国際物流の複線化へ向けた実証輸送公募のポイント
国土交通省は2026年9月11日、国際情勢の緊迫化やサプライチェーン混乱に対応するため、「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送」の公募を開始しました。日系荷主企業や日系物流事業者を対象に、代替輸送ルート(BCPルート)の開発や既存ルートの集約的活用、日本を経由する国際複合輸送(Sea & Air等)などの実証輸送を募集し、調査協力費用として1輸送あたり原則100万円(2コンテナまでの場合は上限200万円)を支出する方針です。
サプライチェーン危機とこれまでの政策的経緯
国際情勢の悪化や気候変動による国際サプライチェーンの寸断リスクが高まる中、特定海域や単一輸送路に依存しない物流ルートの複線化(多元化・強靱化)が喫緊の課題となっています。
国土交通省は過年度より代替ルートの実証調査を継続しており、2026年8月25日には荷主企業や物流事業者など47の企業・団体が参加する「国際物流に関する官民コンソーシアム」の全体会議初会合を立ち上げました。今回の実証輸送公募は、同省が外部委託して進めている「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証調査および官民コンソーシアムの運営(令和7年度補正)」の一環として実施されるものです。
公募要領と実証輸送の4つの実施条件
実証輸送の公募概要および実施条件は以下の通りです。
- 公募期間・実施時期
- 公募期間:2026年9月11日(金)~2026年10月9日(金)必着。
- 実施時期:2026年10月~2027年1月を目途に実施。
- 対象事業者
- 日系荷主企業、日系物流事業者等(荷主と物流事業者の共同応募も可能。その際は代表企業を選定)。
- 荷主企業が応募する場合は輸送事業者の確保、物流事業者が応募する場合は輸送貨物の確保または荷主との調整が完了していることが条件。
- 実証輸送の対象条件(日本発着または日本をトランジットポイントとする輸送)
- ①過去に検討したBCPルートの深化(コスト高、所要日数、制度上の制約等の改善)。
- ②既存ルート活用の高度化(定期運行、複数荷主による共同輸送、複数コンテナ輸送などの集約モデル検証)。
- ③日本をトランジットポイントとした新たなルート開発(Sea & Air等の国際複合輸送開発)。
- ④既存ルートに代わる新たな国際物流ルートの開発(BCPルートとなり得る新規性のある輸送提案)。
- 主な検証事項
- 輸送コスト(輸送手段・区間別の内訳含む)。
- リードタイム(区間別内訳、滞留時間含む)。
- 輸送品質(振動・衝撃、温度・湿度等)。
- 輸送手続き(B/L、鉄道B/L、越境時の税関手続き等)。
- トレーサビリティおよびBCPルートとしての地政学・制裁リスク評価。
- 調査協力費用の支給
- 1輸送につき原則100万円(複数コンテナの場合は2コンテナまでを上限に200万円)。
- ※応募件数が少ない場合は支給金額が調整される可能性があります。
対象となる荷主および国際物流事業者
- 日系荷主企業:海外サプライチェーンを展開し、有事の調達・出荷ルートの複線化やBCP高度化を検討しているメーカーや商社など。
- 日系国際物流事業者・フォワーダー:新たな海上・航空・陸上複合輸送ルートの開発や、複数荷主の共同輸送・定期運行モデルの構築を目指す事業者。
荷主・フォワーダーの実務にどう関わるか
- 荷主企業(製造業・商社など)
- 何が変わりうるのか:平時の海上輸送にトラブルが生じた際にも供給網を止めない代替ルートについて、実輸送を通じたコスト、リードタイム、温度・振動等の輸送品質データを国の費用支援を活用して検証できるようになります。
- いつ頃見えてくるのか:実証輸送が実施される2026年10月~2027年1月にかけて、自社貨物の実務運用適性が確認できる見通しです。
- 国際物流事業者・フォワーダー
- 何が変わりうるのか:荷主との共同検証や日本中継の「Sea & Air」モデルなど、単一航路に頼らない高付加価値な複線化ソリューションの開発・営業検証が進めやすくなります。また、複数荷主のコンテナ混載や定期運行化に向けたオペレーション課題の洗い出しが可能になります。
- いつ頃見えてくるのか:2026年秋以降の実証輸送運行および通関・積み替えオペレーションを通じて、商業化に向けた採算性や制度的課題が浮き彫りになる見通しです。
公募から実証輸送実施までのスケジュール
- 2026年10月9日:実証輸送の公募締切。
- 2026年10月以降:国土交通省による審査・選定結果の通知、調査業務受託者との再委託契約締結、実証輸送の開始(開始時に参加事業者名がプレスリリース公表される予定)。
- 2026年10月~2027年1月目途:各採択ルートにおける実証輸送の実施。
- 実証輸送終了後:国土交通省主催の情報共有会合の開催や、受託者による報告書のとりまとめ・公表が予定されています(公表内容や範囲は事前に参加事業者と調整)。
商業化とBCP定着に向けた今後の焦点
- 通常ルート比のコスト増と実用性の見極め:先行実証では代替ルートのコストが通常比約2倍〜4.8倍に膨らんだ事例もあり、実証を通じてBCPルートとして許容可能なコスト水準に収まるか、また共同輸送による低減効果が得られるかが今後の焦点になります。
- 越境通関や積み替え拠点の制度的制約:トランジットポイントや第三国国境での保税輸送・通関手続き、書類処理(鉄道B/L等)が滞りなく運用できる実効性の確認は、今後の検証結果を待つ必要があります。
- 商業化・定期運行への移行可能性:単発の実証輸送にとどまらず、複数荷主による集約や定期便化といったビジネスベースの継続的な仕組みへ発展できるかが注目されます。
先行実証におけるコスト・運用の教訓
- 国土交通省が2026年5月に公表した過年度(2025年度)実証結果では、住友倉庫によるオマーン経由サウジアラビア向け海陸一貫ルート(コスト約2倍)、本田技研工業による豪州経由タイ向け迂回ルート(コスト約4.8倍、高湿度による木箱カビ発生の課題)、GWGロジスティクスによる上海経由ウズベキスタンルート(春節による滞留遅延)などが報告されており、今回の公募でもこれら先行事例で生じた課題の克服(BCPルートの深化)が重視されています。
よくある質問
Q. 実証輸送にかかる費用の支援金額はいくらですか?
A. 実証輸送の実施にあたり、調査協力に係る費用として1輸送につき原則100万円が支出されます。複数コンテナを使用する場合は、2コンテナまでを上限として200万円が支出されます(応募件数が少ない場合は支給金額が調整される可能性があります)。
Q. 荷主企業または物流事業者が単独で応募することはできますか?
A. 単独での応募も可能ですが、荷主企業が応募する場合は輸送を実施する物流事業者等との調整が完了していること、物流事業者が応募する場合は輸送する貨物の確保または荷主企業との調整が完了していることが要件とされています。また、両者が共同で応募することも可能です。
Q. 日系以外の荷主企業の貨物を実証輸送の対象にすることは可能ですか?
A. 日本をトランジットポイントとした国際複合輸送ルート(例:Sea & Air)の開発・検証を行う場合に限り、日系物流事業者の応募を前提として日系以外の荷主企業の貨物を輸送することが可能です(事前に窓口への相談が必要です)。
実務資料(公式ダウンロード)
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出典
- 発表主体: 物流・自動車局 物流政策課国際物流室 / 発表日: 2026-09-11
- 報道発表資料(PDF)
- 事業概要(PDF)
- 公募要領(PDF)
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