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Home > 業界レポート> 物流脱炭素を支える「GHG算定ソフト」の選び方と、Scope3対応の重要性【2026年05月版】
業界レポート 2026年3月10日

物流脱炭素を支える「GHG算定ソフト」の選び方と、Scope3対応の重要性【2026年05月版】

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荷主企業から要求される複雑なScope3(サプライチェーン排出量)の算出において、手作業のExcel管理や属人的なデータ収集はすでに限界を迎えています。本記事では、物流特有の複雑な配車や積載状況にフィットする「GHG算定ソフトウェア」の厳密な選定基準を解説し、算定プロセスを自動化することで、荷主からの指名獲得やESG融資の優遇といった具体的なビジネスの果実を手にするためのロードマップを提示します。

目次
  • 物流におけるScope3可視化が急務となる背景(2026年最新動向)
  • 改正省エネ法とGX推進法が求める「精緻なデータ」と監査耐性
  • 排出量が「価格」「品質」に並ぶKPIとなるサプライヤー選定の激変
  • なぜ汎用ツールではなく「物流特化型」のGHG算定エンジンが必要なのか
  • 単なる燃費計算の限界:トンキロ法・燃費法・排出原単位の実務的使い分け
  • 3PL・協力会社の運行データをいかに効率的に統合(収集)するか
  • 主要な物流向けGHG算定ツールの比較と個別ソリューション解説
  • 主要GHG算定ツール(物流対応版)比較一覧表
  • 個別解説:zeroboard(ゼロボード)
  • 個別解説:e-dash(イーダッシュ)
  • 個別解説:アスゼロ(Asuzero)
  • 導入時に失敗しないための「5つの技術的選定基準」
  • 1. 実運送ログ(TMS/GPSデータ)との自動API連携性能
  • 2. 物流特有の算定ロジック(容積換算、ラウンド配車、混載対応)の有無
  • 3. 監査耐性:第三者認証やSBTi基準・ISO14064に準拠した証跡管理機能
  • 4. ダッシュボードの多角化:拠点別、ルート別、荷主別の削減効果分析
  • 5. 予測シミュレーション:投資(EV化等)による将来の削減量予測とROI
  • 実践ガイド:ソフトを導入して「終わらせない」カーボンマネジメントの回し方
  • 削減努力の数値化による、ESGファイナンスやグリーン融資の獲得
  • 取引先(荷主)との「共同削減プロジェクト」立ち上げによる関係強化
  • まとめ:データドリブンなカーボンマネジメントが物流企業の未来を決める

物流におけるScope3可視化が急務となる背景(2026年最新動向)

2024年のいわゆる「物流の2024年問題」を契機に、国内のサプライチェーンは構造的な転換期を迎えました。そして現在、2026年を迎えた物流業界に重くのしかかっている次なる至上命題が「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」、すなわち物流脱炭素への抜本的な対応です。
これまで物流事業者の環境対応は、CSR活動の延長線上で語られることが少なくありませんでした。しかし、現在では二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)の排出量データは、企業間取引における「パスポート」としての性質を帯びています。

改正省エネ法とGX推進法が求める「精緻なデータ」と監査耐性

2023年4月に施行された改正省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)により、特定貨物輸送事業者には従来のエネファーム・燃費改善の報告だけでなく、非化石エネルギー(EV、燃料電池車、バイオ燃料など)への転換目標の策定と進捗報告が義務付けられました。
さらに、2026年現在はGX推進法に基づく排出量取引制度(GX-ETS)の本格稼働を見据えた過渡期にあります。企業が報告するGHG排出量は、もはや「ざっくりとした推計値」では許されず、外部機関の監査に耐えうる「精緻なデータ(監査耐性)」が求められています。法定基準を満たさない報告や、根拠となる証跡(燃料購入履歴、運行データ等)が不明瞭な数値は、ペナルティの対象となるリスクすら孕んでいるのです。

排出量が「価格」「品質」に並ぶKPIとなるサプライヤー選定の激変

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく開示がプライム市場上場企業に義務化されたことで、荷主企業は自社の排出量(Scope1, 2)だけでなく、サプライチェーン全体の排出量である「Scope3」の開示を投資家から強く迫られています。
物流企業が関わるのは、主に以下の2つのカテゴリです。

Scope3の該当カテゴリ 内容(物流関連) 荷主から見た可視化の重要度
カテゴリ4 上流の輸送・配送(調達物流) 極めて高い(サプライヤーからの調達網全体に関わる)
カテゴリ9 下流の輸送・配送(販売物流) 極めて高い(卸売・小売・消費者へのラストワンマイル)

