- キーワードの概要:車上渡しとは、運送会社が荷物をトラックの荷台から降ろさずに、荷台の上で受領側に引き渡す取引条件のことです。荷物を降ろす作業やその責任は、運送会社ではなく荷物を受け取る側(荷受人)が負うというルールになっています。実務への関わり:荷受人は、荷物が到着するまでにフォークリフトなどの重機を手配したり、手作業で降ろすための十分な人員を配置したりする必要があります。これらを怠ると荷物を受け取れず、再配達に伴う追加費用が発生するリスクがあるため、事前の準備と責任範囲の確認が不可欠です。トレンド/将来予測:物流業界では、働き方改革に伴いドライバーの労働時間短縮や作業負担軽減が厳しく求められています。そのため、今後も「車上渡し」を前提とした取引が増加する見込みであり、荷受人側でのスムーズな荷降ろし体制の構築や、運送会社との明確な合意形成がより重要になります。
車上渡し(しゃじょうわたし)とは、運送会社が指定の納品先まで荷物を運ぶものの、トラックの荷台の上から荷物を降ろさずに引き渡す取引条件のことです。荷物をトラックの荷台から降ろす責任と実作業は、ドライバーではなく「荷受人(購入者・納品先)」に帰属します。
この取引条件では、トラックの荷台の上が引き渡しの境界線(責任範囲の分岐点)となります。配送先の駐車場や敷地内にトラックが到着したとしても、ドライバーが荷物を手で持って地面に降ろすことはありません。そのため、荷降ろし用フォークリフトの手配や、重量物を人力で降ろす手下ろしのための人員配置が事前にできていない場合、その場で荷物を受け取れず、チャーター便の再配達費用などの追加コストが発生する実務上のリスクが生じます。
- 1. 車上渡しとは?荷降ろし責任の所在と「軒先渡し・館内渡し」との決定的な違い
- 1-1. 「トラックの荷台の上」が引き渡し場所:荷受人が荷降ろしを行うべき根拠
- 1-2. 【比較表】車上渡し・軒先渡し・館内渡し・着工渡しのコストと責任範囲
- 1-3. なぜ運送会社は「車上渡し」を条件にするのか?(時間外労働規制強化との関連)
- 2. フォークリフトなし・人員不足でも対応可能か?受領側の実務判断基準と代替案
- 2-1. フォークリフトがない場合の3つの代替策
- 2-2. 重量物・大型荷物の「手下ろし」に必要な適正人員と安全確保の基準
- 2-3. 自社での荷降ろしが「対応不可」と判断すべき境界線と、配送条件の変更交渉術
- 3. 荷降ろし中の破損・事故事例に学ぶ「責任の境界線」と保険の適用範囲
- 3-1. 【グレーゾーンの解消】ドライバーが荷降ろしを手伝って事故が起きた場合の責任
- 3-2. 運送約款から見る「荷台の上」と「地上」の境界線
- 3-3. 車上渡しトラブルをカバーする損害保険の適用条件
- 4. 【チェックリスト付】車上渡しのトラブルを未然に防ぐための発注・受入実務フロー
- 4-1. 発注・契約段階で合意すべき「配送仕様」の事前確認項目
- 4-2. 納品当日の混乱と荷待ち時間を防ぐ「現場受入体制チェックリスト」
- 4-3. 法改正と制度厳格化を見据えた「車上渡し」の適正運用と物流パートナーシップの構築
1. 車上渡しとは?荷降ろし責任の所在と「軒先渡し・館内渡し」との決定的な違い
1-1. 「トラックの荷台の上」が引き渡し場所:荷受人が荷降ろしを行うべき根拠
荷受人が荷降ろし義務を負うルールは、単なる業界の慣習ではなく、運送の基本約款に基づいています。
国土交通省が定める「標準貨物自動車運送約款」では、運送事業者の基本義務は「貨物の積込みおよび取卸しを除く」と規定されており、これら積降作業は基本的に荷主または荷受人の責任で行うものと定義されています。約款上、ドライバーの本来の業務は「ある地点から別の地点への移動と、積載状態の維持」であり、トラックの荷台から荷物を降ろす行為(手下ろしやフォークリフト作業)は運送契約に含まれない付帯サービス(有料)に位置づけられます。
このため、責任範囲の境界線は明確にトラックの荷台上となります。荷台の上にある状態までは運送会社が荷物を保証しますが、荷受人が荷降ろし作業を開始した瞬間(例えば、フォークリフトの爪がパレットに触れた、あるいは人力で持ち上げた瞬間)から、破損等の事故責任はすべて荷受人へと移ります。
