的に行えるのが、貿易実務で唯一の国家資格である「通関士」です。
通関士の有資格者が市場で高く評価される理由は、法的な独占業務があることだけではありません。保税地域における複雑な貨物の検査立ち会いや、品目分類(HSコード)の厳密な判定など、専門的判断が求められる局面において、実務上のエラーを防ぐ防波堤となるからです。例えば、化学品や食品、精密機械など、品目ごとに課税ルールや他法令による規制が異なります。誤った申告は税関からのペナルティ(過少申告加算税など)を招き、最悪の場合、荷主企業のサプライチェーンを停止させる事態に至ります。こうした致命的な遅延リスクを未然に防ぐ知識を持つ通関士は、荷主の信頼獲得に直結する存在です。
また、物流業界においては、働き方改革に関連する時間外労働規制への対策が進む中、2026年に予定されている次期NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)への移行に伴う業務プロセスの刷新(デジタル化への対応)が進められています。このようなシステム変更や法改正の動きの中で、専門知識を持って適正な申告プロセスをリードできる通関士の市場価値は、今後さらに高まります。
| 資格・スキル名 | 海貨業者における主な役割 | 求められる理由・実務へのメリット |
|---|---|---|
| 通関士 | 輸出入申告書の作成・審査、税関交渉、保税地域での検査対応 | 通関業法に基づく独占業務であり、法改正や次期システムへの移行期にも適正な通関を維持するため。 |
| 通関実務の理解 | HSコードの分類、他法令(食品衛生法、植物防疫法など)の手続き | 税関からのペナルティや輸入差止リスクを回避し、正確な納税と迅速な許可取得を実現するため。 |
現場で求められる「ビジネス英語力」とステークホルダー間の調整スキル
海貨業者(またはフォワーダー)の役割は、単に書類を作成することだけではありません。輸出入のサプライチェーンを構成する多種多様なステークホルダーとの間で、緻密なスケジュール管理とトラブル対応を行う「調整型」のコミュニケーション能力が不可欠です。
日々の実務では、船会社とのブッキング交渉、ドレージ(コンテナを陸上輸送するトレーラー)の手配、保税地域を管理する現場作業員への荷役指示など、常に複数の関係者と連携を図る必要があります。例えば、荒天による本船の入港遅れが発生した場合、海貨業者の担当者は、荷主に対して遅延状況を迅速に報告すると同時に、代替となるドレージの手配や、到着後の通関・保税手続きの再調整をリアルタイムで行わなければなりません。関係各所とのスムーズな連携が、荷主の損失を最小限に抑える鍵となります。
さらに、こうした調整業務において「ビジネス英語力」は必須のツールです。海外の船会社や現地の代理店(フォワーダー、NVOCC)とのやり取りは、メールや電話を問わず原則として英語で行われます。船の動静確認や運賃交渉、さらには「海上輸送中に貨物が破損した」といった緊急のトラブル対応など、お互いの責任範囲を明確にするためのやり取りを、英語で的確かつ論理的に進める必要があります。TOEICのスコアでいえば、まずは貿易書類を正確に読み解き、定型文での交渉ができる600点から700点以上、さらに踏み込んだトラブル交渉を行うポジションであれば800点以上の実務レベルが重宝されます。こうした語学力と調整スキルを兼ね備えることで、複数のプレーヤーが絡む複雑な国際物流をスムーズに動かすコア人材として、長く活躍することができます。
よくある質問(FAQ)
Q. 「海貨業者(海運貨物取扱業者)」とは何ですか?「乙仲」との違いも教えてください。
A. 海貨業者とは、港湾運送事業法に基づき、港湾において海運貨物の受け渡しや手続きを行う専門業者です。歴史的に戦前の海運組合法において「乙種仲立業」と呼ばれていた名残から、現在でも「乙仲(おつなか)」という通称で広く知られています。両者は本質的に同じものを指しており、日本の輸出入を水面下で支える重要な役割を担っています。
Q. 海貨業者と「フォワーダー」や「通関業者」の違いは何ですか?
A. フォワーダーは国際輸送の引き受けや運送契約の主体となる「運送事業者」です。通関業者は通関業法に基づき税関への申告を代行する「ライセンス保持者」です。これらに対し、海貨業者は港湾運送事業法に基づき、港湾での貨物の積込み・陸揚げや、保税蔵置場での保管、関連手続きなどの現場実務全般を一貫して担う業者を指します。
Q. 輸出入で信頼できる海貨業者を選ぶ際の基準は何ですか?
A. 選定基準は主に3つあります。1つ目は自社の貨物特性や輸送ルートに適した対応力があるか。2つ目は陸上輸送の「2024年問題」に対応できるドレージ(コンテナ陸送)の手配力。そして3つ目は、税関手続きを簡素化・迅速化できる「AEO認定通関業者」であるかです。これらを満たす業者を選ぶことで、物流の遅延リスクを最小限に抑えられます。