T-Carry systemとは?
T-Carry systemは、株式会社椿本チエインが提供する、多品種小口のEC・通販センターや通過型物流拠点におけるピッキング・仕分け作業者の歩行負担と作業工数を削減するための小型AGV(無人搬送車)搬送システムです。多数の小型AGVを運行管理システムで一元制御し、AGV自身がオーダーに応じてピッキングエリアや検品梱包ラインを巡回・搬送します。作業者が棚間を歩き回る必要をなくす「歩かせない」運用モデルを構築し、作業負担の軽減と出荷能力の向上を両立させます。
主な機能
群制御・搬送制御機能
- 最適ルート自律計算・衝突回避制御
運行管理システム(RCS/WCS)が、センター内を稼働する多数の小型AGVの現在位置と運行状況をリアルタイムに把握します。AGV同士の交錯や渋滞を回避しながら最短・最適な走行ルートを自律的に計算して指示するため、数百台規模のAGVを同一フロアで安全かつ高密度に同時走行させることができます。 - リアルタイム目的地指定・動的変更
上位の倉庫管理システム(WMS)やピッキング指示データと連携し、AGVに対して複数の経由地やゴール地点を柔軟に割り振ります。作業の進捗状況やラインの混雑度に応じて稼働中のAGVの目的地をリアルタイムに変更できるため、特定工程への負荷集中を防ぎ、全体の搬送効率を平準化できます。 - バッテリー自動管理・自律充電
AGVの稼働状況とバッテリー残量をシステムが常時監視し、作業の合間や電力が低下したタイミングで自動的に専用の100V充電ステーションへ移動・充電を行います。人手による充電作業やバッテリー交換の手間を排除し、業務中のバッテリー切れによるライン停止リスクを防止します。
ピッキング・仕分け支援機能
- 1オーダー1台割り当てによる巡回ピッキング
1つの注文(オーダー)に対して1台の小型AGVを割り当て、AGVがピッキング対象商品の保管エリアを順次巡回します。作業者は指定された定位置でAGVに商品を投入するだけでピッキングが完了するため、作業員の歩行距離を大幅に削減し、集荷から梱包前までの工程をスムーズに連動させます。 - 通過型センター向け多方面自動仕分け
入荷した商品のバーコードを読み取ることで、AGVが出荷先別や店舗別の間口まで自動搬送します。保管スペースを介さずに荷降ろしから短時間で方面別・店舗別仕分けを行う通過型物流(TC)において、作業者の仕分け移動を削減し、仕分け処理スピードを高めます。 - 作業支援システム(DPS/DAS/タブレット)連携
デジタルピッキングシステム(DPS)やデジタルアソートシステム(DAS)、作業者向けタブレット端末と連動します。AGVの到着に合わせて画面や表示器が投入すべき商品と数量を分かりやすく指示するため、ピッキング・仕分け時の判断ミスや投入間違いを未然に防ぎます。
レイアウト・保守運用機能
- 専用シート敷設による柔軟なコース設計
AGVの走行エリアに専用シートを設置するだけで走行ルートを構築できます。一般的な床面だけでなく、架台の上や2段構造のフロアレイアウトにも対応しており、倉庫内の限られた空間や既存レイアウトを有効活用した自動化ラインの立ち上げが可能です。 - AGV単体の即時離脱・オンライン追加
稼働中のAGVに万一の不具合が発生した場合でも、該当する機体を作業エリアから手動で取り外すだけでシステム全体を止めることなく復旧できます。また、繁忙期の物量増加に合わせて稼働機体をオンラインで追加投入できるため、柔軟なキャパシティ調整が可能です。 - 物流データ分析・ボトルネック可視化
合弁会社である株式会社Nexa Wareが提供するデータ分析ツール「Nexa Warehouse-Optimizer」等との連携により、小型AGVの稼働状況や作業間口の混雑度、作業者の動線をリアルタイムにデータ化・分析します。工程ごとの負荷バランスを可視化し、人員配置やレイアウトの継続的な改善を支援します。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
