外国人雇用の監督指導結果はどう公表されたか?
厚生労働省は、令和7年に全国の労働基準監督署等が外国人技能実習生および特定技能外国人を使用する事業場に対して実施した監督指導や送検等の状況を公表しました。
立入調査を実施した事業場のうち、技能実習生を使用する事業場の73.2%(9,619事業場)、特定技能外国人を使用する事業場の76.5%(6,179事業場)で労働基準関係法令違反が確認され、機械の安全基準や医師からの意見聴取、割増賃金未払のほか、フォークリフト無資格運転などの重大事案で送検が行われています。
監督指導公表の趣旨と厚労省の方針
全国の労働局や労働基準監督署では、技能実習生や特定技能外国人の適正な労働条件と安全衛生を確保するため、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して重点的な監督指導(立入調査)を実施しています。
重大・悪質な事案や度重なる指導に従わない事業者に対しては、送検を行うなど厳正に対処する方針が示されています。
外国人材の受入れ拡大と労基署の監視強化の経緯
外国人労働者を巡っては、2024年6月に技能実習制度を発展的に解消して「育成就労制度」を創設する改正法が公布され、2027年4月1日の施行が予定されています(出入国在留管理庁等の公表資料による)。
また、特定技能1号の対象分野に物流倉庫や自動車運送業が追加されるなど受け入れ枠が拡大する一方、外国人労働者が従事する現場における労働時間管理、安全衛生教育、適正な賃金支払の徹底に向け、労働基準監督署と出入国在留管理機関等による相互連携が強化されています。
対象となる事業者
外国人材を雇用している、または今後の受け入れを計画している以下の事業者に直接関係します。
- 技能実習生または特定技能外国人を受け入れている事業者
- 構内荷役、フォークリフト作業、仕分け・検品作業等に従事させる倉庫・3PL事業者。
- 運送、食料品製造、機械・金属製造、建設など、外国人材を雇用する事業者全般。
- 外国人労働者の労務・安全衛生管理を担当する企業
- 労働基準監督署の臨検監督(立入調査)の対象となる事業場。
立入調査で指摘されるリスクと送検事例の影響
監督指導の対象となった場合、以下の法令違反の指摘や司法処分の対象となるリスクがあります。
- 7割超の事業場で違反が発覚する高確率の指導リスク
- 監督指導が実施された事業場のうち、技能実習で73.2%、特定技能で76.5%と極めて高い割合で法令違反が認められています。
- 重大・悪質事案における刑事告発(送検)
- 令和7年には技能実習関係で26件、特定技能関係で9件の送検が実施されました。
- フォークリフトの無資格運転(労働安全衛生法第61条違反)や、特別条項の上限を超える違法な時間外労働および偽装記録の提出(労働基準法第32条・第120条違反)、労災かくし(労働安全衛生法第100条違反)など、代表者や法人が刑事責任を問われています。
- 行政機関間の情報共有による立入調査の連鎖
- 労働基準監督署と外国人技能実習機構や出入国在留管理機関との間で年間数百件〜2,000件規模の相互通報が行われており、他機関の調査端緒から労基署の立入調査や合同監督(技能実習54事業場、特定技能9事業場)へ発展しています。
フォークリフト運転・残業管理で事業者が遵守すべき実務ポイント
公表された主な違反事項および監督指導事例から、事業場において以下の実務対応が求められます(労働基準関係法令および本指導事例)。
- 荷役運搬機械・設備の安全基準と有資格作業の徹底
- 最大荷重1トン以上のフォークリフト運転には技能講習修了が必須であり、未修了者を運転業務に就かせないよう、作業内容と講習修了者の管理表を作成・周知すること。
- 機械の掃除、検査、修理、調整作業時には、機械が完全に停止したことを確認したうえで作業を行わせる手順を徹底すること。
- 外国人労働者が理解できるよう、母国語やイラスト付きの掲示物・作業手順書を用いた安全衛生教育を実施すること。
- 労働時間の客観的把握と36協定・割増賃金の遵守
- タイムカード等の客観的な方法で労働時間を把握し、36協定の限度時間(特別条項の適用回数・上限時間)を厳守すること。
- 週40時間超の労働や月60時間超の時間外労働に対する割増賃金(月60時間超は5割以上など)を漏れなく計算・支給すること。
- 健康診断の確実な実施と医師からの意見聴取
- 定期健康診断や業務に応じた健康診断(じん肺健診等)を実施し、異常所見者に対しては労働安全衛生法第66条の4に基づき医師等からの就業上の意見聴取を確実に実施して記録すること。
- 年次有給休暇の時季指定取得
- 10日以上の年次有給休暇が付与された労働者に対し、年5日の確実な時季指定取得を管理簿等で把握・履行させること。
物流倉庫分野の受入れ要件と現場コミュニケーションの動向
受入れ要件の厳格化と現場運用の動向として、以下の点が挙げられます。
- 物流倉庫分野における特定技能のDX上乗せ要件
- (LogiShift既報によれば)国土交通省は物流倉庫分野における特定技能1号の受入れ基準として、倉庫管理システム(WMS)の利活用やマテハン機器(AGV/AMR等)の活用を上乗せ基準として告示しており、デジタル化による生産性向上が受入れの前提条件とされています。
- 外国人労働者の受入れ現場におけるコミュニケーション課題
- (LogiShift既報によれば)厚生労働省の「外国人雇用実態調査」において、運輸・郵便業の事業所の46.0%が「日本語能力等のためコミュニケーションが取りにくい」ことを雇用管理の課題に挙げており、安全教育や指示伝達の多言語化が事故・労使トラブル防止の重要課題となっています。
よくある質問
Q. 監督指導において最も多く指摘されている違反事項は何ですか?
A. 技能実習生・特定技能外国人のいずれの事業場においても、最も多い違反は「使用する機械等の安全基準(労働安全衛生法第20〜25条)」(技能実習22.8%、特定技能20.7%)でした。次いで「健康診断結果についての医師等からの意見聴取(同法第66条の4)」(技能実習15.7%、特定技能16.7%)、「割増賃金の支払(労働基準法第37条)」(技能実習15.6%、特定技能16.3%)の順に多くなっています。
Q. 物流現場で関係する特定技能外国人の送検事例にはどのようなものがありますか?
A. 食料品製造業の工場において、法令で定めるフォークリフト運転の資格(技能講習)を有していない特定技能外国人に最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転させたとして、法人及び代表理事が労働安全衛生法第61条(就業制限)違反の疑いで送検された事例が公表されています。
Q. 労働基準監督署と出入国在留管理機関や技能実習機構との連携実態はどうなっていますか?
A. 法令違反の疑いがある事案について相互通報が行われており、令和7年には労基署から外国人技能実習機構へ674件(機構から労基署へ2,293件)、労基署から出入国在留管理機関へ502件(入管から労基署へ101件)の通報がなされました。また、強制労働等の人権侵害が疑われる事案に対しては合同監督・調査が実施されています(技能実習54事業場、特定技能9事業場)。
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出典
- 発出元: 厚生労働省 労働基準局監督課
- 文書番号: 記載なし / 発出日: 令和8年9月15日
- (別紙1)技能実習生を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(令和7年)[PDF形式:6.5MB](PDF)
- (別紙2)特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(令和7年)[PDF形式:505KB](PDF)
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