ヤマト運輸は2026年10月28日、CBcloudが運営する配送プラットフォーム「PickGo(ピックゴー)」と連携し、新サービス「クロネコ軽貨物チャーター」の提供を開始した。本サービスは法人向け会員サービス「ヤマトビジネスメンバーズ」の登録企業約180万社を対象とし、オンライン発注から最短1分で全国の軽貨物車両を手配できる体制を整えている。
「クロネコ軽貨物チャーター」のサービス概要と手配スキーム
「クロネコ軽貨物チャーター」は、突発的な部材不足による緊急輸送や一時的な出荷急増、中継拠点を挟めない精密機器の直送といったスポット輸送需要に特化した法人向け配送サービスである。ヤマトビジネスメンバーズ(YBM)の専用ポータルサイトから利用条件を入力することで、見積もり・配車・運行状況の追跡・決済までを同一画面上で処理できる。
サービス仕様と運行プロセスの整理
本サービスにおける発注から決済までの仕様と各主体の役割分担は以下の通りである。
| 項目 | 詳細内容 | 実務上の特徴 |
|---|---|---|
| 提供開始日 | 2026年10月28日 | 即日全国でサービス利用が可能 |
| 提携主体 | ヤマト運輸株式会社、CBcloud株式会社 | 宅配インフラとギグエコノミープラットフォームの連携 |
| 対象顧客 | ヤマトビジネスメンバーズ(YBM)登録企業(約180万社) | 既存のYBMアカウントから追加契約不要で利用可能 |
| 配車・集荷スピード | 手配完了まで最短1分、集荷先急行まで最短30分 | 24時間365日の運行・受発注に対応 |
| 車両・ドライバー基盤 | 全国10万人超の登録配送パートナー(軽貨物車両中心) | 2025年実績の成約率は96.5% |
| 契約関係と決済 | 運送契約は荷主とCBcloud間で締結、請求はヤマト運輸が一括 | 月々の宅急便運賃と合算請求 |
発注者はYBMの管理画面から集荷先・配達先・集荷日時・荷姿などの運行要件を入力する。リクエストが送信されると、CBcloudのアルゴリズムが周辺を待機・走行している登録ドライバーへ即座に案件を通知し、最短1分で車両が確定する。手配完了後は、配送ドライバーの現在地や荷物の配送ステータスが管理画面上でリアルタイムに地図表示され、集荷先へは依頼から最短30分で直行する。
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運送契約と請求処理の分離構造
実務上の大きな特徴は、法的な運送契約と経理上の請求処理が分離されている点にある。
貨物の運送契約そのものは、サービスを利用する荷主企業と実運送プラットフォームを運営するCBcloudとの間で直接締結される。一方で、利用料金の請求業務はヤマト運輸が代行し、荷主が毎月支払っている既存の宅急便運賃と合算して一括請求される。
従来のスポット傭車では、新規の運送会社を利用するたびに取引口座の開設、与信審査、個別契約書の締結が必要であった。現場で現金立替払いを行ったり、締め日ごとに届く個別の請求書を手作業で突合したりする事務負担が発生していたが、本サービスの導入により、既存の売掛決済ラインを利用してスポットチャーター便を即時調達できる。
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サプライチェーン各層に波及する実務的な影響
大手宅配キャリアの顧客基盤とオープン型配送プラットフォームの統合は、荷主企業、運送会社、配送ドライバーの各オペレーションに具体的な変化を与える。
製造業者・荷主企業:電話手配と小口精算の完全排除
製造工場や卸売拠点における最大の改善点は、緊急輸送時における手配リードタイムの短縮と間接業務コストの削減である。
工場の製造ライン停止を回避するための補修部品調達や、店舗への緊急追加納品が発生した場合、現場管理者は複数の運送会社へ電話をかけ、空車状況と見積もりを確認する必要があった。電話口での調整に30分から1時間以上を要することも珍しくなく、車両の現在地追跡もドライバーへの電話確認に頼っていた。
「クロネコ軽貨物チャーター」を利用することで、画面上での要件入力のみで手配が完了し、最短30分で集荷が開始される。さらに、貸切便であるため積み替え拠点(ハブターミナル)を経由せず、発地から着地へダイレクトに輸送される。これにより、精密機器や試作品など、梱包に制約があり破損リスクを避けたい貨物の安全輸送が可能になる。経理面でも個別精算が不要となり、月末の請求処理が既存の宅急便請求書1枚に統合されるため、管理部門の伝票処理工数が大幅に圧縮される。
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運送事業者:自前主義からの脱却とアセットライト調達
