KEY CARTとは?磁気テープで手軽にコース設置ができる低価格なエントリーモデルAGVの機能や特徴を解説

床面に敷設した磁気テープにより簡単に走行コースの設置や変更ができる、シンプル構造かつ低価格なエントリーモデルの無人搬送車(AGV)。カスタマイズが容易な基本構造をもち、最大1,000kgの牽引や積載搬送を手軽に自動化できます。

料金モデル
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対象規模
規模問わず
対象業界
製造業 物流・倉庫業 自動車・部品

KEY CARTとは?

「KEY CART(キーカート)」は、株式会社豊田自動織機(トヨタL&Fカンパニー)が開発・提供する、シンプル構造かつ低価格なエントリーモデルの無人搬送車(AGV)です。床面に敷設した磁気テープをたどって走行する仕組みで、高額な導入費用や難しいシステム設定を理由にこれまで自動化をあきらめていた工場・倉庫の搬送業務を、誰でも手軽にカイゼンできるようにすることを目的に開発されました。最大1,000kgの積載・牽引が可能で、現場の省人化と作業者の身体的負担の軽減に大きく貢献します。

主な機能・特徴

  • 2種類の搬送重量ラインアップ(500kg級・1,000kg級)
    現場の荷姿や搬送重量に合わせて選択可能。2020年には最大搬送重量を従来の2倍に高めた「1,000kg級」のタフなモデルが発売され、より重い資材や製品の搬送にも対応できるようになりました。
  • 現場に合わせて選べる2つのボディタイプ
    積載および潜り込み牽引用として活用できる汎用性の高い「基本タイプ」と、狭い通路でも最小限のスペースで小回りが利きやすい、牽引専用の「ショートタイプ」が用意されています。
  • Excel®を用いた簡単・迅速なコース・動作設定
    専用のプログラミングソフトや高度なIT知識は一切不要です。日常業務で使い慣れたMicrosoft Excel®の表を使って作業パターンや動作指示を設定できるため、誰でも簡単に稼働設定を行えます。
  • 磁気テープを貼るだけの簡単コース設置
    走行ルート上に専用の磁気テープを貼るだけで誘導路を設置できます。レイアウト変更の際も、テープを剥がして貼り直すだけで迅速かつ低コストにルートを変更することが可能です。
  • 最大3mのテープレス走行(1,000kg級オプション等)
    フォークリフトの走行帯を横断するエリアなど、一部の区間で磁気テープを敷設できない場合、プログラムステアリング機能によって最大3mの距離をテープレスで走行することができます。
  • 豊富な安全機能を標準装備
    走行中に前方の障害物を検知して一時停止する「障害物センサー」をはじめ、危険を知らせるメロディホンやシグナルタワー、接触時に停止するバンパーなど、人が行き交う現場でも安心して稼働できる安全機能が備わっています。
  • サードパーティ製治具との高い連携性・拡張性
    カスタマイズが容易なシンプル構造を活かし、株式会社モノリクス製「キーコネクト」などの牽引治具や、カゴ台車・ハンドフォークと連結するための社外製アタッチメントを後付けして用途を拡張できます。

こんな企業・現場に向いている/向いていない

【向いている企業・現場】

  • 低コストでスモールスタートしたい企業
    「AGVは高額で導入のハードルが高い」と感じている現場や、まずは1台から搬送自動化の効果をテストしたいと考える企業に適しています。
  • 頻繁にレイアウト変更や工程の見直しが発生する現場
    自社のスタッフ自身でエクセルのシートを使って走行コースを随時変更したいため、外部システム会社に修正作業を外注する時間やコストを抑えたい現場に最適です。
  • カゴ台車やパレットの長距離手押し搬送を削減したい倉庫・工場
    広い敷地内で1日のうち何時間も重い荷物を手動で運んでいるような、作業者の身体的負担が大きく、労働環境改善を課題とする現場に向いています。

