環境省が水素サプライチェーン実証で3件を採択
環境省は2026年10月19日、令和8年度「コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業」(二次公募)の採択結果を公表しました。応募提案の中から「地域間連携型」「地域需要拡大型」「拠点需給連携型」の各モデルから1件ずつ、計3件の事業が採択されました。需要拡大によるスケールメリットや貯蔵・輸送の効率化を通じ、コスト競争力を持つ水素サプライチェーンの早期社会実装を目指します。
コスト競争力強化と早期社会実装を目指す背景
政府の「地球温暖化対策計画」に掲げられた2030年度、2035・2040年度の温室効果ガス削減目標および2050年カーボンニュートラルの達成には、地域資源である再生可能エネルギー等を活用した水素利活用機器の社会実装と、需要創出の加速が求められています。環境省ではこれまでも低炭素水素の技術実証やインフラ活用を進めてきましたが、本格的な水素社会構築に向けては、貯蔵・輸送段階のコスト削減と需給最適化が不可欠とされており、今回の実証モデル採択に至りました。
採択された3つの実証事業と参画事業者
令和8年8月3日から8月28日まで公募が行われ、審査の結果、以下の3件が採択されました。
- 地域間連携型モデル
- 代表事業者:室蘭市
- 共同事業者:株式会社産学連携機構九州、国立大学法人室蘭工業大学、株式会社三菱総合研究所、公益財団法人室蘭テクノセンター、室蘭ガス株式会社、株式会社北弘電社、エア・ウォーター北海道株式会社、大成建設株式会社、コベルコ建機株式会社
- 事業名:室蘭市を供給ハブとした地域間連携による再エネ由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業
- 地域需要拡大型モデル
- 代表事業者:一般社団法人FCyFINE PLUS
- 共同事業者:株式会社山梨中央銀行、株式会社電通、イグニション・ポイント株式会社、国立大学法人山梨大学
- 事業名:内陸地域におけるグリーン水素の普及に向けた小口需要創出及び配送方法に係る実証事業
- 拠点需給連携型モデル
- 代表事業者:浪江町
- 共同事業者:ヤンマーエネルギーシステム株式会社
- 事業名:浪江町におけるマルチ水素供給ハブ拠点を核とした水素サプライチェーンモデル構築事業
関係する運送・インフラ事業者
- 高圧ガス・水素容器の輸配送業務に関わる運送事業者
- FCVトラックやFCフォークリフトの導入・運用を検討する物流事業者および荷主企業
- 地域で水素ステーションや供給ハブの運営を担うインフラ事業者・自治体
物流実務への影響
- トラック運送事業者
- 水素燃料電池(FCV)トラックの導入にあたっては燃料充填拠点の少なさや調達コストが課題となっていますが、地域間連携や供給ハブ拠点モデルの実証が進むことで、将来的な水素ステーション網の拡充や燃料調達コストの低減につながる可能性があります。また、山梨県の内陸地域で検証される「小口需要向け配送手法」などは、将来的に高圧ガス容器や水素吸蔵合金を活用した定期配送・集配実務のノウハウとして物流現場に関わってくる可能性があります。
- 荷主・物流拠点(倉庫事業者等)
- 配送センターや倉庫構内で使用するFCフォークリフトや非常用発電設備のエネルギー源として、地産グリーン水素を活用する選択肢が広がる可能性があります。特に内陸部における小口供給網の構築は、大規模な受入設備を持たない一般物流拠点における脱炭素エネルギー調達の実現性向上に寄与するとみられます。
今後の見通しとスケジュール
- 2026年8月3日〜8月28日:令和8年度実証事業(二次公募)の申請受付を実施(公募終了)。
- 2026年10月19日:採択結果が公表され、計3件の事業者が選定。
- 2026年度内〜:採択された各コンソーシアムにより、地域間輸送、小口配送手法、拠点供給ハブに関する実証事業が順次開始される見通しです(なお、実証事業完了後の具体的な制度化スケジュールは本文および公募資料に明記されていません)。
今後の注目点
- 小口配送における配送効率とコスト水準:山梨県等で検証される小口配送において、どのような輸送容器・積載形態が採用され、ディーゼル車等に対抗できる運用コストに収まるかが今後の焦点となります。
- 商用車充填インフラとの接続性:各実証拠点の水素供給能力が、将来的に幹線輸送用FCV大型トラック等の需要を満たせる規格・規模へ拡張可能かどうかは現時点で示されておらず、今後の実証推移の確認が必要です。
水素トラック普及に向けた関連動向
- 水素商用車の開発動向:国内では商用車メーカー各社による大型FCVトラックの走行実証が進んでおり、ヤマト運輸や西濃運輸などの幹線輸送現場で実証走行が実施されています。商用FCVの本格普及には航続距離だけでなく水素ステーションの整備と燃料価格の低減が必須とされており、本実証事業のようなサプライチェーン全体の低コスト化への期待が高まっています。
- 水素社会推進法:2024年5月に「水素社会推進法」が成立し、低炭素水素等の供給・利用促進に向けた計画認定制度や支援の枠組みが法制化されるなど、国の施策としても水素サプライチェーンの構築が後押しされています。
よくある質問
Q. 今回採択された実証事業にはどのような類型がありますか?
A. 「地域間連携型モデル」「地域需要拡大型モデル」「拠点需給連携型モデル」の3つの類型があり、二次公募では各モデルから1件ずつ、計3件が採択されました。
Q. 内陸部での小口配送手法に関する実証事業にはどのような組織が参画していますか?
A. 一般社団法人FCyFINE PLUSを代表事業者とし、株式会社山梨中央銀行、株式会社電通、イグニション・ポイント株式会社、国立大学法人山梨大学が共同事業者として参画しています。
Q. 本実証事業の事業費規模はどの程度ですか?
A. (公募仕様の別途公表資料によれば)本実証事業は委託事業として実施され、事業費規模は1件あたり初年度最大4億円以下とされています。
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出典
- 発表主体: 環境省 / 発表日: 2026-10-19
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