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調査・データ公表

公取委の2026年9月緊急調査、道路貨物運送の8割超が影響も転嫁受諾率は48.3%

発表主体: 公正取引委員会 発表日: 2026-09-25 最終更新: 2026年9月28日
公取委の2026年9月緊急調査、道路貨物運送の8割超が影響も転嫁受諾率は48.3%

石油関連製品の価格転嫁緊急調査で何が判明した?

公正取引委員会は2026年9月25日、「石油関連製品等の価格転嫁に関する緊急調査」の結果を公表しました。2026年2月以降の中東情勢に伴う燃料・資材高騰を受け、幅広い業種を対象にサプライチェーン全体での価格転嫁状況を把握したものです。

調査結果によると、受注者全体の64.1%(道路貨物運送業では83.9%)がコスト高騰の「影響があった」と回答しました。一方で、値上げ要請に対する発注者の受諾金額の割合(要請受諾率)はエネルギー・原材料等全体で48.3%にとどまり、満額受諾と低水準受諾の「高低二極化」や、二次受注者から三次受注者以降の取引段階で転嫁が進みにくい構造が浮き彫りになりました。公正取引委員会は、明示的な協議を行わずに取引価格を据え置くなど独占禁止法上問題となるおそれのある行為が確認された発注者59名に対し注意喚起文書を送付し、製造委託等代金の見直し協議を行わずに据え置いた委託事業者2名に対して取適法に基づく指導を行いました。

中東情勢を受けた重点調査の背景と政策的位置づけ

今回の緊急調査は、2026年2月以降の中東情勢緊迫化に伴う石油関連製品(ガソリン・軽油等の燃料、樹脂・ゴム等の原材料、包装フィルム等の副資材、潤滑油等の消耗品)の価格急騰を受け、政府方針に基づいて実施されました。

政府は同年5月の総理大臣会見および同年6月の関係省庁連絡会議・ワーキンググループ合同会議において、中小受託事業者の支援として中東情勢の影響を重点調査し、価格転嫁を徹底する方針を示しました(内閣官房等の公表資料によれば、「トラック・物流Gメン」や「取引Gメン」など1,000人規模の監視体制とも連動した取り組みです)。

また、公正取引委員会は政府の「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づき、コスト上昇分の反映について明示的に協議せず据え置くことや、相手方の引上げ要請に対して理由を書面・電子メール等で回答せず据え置くことが、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当するおそれがあることを明確化(独占禁止法Q&A)しており、今回の調査もその監視活動の一環として位置づけられています。

緊急調査の具体的な結果と判明した取引実態

調査は2026年6月26日から7月31日にかけてウェブアンケート(47業種15万事業者対象、回答数27,622名、回答率18.4%)および電話調査(275名)等により実施されました。調査対象行為の期間は2026年2月28日から7月27日です。

発表された主な結果と行政対応は以下の通りです。

  • 価格高騰による影響の度合い
    • 受注者の64.1%が「影響があった」と回答。業種別では石油製品・石炭製品製造業(92.9%)やパルプ・紙・紙加工品製造業(89.8%)のほか、道路貨物運送業も83.9%と高水準を記録。
    • 具体的な影響内容(複数回答)は「エネルギー、原材料等の価格上昇による利益減少」(80.5%)が最多で、「原材料等の調達難による出荷抑制・納期遅れ」(40.2%)、「物流費上昇による利益減少」(35.0%)、「製品・サービスへの価格転嫁が追いつかず利益減少」(32.1%)が続きました。
  • 受注者の価格交渉と対応状況
    • 影響があった受注者のうち、51.7%が「発注者と協議の上、価格転嫁を一部でも受け入れてもらえた」と回答。一方で「協議を申し出たが応じてもらえなかった」は0.8%にとどまり、申し出があれば協議に応じる姿勢自体は根付きつつあります。
    • 他方で、受注者の38.5%は「経営努力で吸収した」または「対応方針未定」として価格協議を申し出ていませんでした。理由として発注者との力関係や、一定時期にしか改定しない商慣習が挙げられています。
  • 価格転嫁の要請受諾率とサプライチェーン格差
    • 要請額に対する受諾金額の割合(要請受諾率)は、コスト全体で48.3%(エネルギーは46.8%、石油関連消耗品は42.0%)。
    • 分布では「100%以上(満額)」が26.9%の一方で、「0%超20%未満」が23.4%、「20%以上40%未満」が27.2%となり、受諾状況が二極化しています。
    • 取引段階別では、上位階層(需要者→一次受注者など)に比べ、「二次受注者→三次受注者以降」の段階で受諾率が45.4%(エネルギー単体では37.8%)まで低下し、下流・重層下請けほど転嫁が進まない傾向が示されました。
  • 転嫁を受け入れない際の発注者の対応
    • 価格転嫁が受け入れられなかった際、理由の説明について「書面・電子メール等による回答あり」は17.5%にとどまり、「口頭説明のみ」(55.2%)や「説明・回答なし」(27.4%)が8割超を占めました。
  • 公正取引委員会による法的措置・指導
    • 独占禁止法Q&Aに該当する行為(協議なしの据え置き等)が認められた発注者59名に対し、未然防止の注意喚起文書を送付(総合工事業8件、輸送用機械器具製造業5件、道路貨物運送業1件など)。
    • 中小受託取引適正化法(取適法)に基づき、協議の求めがなかったことを理由に価格を据え置いた委託事業者2名に対して買いたたきのおそれがあるとして指導を実施しました。

