ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システムとは?
「ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システム」は、長距離幹線輸送における自動運転トラックや、空港・港湾等の制限区域内で自動モビリティを運行する企業に向けて、車両単体のセンサーでは検知困難な数キロ先の先読み情報を提供し、安全な運行と高度な遠隔監視をサポートするデータ連携・配信プラットフォームです。日本の自動車メーカー各社や政府系ファンドなど「オールジャパン」の出資体制のもと、東証グロース市場への上場も果たしているダイナミックマッププラットフォーム株式会社が提供しています。
本システムは、センチメートル級の精度で整備された「高精度3次元地図データ(HDマップ)」を静的基盤とし、その上に気象や渋滞、突発的な道路規制といった時間単位・秒単位で変化する動的な情報をリアルタイムに重畳(レイヤーとして重ね合わせ)します。これをV2N(Vehicle-to-Network)通信を通じて車両に一元配信することで、車両側の死角や数キロ先で発生した急激な環境変化(ゲリラ豪雨や道路上の障害など)を事前に把握させ、適切な減速や回避ルートの選択、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)への退避判断などを自律的に実施できるように支援します。深刻な「2024年問題」や長距離ドライバー不足、運行管理の安全性向上という物流・インフラ業界の重要課題に直結する次世代デジタルインフラです。
主な機能・特徴
本システムは、自動運転車両が刻々と変化する道路状況を「先読み」して走行制御に生かすための、高度な機能群を備えています。主な機能と、それらが現場の運用にもたらす変化は以下の通りです。
- 高精度3次元地図データ(HDマップ)の車両マッチング基盤
センチメートル級の極めて高い精度で、道路の形状、車線数、交差点、標識、信号機、および周囲の3次元構造物を記録したデータベースを提供します。GNSS(GPSや準天頂衛星みちびき等)の電波が遮られやすい山間部のトンネル内や、大規模な物流倉庫・工場施設内、空港制限区域内などのGPSデッドゾーンにおいても、車両側のLiDARやカメラといったセンサーが捉えた周囲の点群データと、このHDマップを重ね合わせる(マッチングする)ことで、自車の正確な位置をミリ秒単位で推定し続けます。これにより、自己位置認識のズレに伴う自動運転システムの緊急停止を防止し、安定した運行継続を可能にします。
- 静的・動的情報の重畳と先読み配信(V2N通信)
ダイナミックマップの概念に基づき、変化の遅い「静的情報(HDマップ)」の上に、「準静的情報(道路工事や規制予定)」、「準動的情報(広域の気象状況やリアルタイムの渋滞)」、「動的情報(周辺の障害物や先行車、交通信号)」などを同一の空間座標軸上で重ね合わせて管理します。車載のセンサーだけでは検知距離が約120m〜200m程度に限られますが、本システムはV2N(Vehicle-to-Network)通信を介して数キロ先の道路情報をあらかじめ車両へプッシュ配信します。これにより、車両が現場に到着する前に「先の車線規制」や「渋滞の最後尾」を認識できるため、急ブレーキや急な車線変更のない、スムーズで安全なエネルギー効率に優れた自律走行を実現します。
- 水膜厚予測情報に基づく車両制御・緊急退避支援
気象予測データと道路の3次元形状・路面勾配などの地形データを組み合わせ、突発的な降雨による「車線別の路面水膜厚」を精密に予測して配信する機能です。ハイドロプレーニング現象など、無人トラックや特殊車両にとって致命的となるスリップ事故のリスクを事前検知します。配信された水膜予測情報に基づいて、車両システムが自動的に速度を減速させたり、安全な手前のSAやPAへ退避させたりする運行計画の判断・制御を高度に支援。人間が直接道路状況を見ていなくても、天候変化に先んじたデジタルな安全管理が可能になります。
- SA/PA・拠点における地図データの部分差分更新(OTA)
広大なエリアにおよぶ大容量の3次元地図データを常に一括更新するのではなく、車両の運行計画ルートに必要なエリアや、目的地周辺の地図、SA/PAといった限定エリアの地図のみを、必要なタイミングで差分抽出して配信する機能です。自動運転トラックが途中のSAやPAに停車・待機している隙に、目的地までの最新ルートや敷地内のレイアウトマップデータを受信・更新(OTA:Over-The-Air配信)することができます。これにより、限られたモバイル通信帯域でも効率的にデータを同期し、常に最新の運行環境を維持したまま走行を再開できます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
「ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システム」は、自動運転の社会実装に向けた最先端のプラットフォームであり、その性能を十分に発揮できる現場と、そうではない現場が明確に分かれます。
向いている企業・現場
- 高速道路を用いた長距離の自動運転幹線輸送(レベル4等)の導入・社会実装を本格的に進めている物流・倉庫業の大企業
長距離の無人自動運転トラックを公道で走らせるためには、車両センサーの検知範囲をはるかに超える気象変化や道路規制への先読み対応が必須です。本システムを活用して車外から高品質な動的データ(渋滞や降雨・水膜予測など)をリアルタイムに配信し、二重三重の安全冗長性を担保した運行運行管理体制を構築したいプロジェクトチームに適しています。
- 空港制限区域や港湾、大規模工場敷地内、発電所といった特定の狭域エリアで、レベル3〜4の自動走行モビリティの導入開発を進める企業・コンソーシアム
GPS信号が届きにくいエリアや、見通しの悪い交差点が多く通常のセンサー検知だけではレベル4の実装が難しいクローズドな産業現場において、インフラ側のカメラ・路側センサー等(DTI:デジタル交通インフラ)と連動した、安全な調停・運行システムをデータ連携で構築したい現場に向いています。
向いていない企業・現場
- 人間が運転する一般的なトラックや営業車を対象に、単純な車両の位置把握や運転日報の作成のみを行いたい物流事業者
本システムは自動運転車が「機械による自己位置認識」と「自動制御の判断」を行うためのデータ配信インフラです。人間が運転し目で周囲を確認する既存の車両を管理する場合は、GPSトラッキング機能やドライブレコーダー連動に特化した、より安価でパッケージ化された一般的な輸配送管理システム(TMS)や動態管理システムを検討すべきです。
- 自社内で自動運転システム開発や車載インターフェースの実装・インテグレーション開発を行える技術チーム、および十分な開発予算を持たない企業
本システムから配信されるセンチメートル級の地図データやリアルタイム動的データを、車両側の自動運転制御ソフトウェア(Autoware等)や車載ECUに正確に取り込み、走行に反映させるには、高度な組み込み開発と技術的な接続検証が必要です。単独で導入・活用することが難しいため、システムを最初からパッケージ化した自動運転車両開発ベンダー(またはワンストップ実用化サービス)へ委託するか、そうしたサービスを仲介として導入することが推奨されます。
料金・プラン・導入方法
「ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システム」の利用料金は、公式にはすべて非公開となっており「要問い合わせ」です。
本システムは画一的なパッケージSaaSではなく、対象となる走行ルートの距離やエリア(高速道路、一般公道、特定の空港や私有施設内などの範囲)、整備を要する3次元地図データの量、連携を希望する動的情報(気象、水膜厚予測、渋滞、規制情報など)の配信頻度、および車両台数や通信方式に合わせたオーダーメイドの構築・ライセンス形態をとるためです。そのため、導入を検討する際、または見積もりを取得する段階では、以下のポイントをベンダーに確認する必要があります。
- ライセンスの基本課金体系:利用料が接続する車両(デバイス)台数に応じた定額制なのか、あるいは配信サーバーへのAPI呼び出し回数や取得データ容量に応じた従量課金制なのか。
- 初期データ生成・マッピング費用(プロジェクト費):自社の物流センターや空港など、未カバーの私有エリアについて新規に3次元計測(MMSやドローン、ハンディスキャナを用いた測量)を行い、HDマップのベースを生成する場合に、どの程度の初期マッピング費用が発生するか。
- 地図データのメンテナンス(差分更新)に関わるコスト:道路形状が変更された際のデータ更新、施設レイアウト変更時の更新にともなうメンテナンス費用の頻度とランニングコスト。
- 技術支援(APIインテグレーションサポート)の有無:車載のシステム(AD/ADAS制御)や運行管理・監視システムに、本システムの配信データを連携・デコードさせるための、初期開発における技術アドバイザー費用が含まれているか。
導入の流れ・期間
本システムは、高度な情報通信インフラと車両制御との組み合わせが必要となるため、導入までは複数の技術的ステップを踏む必要があります。「ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システム」の具体的な導入期間は個別設計となるため要問い合わせですが、標準的な流れは以下のようになります。