万が一、荷降ろし作業中に荷物が落下して破損した場合、運送会社側の運送責任(運送保険の適用など)を問うことは原則できません。自社で作業を行う際は、自社が加入している「動産総合保険」の補償範囲や、受託物賠償責任保険などの加入状況、および荷降ろしに必要な設備要件を事前に確認しておく必要があります。
1-2. 【比較表】車上渡し・軒先渡し・館内渡し・着工渡しのコストと責任範囲
配送見積もりにおいて、配送条件ごとの費用と荷降ろし・運搬の責任範囲の違いを正しく把握することは、自社の人的コストや設備コストを最適化するために重要です。以下に代表的な4つの配送条件を整理しました。
| 配送条件 | 荷降ろしの主体 | 引き渡し場所(責任の境界線) | コスト・設備要件 |
|---|---|---|---|
| 車上渡し | 荷受人(納品先) | トラックの荷台上(荷を浮かせた瞬間から荷受人責任) | 最も安価。フォークリフトや手下ろし人員の自社手配が必須。 |
| 軒先渡し | 運送会社(ドライバー) | ビル入り口や玄関などの地上(軒先まで降ろすまで運送人責任) | 中程度。建物内への搬入・横持ちは荷受人が行う。 |
| 館内渡し | 運送会社(配送員) | 指定されたテナント、オフィス、または指定フロア内 | 最も高価。大型ビル等で専門の搬入員が指定場所まで届ける。 |
| 着工渡し | 荷受人(施工業者など) | 工事現場の搬入口や指定の仮置き場(工事フェンス内等) | 中〜高。主に建設資材で用いられ、現場入り口での引き渡し。 |
仮に「フォークリフトなし」という状況であれば、車上渡しでの配送依頼は避けるのが無難です。どうしてもフォークリフトが手配できない、あるいは手下ろしの人員を確保できない場合は、配送オプションとして油圧式昇降リフトを装備した「パワーゲート」付き車両を指定するか、条件を「軒先渡し」や「館内渡し」に変更して見積もりを依頼し直すといった事前交渉が必要です。
1-3. なぜ運送会社は「車上渡し」を条件にするのか?(時間外労働規制強化との関連)
運送会社の見積もりや配送規約において「車上渡し」が厳格に適用されるようになっている最大の背景には、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の限度基準が課されたこと(いわゆる2024年問題)があります。
これにより、運送会社はドライバーの労働時間短縮と運行の効率化を徹底せざるを得ません。厚生労働省や国土交通省が作成したガイドラインにおいても、配送先における「荷待ち時間(待機時間)」や「附帯業務(契約にない荷降ろし作業)」の削減が厳しく求められています。契約上「車上渡し」となっているにもかかわらず、現場でドライバーが荷降ろしを手伝ったり、フォークリフトの到着を待つために1時間以上待機させられたりする行為は、ドライバーの労働時間を直接的に圧迫します。
また、ドライバーが善意や現場の要請によって契約外の荷降ろし作業を行い、万が一腰痛を発症したり、荷物を破損させたりした場合、労災申請や損害賠償を巡って重大なトラブルに発展します。
このように、運送会社が車上渡しを条件にするのは、単なる作業の簡略化ではなく、ドライバーの安全確保や労働環境の整備、ひいては物流インフラを維持するための防衛策という側面を持っています。
2. フォークリフトなし・人員不足でも対応可能か?受領側の実務判断基準と代替案
「車上渡し」の取引条件を提示されたものの、自社にフォークリフトがない、あるいは荷降ろしに対応できる人員が確保できないというケースは珍しくありません。トラックの荷台から荷物を降ろす責任が受領側にある以上、適切な設備やリソースを用意できなければ、荷受拒否や運送会社への追加料金発生といった実務上のトラブルに直結します。
2-1. フォークリフトがない場合の3つの代替策
フォークリフトが手配できない場合、荷受人側が安全に荷降ろしを行うための代替手段として、以下の3つのアプローチが挙げられます。現場の設備要件や予算に合わせて最適な方法を選択してください。
| 代替アプローチ | 目安コスト(追加分) | メリット | 注意点・制限 |