影響を受ける物流事業者と荷主企業

  • トラック運送事業者(道路貨物運送業):軽油等の燃料高騰や油脂類消耗品のコスト増に直面する受託事業者および傭車・再委託先を活用する事業者。
  • 倉庫・物流拠点事業者:拠点内光熱費や包装・フィルム等の石油由来資材の価格上昇に直面する事業者。
  • 荷主企業(製造業・卸売業・小売業等の発注者):物流や部材加工を外部委託し、コスト上昇分の価格協議や書面等での理由開示が求められる事業者。

物流実務への影響と取引交渉のポイント

  • トラック運送事業者・倉庫事業者
    • 軽油や潤滑油、ストレッチフィルム等の副資材コストの上昇に対し、発注者へ協議を申し出た場合は約半数が一部受諾につながっている実態が示されました。一方で、道路貨物運送業において「協議を行ったが一切受け入れてもらえなかった」との回答が5.1%と全体平均(1.8%)より高い傾向もみられます。自社から再委託を行う場合も含め、協議を申し出ないまま据え置く行為への監視が強まる環境下で、客観的なコスト指標を提示した交渉の重要性が高まっています。
  • 荷主(発注企業)
    • 受注者から申し出がない場合であっても一方的に価格を据え置く行為や、引き上げ要請に対して書面や電子メールで理由を回答せずに据え置く行為は、独占禁止法や取適法において問題視されるリスクが明確に示されました。今回の調査でも59件の注意喚起文書送付や2件の指導が行われており、調達・委託部門における価格協議プロセスの点検が実務上の関心事となります。

立入調査の実施と今後のスケジュール

  • 立入調査の継続実施:公正取引委員会は現在、石油関連製品等を含む価格転嫁の状況について、全都道府県の事業者を対象とした立入調査を実施しています。
  • 調査結果の年内公表:実施中の「令和8年度価格転嫁円滑化・支払の適正化に関する調査」において実態把握を進め、2026年(令和8年)中にその結果を公表する方針です。
  • 違反被疑事案への厳正な対処:端緒情報の収集を継続し、独占禁止法上問題となる事案については事業者名の公表を伴う措置を講じるほか、取適法違反に対しても書面調査等を活用して迅速・厳正に対処する方針が示されています。

法執行の厳格化に向けた今後の焦点

  • 事業者名公表措置の適用動向:価格転嫁が円滑に進んでいない業種への端緒情報収集が進められる中、どのような事案に対して事業者名の公表処分が下されるかが今後の焦点となります。
  • 二次・三次受注者への転嫁改善策:調査で判明した下請け階層(多重構造)ほど受諾率が下がる問題に対し、元請け・中間事業者の調達行動に実質的な変化が生じるかは現時点で不透明です。
  • 理由の書面開示の定着度:価格据え置き時に書面や電子メールで理由を回答した割合が17.5%にとどまっている実態に対し、今後の立入調査や指導を通じてどの程度開示が一般化するかが注視されます。

取適法や物流特殊指定をめぐる業界動向

  • 取適法および物流特殊指定の動向:下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が2026年1月1日に施行されたほか、2027年4月1日には独占禁止法に基づく「物流特殊指定」の改正施行が予定されており、発荷主だけでなく着荷主による荷待ちや附帯作業の強要も規制対象となるなど、物流取引適正化に向けた法網の強化が続いています。
  • 運賃・燃料の分離交渉:国土交通省では標準的な運賃の活用や燃料サーチャージの導入を推奨しており、燃料価格高騰分を基本運賃と切り離して定期改定する手法が業界内で議論されています。

よくある質問

Q. 今回の緊急調査で対象となった「石油関連製品等」には具体的にどのようなものが含まれますか?
A. ガソリン・軽油・重油等の石油燃料(エネルギー)、樹脂(ポリエチレン等)・溶剤・ゴム・塗料等の石油製品原材料、出荷時に使われるフィルムや包装資材等の石油関連副資材、製造やサービス過程で消費される潤滑油・切削油等の石油関連消耗品が幅広く含まれています。

Q. 価格転嫁を協議する際、発注者側が注意すべき独占禁止法上の問題行為とは何ですか?
A. 公正取引委員会の「独占禁止法Q&A」では、①コスト上昇分の取引価格への反映について価格交渉の場で明示的に協議せず従来どおり取引価格を据え置くこと、②相手方が引き上げを求めたにもかかわらず転嫁しない理由を書面や電子メール等で回答せずに据え置くこと、のいずれかに該当する場合、優越的地位の濫用として問題となるおそれがあるとしています。

Q. 受注者から値上げの申し出がない場合、従来どおりの価格で据え置いても問題ありませんか?
A. 今回の調査において、委託事業者側から中小受託事業者に対し代金見直しの協議の求めがなかったことを理由に価格を据え置いた事例について、公正取引委員会は中小受託取引適正化法(取適法)上の買いたたきに該当し同法に違反するおそれがあるとして指導を行っています。

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出典

  • 発表主体: 公正取引委員会 / 発表日: 2026-09-25
  • 報告書本体(PDF)
  • 報告書別紙(PDF)
  • 概要(PDF)
  • (印刷用)(令和8年9月25日)「石油関連製品等の価格転嫁に関する緊急調査」の結果について(86 KB)(PDF)
  • 掲載ページ
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