THOUZERとは?
THOUZER(サウザー)は、人手による重量物運搬や反復搬送の負担を抱える製造工場や物流倉庫の課題を解決する、株式会社Doogが開発・提供する協働運搬ロボットです。独自の走行制御技術により、Wi-Fiネットワークの敷設や大規模な現場改修工事を行うことなく、作業者や先行車両への自動追従、反射テープによるライントレース、自律走行(メモリトレース)を直感的なボタン操作で実現します。「現場主導で使いこなせる運搬アシストツール」として、1台からのスモールスタートから既存設備・上位システムとの連携まで柔軟に対応できる点が大きな特徴です。
主な機能
THOUZERには、現場の多様な運搬工程に対応するために複数の走行・制御機能が標準および拡張オプションとして備わっています。現場の運用実態に合わせて使い分けられる主要機能を3つの分類で解説します。
協働運搬・走行モード機能
- 作業者・台車への自動追従(Follow-Me)
機体に搭載された広視野レーザーセンサーが前方の作業者や先行する台車、別のTHOUZERを認識し、適切な距離を保ちながら自動で追従走行します。直進路幅80cm、直角路幅100cmの狭小通路でもスムーズに旋回・走行できるため、作業通路の狭い既存施設でも作業員の後ろについて荷物を運ぶ「協働ピッキング」が容易に行えます。 - 反射テープによるライントレース(Line Trace)
床面に市販の帰反射テープを貼り付けるだけで、テープに沿って自動走行する無人搬送モードです。複雑な走行プログラミングを組む必要がなく、ルート変更の際もテープを貼り直すだけで即座にコース変更が完了するため、レイアウト変更が頻繁に発生する現場でも運用負荷を低減できます。 - ティーチングによる自律走行(Memory Trace)
作業者がTHOUZERを始点から終点まで誘導して経路を記憶させることで、外部インフラや反射テープのない環境でも同一経路を無人で自動走行させる機能です。現場のレイアウトが変わった場合でも、再度手動でルートを走らせて記録し直すだけで設定が完了します。 - 直感的な手動操作・ジョイスティック操縦
機体上部のジョイスティックや操作ボタンを使用し、作業者が電動アシスト台車のように直感的に手動操縦できます。自動走行から手動操作への切り替えもシームレスに行えるため、突発的な荷物の移動や微調整作業にも即座に対応可能です。
搬送力・環境走破性能
- 多様な積載・牽引ラインナップ
標準モデル(サウザースタンダード)では最大積載重量120kg・牽引重量目安300kgに対応し、上位モデル(サウザージャイアント)では最大積載300kg・牽引600kg(カスタマイズにより1t超の牽引)まで対応可能です。既存の台車やかご車、パレット台車に専用アタッチメントを取り付けることで、既設の什器をそのまま牽引して運搬能力を高められます。 - 段差・スロープ・屋内外の走破性
最大3cmの段差走破能力や、最大積載時で6度の登坂能力を備えています。屋内の平坦路だけでなく、工場や倉庫の建屋間をまたぐ屋外アスファルト通路や緩やかなスロープ環境でも走行が可能です。 - 障害物検知と安全停止機能
水平方向を広範囲にスキャンするレーザーセンサーにより、進行方向上の作業者や障害物をリアルタイムに検知します。障害物を検知した際は自動で減速・停止し、安全が確保された後に走行を再開するため、人とロボットが混在する通路でも安全に稼働できます。
拡張性・システム連携機能(Eシリーズ)
- 経路の分岐・合流制御(ハイウェイ機能)
ライントレース走行時に磁気マーカーやコマンドマーカー等を組み合わせることで、複数経路の分岐・合流や特定の作業ステーションでの一時停止・発進を制御できます。固定ラインでの周回搬送だけでなく、工程間の複雑な配送フローを無人化できます。 - 上位システム(WMS/MES)連携・API通信
外部インターフェースを備えたEシリーズでは、無線通信を経由して倉庫管理システム(WMS)や生産管理システム(MES)からの指示を受け、目的のピッキングエリアへ自動配車したり、搬送完了のトリガーをシステムにフィードバックしたりすることが可能です。 - 周辺設備・上部機構カスタマイズ