荷主企業は、自社のScope3削減目標(SBT: Science Based Targets)を達成するため、よりCO2排出量の少ない物流スキームを構築しなければなりません。そのため、コンペティションや契約更新の際、運賃(価格)や配送品質(リードタイム・事故率)と同列、あるいはそれ以上に「正確なGHG排出量データを提供できるか」「具体的な削減計画を持っているか」というカーボンマネジメント能力をサプライヤー選定のKPIとして設定し始めています。データを出せない物流企業は、知らず知らずのうちに荷主の選択肢から除外される時代が到来しているのです。

参考記事: 【2026年版】荷主が求める「グリーン物流」要件と、選ばれる物流事業者の条件

なぜ汎用ツールではなく「物流特化型」のGHG算定エンジンが必要なのか

多くの企業が直面する「痛み」は、表計算ソフト(Excel)を用いた属人的な計算手法の限界です。拠点数が少なく、自社車両(1次請け)のみで完結している間はExcelでも対応可能かもしれませんが、傭車や3PLを活用し、複数荷主の貨物を混載するようになると、途端に計算ロジックが破綻します。

単なる燃費計算の限界:トンキロ法・燃費法・排出原単位の実務的使い分け

物流分野におけるCO2排出量の算定には、主に以下の3つの手法が存在します。これらを業務実態に合わせて使い分ける、あるいは組み合わせることが求められますが、手作業でこれを行うのは至難の業です。

算定手法 概要と計算ロジック メリット デメリット・課題
燃費法(燃料法) 実際の燃料消費量(軽油・ガソリン等)× 排出係数 実態に即した極めて正確な排出量が算出できる 全車両・全運行の正確な給油データ収集が物理的に困難
トンキロ法 輸送重量(トン) × 輸送距離(km) × 排出原単位 貨物情報(伝票データ)から比較的容易に計算可能 積載率や空車回送が加味されず、削減努力が反映されにくい
燃費法とトンキロ法のハイブリッド 自社車両は燃費法、協力会社はトンキロ法を採用 精度とデータ収集負荷のバランスが取れる 複数ロジックの並行管理による計算の複雑化・属人化

特に、帰り便(空車回送)の按分や、1台のトラックに複数荷主の荷物を積み合わせる「混載便(共同配送)」の計算は、重量案分や容積案分といった物流特有の複雑なロジックを必要とします。一般的な汎用GHG算定ツールでは、こうした「物流の現場特有の複雑な配車状況」を細かく設定できず、実態と乖離した数値が出力されるケースが多発します。だからこそ、物流業界の商慣習や配車ロジックを深く理解した「物流特化型」または「物流拡張機能を持つ」算定ソフトが不可欠なのです。

3PL・協力会社の運行データをいかに効率的に統合(収集)するか

物流企業自身のScope3可視化において最大の障壁となるのが、下請けである2次・3次協力会社(傭車先)からのデータ収集です。多くの協力会社は中小零細企業であり、彼らに複雑なデータ入力を求めることは、現場リテラシーの観点からも、業務負荷の観点からも現実的ではありません。
最新のGHG算定ソフトは、紙の請求書や給油伝票をAI-OCR(光学文字認識)で読み取って自動データ化する機能や、協力会社がスマートフォンから簡単に走行距離や給油量を入力できるインターフェースを備えています。データの収集プロセス自体を自動化・省力化できなければ、カーボンマネジメントは机上の空論に終わります。

参考記事: 物流DXの鍵を握る「現場リテラシー」の向上と、定着化のステップ

主要な物流向けGHG算定ツールの比較と個別ソリューション解説

ここでは、2026年現在、物流業界での導入実績が豊富で、複雑なサプライチェーンの排出量可視化に強みを持つ主要なGHG算定ソリューションを比較し、それぞれの強みを解説します。

主要GHG算定ツール(物流対応版)比較一覧表

サービス名 主な特徴・強み 物流システム連携(API) 導入コスト感(目安)
zeroboard API連携に優れ、複雑なサプライチェーンの階層管理に強み ◎(主要TMS、運行管理系と広範に連携) 月額数万円〜(企業規模による)
e-dash 請求書のアップロードのみで算定可能。現場の入力負荷ゼロ 〇(経理システム・API連携拡張中) 月額数万円〜(拠点数に依存)
アスゼロ AI画像認識と、SBTi対応を見据えた手厚い削減コンサルティング 〇(ERP・各種IoTデバイス連携) 初期費用+月額(要見積もり)
物流TMS特化型 Hacobu等、既存の動態管理・TMSに内包される算定モジュール ◎(配車データからリアルタイム算定) 既存システムのオプション費用等