|---|---|---|---|
| パワーゲート車指定 | 3,000円〜10,000円 | ハンドリフトでの荷降ろしが可能。低コスト。 | パレット重量やサイズに制限あり(許容荷重500kg〜1,000kg程度)。 |
| ユニック車チャーター | 30,000円〜70,000円 | フォークリフトが使えない不整地や屋外でも対応可能。 | 高コスト。吊り上げ作業(玉掛け)の有資格者が必要。 |
| フォークリフトのスポットレンタル | 15,000円〜25,000円 | 大重量のパレット荷役に対応可能。自社敷地内で完結。 | フォークリフト運転資格者の手配が必要。配送費が別途発生。 |
2-2. 重量物・大型荷物の「手下ろし」に必要な適正人員と安全確保の基準
代替設備を手配せず、人力による「手下ろし」で荷降ろしを行う場合、労働安全衛生法および厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づいた適正な人員配置と安全基準を遵守しなければなりません。同指針では、人力のみで取り扱う重量の制限が以下のように示されています。
- 男性(満18歳以上): 体重の約40%以下(体重60kgの場合、約24kgまで)
- 女性(満18歳以上): 男性が取り扱うことができる重量の約60%まで(約15kgまで)
例えば、1箱30kgの製品が50箱積まれたパレット貨物の場合、これを手下ろしでデバンニング(荷降ろし)するには、最低でも2名以上の作業人員が必要です。1人あたりの腰痛発生リスクや、バランスを崩して荷物を落下させるリスクを軽減するため、実務上は「荷物1個あたりの重量が20kgを超える場合は、複数人での同時持ち上げ、または搬送補助具の使用」を徹底する必要があります。
無理な姿勢や少人数での手下ろしは、労働災害につながるだけでなく、荷物の破損リスクを高めます。車上渡しの取り決めにおいては、荷台から外へ荷物を動かし始めた瞬間に責任範囲が受領側へと移ります。万が一、手下ろしの最中に荷物を落下させて破損した場合、その損害は運送会社ではなくすべて受領側の自己負担となります。自社が加入している動産総合保険の適用対象外となるケース(作業中の過失や免責金額の設定による)もあるため、事前の作業設計が必要です。
2-3. 自社での荷降ろしが「対応不可」と判断すべき境界線と、配送条件の変更交渉術
受領側のリソース不足や設備欠如により、自社での荷降ろしが物理的・安全面で「対応不可」と判断すべき境界線は、以下の3つの条件のうち1つでも該当する場合です。
- 荷物1個の総重量が50kgを超え、かつパワーゲート車やフォークリフトの手配ができない
- 荷降ろしに従事できる社内人員が、安全基準を満たす人数(例:20kg以上の荷物に対して2名以上)を確保できない
- 納品場所の路面傾斜が厳しく、傾斜地でのハンドリフト操作や手下ろしに伴う転倒リスクが極めて高い
これらの境界線に達している場合は、無理に受領を強行せず、発注元(元請けや販売元)に対して配送条件の変更を交渉する必要があります。
交渉の際は、「車上渡し」から「軒先渡し」または「館内渡し」への変更を求めます。車上渡しは受領側が荷降ろしを行いますが、軒先渡しであれば、運送会社がトラックから荷物を降ろし、受領側の指定する建物の入り口(軒先)まで運ぶ責任を持ちます。
単に「降ろせないので変更してほしい」と伝えるのではなく、標準貨物自動車運送約款に基づく適正な対価の支払いを提示することが合意形成の鍵となります。約款上、ドライバーによる荷降ろしや附帯作業は、基本運賃とは別の「積込・取卸料」や「待機時間料」として請求できる仕組みになっているため、追加料金の負担を許容することで交渉がスムーズに進みます。あわせて「着荷主側で台車を用意して受け取りスペースを確保しておくこと」を事前に約束するなど、運送会社側の作業負荷軽減をセットで提案することも有効です。
3. 荷降ろし中の破損・事故事例に学ぶ「責任の境界線」と保険の適用範囲
3-1. 【グレーゾーンの解消】ドライバーが荷降ろしを手伝って事故が起きた場合の責任