物流事業者や中堅運送会社にとっては、自社で保有する車両数以上の輸送需要が発生した際の「外注コントロール」が容易になる。
荷主からの突発的な依頼に対して自社便が満車の場合、従来の配車担当者は個人的なネットワークや水屋(利用運送事業者)に頼って傭車を探していた。しかし、ドライバーの労働時間規制が厳格化する中で、突発的な電話依頼で車両を確保することは難易度を増している。
自社の配送網をYBM経由でCBcloudの10万人ネットワークと接続することで、自社で車両やドライバーを追加雇用することなく、実質的な輸送キャパシティを外部拡張できる。自社リソースを定期便や基幹ルートに集中させ、突発的な波動分をプラットフォームへ逃がす運用が定着すれば、固定費の肥大化を抑えつつ受託機会の損失を防ぐことが可能になる。
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配送ドライバー:大手法人のスポット案件獲得と稼働率向上
個人事業主を中心とする軽貨物ドライバーにとっては、高単価な法人チャーター案件へのアクセスルートが直接提供される。
従来の個人向けラストワンマイル配送は、1個あたりの単価が低く、不在再配達や階段昇降による身体的負担が大きい傾向にあった。また、個人の軽貨物事業者が独自に大手メーカーや流通企業のチャーター契約を獲得することは、与信や営業体制の観点から極めて困難であった。
本連携により、約180万社の法人会員から発注される緊急部材輸送や工場間直送といった業務が直接アプリに配信される。チャーター便は1運行あたりの拘束時間や走行距離に応じた運賃設定となるため、宅配個数に依存しない安定した売上を確保しやすくなる。定期案件の合間や配送終了後の復路において、周辺で発生したスポット案件を受注することで、空車回送時間を最小化し、日々の稼働効率を引き上げられる。
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LogiShiftの視点:メガキャリアによる「オープンプラットフォーム包摂」の構造
ヤマト運輸による「クロネコ軽貨物チャーター」の開始は、大手宅配事業者が自前のネットワークだけで全需要を抱え込むモデルから、外部のギグエコノミー型プラットフォームを機能単位で組み込むモデルへと舵を切った実例である。
これまでヤマト運輸は、全国に張り巡らせた自社ターミナルと車両、専属ドライバーによる高品質なネットワークを競争力の源泉としてきた。しかし、出荷波動に伴う突発的なチャーター需要や24時間体制の即時集荷に自社アセットのみで対応することは、車両の待機コストやドライバーの時間外労働を増加させる要因となる。
そこで、顧客接点(180万社を抱えるYBMのインターフェース)と決済機能(既存の運賃請求インフラ)を自社で抑えつつ、運行実務は10万人超のドライバーを抱えるCBcloudに委ねる手法を選択した。CBcloudはすでに日本GLPの物流施設向け配送サービス「MarqGO」などにもシステムを提供しており、物流不動産や大手キャリアの「裏側」を支える配車エンジンとしての存在感を高めている。
自社インフラに固執せず、プラットフォームの機動力を自社ブランドのサービスとして再構築する戦略は、固定資産を抱え込まずに輸送力を柔軟化させる実践的なアプローチである。荷主企業にとっても、使い慣れたヤマトの管理画面と請求ルートのまま、外部のフリーランスネットワークを安全に調達できる実利的な環境が整ったといえる。
参考記事: 日本GLPの「MarqGO」とは?CBcloud連携で最短1分配車・運賃5%引を実現する新配送PF
まとめ:明日から現場で実践すべき2つのアクション
突発的な輸送課題を抱える現場管理者が、即座にオペレーションへ反映できる実務対応は以下の2点である。
- 自社のYBMアカウントにおける配車権限と利用設定の事前確認
自社の出荷現場や工場で「ヤマトビジネスメンバーズ」のIDがどのように管理されているかを棚卸しする。緊急配送が発生した際に現場担当者が即座に「クロネコ軽貨物チャーター」を発注できるよう、ログイン権限や利用可能部署の範囲をあらかじめ設定しておくことで、トラブル発生時の手配リードタイムを最小化できる。
- 突発輸送時における「電話傭車」から「デジタル直行便」へのルール切り替え
ライン停止や納品トラブル時に、担当者が過去の名刺を頼りに電話やFAXで傭車を探す属人的な業務フローを廃止する。YBM画面からの直行便手配を標準手順(SOP)としてマニュアル化し、配車確定までの時間計測やリアルタイム動態追跡を活用した納品先への到着予定通知をルール化することで、現場の対応工数と輸送事故リスクを抑制できる。
出典: LOGI-BIZ online
出典: ヤマトホールディングス プレスリリース



