Dispatcherとは?
Dispatcher(ディスパッチャー)は、ソフトバンク株式会社の子会社であるBOLDLY株式会社が開発・提供する、自動運転車両の遠隔監視・運行管理プラットフォームです。主に自動運転や隊列走行を導入する企業や自治体向けに設計されており、1人で複数台の自動運転車両を同時制御し、異常検知や遠隔操作などを一元管理できるのが特徴です。
トラック、バス、ドローン、物流ロボットなど、国内外の30種類以上の多様なモビリティと接続でき、車種やメーカーを問わず同一のインターフェースで管理することが可能です。人手不足が深刻化する交通・物流業界において、「レベル4」などの無人自動運転の安全な運用を支え、運用コストの削減と持続可能な移動・輸送サービスの実現という課題を解決します。
主な機能・特徴
- 複数車両の同時遠隔監視と制御
遠隔地から複数台の自動運転車両の走行状況をリアルタイムで監視し、発進・停止などの操作を一括して行うことができます。異常発生時には素早く対応できる体制を構築します。 - 車内移動検知AI
車内に設置したカメラの映像をもとに、走行中の乗客の立ち歩きをAIが検知します。遠隔監視者にアラートが通知されるため、車内アナウンスで注意喚起を行うなど、転倒事故の未然防止に役立ちます。 - Dispatcherコネクト(API連携)
車両の位置情報やアラート情報などをAPIで提供し、他社のシステムやサービスと連携させることが可能です。 - Dispatcherダッシュボード
車内のモニターやタブレットに乗客向けの到着案内を表示したり、乗務員向けのオペレーション機能を提示したりできる機能です。 - 地図カスタマイズ機能
GeoJSON形式を活用し、公道だけでなく、敷地内のコースや建物の階層(地下・地上階)を地図上に表現できます。工場や倉庫内でのモビリティ管理に有効です。 - ライセンス期限通知機能
管理している車両の車検期限や道路使用許可証、従業員の各種許可証などをシステム上で登録・管理し、期限が近づいた際に通知を出すことで、安全コンプライアンスを担保します。 - 経路検索サービス連携(GTFS対応)
「標準的なバス情報フォーマット(GTFS)」に対応しており、Google マップなどのスマートフォンアプリ上で、自動運転車両のリアルタイムな位置情報を表示できます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
【向いている企業・現場】
中堅から大手企業、または自治体において、レベル4自動運転バスの定常運行や、工場・広大な倉庫敷地内での無人搬送ロボット・自動運転トラックを運用したい現場に最適です。「メーカーが異なる複数の自動運転モビリティを一元管理したい」「遠隔から少人数で安全に運行を監視し、人手不足を抜本的に解決したい」という課題を持つ運行管理者やプロジェクト担当者に強く推奨されます。
【向いていない企業・現場】
自動運転を前提としておらず、人間が運転する既存のトラックや営業車の「動態管理・日報作成」のみを行いたい企業には不向きです。Dispatcherは自動運転の遠隔制御や3Dマップ連携など高度な機能に特化しているため、単なるGPSトラッキングやドラレコ機能のみを求める小規模事業者にとっては、システム規模や運用コストの面でミスマッチとなりやすく、一般的なフリートマネジメントシステム(動態管理SaaSなど)を検討した方がよいでしょう。
料金・プラン・導入方法
SaaS型の月額課金モデルで提供されていますが、公式サイト上でのシステム単体の料金プランは非公開となっており、「要問い合わせ」となります。
デジタル庁の資料等で公開されている自治体の事業費例(車両代やインフラ構築費を含む)では数千万円規模となるケースが報告されており、導入する車両の種類・台数、走行ルートの3Dマップ作成の有無などによってトータルコストが大きく変動します。導入を検討する際は、BOLDLY株式会社へ直接問い合わせて見積もりを取得する必要があります。
導入事例・実績
国内の複数地域で、日本初となる自動運転バスの実用化・定常運行を支えるインフラとして導入されています。
- 茨城県境町
国内で初めて自動運転バスの定常運行に導入。複数台の自動運転バスを定時・定路線で運行管理しているほか、LINEミニアプリと連携したオンデマンド予約システムも実現しています。また、物流ドローンの遠隔監視の基盤としても活用されています。 - 愛知県日進市
自動運転バスの実証・定常運行において導入。マイナンバーカードと連携したLINEアプリでの乗車予約システムと組み合わせ、効率的な運行管理を実施しています。 - HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)
羽田空港に隣接する大規模複合施設において、自動運転バス「NAVYA ARMA」の定常運行を管理。GPSが届かない屋内ルートや公道実証においても、3Dマップとセンサーを活用した運行を遠隔で監視しています。 - 北海道上士幌町
地域住民の足となる自動運転バスの運行管理システムとして導入され、持続可能なモビリティサービスの提供に貢献しています。
導入前に知っておきたいこと
Dispatcherは自動運転の最前線を支える優れたプラットフォームですが、実際の運用環境においてはいくつかの課題や注意点も報告されています。
- 走行環境とインフラへの依存
自動運転車両全般の課題でもありますが、GPS電波が届かない屋内や、工事などで3Dマップと実際の風景が大きく乖離した環境では、システムが自動走行を停止し、遠隔監視者や添乗員による「手動運転への切り替え」が必要になるケースがあります。ルート設定や通信環境の事前整備が不可欠です。 - 全体コストと費用対効果の検証
システム単体だけでなく、対応する自動運転車両の調達、3Dマップの作成、通信インフラの整備などを含めると、プロジェクト全体の初期費用は高額になります。明確な運用ビジョンや補助金の活用計画がないと、費用対効果を生み出すのが難しい場合があります。 - 組織内での運用体制の構築
高度な遠隔監視プラットフォームであるため、システムを使いこなす専任のオペレーター(遠隔監視者)の育成・確保が必要です。
類似ツールとの違い・選び方
一般的な物流・運送業界向けの「動態管理システム」が人間のドライバーをサポート・監視することに主眼を置いているのに対し、Dispatcherは「無人(自動運転)モビリティの遠隔制御と安全担保」に特化している点が最大の決定的な違いです。
また、自動車メーカーやロボットメーカーが提供する純正の管理システムは、自社製品専用であることが多いですが、Dispatcherは「プラットフォーム」として独立しており、API接続や車載器を通じて国内外30種類以上の異なるメーカーの車両・ドローン・ロボットと接続可能です。そのため、「将来的に複数メーカーの自動運転車両を組み合わせて運用したい」「自社ブランドで自動運転サービスを展開したい(ホワイトレーベルでの利用)」という企業にとって、極めて拡張性の高い選択肢となります。
よくある質問(FAQ)
- Dispatcherはどのような車種・モビリティに対応していますか?
- フランス・Navya製の自動運転バス「NAVYA ARMA」をはじめ、ティアフォー製のEVバス、さらには物流ドローンや屋内用の搬送ロボットなど、国内外30種類以上の自動運転モビリティとの接続実績があります。
- 乗客が車内で転倒する事故を防ぐ機能はありますか?
- はい。「車内移動検知AI」機能が搭載されています。車内カメラの映像から乗客の立ち歩きをAIが検知し、遠隔監視者にアラートを通知することで、着座前の発車防止や車内アナウンスによる注意喚起が可能です。
- 既存の予約システムや地図アプリと連携できますか?
- 可能です。「Dispatcherコネクト」というAPI機能を通じて外部システムと連携できるほか、GTFS(標準的なバス情報フォーマット)にも対応しており、Google マップなどの経路検索アプリ上で車両のリアルタイム位置を表示することができます。また、LINEアプリを用いた乗車予約の実績も多数あります。