※上記コストは一般的な目安であり、管理する拠点数やユーザー数によって変動します。

個別解説:zeroboard(ゼロボード)

zeroboardは、国内におけるGHG排出量算定クラウドのパイオニア的存在です。特筆すべきは、サプライチェーン全体(Scope1〜3)をカバーする網羅性と、他社システムとの柔軟なAPI連携機能です。
物流業界においては、既存のTMS(輸配送管理システム)やテレマティクス(車両動態管理)とのデータ連携が容易であり、運行データから自動的に排出量を算定する仕組みを構築できます。また、荷主企業側もzeroboardを導入しているケースが多く、データ共有機能を用いることで、荷主へのカテゴリ4・9の報告をシームレスに行える点が、営業上の大きな強みとなります。

個別解説:e-dash(イーダッシュ)

e-dashの最大の強みは、「現場リテラシーを問わない圧倒的な導入のしやすさ」です。電力会社やガソリンスタンドなどから送られてくる請求書をアップロード(またはデータ連携)するだけで、AIが自動で内容を解析し、CO2排出量に変換します。
ドライバーや配車担当者に新たなデータ入力を強いる必要がないため、システム導入に対する現場のハレーションを最小限に抑えることができます。さらに、可視化されたデータを基にした再エネ調達やEV導入の支援など、算定後の「削減アクション」をワンストップでサポートするプラットフォームとしての機能も充実しています。

個別解説:アスゼロ(Asuzero)

アスゼロ(提供:アスエネ株式会社)は、使いやすいUI/UXに加え、専門スタッフによる「脱炭素コンサルティング」がセットになっている点が特徴です。
単なるツールの提供にとどまらず、SBTi(科学的根拠に基づく削減目標)の認定取得サポートや、TCFD提言に沿った開示シナリオの策定支援まで伴走してくれるため、社内に環境・ESGの専門知識を持った人材が不足している物流企業にとって非常に心強いソリューションです。物流特有の複雑なサプライチェーン構造の解析においても、専任コンサルタントが算定ロジックの構築を支援します。

参考記事: API連携で実現する「つながる物流」:TMSと他システムの統合術

導入時に失敗しないための「5つの技術的選定基準」

前段で紹介したような優れたツール群の中から、自社の物流オペレーションに最適なシステムを選ぶためには、以下の「5つの技術的選定基準」を厳格にチェックする必要があります。

1. 実運送ログ(TMS/GPSデータ)との自動API連携性能

GHG算定の自動化において、既存の業務システムとの連携は不可欠です。例えば zeroboard のように、配車システム(TMS)の運行計画データや、車載器(デジタルタコグラフ・GPS)から得られる実走行距離・アイドリング時間のデータを、API経由で日次・リアルタイムで取り込める機能があるかを確認してください。CSVの手動エクスポート/インポートに頼る運用は、いずれ形骸化します。

2. 物流特有の算定ロジック(容積換算、ラウンド配車、混載対応)の有無

物流業務はA地点からB地点への単純な直行便だけではありません。複数の納品先を回る「ラウンド配車(ミルクラン)」や、帰り便に別の荷主の貨物を積む「帰り荷確保」、さらには容積勝ち(重量は軽いが嵩張る貨物)と重量勝ちの貨物の「混載」など、状況は複雑を極めます。
システム選定時は、「1台のトラックの排出量を、荷主A(60%)、荷主B(30%)、空車(10%)のように、重量や容積、配送距離に応じて精緻に按分計算できる機能」が実装されているかを必ず確認してください。この機能が弱いと、荷主に対して正確なScope3データを提供できません。

3. 監査耐性:第三者認証やSBTi基準・ISO14064に準拠した証跡管理機能

算定された数値が「信頼に足るもの」であることを証明できなければ意味がありません。アスゼロ のように、国際的なGHG算定基準である「GHGプロトコル」や、ISO14064に準拠した計算エンジンを搭載していることは必須条件です。また、いつ、誰が、どの根拠データ(請求書や走行ログ)を基に数値を算出したのかを遡って確認できる「証跡管理(監査証跡:オーディットトレイル)機能」の有無が、将来的な外部監査やGX-ETS対応において運命を分けます。