【向いていない企業・現場】

  • 床面に磁気テープを敷設・維持するのが困難な環境
    屋外や建屋間の舗装が荒れた場所、あるいはフォークリフトや大型トラックが激しく旋回を繰り返して磁気テープがすぐに摩耗・剥離してしまうような床面の現場には向きません。このような場合は、磁気テープ不要で自律走行が可能な「SLAM式キーカート(AMR)」などの別のツールを検討した方がよいでしょう。
  • 完全な障害物自動回避やフリーレイアウト走行を求める現場
    定められたライン(磁気テープ)を外れ、障害物を回り込んで自律的に別ルートを再検索・回避しながら目的地まで自律走行する高度な動的搬送を必要とする場合は、無軌道型のAMRが適しています。
  • 台車やパレットの「完全自動脱着」を標準のまま行いたい場合
    標準状態のキーカートは作業者が手動で台車を脱着する、または特定の治具を利用して運用することを前提としています。完全に全自動で台車を着脱して連携するには追加のカスタマイズや別システム構築が必要になるため、あらかじめ検討が必要です。

料金・プラン・導入方法

KEY CARTの導入にかかる初期費用およびオプション費用は、搬送重量モデル(500kg級・1,000kg級)や選択するボディタイプ、組み合わせるカスタマイズオプション(自動充電や特定センサーなど)によって異なるため、公式情報としては要問い合わせ(応相談)となっています。

導入を検討する際は、全国40社のトヨタL&F取扱販売店へ問い合わせを行うことで、現場のレイアウト確認、最適な機材選定、実機デモ、見積もりの提案を受けることができます。なお、省力化投資促進のための各種補助金の対象製品としても登録実績があります。

導入事例・実績

ダイキン工業株式会社 様(電気・機械製造)

ビル用マルチ熱交換器の部品加工ラインにおいて、1日に平均100回、往復で120秒かかるライン間の部品搬送を従業員2名体制で行っていました。部品の最大重量は32kgと重く変形しやすい形状のため、身体的負担の大きさが大きな課題でした。低コストで手軽に設定できるキーカートを導入したことで、1日あたり3.5時間の搬送作業の自動化に成功。従業員の重量物搬送からの解放と、生産効率の向上を同時に実現しました。Excel®を用いた簡単なコース変更手順もスムーズな立ち上げに寄与しています。

株式会社トーカン 様(瀬戸低温流通センター・運輸・倉庫)

4〜5℃の低温な環境下において、約150kgの重量がある商品を従業員が手押しで1日に約150往復(片道160m)搬送しており、人手の確保および過酷な作業環境による身体的負担が課題でした。キーカートを導入し、8連結・50往復の自動牽引搬送へ切り替えた結果、搬送に関わる作業工数を67%削減することに成功し、1名の省人化を達成しました。低温環境下でも障害物検知機能により、商品の転倒リスクなく安全に稼働しています。

シモハナ物流株式会社 様(岩槻第一センター・運輸・倉庫)

外食業界向け商品の仕分け・配送を行う大型物流拠点において、約150mある長い入荷・仕分けエリア間の動線で、フォークリフトによる有人横持ち搬送の無駄が発生していました。当初は固定式のコンベヤ導入を計画したものの、動線を遮断してしまうため断念し、省スペースで移動可能なキーカートを採用。無人搬送化によりフォークリフトの保有台数を削減でき、オペレーターを他業務へ適正配置できたことで全体の作業効率が向上しました。搬送通路を共有する人やフォークリフトとの接触・事故リスクの低減にも繋がっています。

株式会社ネストロジスティクス 様(川崎営業所・運輸・倉庫)

大手家具チェーンの物流受託業務における物量急増に対応するため、約3,500坪の広大な倉庫エリアで入荷製品の指定保管エリアへの移動用にキーカートショートタイプ10台を導入しました。コンベヤのように走行ルートが固定されないため、フォークリフトの動線を遮ることなく併用稼働ができる点を高く評価。作業パターンを自社スタッフで柔軟に変更しながら、搬送効率の倍増に結びつけています。