1オーダーあたりの注文点数が多く、ピッキング動線が長くなりがちなEC・通販事業者
- 作業者が広い倉庫内を歩き回り、ピッキングに多くの時間と体力を費やしている
T-Carry systemは1オーダーごとにAGVを割り当てて集荷エリアを自動巡回させるため、作業者は定位置での投入作業に専念できます。作業員の歩行距離を削減することでピッキング生産性を高め、身体的負担を大幅に軽減できます。 - 取り扱いアイテム数が多く、多品種小口の梱包作業でミスが発生しやすい
タブレット端末やデジタル表示器とAGVの運行を連動させ、AGVの到着と連動して投入指示を表示します。目視や伝票による確認作業を削減し、誤ピッキングや欠品を抑止しながら出荷スピードを向上させます。 - 繁忙期と閑散期の物量差が激しく、固定的な大型マテハン導入にリスクを感じている
AGV本体と専用シート、100V充電器、管理端末を基本構成としており、物量増加時にはAGVを増台して柔軟に対応できます。初期投資を抑えつつ、需要変動に合わせた柔軟なライン拡張が可能です。
多数の店舗・方面へ迅速に仕分けを行う通過型物流センター(TC)を運営する企業
- 入荷と同時に多方面・店舗別へ仕分ける作業で、作業者の交錯や間口の混雑が多発している
入荷商品のバーコードを読み取ると、小型AGVが指定された店舗や配送方面の間口まで自律走行して荷物を搬送します。作業者の往復移動をなくし、複数台のAGVが最適なルートで分散搬送することで、間口周辺の混雑と仕分け待ち時間を解消します。 - 取扱商品のサイズや形状が多岐にわたり、従来の固定式ソーターでは対応しきれない
AGVの天面形状は搬送物に合わせて柔軟に変更可能です。固定式ソーターでは搬送が難しかった形状の商材や、ソーターと組み合わせたハイブリッド運用を行うことで、センター全体の仕分け能力を向上させます。
向いていない企業・現場
重量物やパレット単位、長尺物の搬送が中心となる製造工場・重量物倉庫
- 数百キログラムからトランスケールの大型パレットや長尺部材を搬送したい
T-Carry systemは中小型のピース品・ケース品の仕分けやピッキングに特化した小型AGVシステムです。パレットや重量物の長距離搬送を目的とする場合は、パレット搬送用AMRやフォークリフト型無人搬送車(AGF)など、耐荷重の大きい専用機器の導入を検討する必要があります。
床面の段差・傾斜が激しく、専用シートの敷設が困難な過酷環境
- 路面に大きな凹凸や段差、水濡れがあり、専用シートの設置や維持が難しい
T-Carry systemは専用シート上を小型AGVが走行する仕組みを採用しているため、平坦な走行環境が前提となります。屋外や舗装が荒れた路面、段差やスロープの走破が必要な現場では、LiDARやSLAM技術を搭載したオフロード対応AMRや屋外対応搬送サービスの検討が適しています。
類似ツールとの比較
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| T-Carry system | 多数の小型AGVが専用シート上を最適自律走行。1オーダー1台割当のピッキングや多方面仕分けに対応。 | 要問い合わせ | 多品種小口のEC・通販、TC型物流センター、段階的に増設したい企業 |
| Geek+ | AI搭載AMRによる棚搬送(GTP)やソーティングロボットを提供。豊富なグローバル実績と多様なモデル展開。 | 要問い合わせ | 大規模な保管効率改善と棚ごと作業者へ運ぶGTP方式を求める大・中規模倉庫 |
| Lexx500 | 既存のカゴ車や6輪カートをそのまま牽引・搬送可能なAMR。段差やスロープへの高い走破性を備える。 | 要問い合わせ | 既存什器(カゴ車・カート)を活かした工程間搬送や、段差のある混流現場 |
| Quicktron | 棚搬送式(GTP)やパレット搬送に対応するAMR。AI経路最適化と群制御による大規模自動化。 | 要問い合わせ | 高密度保管と大規模なピッキング・パレット搬送を両立させたい物流拠点 |
