外国船舶の「貨物固縛」を集中検査、東京・パリMOUが連携
国土交通省海事局は、日本が加盟するアジア・太平洋地域のPSC協力体制「東京MOU」において、2026年9月1日から11月30日までの3カ月間、「貨物固縛方法」をテーマとする集中検査キャンペーン(CIC: Concentrated Inspection Campaign)を実施すると発表しました。欧州・北大西洋地域の28カ国で構成される「パリMOU」とも連携し、外国船舶におけるコンテナ荷崩れ事故や流失事故の再発防止を目的に、海上人命安全条約(SOLAS条約)への適合状況を国際合同で集中的に確認する方針です。
コンテナ流失事故防止へ、国際協調でPSCを強化する背景
国際条約の安全基準を満たさない劣悪な外国船舶(サブスタンダード船)を排除するため、寄港国が自国の港に入港する船舶へ立入検査を行う権利(PSC:ポート・ステート・コントロール)が認められています。東京MOUでは毎年テーマを定めて重点的な検査を実施しており、2026年はパリMOUと足並みをそろえ、コンテナの積載・積付け・固縛を同一テーマ・同時期で点検することになりました。近年、大型コンテナ船等における荷崩れや海上流失事故が国際的な課題となっており、世界的な輸送安全の確保が背景にあります。
集中検査キャンペーンの対象と3つの重点確認項目
発表された集中検査キャンペーンの体制および具体的な重点点検事項は以下の通りです。
- キャンペーンの概要
- 実施期間:2026年9月1日〜11月30日(3カ月間)
- 対象船舶:期間中に参加国・地域の港湾に入港する外国船舶
- 実施体制:東京MOU(アジア・太平洋の22カ国・地域)およびパリMOU(欧州・北大西洋の28カ国)の国際連携
- 重点確認事項
- SOLAS条約第VI章規則5に基づき、「貨物固縛マニュアル(CSM)」が船内に備え付けられていること。
- 荷役を担当する乗組員が、貨物ユニットおよび貨物輸送ユニットの積載、積付け、固縛に精通していること。
- 備え付けられた貨物固縛マニュアル(CSM)が適切に遵守されていること。
関係する事業者・関係者
- 外国籍のコンテナ船や貨物船を運航・管理する外航船社および船舶管理会社
- 対象船舶において貨物の積載・固縛・荷役作業を担当する船員
- 外航コンテナ船を利用して輸出入を行う荷主およびフォワーダー(利用運送事業者)
立場別に見る物流実務への影響
- 外航船社・船舶管理会社
- 2026年9月1日からの3カ月間、アジア・太平洋および欧州・北大西洋の寄港地において、貨物固縛マニュアルの整備状況や現場船員の理解度、固縛手順の履行状況が厳格に点検されます。重大な不適合が指摘された場合は是正まで出港停止処分を受ける可能性があり、航海スケジュール管理への影響が想定されます。
- 荷主・フォワーダー(利用運送事業者)
- 検査による本船の出港停止や是正待機が生じた場合、寄港スケジュールの遅延や接続港での接続遅れ、輸入貨物の引き渡し遅延につながるリスクがあります。また、コンテナの流失・倒壊防止には船側の固縛だけでなく陸側の適正な積載(偏荷重防止や固縛)や確定総重量(VGM)の適正申告も密接に関連するため、船社側による引受基準や積載状況の確認姿勢がより慎重になる可能性があります。
今後のスケジュールと報告の流れ
- 2026年9月1日〜11月30日:東京MOUおよびパリMOU加盟各国・地域において集中検査キャンペーン(CIC)を実施(本文記載)。
- 検査終了後:集計された検査データや指摘内容は両MOUの統轄機関へ報告され、将来的な国際基準やガイドライン改善検討のため国際海事機関(IMO)へ提出される見通しです(東京MOU/パリMOU共同プレスリリースの別途公表資料によれば)。
- 2027年5月頃:東京MOU事務局の年次報告書等を通じて、今回のキャンペーンにおける詳細な検査結果や出港停止隻数などの実績が公表される見込みです(過去の東京MOU公表実績によれば)。
今後の注目点と未確定の論点
- 今回の3カ月間で実際にどの程度の隻数に対し不適合の指摘や出港停止処分が出されるかは、今後の結果公表を待つ必要があります。
- 日本国内の各主要港において、具体的に何隻の外国船舶を対象に立入検査を実施するかの港別目標隻数は本文に示されていません。
- 本検査の結果をもとに、将来的にIMO等においてコンテナの固縛要件や荷崩れ防止に関する国際規則・運航基準のさらなる改定へ進むかどうかが中長期的な焦点となります。
過去の集中検査テーマとPSC実施実績
- 東京MOUにおける過去5年間の集中検査テーマは、2021年「船舶の復原性全般」、2022年「STCW条約全般」、2023年「船舶の火災安全対策」、2024年「船員の賃金及び雇用契約」、2025年「バラスト水管理」となっています。
- 東京MOUの年次報告によれば、2024年に域内で実施されたPSC検査総数は32,054件で、そのうち62.3%にあたる19,967件で欠陥が指摘され、重大な不適合による航行停止処分は1,189隻(処分率3.71%)に上っています。
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出典
- 発表主体: 海事局総務課 外国船舶監督業務調整室 / 発表日: 2026-08-19
- プレスリリース PSC集中検査キャンペーン(PDF)
- 掲載ページ