車上渡し契約において現場で頻出するトラブルが、「ドライバーが親切心で荷降ろしを手伝ってくれた際に発生した事故」です。例えば、フォークリフトがない納品現場で、ドライバーがトラックのパワーゲート操作や手下ろしの作業を補助し、その最中に荷物が落下して破損した場合の責任の所在が問題となります。
運送契約が「車上渡し」である以上、荷降ろし中の事故に対する法律上の損害賠償責任は、原則として荷受人(購入者・荷主)側に帰属します。運送会社が受託している契約上の義務は「荷台の上で引き渡すこと」であり、そこから先の荷役作業は運送契約外の「無償のサービス(好意による任意行為)」とみなされるためです。
ドライバーの作業中に発生した破損であっても、民法上の「使用者責任(民法第715条)」の観点から、現場で指示を出していた荷受人側が「実質的な指揮監督者」と判断されるケースがあります。実際、荷受人の指示のもとでドライバーが重量物の移動を補助し、その最中に通行人に怪我をさせた事故において、荷受人側に共同不法行為責任(民法第719条)が認められ、損害賠償額の大部分(過失割合7割〜8割)を荷受人側が負担することになった実務例も存在します。
さらに、ドライバーの労働規制強化に伴い、国土交通省は運送契約に含まれない無償の付帯業務(契約書に記載のない荷降ろしや棚入れなど)を原則禁止とする方針を強めています。このような背景から、荷降ろしの手伝いをドライバーに要求すること、あるいは自発的な手伝いを受け入れることは賠償リスクを伴います。トラブルを防ぐためには「ドライバーは荷台から一切降りない」ことを徹底し、事前に契約書で責任範囲を明確にしておくことが求められます。
3-2. 運送約款から見る「荷台の上」と「地上」の境界線
物流実務における責任の所在は、標準貨物自動車運送約款に基づいて定義されています。同約款第10条(荷受け等の拒絶)および第21条(受取人等の行う荷役作業)に準拠すると、運送人の運送責任(受託物に対する注意義務)は「荷物を受け取った時から、引き渡す時まで」となります。
車上渡しにおいて、この「引き渡しの完了」を指す物理的な境界線は「トラックの荷台(アオリ)の上」です。荷受人が荷物に触れた瞬間、あるいは荷役機器が荷物を持ち上げた瞬間に、占有権と責任は運送人から荷受人へと移転します。
車上渡しと軒先渡しの違いは、この「引き渡し場所が荷台上か、地上(軒先)か」という1点に集約されます。仮に現場にフォークリフトがない状況で、パワーゲートも装備されていない通常トラックが到着した場合、荷受人側が手下ろしを行わなければなりません。仮に100kgを超える重量物を複数人で手下ろしする際、バランスを崩して地上に落下させた場合、運送会社側の過失は認められず、製品の全損費用だけでなく、トラックの破損や作業者の怪我に対する費用もすべて荷受人側の自己負担となります。
3-3. 車上渡しトラブルをカバーする損害保険の適用条件
万が一、車上渡しの荷降ろし中に破損事故や人身事故が発生した場合に備え、総務・管理部門は損害保険の適用範囲を把握しておく必要があります。運送会社が加入している「運送業者賠償責任保険」は、車上渡しの引き渡し完了後(=荷台から荷物が離れた後)の事故に対しては、運送会社側に過失がない限り適用されません。
車上渡しに関連するリスクをカバーする主要な保険商品と、その適用条件、注意すべき不担保要件は以下の通りです。
| 保険種目 | カバーする対象 | 車上渡しにおける適用条件 | 不担保(保険金が支払われない)事項 |
|---|---|---|---|
| 動産総合保険 | 荷主が所有する自社製品・資材等の破損 | 荷受人が荷降ろし作業を開始してから、自社施設への搬入完了までの破損・損壊を担保。 | 梱包不良、作業者の重大な過失、フォークリフト等の無資格運転による事故。 |
| 請負業者賠償責任保険 | 自社が荷降ろし作業を行う際、他人の所有物や第三者に与えた損害 | 設備工事会社等が、購入した機器を車上渡しで受け取り、自ら降ろす際、周囲の車両や建物を破損させた場合に適用。 | 引き渡しが完了した後の「製品自体の損害(生産物賠償責任の範囲)」は対象外。 |
| 受託者賠償責任保険 | 顧客や他社から預かった受託財物の破損 | 3PL事業者等が、委託者(顧客)の荷物を車上渡しで受け取り、荷降ろしを行う際の破損を担保。 | 保管中の自然劣化、運送中の事故(運送保険の範囲)。 |