ピース単位や小型ケース単位のピッキング・仕分け作業において、「作業者を歩かせない巡回方式」や「多方面仕分け」を小規模から柔軟に構築したい場合は、T-Carry systemが適した選択肢となります。天面形状の変更や100V充電器での運用、専用シートを用いた柔軟なレイアウト変更が可能であり、物量変動に合わせた機体の増減が容易に行える点が特徴です。
一方、保管棚ごと作業ステーションに運ぶGoods-to-Person(GTP)方式によって高密度保管とピッキング効率化を同時に実現したい場合は、Geek+やQuicktronなどの棚搬送型AMRが比較対象となります。また、既存のカゴ車や6輪カートを台車ごと無人搬送したい場合や、路面の段差・スロープを通過する必要がある現場では、牽引能力と走破性に強みを持つLexx500の検討が適しています。
料金・プラン・導入方法
T-Carry systemの利用料金は完全非公開となっており、導入規模やシステム構成に応じた個別見積もり(要問い合わせ)となります。
導入を検討する際は、以下の構成要素について見積もり内容を確認することが推奨されます。
- ハードウェア費用
必要となる小型AGVの導入台数、天面アタッチメントのカスタマイズ費用、専用走行シートの敷設面積、100V充電器の設置台数、無線アクセスポイントなどの機器費用。 - システム連携・開発費用
AGV群制御システム(RCS/WCS)の導入、既存の倉庫管理システム(WMS)や生産管理システムとのインターフェース連携開発費用。 - 保守・サポート費用
定期点検、ソフトウェアアップデート、消耗部品の交換、トラブル発生時の緊急対応体制を含む年間保守サポート費用。
導入の流れ・期間
T-Carry systemの標準的な導入プロセスは以下の通りです。なお、具体的な導入期間は現場の規模や連携仕様により異なるため、要問い合わせとなります。
- 問い合わせ・ヒアリング
公式サイトまたは椿本チエインの窓口へ問い合わせを行い、センターの取り扱い商材、出荷特性、レイアウト、現状の課題などをヒアリングします。 - 現場調査・シミュレーション提案
現地倉庫の床面環境や搬送ルートを確認し、最適なAGVの走行レイアウトや必要台数、仕分け能力のシミュレーションを実施した上で導入プランが提示されます(椿本チエインの展示場「M.LABO」等で実機デモを確認することも可能です)。 - 要件定義・システム設計
上位WMSとのデータ連携方式や、ピッキング・仕分け作業の運用フロー、安全対策の仕様を確定します。 - 契約・機器手配
見積もり条件に合意後、契約を締結し、AGV本体や専用シート、充電設備、通信環境の手配を進めます。 - 現地設置・シート敷設・システム構築
床面への専用シートの敷設、充電ステーションやアクセスポイントの設置、管理端末およびWCS/WMSの通信接続と連携テストを実施します。 - 走行テスト・運用トレーニング・本稼働
AGVの自律走行テスト、作業者向けの投入・ピッキング操作トレーニングを経て、本番運用を開始します。
導入事例・実績
オルビス株式会社(オルビス東日本流通センター / 流通受託:株式会社流通サービス)
化粧品・健康食品の通販を展開するオルビスの通販物流拠点において、小型AGV330台を用いたT-Carry systemが導入されました。1オーダーあたりの注文点数が8〜9点と多く、小型商品が中心である出荷特性に対し、1オーダーに1台のAGVを割り当てて集荷から検品梱包までを自律巡回させるシステムを構築しました。導入の結果、出荷能力が従来の1.3倍に向上したほか、作業人員27%削減、出荷コスト18%削減、消費電力40%削減を達成しました。また、重いピッキングケースの持ち上げ作業がなくなり、労働負荷の低減と作業現場の静音化にも寄与しています。
鈴与株式会社(川越物流センター)