4. ダッシュボードの多角化:拠点別、ルート別、荷主別の削減効果分析

データは可視化して終わりではありません。経営層や現場の拠点長が、直感的に課題を発見できるUI/UXが必要です。「全社で〇〇トン」というマクロな数字だけでなく、「関東物流センターの〇〇ルートの排出量が高い」「荷主A向けの配送における積載率低下がCO2増悪の要因である」といったミクロな分析ができるよう、ダッシュボード上で様々なディメンション(切り口)でのドリルダウン分析が可能かを検証してください。

5. 予測シミュレーション:投資(EV化等)による将来の削減量予測とROI

カーボンマネジメントの本質は「削減」です。e-dash などの先進的なツールでは、現在の排出量データをもとに、「拠点Aのディーゼル2トン車5台をEVトラックにリプレイスした場合、年間でどれだけのCO2が削減され、初期投資に対する燃料費削減のROI(投資利益率)は何年で回収できるか」をシミュレーションする機能を備え始めています。データドリブンな設備投資判断を支援する機能こそが、経営直結の算定ツールの証です。

参考記事: EVトラック導入の壁と突破口:充電インフラからROIの考え方まで

実践ガイド:ソフトを導入して「終わらせない」カーボンマネジメントの回し方

GHG算定ソフトの導入は、ゴールではなくスタートラインです。可視化されたデータを活用し、いかにして企業価値を向上させ、ビジネスの「商機」へとつなげていくか。その実践的なステップを解説します。

削減努力の数値化による、ESGファイナンスやグリーン融資の獲得

精緻なデータに基づき、「過去3年間で原単位あたりのCO2排出量を15%削減した」といった実績を証明できるようになれば、金融機関からの評価は劇的に変わります。
近年、メガバンクや地方銀行は、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを評価し、金利優遇を行う「サステナビリティ・リンク・ローン」や「グリーン融資」を積極的に推進しています。GHG算定ソフトから出力される監査耐性のあるレポートは、これらの融資審査を通過するための強力なエビデンスとなり、物流施設への太陽光パネル設置やEV車両の導入といった大規模投資の資金調達コストを大幅に引き下げる効果をもたらします。

取引先(荷主)との「共同削減プロジェクト」立ち上げによる関係強化

自社のデータを握ることは、荷主に対して「提案型営業」を行うための最強の武器になります。
例えば、算定ソフトのダッシュボードから「特定曜日の納品ルートにおいて、積載率が50%を切り、結果として荷主Aの製品1個あたりのCO2排出量が他ルートの2倍になっている」というデータを発見したとします。物流企業は荷主に対し、「納品リードタイムを1日後ろ倒し(発着荷主の協調)にして配送頻度を減らせば、物流コストを〇%削減できると同時に、御社のScope3(カテゴリ4)排出量も年間〇トン削減できます」という、コストと環境の両面からアプローチする提案が可能になります。
国交省・経産省が主導する「グリーン物流パートナーシップ会議」などでも、こうした荷主と物流事業者の協働による削減事例が高く評価されています。下請けとして単に運ぶだけの関係から、サプライチェーンの強靭化を共に推進する「戦略的パートナー」へと関係性を昇華させることができるのです。

参考記事: 物流危機を救う「リードタイム延長」:荷主を説得するデータ活用術

まとめ:データドリブンなカーボンマネジメントが物流企業の未来を決める

2026年、物流脱炭素は「やったほうがいいCSR」から「やらなければ市場から退場を余儀なくされるサバイバル条件」へと完全にシフトしました。
物流特有の複雑なオペレーションに対応したGHG算定ソフトを選定し、既存のシステム(TMS等)とシームレスに連携させることで、データ収集の負荷(Pain)を最小限に抑えることが可能です。そして、そこで得られた正確で監査耐性のあるデータを基に、EV化のROI最適化や、荷主への脱炭素提案を通じた関係強化といった「具体的な対価(Gain)」を獲得する。
このデータドリブンなカーボンマネジメントのサイクルをいち早く回し始めた企業こそが、次世代の持続可能なサプライチェーンを牽引するリーダーとなるのです。まずは、自社の現在のデータ収集フローの棚卸しと、自社に最適な算定エンジンの比較検討から、力強い第一歩を踏み出してください。

最終更新日: 2026年05月01日 (LogiShift編集部による最新情勢の反映済み)

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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