昇降リフターやコンベア、RFIDリーダーなどの上部構造ユニットの搭載に対応するほか、自動ドアやエレベーターと連携信号をやり取りして別フロアへの階層間無人搬送を実現するカスタマイズにも対応しています。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
大がかりな設備工事を行わず、現場主導で段階的に搬送の自動化を進めたい企業
- 賃貸倉庫やレイアウト変更が多い工場で、固定インフラを設置できない課題
THOUZERはWi-Fi環境の構築や床面のQRコード埋め込み工事が不要で、反射テープの貼付や走行ティーチングのみで即日導入できます。レイアウト変更時も現場作業員の手でテープ貼り替えやルート再記録が完結するため、インフラ工事費や専門業者への再設定費用をかけずに運用を継続できます。 - ピッキング作業者の歩行負担が重く、搬送専従者を削減したい課題
作業者の後を自動追従させることで、手押し台車を押す肉体負荷を解消しながら、先行台車の牽引により1回の移動で従来の2倍以上の荷物を運搬できます。さらに集荷後はライントレース機能で出荷バースまで無人搬送させる組み合わせ運用により、作業者の往復歩行時間を大幅に圧縮できます。
工場敷地内の建屋間移動や、既存台車を活用した重量物搬送を効率化したい企業
- 別棟への荷物運搬でフォークリフトや有人牽引車に頼っており、人手が取られている課題
THOUZERは防滴仕様や屋外路面に対応しており、工場敷地内の建屋間をまたぐ屋外搬送路でも稼働可能です。ジャイアントモデルを活用して複数台の台車を連結牽引させることで、これまで専任オペレーターが行っていた長距離搬送工程を無人化・省力化できます。 - 現場で既に使われている専用治具やカゴ台車をそのまま流用したい課題
専用牽引ヒッチやカスタマイズ用アタッチメントを用いることで、現場に最適化された既存の台車・ラック・ハンドフォークをそのまま牽引できます。機材の全面買い替えを伴わずに導入できるため、初期投資を抑えつつ現場オペレーションの混乱を最小限に留められます。
向いていない企業・現場
数万点規模のSKUを高密度保管し、完全無人での棚搬送(GTP)を構築したい企業
- 人手を介さず保管棚ごとピッカーの手元へ自動供給する大規模自動化を求める課題
THOUZERは人と協働する台車型ロボットや工程間搬送を主体としており、専用ラックを持ち上げてグリッド状の空間を高密度走行する棚搬送型AMR(Goods-to-Person)とは設計思想が異なります。超大規模なECフルフィルメントセンターなどで完全自動ピッキングラインを構築したい場合は、ギークプラス(Geek+)などのGTPソリューションを検討する方が適しています。
公道上での長距離長大搬送や、悪天候・大型段差が連続する過酷な屋外搬送を求める企業
- 一般公道や未舗装の悪路、大型段差をトラック代替で高速長距離運行したい課題
THOUZERの標準モデルは敷地内や建屋間を想定した仕様(走破段差3cm、登坂6度まで)であり、一般公道の無人走行や未舗装の泥道・深い段差が連続する環境には対応していません。広大な敷地内道路を自動車規格に近いEV車両でレベル4自動運転走行させたい場合は、eve autoなどの屋外特化型自動搬送サービスを検討するのが適切です。
類似ツールとの比較
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| THOUZER | 自動追従・ライントレース・メモリトレースをボタン操作で切替可能。工事不要で既存台車の牽引にも対応。 | 要問い合わせ | 設備工事なしで1台から導入したい現場、作業員との協働運搬や建屋間搬送を効率化したい企業 |
| Geek+ | 棚搬送式(GTP)やソーティングに強みを持つAI搭載AMR。大規模な棚搬送と高密度保管を実現。 | 要問い合わせ | 膨大なSKUを扱い、保管効率向上とピッキング歩行ゼロを目指す大規模EC・物流センター |
| eve auto | EVカートと自動運転OSを組み合わせた屋外・建屋間特化型搬送。雨天や坂道、悪路走破に対応。 | 要問い合わせ | 広大な工場敷地内や物流拠点において、屋外の建屋間を無人レベル4で長距離搬送したい企業 |