- お問い合わせ・初期要件の確認
提供元のダイナミックマッププラットフォーム株式会社の公式サイトから問い合わせを行います。導入を予定している自動運転車両の仕様、使用している車載ソフトウェア、走行予定ルート(高速道路・一般道、または特定の私有エリア)、解決したい安全上の課題(死角の先読みや悪天候対策等)を共有します。
- 環境調査・カバーエリアの確認
走行予定ルートにおいて、既に同社が整備済みの高精度3次元地図データ(HDマップ)が使用できるかを確認します。すでにカバーされている高速道路などの場合は速やかにデータ提供が可能ですが、カバーされていない物流センター敷地内や特定エリアの場合は、3次元計測(測量、3D点群データの取得)プロジェクトを計画します。
- 要件定義・お見積もりと契約
提供するHDマップのデータ範囲、配信する動的情報(気象・渋滞・規制・水膜厚など)の要件、データ通信・配信サーバーの構成を決定します。それに伴う初期費用および年間ライセンス費用などのお見積もりが提示され、合意の上で正式な契約が締結されます。
- 地図データの整備・提供(新規エリアの場合)
必要な場合、MMS(モービルマッピングシステム)やドローンなどを用いた計測、図化技術、および複数の計測データを統合するデータ生成プロセスを経て、センチメートル級の高精度な静的地図(HDマップ)を構築・提供します。
- システム接続・インテグレーション開発
本システムが配信するデータ(API等を通じて取得可能な動的データ)を、車載の自動運転システム(Autowareや車載ECU)および遠隔監視システムに安全に受信させ、重ね合わせ処理を行って制御・判断に生かせるよう、エンジニアによるソフトウェア開発・システム連携を行います。事前にシミュレータ環境を用いて、データのデコード確認や異常系のテストを徹底的に実施します。
- 実機走行検証・本格稼働
実機モビリティに対象データを受信させ、安全なテストコースや実際の走行路で試験走行を繰り返します。V2N通信を介した先読み情報の受信テスト、ハイドロプレーニング防止のための自動減速、退避判断などの実働連携を検証し、安全の安全基準をクリアしたのちに実運用(レベル3〜4自動運転の運用・共同輸送など)へ移行します。
連携できるシステム・機器
本システムは、自動運転のエコシステムを構成する様々なシステムや機器と高度に連携できるよう設計されています。連携可能な代表的なシステムやハードウェア、APIの有無は以下の通りです。
- 車載自動運転システム・ECU・制御モジュール
株式会社T2や先進モビリティ株式会社などが独自に開発・搭載する自動運転トラック制御ユニット、ならびに車載コンピュータへのデータ連携に対応しています。これにより、センチメートル級の自車位置推定と、数キロ先からの動的情報(渋滞や規制)を車両の制御コマンド(減速、車線変更等)に直結させることができます。
- 空港内情報集約基盤「VIPS(Various Information Port System)」
制限区域内に設置されたAIカメラやセンサー、有人車両や航空機のトラッキングシステムから取得された「ダイナミックマップ情報」を統合・共有する「VIPS」とデータ連携。統合された動的な管制情報を、自動運転トーイングトラクターなどの車両システムにリアルタイムで配信・マッピングすることが実証されています。
- 自動運転開発用シミュレータ・AIトレーニング環境(NVIDIA、MathWorks等)
NVIDIAのフィジカルAI開発プラットフォーム(NVIDIA Cosmos等)や、MathWorks(RoadRunner、MATLABなど)といった世界標準のシミュレーション製品群と連携可能です。本システムから出力される高品質なHDマップデータや点群データをシミュレータに取り込み、自動運転やADASのアルゴリズムを学習・検証するためのリアルな「シミュレーション用3Dシーン動画」を生成することができます。
- 遠隔監視プラットフォーム・共同輸送計画システム
自動運転車両の稼働状況を監視する遠隔システムや、ヤマト運輸、NEXT Logistics Japan(NLJ)、BIPROGYなどが開発する「自動運転トラックを想定した共同輸送効率化システム(API連携)」、各種配車管理システムと連携可能です。車両の極めて正確な位置情報を物流事業者へフィードバックすることで、より緻密な共同輸送の配車・スロットマッチングや、緊急時の退避指示・遠隔安全監視をサポートします。
- 高度通信規格およびインフラ協調プラットフォーム
名古屋大学コンソーシアムを中心に無償公開されている、車両・路側機・クラウドを繋ぐ情報通信基盤「ダイナミックマップ 2.0(DM2.0)」のプロトコルや、V2N/V2X無線通信技術に対応。路側機やデジタル交通インフラ(DTI)の情報を共通インターフェースで処理できます。
