車輪脱落事故防止キャンペーンの概要
国土交通省は、令和7年度における大型車の車輪脱落事故発生件数が前年度から8件増加して128件となったことを公表しました。事故の約5割が冬用タイヤ交換時期にあたる11月から1月に集中し、9割以上が左後輪で発生している状況を受け、2026年(令和8年)10月から2027年(令和9年)2月にかけて関係団体と連携した「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を実施する方針を示しました。
キャンペーン実施の背景と要因分析
大型車の車輪脱落事故防止に向けては、令和4年(2022年)2月に「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」が設置され、要因の調査や分析が進められてきました。これまでの分析において、多くの事故車両でタイヤ脱着時のさび取り清掃、潤滑剤の塗布、ホイール・ナットの回転確認が不十分であることや、脱着後の増し締めおよび日常点検での緩み確認が確実に実施されていない実態が確認されています。冬用タイヤ交換時期を控え、改めて適切な作業と保守管理の徹底を周知する目的で本発表が行われました。
令和7年度の事故発生状況と不備分析の詳細
公表された令和7年度の車輪脱落事故発生状況(128件)の詳細およびキャンペーンの主な取り組み内容は以下の通りです。
- 車輪脱落事故の発生状況
- 発生件数・人的被害:発生件数は128件(令和6年度は120件)。うち人身事故が3件発生し、3名が軽傷を負った。
- 時期・期間:全体の50%(64件)が11月〜1月の冬季3ヶ月間に発生。また、タイヤ脱着作業後1ヶ月以内の発生が約54%(69件)を占めた。
- 発生部位・地域:脱落した車輪の位置は約95%が「左後輪」。事故発生場所・使用の本拠ともに北海道、東北、北信などの降雪地域で多く発生している。
- 車歴・作業内容:初度登録年から4年経過以降の車両に多く発生。作業内容別では約85%が冬用タイヤ交換等による脱着後の脱落であった。
- 作業実施者と不備要因の内訳
- 作業実施者:大型車の使用者自身による作業が56%、タイヤ専業店が27%、自動車整備事業者が13%。
- 不備の内容:不備要因全体では作業時不備が55%、保守管理不備が42%。作業実施者の属性にかかわらず「締付力管理不備」が最も多く、潤滑剤の不適切な塗布も多く確認された。整備事業者の映像記録調査では、締付力管理不備12件中6件でホイール・ナットの締め忘れが確認された。
- 車両調査の結果:事故車両89台の調査では、ワッシャの固着、潤滑剤の未塗布、ボルト・ナットやハブの著しいさび、ゴミの付着などが確認された。
- キャンペーンの主な取り組み(令和8年10月〜令和9年2月)
- 運送事業者、タイヤショップ、整備事業者等に対し、チラシ、ポスター、SNS、各種研修等を通じて適切な作業や保守管理の徹底を周知。
- 大型トラック運送事業者の経営者層に対し、社内関係者へ危険性を伝達し作業・管理を徹底するよう周知。
- 車輪脱落予兆検知装置の普及促進。
対象となる運送事業者・整備関係者
- 大型トラック等を運行する貨物自動車運送事業者
- 自社でタイヤ脱着作業を行う運送事業者、および日常点検・運行管理を担う運行管理者・ドライバー。
- タイヤ専業店・自動車整備事業者
- 大型車のタイヤ脱着作業や点検整備を受託する整備工場および専業店舗。
立場別の実務への影響
- トラック運送事業者
- 冬用タイヤへの交換作業が増加する秋から冬にかけて、自社で作業を行う際の手順(清掃、潤滑剤塗布、規定トルクによる締付)の再確認が進む見通しです。また、事故の半数以上が作業後1ヶ月以内に発生している統計から、脱着後の初期走行を経た「増し締め」の確実な運用や、日常点検でのナット緩み確認を運行前点呼等と連動させて強化する動きにつながりやすくなります。
- タイヤ専業店・自動車整備事業者
- 作業受託時におけるトルク管理や締め忘れ防止の工程管理が改めて着目されます。整備事業者の作業であっても締め忘れの事例が確認されたことを受け、作業手順の二重チェックや作業記録の保存といったミス防止策の再点検が進む契機となります。
今後のスケジュールと見通し
- 2026年(令和8年)10月〜2027年(令和9年)2月:関係団体と連携した「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」が実施され、チラシ・SNS・研修等を通じた集中周知が行われます。
- (調査・分析検討会の別途公表資料によれば)大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会は2022年12月に中間取りまとめを公表していますが、将来的な装置義務化などの新たな法令スケジュールについては現時点で公表されていません。
今後の注目点
- 車輪脱落予兆検知装置の普及施策の進展
- キャンペーンの取り組みに掲げられた検知装置の普及促進について、導入を後押しする補助事業の継続性や対象機器の要件がどのように推移するかが今後の焦点となります。
- 使用者作業における保守管理の実効性向上策
- 事故の56%が大型車使用者自身による作業後である実態に対し、注意喚起にとどまらず、社内点検体制を実質的に担保するための具体的な手法や支援策が示されるかは現時点で明らかになっていません。
関連する行政動向と支援制度
- 国土交通省では、大型車の車輪脱落事故抑止を目的に、先進安全自動車(ASV)導入支援事業を通じて後付けの「車輪脱落予兆検知装置」に対する補助金交付を実施してきた経緯があります。
- 行政処分の運用面においても、車輪脱落事故を惹起した自動車運送事業者および整備管理者に対する処分基準が厳格化(令和5年10月施行)されるなど、安全管理の徹底に向けた環境整備が進められています。
よくある質問
Q. 令和7年度の大型車車輪脱落事故にはどのような傾向がありますか?
A. 発表資料によると、発生件数は128件で前年度から8件増加しています。全体の約50%(64件)が11月〜1月の冬季3ヶ月間に発生し、脱着作業後1ヶ月以内の発生が約54%(69件)を占めています。また、脱落部位の約95%が左後輪である点が大きな特徴です。
Q. 脱落事故の主な要因としてどのような不備が確認されていますか?
A. 発表資料によると、要因の内訳は作業時不備が55%、保守管理不備が42%です。具体的な内容では作業者を問わず締付力管理の不備が最も多く、潤滑剤の不適切な塗布、清掃不備、増し締め未実施、日常点検時の確認不備などが確認されています。
Q. 車輪脱落事故防止キャンペーンの実施期間と主な取り組みはどのようなものですか?
A. 実施期間は令和8年10月から令和9年2月までです。運送事業者や整備店等に対するチラシ・ポスター・SNS・研修を通じた周知、大型トラック事業者の経営者層への危険性伝達、および車輪脱落予兆検知装置の普及促進が主な取り組みとして挙げられています。
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出典
- 発表主体: 物流・自動車局 自動車整備課 / 発表日: 2026-10-01
- 報道発表資料(PDF)
- (別紙1)令和7年度大型車の車輪脱落事故発生状況(PDF)
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