| Lexx500 | カゴ車や6輪カートの下部に潜り込み・牽引を行うAMR。段差走破性と混流ライン適応力に強み。 | 要問い合わせ | 物流センターや製造工場でカゴ車・6輪カートの自動移送を既存環境のまま無人化したい現場 |
THOUZERと他社搬送ロボットの最大の違いは、「導入と運用のシンプルさ」にあります。Geek+などのGTP型AMRは専用ラックの設置や倉庫全体の空間設計、上位システム連携が前提となる大規模プロジェクト向けであるのに対し、THOUZERはWi-Fiすら不要で現場に届いたその日からテープ1本・ボタン1つで稼働を開始できる「現場完結型」の設計思想を持っています。
また、Lexx500のようにカゴ車の下に潜り込んで自律移動するAMRと比較した場合、THOUZERは無人自律走行だけでなく作業者への「自動追従」や「手動電動アシスト」を1台で柔軟に切り替えられる点が際立ちます。人とロボットが同じ動線で協働作業を行うピッキング現場や、工程ごとに有人・無人をフレキシブルに変更したい現場ではTHOUZERが有力な選択肢となります。
一方で、工場敷地全体の広大な道路網を複数建屋にまたがって自動走行させるような屋外長距離輸送においては、専用の自動運転EV車両を用いるeve autoのようなサービスが適している場合があります。自社の搬送距離、路面環境、既存什器の有無、システム連携の要否に応じて適したソリューションを選定することが重要です。
料金・プラン・導入方法
THOUZERの本体価格および導入費用は、公式には「要問い合わせ」となっています。機体のモデル(スタンダード、ジャイアント、ミニなど)や搭載するセンサー構成、牽引アタッチメント・上部機構の設計仕様、WMS連携の有無によって費用構成が変動します。
なお、代理店やレンタル事業者経由での取り扱い(例:オリックス・レンテックのロボットレンタルサービス等)による短期・中期のお試しレンタルプランが提供されているケースもあります。見積もりや導入検討を行う際には、以下のポイントを事前に確認することを推奨します。
- 導入モデルと許容荷重
運搬する荷物の総重量および牽引する台車の台数・重量に合わせた適切なモデル(スタンダード/ジャイアント等)の選定。 - アタッチメント・治具の製作費用
既存の台車やかご車、パレット等を連結・積載するための専用ヒッチや治具の設計・製作費の有無。 - オプション機能と保守契約
無人ライン走行キット、ハイウェイ機能、安全系オプションセット、保証延長サービスの加入条件。
導入の流れ・期間
THOUZERの導入は、一般的な物流・搬送ロボットと比べて現地工事が少なくスピーディに進行します。公式情報および標準的な導入フローは以下の通りです(具体的な導入期間は仕様や台数により異なるため要問い合わせ)。
- 1. 問い合わせ・ヒアリング
搬送物(形状・重量)、走行ルートの環境(通路幅・段差・傾斜・屋内外)、搬送プロセスの現状課題をベンダーや販売パートナーに相談します。 - 2. 実機デモ・走行検証(トライアル)
実際の現場環境に実機を持ち込み、通路幅の通過性、段差や傾斜の走破性、自動追従やライントレースの動作確認を実施します。 - 3. 仕様決定・見積もり
本体構成、必要なアタッチメント治具、安全センサーの構成を確定し、見積もりおよび投資対効果の確認を行います。 - 4. 発注・契約
購入またはレンタル契約を締結します。 - 5. 納品・現場セッティング
機体の開梱、反射テープの貼付(ライントレース時)やルートティーチング(メモリトレース時)を実施します。専門的なプログラミング作業は不要です。 - 6. 安全教育・運用開始
現場作業者への操作説明および安全教育を実施した上で、本番稼働を開始します。
導入事例・実績
THOUZERは製造業の工場や物流倉庫など、多様な現場で導入されています。公式およびメディア等で公開されている具体的な導入事例を紹介します。
丸二倉庫株式会社(Maruni Logistics JP)
物流現場における棚卸し業務や階層間搬送の効率化を目指し、THOUZER Eシリーズをベースとしたカスタマイズ機を導入しました。メモリトレース機能を活用して機体にRFIDスキャンシステムを搭載し、倉庫内の定期的な在庫読み取り巡回を無人化。さらに、エレベーター連携システムおよびハイウェイ機能を組み合わせることで、別フロアへの荷物搬送工程を無人化する運用を実現しています。