特に注視すべきは動産総合保険です。この保険は原則として輸送中の事故も対象となりますが、契約書上の配送条件が「車上渡し」である場合、引渡日(権利移転日)以降の荷降ろし作業は「荷主自身の荷役作業」とみなされます。このとき、荷役作業に関する特約(荷役作業危険担保特約など)が付帯されていない場合、保険会社から「輸送は完了しており、単なる荷役中の自己過失による事故」と判定され、保険金が支払われないケースがあります。調達する部材や設備が車上渡しで納品される割合を算出し、契約している保険の「運送中・荷役中」の補償範囲について、事前に約款を精査しておくことが重要です。
4. 【チェックリスト付】車上渡しのトラブルを未然に防ぐための発注・受入実務フロー
4-1. 発注・契約段階で合意すべき「配送仕様」の事前確認項目
車上渡しは、トラックの荷台上で荷物を引き渡す契約条件です。そのため、事前の合意が曖昧なまま出荷されると、荷降ろし作業の段階で荷主と運送会社との間でトラブルが発生します。発注・調達の段階で、仕入先および運送会社と以下の項目を「配送仕様」として書面で合意しておく必要があります。
| 確認項目 | 具体的な合意内容 | 影響を受ける実務 |
|---|---|---|
| 荷姿・梱包仕様と総重量 | 1パレットあたりの重量、外寸(高さ・幅・奥行き)、梱包形態(木枠、ダンボール、バンド結束など)の事前共有。 | 重量物(例:500kg以上)をフォークリフトがない現場へ配送した場合、その場で荷降ろしができずに車両の持ち帰り(実費請求)が発生します。 |
| 責任範囲の合意 | トラックの荷台から地面へ荷物を降ろす起重・荷役作業の担当者および使用する重機の決定。 | 標準貨物自動車運送約款に準じ、受入側にリフトがない場合、昇降装置(パワーゲート)付き車両の指定料金の負担者をあらかじめ決めておく必要があります。 |
| 破損時の補償範囲(保険) | 荷台からの荷降ろし中に、荷物を落下・衝突させて破損した場合の賠償責任の所在。 | ドライバーの過失による輸送中の破損は運送保険でカバーされますが、受入側の手下ろし作業中のミスによる破損は適用外となります。 |
特に、容積が大きく重量のある空調設備や生産機械を導入する場合、配送仕様の事前確認を怠ると、当日現場にフォークリフトがなく、クレーン車を急遽チャーターするための追加費用が発生するリスクがあります。契約書や注文書の備考欄に「配送条件:車上渡し(パワーゲート車指定・受入側リフトあり)」のように具体的な仕様を明記することが実務上の防衛策となります。
4-2. 納品当日の混乱と荷待ち時間を防ぐ「現場受入体制チェックリスト」
納品当日、現場で荷降ろしがスムーズに行われないと、ドライバーの余計な拘束時間(荷待ち時間)が発生し、運送会社から待機時間料を請求されるリスクが高まります。特に道路状況が狭い納品先では、トラックを長時間停車させることができず、近隣からのクレームや道路交通法違反に発展します。現場作業員が車上渡しの境界を正しく認識し、以下のチェックリストに沿って受入体制を整えておくことが求められます。
| 分類 | チェック項目 | 判定・対応基準 |
|---|---|---|
| 設備・機材 | 荷降ろし用のフォークリフトは稼働可能か、またはパワーゲート車が手配されているか | 自社にフォークリフトがない場合、手下ろし(人力による荷降ろし)が可能か、許容重量(1個あたり20kg未満等)を確認する。 |
| 人員配置 | 荷降ろし作業を安全に行うための要員が、指定の時間帯に確保されているか | 1回の配送で10ケース以上の手下ろしが発生する場合、ドライバーに依存せず、受入側で最低2名以上の作業員を配置する。 |
| 敷地・アクセス | 配送トラック(4t車や10t車など)の進入・停車スペースが確保されているか | 高さ制限(高架下や建物の軒下)、敷地内の旋回スペース、駐停車禁止区域に該当しないかを道路状況を含めて確認する。 |
| 安全管理 | 誘導員の配置と、ヘルメットや安全靴の着用ルールが守られているか | 荷台からの落下リスクに備え、作業範囲への立入禁止措置と、誘導員の適切な配置ルートを決定しておく。 |