※なお、一般的なWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)との標準的な直接パッケージ連携機能は公式情報として確認されていません。基本的にはAPIを通じて、自動運転専用の運行監視システムや、物流事業者が自社開発する共同配送プラットフォームとカスタム連携する形となります。
導入事例・実績
本システムは、国家プロジェクトであるデジタルライフラインの先行実装や、空港等の特定インフラ、および自動運転スタートアップ各社との共同実証実験において、非常に豊富かつ具体的な導入・走行実績を有しています。
1. 株式会社T2:新東名高速道路での自動運転トラックによるV2N通信実証(2026年1月〜)
高速道路におけるレベル4自動運転トラックでの幹線輸送を開発する株式会社T2は、2022年からダイナミックマッププラットフォーム社の高精度3次元地図データを採用しています。さらに2026年1月からは、新東名高速道路においてV2N通信を活用した先読み情報の配信実証を開始しました。突発的な気象変化に対応するための「車線別の水膜厚予測情報」を本システムから事前にトラックへ配信し、ハイドロプレーニング現象を避けるための自動減速や、手前のSA/PAへの退避判断を想定した車両制御の技術検証を進めています。また、物流センターを模したSA/PAに停車した際、出発地で指定された目的地までのルートマップおよびセンター内地図データを、最新の道路状況に応じてダウンロードする「駐車時地図更新機能」についても検証を行い、無人幹線輸送に必要な地図インフラの有効性を確認しています。
2. ヤマト運輸・NLJ・BIPROGY:高速道路での共同輸送を想定したデジタルライフライン実証(2025年2月)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業」の一環として、ヤマト運輸株式会社、NEXT Logistics Japan株式会社(NLJ)、BIPROGY株式会社、およびダイナミックマッププラットフォーム株式会社の4社により、自動運転を支援するデータ連携システムの実証実験が行われました。新東名高速道路の駿河湾沼津SA〜浜松SA間において、先進モビリティ株式会社の自動運転システム(レベル2相当、ドライバー監視下)を搭載した大型トラックを用いて実施。本システムが「ダイナミックマップ情報配信による自動走行支援システム」として道路形状、気象状況、渋滞情報をリアルタイム提供し、車両のセンサーでは検知できない前方数キロの情報を先読みさせることで安全走行を支援しました。さらに、ヤマトやNLJが構築した共同輸送の空スペース・荷物マッチングシステム、および自動運転の遠隔監視システムと本システムを相互接続し、突発的な天候急変時の緊急停車・再開、およびそれに伴う運行計画変更をスムーズに共有できることを検証しました。
3. 豊田自動織機・中部国際空港・中部スカイサポート:空港制限区域内における自動運転モビリティ実証(2026年1月)
中部国際空港(セントレア)の制限区域内において、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社が国土交通省のSBIR(中小企業イノベーション創出推進事業)を通じて開発を進める、空港内情報集約基盤「VIPS」を用いた自動運転トーイングトラクター(貨物牽引車、レベル3)の走行実証が行われました。空港内のAI搭載カメラや各種センサーから取得された航空機や周辺車両の位置・動きといったリアルタイムの動的情報を「VIPS」に集約。これを車両システム上の「高精度3次元地図データ」と重ね合わせ、車両が走行するエリアに応じて最適なデータを配信しました。これにより、車載センサーのみでは死角となりやすくレベル4化の課題となっていた「航空機の走行経路を横断するサービスレーン」での安全な自動走行が可能であることを検証し、港湾や物流センター等の多様な公共・産業エリアへの応用性を提示しました。
導入前に知っておきたいこと
本システムを導入し、自動運転の安全性や運行効率を高めるにあたっては、技術上のいくつかの課題や運用における注意点を事前に把握しておくことが、ミスマッチや失敗を防ぐ鍵となります。
- 車載ECUの処理能力(エッジコンピューティング)と通信負荷のトレードオフ
高精度3次元地図データ(HDマップ)はそのものがセンチメートル級の細かなポリゴン・3次元情報であるため、データ量が極めて大きくなります。これに加えてリアルタイムの気象、規制、他車両、信号などの動的情報を次々と受信して車載システム側で重畳・解析する処理は、車載の電子制御ユニット(ECU)やエッジコンピューティング環境に非常に高い負荷をかけます。通信の遅延(レイテンシー)やエッジ側の処理遅れが起きると、むしろ急ブレーキや誤判断を招く恐れがあるため、車載ストレージの読み書き速度や通信帯域、車載側デコードアルゴリズムの事前設計が不可欠です。