株式会社ハリガイ工業
製造現場における資材や部品の工程間搬送においてTHOUZERを導入。作業者が付きっきりで行っていた重量物の運搬作業をロボットの自動走行に置き換えることで、省人化と作業者の身体的負荷低減を達成しています。
株式会社ワイビーエー
現場要件に合わせた販売パートナーによるカスタマイズを経てTHOUZERを実稼働現場に導入。反復的な運搬作業の自動化により、現場オペレーションの効率化を進めています。
ロジスティードグループ(旧日立物流グループ)
物流センター内のピッキング業務、補充業務、運搬作業の省人化を目的にTHOUZERを活用。作業者への自動追従による複数台車搬送や、ライントレースによる集荷エリアへの無人搬送を組み合わせることで、ピッキング作業員の歩行工数削減と作業効率向上を図っています。
導入前に知っておきたいこと
THOUZERを安全かつ効果的に運用するためには、製品の特性や制約事項を事前に把握しておく必要があります。公式マニュアルや公開情報から確認できる注意点は以下の通りです。
- センサー検知の高さと対象物の制約
標準搭載されているレーザーセンサーの検出高さは約300〜320mmです。この高さを外れる突起物、宙に浮いた障害物、極端に低い段差は検知できない場合があります。また、透明なガラスやアクリル、高光沢の鏡面などはレーザーが透過・乱反射して検知できないことがあるため、走行ルート上の環境整備や追加センサーの検討が必要です。 - 牽引時の安全検証と制動距離
台車等を牽引して運用する場合、牽引重量や床面の摩擦係数によって制動距離(ブレーキ停止距離)が伸びる傾向があります。急な飛び出しや下り坂での慣性力に配慮し、事前に十分なリスクアセスメントと走行速度制限の設定、安全ルールの策定が求められます。 - 路面状態と天候の限界
最大3cmの段差走破性や6度の登坂能力を備えていますが、深い溝、滑りやすい油膜路面、水たまりが深く溜まった冠水路面などでの走行はスリップやセンサー異常の原因となります。屋外走行を行う場合でも、走行路の清掃や排水状態の確認が必要です。
よくある質問(FAQ)
- 導入にあたり、倉庫や工場内にWi-Fi環境の構築は必須ですか?
- いいえ、必須ではありません。THOUZERの標準的な追従走行、ライントレース走行、メモリトレース走行はロボット本体内部の制御システムで完結しているため、外部ネットワーク環境や通信工事なしですぐに稼働させることができます(上位WMS連携などを行う場合は要問い合わせ)。
- 操作用のスマートフォンアプリやタブレットは必要ですか?
- 基本的な走行やルート設定は、機体上部に搭載されたボタンやジョイスティックのみで操作可能です。複雑な専用端末やPCアプリケーションを日常的に操作する必要がないため、機械操作に不慣れな現場スタッフでも直感的に扱えます。
- 導入前に自社現場でのデモや無料トライアルは可能ですか?
- 株式会社Doogおよび正規販売代理店にて、実機を用いたデモ走行や現場適合性の検証が案内されています。また、事業者によっては短期のお試しレンタルプランが用意されている場合がありますので、公式サイトまたは販売窓口へご相談ください。
- バッテリー駆動時間と充電方法はどうなっていますか?
- モデルにより異なりますが、サウザースタンダードの場合で最大約20kmの航続距離を備えています。充電は専用充電器を用いて行います。運用の稼働シフトに応じた充電運用方法については販売事業者への確認を推奨します。
- 複数台のTHOUZERを同時に追従させる「カルガモ走行」は可能ですか?
- 可能です。先頭の作業者や車両に1台目のTHOUZERが追従し、その1台目に2台目、3台目と連続して追従させることで、1人の誘導で大量の荷物を一度に搬送するカルガモ走行に対応しています。
- サポート体制や故障時の対応窓口はどうなっていますか?
- 製造元である株式会社Doogに加え、国内外の正規ディストリビューター・システムインテグレーター各社によるサポート網が整備されています。保証プランや定期メンテナンス契約の詳細については、導入窓口となる販売事業者へお問い合わせください。