中国運輸局管内でトラック事業者8社が累積20点超、最高49点も
中国運輸局は、2026年9月30日現在における管轄内の「累積違反点数が20点を超える貨物自動車運送事業者」の一覧を公表しました。
対象となったトラック運送事業者は広島県、岡山県、山口県、島根県に所在する合計8社で、事業者ごとに付与された管内累積違反点数は22点から49点に及んでいます。
主な違反行為としては、運転者に対する過労運転防止措置違反が3社で確認されたほか、勤務時間等告示の著しい未遵守、疾病のおそれのある乗務、健康診断未受診、運行記録計の不実記録、酒気帯び運転といった労務管理および運行管理の根幹に関わる重大な違反が浮き彫りとなっています。
処分の内訳:管内累積20点超により公表された8社
| 処分の種類 | 件数 | 事業者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 管内累積違反点数20点超による公表 | 8 | 過去の違反行為に伴う処分点数が同一運輸局管内で累積20点を超え、事業者名や主な違反行為が広く社会的に周知・公表されている状態 |
違反点数の累積と公表制度:51点で事業停止に至るペナルティ構造
トラック運送事業者の行政処分において科される「日車(にっしゃ)」は、事業用自動車の使用停止規模を示す単位であり、原則として10日車ごとに1点の違反点数が付与されます。
付与された違反点数は地方運輸局管内で過去3年間にわたり累積管理される仕組みとなっており、一定の点数に達するごとに事業運営へ重大な制約が課されます。
具体的には、管内累積点数が20点を超えた段階で事業者名や違反事実が公表されるだけでなく、累積点数が51点〜80点に達すると事業停止処分、81点以上に達した場合は事業許可取消処分という事業継続を揺るがす致命的なペナルティに直結します。
主な違反類型:過労防止措置・改善基準告示・疾病乗務への対策が急務
中国運輸局が公表した累積20点超の事業者一覧では、過労運転の防止措置や労働時間の基準遵守、ドライバーの健康管理に関わる重大な法令違反が目立っています。公表された主な違反類型について、法令上の要求事項と実務上の点検ポイントを解説します。
過労運転防止措置義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項等)
事業者は、事業用自動車の運転者が疲労、疾病その他の理由により安全な運転をすることができないおそれがある状態で乗務させてはならず、改善基準告示に準拠した拘束時間・運転時間の限度遵守や適切な休息期間の確保を行わなければなりません(本通達・法令基準)。
今回の公表一覧では、全8社中3社(門田石油株式会社、有限会社中村物流、有限会社山口水産輸送)において「運転者に対する過労運転防止措置違反」が主な違反行為として明記されており、最多の違反類型となっています。過密な運行スケジュールや不適切な勤務シフトにより、ドライバーの安全運転が阻害されていた実態が認定されています。
自社点検にあたっては、デジタルタコグラフやタイムカードの客観的な稼働記録を突き合わせ、拘束時間の上限超過や勤務間の休息期間不足が常態化していないか、荷待ち時間を手待ち時間(労働時間)として正しく算入した運行計画になっているかを厳密に確認することが求められます。
勤務時間等基準告示の遵守違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項)
運送事業者は、運転者の過労運転を防止するため、拘束時間、休息期間、運転時間等の基準を定めた「勤務時間等基準告示(改善基準告示)」を遵守して運行を管理しなければなりません。
今回の一覧では、株式会社HIROKIにおいて「勤務時間等告示の著しい未遵守」が認定され、管内累積違反点数が48点という極めて高い水準に達しています。単なる一時的な超過にとどまらず、著しい基準違反が継続的に放置されていた実態が示されています。
自社点検においては、運行記録計(デジタコ等)のデータや業務記録から実労働時間および拘束時間を精査し、過密な運行計画の見直しとリアルタイムな労務把握を行う体制の確認が必要です。
疾病のおそれのある業務(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項)
事業者は、疾病、疲労その他の理由により安全な運転ができないおそれがある運転者を事業用自動車に乗務させてはならないと定められています。
今回の公表では、株式会社丸勝荷役運輸において「疾病のおそれのある乗務」が主な違反行為として認定され、一覧の中で最も高い49点の累積違反点数が付されています。健康状態に疑義があるドライバーの乗務継続や健康起因事故に直結しかねない管理不備が確認されています。
自社点検においては、定期健康診断の受診徹底だけでなく、点呼時の体調確認や問診結果を記録し、異常が認められる場合に運行管理者が乗務を確実に中止・交代させる判断フローを確立することが不可欠です。
健康診断未受診(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項等)
事業者は、労働安全衛生法等の規定に基づき、雇用する運転者に対して定期健康診断を確実に受診させ、その結果に基づき必要な健康管理および事後措置を講じる義務を負っています。
今回の事案では、有限会社西村商事において「健康診断未受診」が主な違反行為として挙げられ、累積違反点数23点が付与されています。受診義務が形骸化し、ドライバーの基礎的な健康状態が把握されないまま運行に従事していた実態が示されています。
自社点検の着眼点として、年1回の定期健康診断の受診計画だけでなく、深夜業に従事する運転者に対する6か月ごとの特定業務従事者健康診断の受診期日を台帳やシステムで厳密に追跡・管理し、未受診者を乗務させない社内体制を確立することが重要です。
その他の違反類型一覧