導入前に知っておきたいこと

Google検索などの公開情報から、KEY CARTを実際に検討・運用するユーザーが留意しておくべき注意点や課題を整理しました。

  • 磁気テープの剥がれと貼り替えコスト(メンテナンス負荷)
    磁気テープ誘導方式のため、テープの上をフォークリフトや重量のある手押し台車が繰り返し通過したり、車両がその場で旋回したりすると、テープが摩耗して剥がれやすくなります。剥がれた箇所はAGVの読み取りエラー(脱線など)の原因となるため、定期的な補修作業や貼り替えの手間、テープ自体の調達コストが発生することを考慮しておく必要があります。
  • カーブ走行時の減速仕様
    経済産業省の物流効率化に関する調査報告書(実証実験)の意見として、「キーカートは安全確保のためにカーブで自動的に減速する仕様になっているため、一気に速度を落とさずに曲がることができない」という特性が報告されています。カーブが非常に多い走行ルートを設計すると、全体の搬送時間が予想よりも長くなる可能性があるため、事前シミュレーションが必要です。
  • 標準機能での「全自動脱着」の難しさ
    台車やハンドフォークの切り離しを完全自動化したい場合、キーカートの基本モデルのみでは対応しきれない場合があります。自動着脱機能を持たせるためには、他社製の専用自動連結治具(アタッチメント)を別途用意して組み合わせる必要があるため、システム全体の要件定義に注意を払う必要があります。

類似ツールとの違い・選び方

無人搬送機市場には、KEY CARTのほかにもさまざまな特徴を持つ製品が存在します。選定する際の違いや比較のポイントは以下の通りです。

  • 誘導方式の違い(磁気誘導AGV vs 自律走行AMR)
    「SIGNAS(THK社)」や「CarriRo(ZMP社)」、「THOUZER(Doog社)」などは、床にテープを貼らずに自律走行するテープレス(SLAM誘導・カメラ認識誘導)を採用しているモデルが多く、障害物を自動で回避する柔軟性を持ちます。一方、「KEY CART」は磁気テープのライン上を走るため、あらかじめ決められた固定ルートを安定して、高精度に繰り返し走行させたい現場に非常に適しています。
  • 設定の極めて高い簡便性
    多くのAMR・AGVが独自管理画面での専門的なプログラミングを必要とするのに対し、KEY CARTはオフィスで誰もが使用している「Excel」を使って簡単にパターン設定が行えるため、運用開始後の設定更新において群を抜いてユーザーフレンドリーです。
  • 全国規模の圧倒的なアフターサポート力
    他社の新興スタートアップ系ロボットメーカーと異なり、豊田自動織機(トヨタL&F)は全国に260のサービスショップ、約3,000名のサービススタッフを擁する業界トップクラスのネットワークを持っています。不具合や部品交換が必要になった際の迅速なフィールドサポート体制は、業務を止められない物流・製造現場における決定的な比較優位点となります。

よくある質問(FAQ)

誘導用の磁気テープは、専門業者に依頼しなくても自社で設置できますか?
はい、特別な資格や専門技術がなくても自社で設置可能です。路面を清掃・脱脂した上で磁気テープを床に貼り付け、その上に保護テープを貼るだけで、自社スタッフの手で簡単にルートを設置・変更できます。
設定用に専用の有料PCシステムを購入する必要がありますか?
いいえ、不要です。KEY CARTの大きなメリットは、使い慣れたMicrosoft Excel®を使って走行パターンを設定できる点にあります。追加で高額なシステム用ソフトウェアを購入することなく、自社で設定作業を完結させられます。
屋外の舗装された通路を走らせることは可能ですか?
原則として雨や水に濡れない屋内のフラットな床面での使用を想定しています。屋外や極端な段差、急なスロープがある場所では、磁気テープの劣化、スリップによる脱線、牽引力の低下が起こる可能性があります。走行テスト等については取扱販売店へのご相談を推奨します。
磁気テープを貼れない現場では、キーカートは諦めるしかないでしょうか?
いいえ、諦める必要はありません。磁気テープの敷設が困難な環境に向けて、自己位置推定と地図作成技術を用いた、テープ不要の自律走行モデル「SLAM式キーカート(AMRモデル)」もラインアップされています。現場の床環境や運用ニーズに応じて最適なモデルを選択可能です。

参照・出典

他の搬送ロボット・AMRと比較する

KEY CARTの特徴を含むAMR・搬送ロボットの13製品を、料金・機能・対象規模で比較できます。

搬送ロボット・AMR比較13選