四国運輸局管内でトラック運送事業者1社を処分、労働局通報端緒の監査概要
四国運輸局自動車運送事業安全監理室は、2026年9月2日付でトラック運送事業者に対する行政処分の状況を公表しました。
今回の公表では、労働局からの通報を端緒として2026年8月18日に実施された監査に基づき、トラック運送事業者1社(1営業所)に対して「文書警告」の行政処分が行われました。
監査の結果、乗務員の健康状態の把握不備をはじめ、業務記録の記載不備、運転者等台帳の不適切な記録という合計3件の法令違反が確認されており、日常的な運行管理や労務記録の徹底が強く求められる内容となっています。
処分の内訳:文書警告1件とその事業運営上の位置づけ
| 処分の種類 | 件数 | 事業者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 文書警告 | 1 | 車両使用停止や違反点数の付与は伴わないものの、違反事実が文書により厳重注意され、再発防止の徹底が求められる状態 |
文書警告と違反点数0点の意味、累積リスクの仕組み
トラック運送事業者の行政処分において、車両使用停止処分が科される際には「日車(にっしゃ)」という単位が用いられ、例えば10台を10日間使用停止にする場合は100日車となります。
違反点数は原則として使用停止10日車ごとに1点が付与され、同一運輸局管内で過去3年間にわたり累積管理されます。
累積点数が51点〜80点に達すると事業停止処分、81点以上で事業許可取消処分という致命的な措置に直結するため、日車の発生や点数の累積は事業継続に決定的な影響を及ぼします。今回の文書警告では車両停止や付与点数は0点にとどまるものの、再発や累積違反を防ぐための確実な是正が不可欠です。
主な違反類型:乗務員の健康把握・業務記録・運転者等台帳の不備集中
乗務員の健康状態把握・疾病運行防止(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項)
(1) 法令および通達が求めていること
貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項において、事業者は疾病、疲労その他の理由により安全な運転ができないおそれがある運転者を事業用自動車に乗務させてはならないと定められています。運送事業者には、過労運転の防止とともに、乗務前後の点呼時における確認や定期健康診断の確実な受診を通じて、乗務員の健康状態を正確に把握し、健康起因による事故を未然に防止する体制を確立することが義務付けられています。
(2) 今回確認された不備の具体的内容
今回の監査においては、乗務員等の健康状態の把握が確実になされていなかった事実が違反として認定されました。乗務前の点呼時などにおける健康状態の確認や問診が形式化していたこと、あるいは健康状態に疑義や異常があるドライバーの体調変化を組織として適切にキャッチアップできていなかった管理不備が指摘されています。
(3) 自社点検の着眼点
自社点検においては、定期健康診断を全運転者に確実に受診させ、異常所見がある場合の事後措置や再検査の受診状況を台帳等で管理できているかを確認する必要があります。さらに、乗務前点呼において顔色や体調申告、問診による健康確認を形骸化させず、少しでも体調不良や過労の兆候が認められる場合には、運行管理者が乗務を確実に中止・交代させる判断フローが現場で機能しているかを点検することが求められます。
運転者等の業務記録の作成および保存(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条)
(1) 法令および通達が求めていること
安全規則第8条では、運転者が事業用自動車に乗務した際、業務の開始および終了の地点・日時、主な経過地点、乗務した自動車の登録番号、休憩および睡眠の地点・日時など、法令で定められた所定の事項を運転者ごとに確実に記録させ、その記録を所定期間保存することが義務付けられています。この業務記録(運転日報)は、適切な労務管理や過労運転防止の基盤となる重要書類です。
(2) 今回確認された不備の具体的内容
今回の事案では、運転者等の業務について定められた法定事項の記録が確実になされていなかったことが確認されました。運転日報における乗務の開始・終了時刻や休憩地点・日時の記載漏れ、あるいは記録そのものが作成されていなかったり、記載内容が実際の運行実態と整合していなかったりする実態が監査により認定されています。
(3) 自社点検の着眼点
自社点検においては、提出された運転日報に法定記載事項(乗務開始・終了日時、経過地、休憩場所および時間等)の脱漏がないかを日々チェックする体制が整っているかを確認します。また、運行記録計(デジタコ等)の時刻ログやETCの通過記録、タイムカードの出退勤実績と業務記録の突き合わせを行い、記録の齟齬や未記入が常態化していないかを定期的に監査することが肝要です。
運転者等台帳の記載事項および適正管理(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5第1項)
(1) 法令および通達が求めていること
安全規則第9条の5第1項に基づき、事業者は営業所に所属するすべての運転者について法定の運転者等台帳を作成し、備え置かなければなりません。台帳には、運転者の氏名、生年月日、雇入れ年月日、運転免許証に関する情報、適性診断の受診状況、過去に引き起こした事故の概要や指導監督の実施記録などを漏れなく正確に記載し、常に最新の情報を反映させておくことが求められます。
(2) 今回確認された不備の具体的内容
今回の監査では、運転者等台帳について定められた法定事項の記録が不適切であったことが認定されました。雇入れ時の基本情報の記載漏れや、定期的に受診すべき適性診断の受診履歴、運転免許証の更新情報、社内で実施した安全指導の記録などが適正に反映・追記されておらず、形骸的な台帳管理にとどまっていた実態が示されています。