一覧中では、上記以外にも運行管理および安全運行の根幹に関わる重大な違反類型が確認されています。
- 運行記録計の不実記録(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条)
- 有限会社光浪運送において違反が認定され、累積点数22点となっています。タコグラフの改ざんや不実記録は監査において厳しく追究される事項です。
- 酒気帯び運転(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条等)
- 株式会社タイナカ運送において違反が認定され、累積点数31点が付与されています。乗務前後の点呼におけるアルコール検知や飲酒運転防止措置の徹底が強く問われます。
注目事例:累積40点超の過労・疾病乗務や酒気帯び運転による処分事例
事例1: 疾病乗務により累積49点、事業停止基準の直前に達した事案(株式会社丸勝荷役運輸 / 岡山県岡山市北区)
- 監査の端緒: 本文に監査端緒の記載はありませんが、疾病のおそれのある乗務などの重大な安全管理不備が確認され監査が実施されました。
- 違反の内容: 「疾病のおそれのある乗務」が主な違反行為として認定されました。
- 処分結果: 管内累積違反点数49点。
- 教訓: 健康状態に異常や疑義があるドライバーを乗務させる行為は、健康起因事故に直結する危険性があるため極めて重い処分基準が適用されます。累積49点は、事業停止処分基準である51点にあと2点で到達する極めて危険な水準であり、点呼時の健康状態確認と乗務可否判断の厳格化が急務です。
事例2: 勤務時間等告示の著しい未遵守で累積48点が付与された事案(株式会社HIROKI / 島根県松江市)
- 監査の端緒: 本文に監査端緒の記載はありませんが、労務管理に関する法令違反に基づき監査が実施されました。
- 違反の内容: 「勤務時間等告示の著しい未遵守」が主な違反行為として認定されました。
- 処分結果: 管内累積違反点数48点。
- 教訓: 拘束時間の上限超過や休息期間の不足が「著しい未遵守」と判定された場合、単独または複合的な処分により40点台後半の違反点数が一気に加算されます。改善基準告示に準拠した乗務割の作成と、デジタコデータによる日々のリアルタイムな拘束時間管理が不可欠です。
事例3: 酒気帯び運転が認定され累積31点に至った事案(株式会社タイナカ運送 / 山口県柳井市)
- 監査の端緒: 本文に監査端緒の記載はありませんが、酒気帯び運行等の重大事案に基づき監査が実施されました。
- 違反の内容: 「酒気帯び運転」が主な違反行為として認定されました。
- 処分結果: 管内累積違反点数31点。
- 教訓: アルコール検知器を用いた点呼の実施および飲酒運転防止は運送事業の最重要義務です。点呼の形骸化や見逃しは重大事故リスクを招くだけでなく、1件の事案で累積30点を超える重い処分につながり、事業停止リスクを急速に高めます。
実務チェックポイント:労務時間・健康管理・点呼測定の点検基準
| チェック項目 | 根拠条項 | 確認の方法 | 不備が招く処分 |
|---|---|---|---|
| 拘束時間・休息期間の基準遵守 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項 | 運行記録計(デジタコ)データおよびタイムカードから実労働時間・拘束時間を算出し、改善基準告示の上限を超えていないか照合する | 車両使用停止処分、累積違反点数の付与 |
| 健康状態に疑義のある運転者の乗務除外 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項 | 乗務前点呼における体調申告・顔色・問診結果を確認し、異常が認められる運転者の乗務を確実に中止・交代させる | 車両使用停止処分、累積違反点数の付与 |
| 定期健康診断の受診および台帳管理 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項 | 定期健康診断結果および深夜業従事者の特定健康診断(6か月以内)の受診履歴を台帳等で確認する | 車両使用停止処分、累積違反点数の付与 |
| 酒気帯び運転の根絶とアルコール測定 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条 | 乗務前後の点呼においてアルコール検知器による測定を確実に実施し、検知器ログと点呼記録簿を突き合わせる | 車両使用停止処分、事業停止処分、累積点数の付与 |
| 運行記録計(タコグラフ)の適正記録 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条 | 運行記録計のデータ欠損、カード未挿入、不実記録(改ざん)がないかを運行管理者が日常的に点検・照合する | 車両使用停止処分、累積違反点数の付与 |
| 過労運転を防止する乗務計画の策定 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項 | 過密な運行計画や無理な配送シフトが組まれていないか、手待ち時間を含めた運行指示書・乗務割を点検する | 車両使用停止処分、累積違反点数の付与 |
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出典
- 発出元: 中国運輸局
- 文書番号: 記載なし / 発出日: 2026年9月30日
- 累積違反点数が20点を超える貨物自動車運送事業者 (PDFファイル : 67KB)(PDF)
- 掲載ページ
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の対応については行政機関の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