手下ろしが必要なバラ積み貨物の場合、ドライバーが荷降ろしを手伝うケースが散見されますが、これは運送約款から外れた行為であり、その最中にドライバーが負傷した場合、荷主企業の安全配慮義務や労災認定における責任追及を招くリスクがあります。「車上渡しの荷物は、受入側の人間が降ろす」という大原則を、現場の作業スタッフ全員に徹底して周知しておく必要があります。
4-3. 法改正と制度厳格化を見据えた「車上渡し」の適正運用と物流パートナーシップの構築
日本の物流業界では、トラックドライバーの時間外労働規制強化に伴う輸送力不足に加え、多重下請け構造の是正や荷主勧告制度の厳格化が進む、いわゆる2026年問題への対応が迫られています。このような環境下で自社の荷物を優先的に運んでもらうためには、運送会社を対等な物流パートナーとして捉え、ドライバーの拘束時間を短縮する取り組みを主導することが、荷主企業としての競争力に直結します。
車上渡しは、運送会社にとって「荷降ろしによる拘束時間が短い」「付帯作業による労災リスクが低い」というメリットがある取引条件です。しかし、荷主側の受入準備が不十分で、結果的に1時間を超えるような荷待ち時間が発生すれば、国土交通省のガイドラインに抵触し、是正勧告の対象となる可能性があります。適正な取引環境を構築し、持続可能な関係性を維持するためには、以下の3つの施策を進める必要があります。
- 附帯業務の明確化と適切な対価の支払い:車上渡し契約であるにもかかわらず、現場で軒先渡しや館内渡しを突発的に要求することは契約違反です。もしこれらの附帯作業を依頼せざるを得ない場合は、事前に運送契約書に明記し、「荷卸し料」などの実費を料金(運賃とは別建ての附帯業務料)として支払う契約構造へと是正してください。
- デジタル技術を活用した荷待ち時間の削減:1日の受入件数が10件を超えるような製造工場や大型流通センターでは、トラック予約受付システム(バース管理システム)を導入します。これにより、車両の到着時間を15分単位で分散・予約させ、平均荷待ち時間を大幅に削減できた実例が多数存在します。
- 一貫パレチゼーションの推進:手下ろし作業を廃止し、パレットのまま車上渡しを行うことで、1台あたりの荷降ろし時間を短縮します。フォークリフトを用いたパレット荷役であれば、手下ろしで2時間かかっていたバラ貨物の荷降ろしを15分〜20分程度で完了させることができ、ドライバーの拘束時間を最小限に抑制できます。
パレットの導入やシステムの構築には一定の初期投資が発生しますが、今後の法規制強化やドライバー不足による「運べないリスク」を回避するためには、長期的かつトータルでの物流コストの抑制、ひいてはサプライチェーンの安定化につながる投資となります。
よくある質問(FAQ)
Q. 車上渡しとは何ですか?どのような意味ですか?
A. 車上渡しとは、運送会社が指定の納品先まで荷物を運ぶものの、トラックの荷台の上から荷物を降ろさずに引き渡す取引条件のことです。荷物を荷台から降ろす実作業と責任はドライバーではなく、すべて「荷受人(購入者・納品先)」に帰属します。そのため、配送先に到着してもドライバーが荷物を地面に降ろすことはありません。
Q. 車上渡しと「軒先渡し」や「館内渡し」の違いは何ですか?
A. 引き渡し場所と「責任の境界線」が異なります。「車上渡し」はトラックの荷台上が境界ですが、「軒先渡し」は運送会社が荷物を降ろして建物の入り口(玄関先)で引き渡します。さらに「館内渡し」は、建物内部の指定フロアまで運送会社が搬入します。車上渡しは荷受人の作業負担が最も大きい分、配送コストを安く抑えられるのが特徴です。
Q. 車上渡しでフォークリフトがない場合、どのように対処すればよいですか?
A. 主な対処法は3つあります。1つ目は、手下ろしが可能な重量であれば十分な作業人員を事前に配置すること。2つ目は、パワーゲート付き車両の指定や、一時的なフォークリフトの手配を行うこと。3つ目は、事前に配送条件を「軒先渡し」等へ変更する交渉を行うことです。準備を怠ると荷物が受け取れず、再配達費用が発生するリスクがあります。