メタノール燃料船の安全基準改訂で何が決まった?
国際海事機関(IMO)の第12回貨物運送小委員会(CCC 12)において、メタノール又はエタノールを燃料とする船舶の安全基準の改訂案に合意したほか、船上二酸化炭素回収・貯蔵システム(OCCS)の安全基準策定に向けた検討が開始されました。メタノール等燃料船の改訂案は、2027年6月に開催予定の第113回海上安全委員会(MSC 113)で承認される見込みです。
国際基準改訂とOCCS検討開始の背景
国際海運分野の脱炭素化に向け、メタノールやエタノールを燃料とする船舶の実用化が世界的に進展しています。これらを使用する船舶の安全を確保する国際基準として2020年に「メタノール・エタノール燃料船暫定安全ガイドライン」が策定されましたが、その後の技術的知見の蓄積を踏まえて改訂が検討されてきました。あわせて、温室効果ガス(GHG)排出削減を支援する枠組みづくりの一環として、排ガスからCO2を回収・貯蔵するOCCSの安全基準策定も求められていました。
CCC 12会合における主な合意内容
今次会合で合意および検討が開始された主な内容は以下の通りです。
- メタノール又はエタノール燃料船の安全基準の改訂
- 新たに「乗組員の保護」に関する章を追加し、全18章から成る改訂ガイドライン案に合意。
- 船上の燃料補給場所に関する漏えい検知・換気要件の強化および配置要件を明確化。
- 燃料タンクの配置要件や燃料調整室の換気要件を合理化するなど、日本からの具体的な提案が多く反映。
- 船上二酸化炭素回収・貯蔵システム(OCCS)の安全基準策定
- 船舶から排出される二酸化炭素を回収・貯蔵するOCCSの安全基準について検討を開始。
- 「目標指向型・技術中立」を基本とするガイドラインを策定する方針で合意。
- 詳細な検討を進めるため、通信部会(Correspondence Group)を設置することを決定。
関係する事業者・関係者
- 外航海運事業者(オーシャンキャリア)
- 代替燃料船の導入や運航を計画・検討している事業者。
- 造船事業者および舶用機器メーカー
- メタノール燃料船やOCCS関連機器の設計・開発・建造を行う事業者。
- 国際サプライチェーンを利用する荷主企業
- Scope 3排出削減に向けて海上輸送の脱炭素化を推進する荷主。
海運・造船の実務にどう関わるか
- 外航海運事業者(オーシャンキャリア)
- 燃料補給場所の配置や漏えい検知の要件が明確化される一方、タンク配置や換気要件が合理化されることで、新造船の導入計画や船内配置設計における判断基準が明確になります。また、乗組員の保護に関する章が新設されるため、船内安全管理マニュアルや運用体制の見直し検討に繋がる見通しです。
- 造船・舶用機器メーカー
- 国際的な基準の合理化により、設計の自由度向上やコスト適正化が図りやすくなります。また、OCCSに関して「目標指向型・技術中立」の策定方針が合意されたことで、特定の技術方式に偏らない開発を進めやすくなる環境が整いつつあります。
- 荷主企業
- メタノール燃料船の安全基準が整うことで、代替燃料船の普及が進み、将来的な環境配慮型輸送サービスの選択肢拡大や、物流サプライチェーン全体のGHG排出量可視化・削減に寄与する可能性があります。
今後の審議スケジュールとMSC承認の見通し
- 2026年9月14日〜18日
- 英国ロンドンのIMO本部にて第12回貨物運送小委員会(CCC 12)が開催され、改訂案に合意(完了)。
- 2027年6月
- 第113回海上安全委員会(MSC 113)において、合意された改訂ガイドライン案が承認される見込み。
- 2027年以降
- OCCSの安全基準について、通信部会での作業を経てCCC 13へ報告され、継続して検討が進められる見通し(DNVの別途公表資料によれば、ガイドラインの最終承認は2028年〜2029年頃となる見込み)。
正式承認や国内基準反映に向けた今後の焦点
- 正式承認までの現行基準の適用関係
- 今回合意された内容は小委員会レベルの合意案であり、2027年6月のMSC 113で承認されるまでは2020年策定の暫定ガイドライン(MSC.1/Circ.1621)が有効な国際基準となります。承認までの期間に新造計画を進める場合の船級協会等の取り扱いが確認点となります。
- 国内技術基準への取り込み時期
- 国際ガイドラインの改訂承認後、日本の船舶安全法などの国内法・技術基準へどのような時期と形式で反映されるかは現時点で公表されていません。
- OCCS通信部会での具体的な安全要件の議論
- 目標指向型・技術中立の方針は定まったものの、液化貯蔵や排出ガス処理に関する具体的な設備基準がどこまで具体化されるかは今後の通信部会の審議次第となります。
代替燃料船の普及と国の支援施策
- メタノール燃料船の世界的な普及状況
- DNVの公表データによれば、世界の運航中および発注済みのメタノール対応船は450隻を超えており(2025年12月時点)、コンテナ船を中心に普及が進展しています。
- 国内における代替燃料船への支援
- 国土交通省および環境省は、内航・外航の脱炭素化に向けて「ゼロエミッション船等の導入支援事業」などの補助事業を展開しており、メタノール燃料船などの導入を資金面からも後押ししています。
よくある質問
Q. メタノール・エタノール燃料船の改訂ガイドライン案はいつ正式に承認されますか?
A. 2027年6月に開催予定の第113回海上安全委員会(MSC 113)において承認される見込みです。
Q. 改訂ガイドライン案には具体的にどのような内容が含まれていますか?
A. 新たに「乗組員の保護」に関する章が追加されて全18章構成となったほか、燃料補給場所の漏えい検知・換気要件の強化、燃料タンクの配置要件および燃料調整室の換気要件の合理化などが反映されています。
Q. 船上二酸化炭素回収・貯蔵システム(OCCS)の基準策定はどのように進められますか?
A. 目標指向型・技術中立を基本とするガイドラインを策定する方針で合意され、今後は新設される通信部会において詳細な検討が進められます。
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出典
- 発表主体: 国土交通省 / 発表日: 2026-09-24
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