雑貨店舗向けの通過型物流センター(TC)において、株式会社Nexa Ware(椿本チエインとKDDIの合弁会社)が提供するT-Carry systemおよび物流データ分析サービス「Nexa Warehouse-Optimizer」が導入されました。80台の小型AGVが入荷商品を読み取り、出荷先別の間口まで自動搬送する多方面仕分けラインを構築したことで、作業者の歩行距離を大幅に削減し、仕分け処理量を20%向上させました。また、リアルタイムのデータ分析により間口周辺の渋滞回避や人員の適正配置を実現しています。
株式会社ディーエイチシー(DHC川崎ロジスティクスセンター)
化粧品や健康食品などを扱うDHCの通販向け物流拠点において、小型AGV270台を用いたT-Carry systemと自動仕分けシステム「クイックソート」などの自動化システムが導入されました。商品の出荷頻度やサイズに合わせた仕分け・ピッキングラインを構築し、出荷処理能力30%向上とスタッフの作業負担軽減、ロジスティクス体制の強化を図っています。
株式会社ハピネット・ロジスティクスサービス(市川ロジスティクスセンター)
玩具・エンタテインメント商品を扱うハピネットグループの物流拠点において、ゲームカテゴリー向けにT-Carry systemおよびSAS(シャッターアソートシステム)、リニソートS-Eが導入されました。商材特性に応じてソーターとAGVを使い分けるハイブリッド運用を実現し、仕分け業務の省人化と人的ミスの削減に貢献しています。
導入前に知っておきたいこと
- 専用シートの敷設環境とメンテナンス
T-Carry systemは専用シート上を走行する仕様のため、床面の凹凸や油分の有無、シートの摩耗・汚れに対する定期的な点検・清掃が必要です。フォークリフトや重量台車が頻繁に横断するエリアと走行エリアが重なる場合は、レイアウトや運用ルールを事前に明確化しておく必要があります。 - 無線通信(Wi-Fi等)環境の安定性
多数のAGVを一括群制御するため、センター内の通信環境(電波の死角や干渉)の事前測定と安定したアクセスポイントの配置が必須となります。 - 公開されているユーザー課題について
Web上における一般的なユーザーからの不満やネガティブな口コミ報告は現時点では確認できていません。ただし、中小型品に特化した仕様であるため、取り扱い荷物のサイズや重量がシステム要件に適合しているかを導入前の事前シミュレーションで検証することが重要です。
よくある質問(FAQ)
- T-Carry systemを稼働させるために必要な設備は何ですか?
- 基本的な構成機材は、小型AGV本体、走行用専用シート、無線アクセスポイント、100V電源充電器、および運行管理を行う管理端末(PC)です。特殊な高電圧電源工事が不要な100V充電器に対応しており、シンプルな構成で立ち上げが可能です。
- 万が一、走行中にAGVが1台故障した場合はライン全体が止まりますか?
- ライン全体は停止しません。トラブルが発生したAGV単体を手動で取り外すだけで、残りの機体が運行を継続します。予備機をオンラインで投入すれば即座に元の搬送能力へ復旧できる冗長性の高い設計となっています。
- 既存のWMS(倉庫管理システム)との連携は可能ですか?
- 可能です。T-Carry systemのWCS/RCSを介して上位WMSからオーダー情報や仕分け指示データを受信し、AGVの運行をコントロールします。詳細な通信インターフェース仕様は問い合わせ時に確認してください。
- 実機の稼働やデモンストレーションを確認できる場所はありますか?
- 椿本チエインのマテハン展示場「M.LABO」などで実機の走行やピッキング運用のデモンストレーションが公開されています。見学や来場申し込みは公式サイトの窓口から確認できます。
- 契約期間や解約条件、料金プランはどうなっていますか?
- 料金や契約形態(一括購入、リース、保守契約など)の詳細は公式には非公開となっており、要問い合わせとなります。導入規模や要件に合わせた個別見積もりの際に担当者へ確認してください。