農水省が令和9年度税制改正要望を公表、軽油引取税免税や設備投資減税の延長を提示
農林水産省は、令和9年度(2027年度)税制改正要望の主要事項および全体版を取りまとめ、公表しました。食料安全保障の強化や農業の持続的な発展、農山漁村の活性化等に向け、適用期限が到来する各種税制特例の延長や拡充を求めています。
要望には、一次産業現場のエネルギーコストに関わる「軽油引取税の課税免除特例の3年延長」のほか、物流・保管施設の設備更新や自動化を後押しする「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」の延長・拡充、農業協同組合等の共同利用施設に係る課税標準特例の延長などが盛り込まれています。
食料安全保障強化と既存特例の期限到来に伴う税制要望の経緯
各省庁は毎年度8月末までに翌年度の税制改正要望を取りまとめ、財務省および総務省へ提出する手続きを行っています。今回の要望は、改正「食料・農業・農村基本法」を踏まえた食料安全保障の強化や、スマート農業技術の活用促進といった政策方針に基づき策定されました。
また、政府の「租税特別措置・補助金見直しに関する関係閣僚等及び副大臣会議」の方針に沿って、期限が到来する既存の税制特例について有効性や必要性の点検が行われた上で、延長や見直しの要望事項が整理されています。
令和9年度税制改正要望の主要項目と措置内容
公表された令和9年度税制改正要望の主な項目は以下のとおりです。
- 燃料・エネルギー関連
- 軽油引取税の課税免除の特例措置の3年延長(農業、林業、水産施策等の各区分で再掲)。
- 中小企業の設備投資・生産性向上支援
- 中小企業投資促進税制(機械等の取得に伴う30%特別償却または7%税額控除)の2年延長等(所得税・法人税)。
- 中小企業経営強化税制(特定経営力向上設備等の特別償却または税額控除)の拡充等(所得税・法人税)。
- 中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置(3年間、課税標準1/2等)の2年延長(固定資産税)。
- 生産方式革新事業活動用資産等の特別償却の3年延長(所得税・法人税)。
- 共同利用施設・拠点整備
- 農業協同組合等が一定の資金貸付けを受けて取得した共同利用施設に係る課税標準特例(取得価格から貸付金相当分控除、上限1/2)の2年延長(不動産取得税)。
- 農業協同組合等の共同利用機械等に係る課税標準特例(3年間、1/2)の2年延長(固定資産税)。
- 事業再編・組織基盤強化
- 産業競争力強化法に基づく事業再編に係る登録免許税の軽減措置(会社設立・資本金増加の税率0.7%→0.35%等)の3年延長等(登録免許税)。
- 中小企業事業再編投資損失準備金の3年延長等(法人税)。
- 認定開発供給実施計画に基づき行う登記の税率軽減の3年延長(登録免許税)。
- 見直し(廃止・縮減)事項
- 東日本大震災の被災者が建造・取得した漁船に係る登録免許税の免税措置の廃止。
- 同漁船の契約書に係る印紙税の非課税措置の廃止。
- 認定特別事業再編計画等に基づき行う登記の税率軽減の見直し。
影響を受ける主な事業者と組織
- 農業・林業・水産業を営む生産者および農業法人
- 農業協同組合(JA)および農産品集荷・選果・加工拠点を運営する事業者
- 産地集配センターや冷蔵冷凍倉庫を保有・運用するアグリ物流・食品流通事業者
- 一次産業現場や集荷施設へ機械・設備・自動化システムを供給するメーカーおよびベンダー
アグリ物流と施設投資の実務に与える影響
- 農業生産者・集出荷団体(JA等)
- 軽油引取税(1リットルあたり32.1円)の免税措置が3年間延長される要望が出されたことで、農業用機械等を使用する現場における燃料コスト負担の急増を抑える効果が期待されます。
- 共同利用施設や共同利用機械の不動産取得税・固定資産税の特例措置が2年延長される方針となったことで、集配拠点や共同選果場などの施設更新・維持における税負担軽減が維持される見通しです。
- 倉庫・物流拠点(アグリ物流・食品コールドチェーン)
- 中小企業投資促進税制の延長や中小企業経営強化税制の拡充が盛り込まれたことにより、選果・荷役の自動化機器や冷蔵冷凍設備、物流管理ソフトウェアなどの導入投資について、特別償却や税額控除を活用した投資回収計画を立てやすくなります。
- 事業再編・共同化を検討する流通事業者
- 事業再編に伴う登録免許税の軽減や準備金制度の延長要望が示されたことで、産地物流の効率化に向けた事業統合や共同出資拠点の整備を進める際の初期税負担が緩和される可能性があります。
今後の税制改正プロセスと決定スケジュール
- 2026年8月31日: 農林水産省が令和9年度税制改正要望を公表(本文記載)。
- 2026年12月中旬予定: 与党(自民・公明)税制調査会による審議を経て「与党税制改正大綱」が取りまとめられる見通しです(例年の税制改正日程による)。
- 2027年1月予定: 政府「税制改正の大綱」が閣議決定され、通常国会へ税制改正法案が提出される見込みです(例年の税制改正日程による)。
- 2027年3月末予定: 通常国会で改正法案が可決・成立する見通しです(例年の国会日程による)。
- 2027年4月1日予定: 改正法の施行に伴い、各税制特例の新たな適用期間が開始される方針です(例年の施行日程による)。
今後の議論で確認すべき制度設計の焦点
- 軽油引取税の免税特例の3年延長要望が、年末の与党税制調査会等の議論において要望どおり採択されるかどうか。
- 中小企業経営強化税制の「拡充等」について、対象となる設備や要件の具体的な見直し内容がどのように定められるか。
- 「農地政策の見直しに伴う税制上の所要の措置」について、今後の法改正議論と連動して具体的な税目や減免要件がどのように提示されるか。
軽油引取税免税制度とスマート農業関連税制の現況
- 軽油引取税免税措置の背景: 地方税法附則第12条の2の7に基づく本措置は、令和6年度税制改正によって2027年3月31日まで3年間延長されていました。今回の要望は、同期限の到来に向けてさらに3年間の延長を求めるものです。なお、同制度は農業・林業のほか、港湾運送用機械や倉庫用機械(構内作業車等)など複数の特定動力用途も対象に含まれています。
- スマート農業関連税制の動向: スマート農業技術活用促進法に基づき、農業用ロボットや自動化機器の開発・供給計画についてこれまでに50件以上の計画認定が行われており、今回の要望でも関連設備への投資促進税制や登記軽減措置の延長が求められています。
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出典
- 発表主体: 農林水産省 / 発表日: 2026-08-31
- 令和9年度税制改正要望主要事項(PDF : 100KB)(PDF)
- 令和9年度税制改正要望(全体版)(PDF : 150KB)(PDF)
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