- 一般公道における地図差分情報の「更新頻度」と「膨大な管理コスト」
高速道路や空港・物流センターのような制限区域(閉じられた環境)は道路形状がほぼ不変で管理しやすい一方、一般公道(一般道)に対象を広げる場合は、日々の工事、区画線の引き直し、一時的な規制、新たな障害物の発生頻度が極めて高くなります。高頻度で地図データの更新(差分検出・図化)を維持し続けるには、膨大なコストや車両プローブ(走行車両からのカメラデータ回収)を統合する仕組みが必要であり、現時点では一般公道の隅々に至るまで即座に最新マップを安価に提供・維持することにはコスト的・技術的な壁が存在します。
- 完全な「レベル4無人化」の実現は国のデジタルインフラ整備スケジュールに依存する
本データ連携システムによって「センサー外の先読み」が可能になっても、それは自動運転を補助するデータ連携プラットフォームです。トラック等の完全無人レベル4走行を日常的・商業的に実施するには、道路上に電磁マーカーや磁気センサー、路側センサーなどの「デジタル交通インフラ(DTI)」が十分に敷設されていることや、国土交通省や経済産業省が進める「デジタルライフライン全国総合整備計画」の社会実装スケジュール(主に2027年以降を想定)が前進していることが前提となります。システムを入れれば明日からすぐに長距離を無人化できるわけではない点に留意する必要があります。
類似ツールとの比較
自動運転の社会実装や開発・運行管理を支援する代表的な類似システムとの比較は以下の通りです。それぞれのツールの主要な役割と特徴を比較検討し、プロジェクトに最適なツールを選定することが重要です。
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システム | センチメートル級のHDマップに気象・渋滞等のリアルタイムな動的情報を重畳して配信。V2N通信での先読み・危険回避に特化 | 要問い合わせ | 高精度な3D地図とリアルタイムな道路状況データを統合し、車両の検知限界を超えた運行安全性を実現したい大企業 |
| Web.Auto | 世界初のオープンソース自動運転OS「Autoware」をベースに、自動運転車の開発・シミュレーション・運行監視を支援するオープンなクラウド | 要問い合わせ | 特定の地図会社に依存せず、オープンなエコシステムを利用して独自の自動運転ソフトウェアやシミュレーション環境を構築したい企業 |
| Dispatcher | 自動運転車両の遠隔監視・運行管理プラットフォーム。トラックやバスなどの車種や製造元を問わず、一元管理、異常検知、遠隔指示が可能 | 要問い合わせ | 複数台の自動運転車両を同時制御し、オペレーターからの遠隔介入や統合的なフリート管理(運行管理)を重視する事業者 |
| T2 自動運転システム | 幹線輸送(高速道路)に特化したレベル4自動運転トラックの開発および運行・遠隔監視を一体提供する。2024年問題に直結する大型ソリューション | 要問い合わせ | 高速道路における自動運転大型トラックを用いた長距離拠点間輸送を早期に実用化し、ドライバー不足を解決したい物流企業 |
ツールを選定する際の判断基準として、「ダイナミックマップ 自動運転向けデータ連携システム」は、自動運転の頭脳となるモビリティ(車載システム)に対して、安全走行を補完するための「超高品質な空間地図データベースと、広域リアルタイム情報(V2N)」を供給するデータプラットフォーム(協調領域のインフラ)です。したがって、自社で車両側の開発や自動運転制御を行っており、車載センサーの限界(見通しの悪さ、死角、ゲリラ豪雨対策)を克服するための高精度データが欲しい場合に適しています。
一方で、車両自体の自律走行開発サイクル、仮想テスト環境をトータルで効率化したい場合は、シミュレータ等の包括環境を提供するWeb.Autoを検討すべきです。また、すでに出来上がった自動運転車(複数メーカーの混在を含む)を1つの管理画面でフリート管理・遠隔介入させたい場合は、運行管理・監視機能に特化したDispatcherが有力候補になります。これらは機能がバッティングする競合というよりも、ダイナミックマッププラットフォーム社が供給する地図・動的データ配信APIと、各社の運行システムを「API接続して併用する」ことで初めて相乗効果を発揮する協調的な関係にあると言えます。
よくある質問(FAQ)
- 一般車(手動運転のトラック)へ導入して運行効率化や動態管理に使用できますか?