(3) 自社点検の着眼点
自社点検にあたっては、営業所に所属する全ドライバーの台帳が実態どおりに作成・配備されているかを照合します。運転免許証の更新に伴う免許番号や有効期限の更新漏れがないか、初任運転者や高齢運転者に対する法定の適性診断受診結果票が添付・記載されているか、また定期的な指導監督の実施履歴が台帳と連動して漏れなく整理・保管されているかを定期点検することが重要です。
注目事例:労働局からの通報端緒で発覚した運行・労務管理帳票の不備
事例1: 労働局からの通報を契機とした監査で3件の労務・安全管理不備が発覚(株式会社大丸運送 南国営業所 / 高知県南国市)
- 監査の端緒: 令和8年8月18日に、労働局からの通報を端緒として四国運輸局による監査が実施されました。
- 違反の内容: 貨物自動車運送事業法第15条第1項第1号および同条第4項に基づき、乗務員等の健康状態の把握不確実(安全規則第3条第6項)、業務記録の記載不確実(安全規則第8条)、運転者等台帳の記録不適切(安全規則第9条の5第1項)の計3件の法令違反が確認されました。
- 処分結果: 文書警告(営業所違反点数0点、事業者累積点数0点)。
- 教訓: 労働基準監督機関(労働局)と運輸局の相互通報体制により、労務管理や労働環境の課題から運輸局の監査へと発展する構図が明確に示されています。車両使用停止処分は免れたものの、健康管理や業務記録、台帳管理という運行管理の基本台帳類の不備は監査で必ず確認される事項であり、日常的な帳票管理の徹底が不可欠です。
実務チェックポイント:健康管理・日報・運転者台帳の点検基準
| チェック項目 | 根拠条項 | 確認の方法 | 不備が招く処分 |
|---|---|---|---|
| 定期健康診断の確実な受診と事後措置の管理 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項 | 全乗務員の健診受診結果票および有所見者への医師指導・再検査記録の点検 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 乗務前点呼における健康状態の問診と記録 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項 | 点呼記録簿における体調申告・健康状態の確認記載状況の突き合わせ | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 健康状態に異常のある運転者の乗務除外徹底 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項 | 発熱や過労兆候時の乗務見合わせ判断フローおよび代替運行手配手順の確認 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 業務記録(運転日報)の全乗務ごとの作成 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条 | 運行ごとの運転日報提出状況および作成漏れの有無の全件確認 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 業務開始・終了の日時および地点の正確な記載 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条 | 出退勤記録(タイムカード等)およびデジタコデータと運転日報の時刻照合 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 運行途中における休憩・睡眠の地点および日時の記録 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条 | タコグラフの停車ログ・高速道路利用明細と運転日報の休憩記録の突合 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 業務記録の所定期間にわたる適正な保存管理 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条 | 過去の運転日報および付随する運行データが所定期間保存されているかの点検 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 所属運転者全員の運転者等台帳の作成・備え置き | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5第1項 | 現役ドライバー全員の台帳原本または電子台帳が営業所に存在するか確認 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 運転者等台帳の雇入れ日・運転免許情報の更新管理 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5第1項 | 運転免許証の写しと台帳記載の免許番号・有効期間の整合確認 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
| 適性診断の受診結果および指導履歴の台帳への反映 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5第1項 | 適性診断結果票の保管状況および受診年月日・診断種類の台帳記載確認 | 文書警告・車両使用停止・累積点数加算 |
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免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の対応については行政機関の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