- いいえ。本システムは主に自動運転車両(レベル3・レベル4)や、高度な先進運転支援システム(ADAS)を搭載したモビリティが、システムによる自己位置認識や自動走行制御、緊急時の退避判断を行うためのデータ配信インフラです。人間が運転する一般的なトラックの「GPS動態追跡」や「燃費管理」「運転日報の自動生成」といった業務管理が目的である場合は、本システムは明らかに機能過多となるため、標準的な運行管理システム(TMS)や車両動態管理パッケージの導入をお勧めします。
- スマホアプリでの利用は可能ですか?また対応環境はどのようになっていますか?
- いいえ。本システムはスマートフォンの一般ユーザー用アプリとしては提供されていません。自動運転の車載システム(制御ECU)や遠隔監視サーバーがAPI等を介して直接生データをダウンロードする仕組み、もしくはWEBブラウザ等の開発用ツールを介してアクセスするシステム通信連携が前提です。高精度3次元データを閲覧・分析するためのプラットフォームとして「3Dmapspocket®」などのビューワーを展開していますが、こちらは専用のPC環境や推奨ブラウザでの操作が基本となります。
- 導入前に、自社の車載システムと連携して動作をテストするためのデモや無料トライアルは可能ですか?
- 無料トライアルの詳細は公式には開示されていませんが、自動運転車両の開発プロセス(Sim-to-Real)において、事前にシミュレータ環境(NVIDIAやMathWorks等のプラットフォーム)に地図・動的データを配信・連携させるテストや、個別の実証実験プログラムを通じたデータ利用の検証体制が整えられています。実機でのテストデータの提供範囲や評価ライセンスの条件については、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社へ直接問い合わせてご確認ください。
- 契約期間や最低契約、途中解約時の条件はどうなっていますか?
- 契約期間や解約に関する具体的なポリシー、最低利用期間は公式情報として開示されていません。プロジェクトベースでのマッピング・測量契約なのか、開発・実運用でのデバイス別(またはデータ利用量別)ライセンス契約なのかによって契約形態が大きく異なるため、問い合わせ時および見積もり時に個別に確認する必要があります。
- 記事内で紹介されている「VIPS」や「空間ID」とは何ですか?
- 「VIPS」は、空港制限区域内のAIカメラや各種センサー、航空機位置等の様々なダイナミックマップ情報を集約・共有する「空港内情報集約基盤」のことです。また「空間ID」は、経済産業省が主導するデジタルライフライン整備の一環で、3次元空間をサイコロ状のボクセル(空間ID)に分割して位置情報を管理する仕組みであり、本システムはこれらに準拠したデータの相互連携・統合を推進し、ドローンやAGV、自動運転車が共通の空間定義で動ける仕組みを支えています。
- サポート体制や問い合わせ対応の窓口はどのようになっていますか?
- 導入・開発企業に向けて、同社のエンジニアやプロジェクト推進チームによる、3次元データおよびAPIのインテグレーション開発技術サポートが提供されています。技術的な連携の可否やAPI仕様などの相談・窓口は、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社公式サイトの問い合わせフォーム、または担当部署にて随時対応しています。
- 日本国外(北米、欧州、アジアなど)での配信にも対応していますか?
- はい、対応しています。提供元であるダイナミックマッププラットフォームグループは、米国の「Ushr社」などの海外拠点を傘下に持ち、日本全域の高速道路に加えて、北米150万km、欧州25万5000km、韓国2万kmに及ぶ広範囲な高精度3次元地図データの整備・提供を行っています。海外の空港・港湾などの狭域エリアや公道での実証、自動車メーカーによるグローバルな自動運転開発にも、国際標準化された地図仕様(IATAの基準等)でのサービス提供を行っています。