Dispatcherとは?複数車種の自動運転を一元管理する遠隔監視・運行管理システムの機能と価値

Dispatcherとは?複数車種の自動運転を一元管理する遠隔監視・運行管理システムの機能と価値 ロゴ・サービス画像

自動運転車両の遠隔監視・運行管理を行うプラットフォーム。複数台の自動運転車両の同時制御、異常検知、遠隔操作など、無人運行に必要な機能を提供します。トラックやバスなど車種を問わず一元管理できるのが特徴です。

料金モデル
SaaS(月額)
対象規模
中堅〜大手向け
対象業界
物流・倉庫業 製造業

ロジシフト編集部による最新動向サマリ

  • 米FieldCamp社の「AI Dispatcher」を導入した多くのチームにおいて、移動時間を30%から40%削減することに成功しています。
  • 大手3PL企業や消費財メーカーが「Locus Dispatcher」を採用し、配送ネットワーク全体の効率化により数億円規模の物流コスト削減を実現した事例があります。
  • 急なキャンセルや遅延などのトラブル発生時に、AIが即座に全体スケジュールを見直し最適なルートを再提案する「緊急の再調整(Emergency Reshuffling)」機能が活用されています。
  • 容積や重量だけでなく荷姿や混載ルールまで加味した「3D積載シミュレーション」機能により、大規模で複雑なサプライチェーン網の緻密な計画立案に利用されています。

(ロジシフト掲載3記事をもとに自動生成・2026年8月17日更新)

Dispatcherとは?

Dispatcher(ディスパッチャー)は、ソフトバンク株式会社の子会社であるBOLDLY株式会社が開発・提供する、自動運転車両の遠隔監視・運行管理プラットフォームです。自動運転レベル4を含む無人走行の実現に不可欠な「1人の遠隔監視者が複数台の自動運転車両を同時に監視・制御する仕組み」を提供し、物流・交通現場における深刻なドライバー不足や運行管理コストの課題を解決します。

トラックや小型モビリティ、バス、ドローン、物流ロボットなど、国内外の30種類を超える多様なモビリティと接続できるオープンな設計が最大の特徴です。車内外のカメラ映像や各種センサー情報を軽量かつセキュアに伝送する独自プロトコルを備えており、広域物流拠点や公道における複数台の自律運行を一元管理できます。

主な機能

Dispatcherは、車両の遠隔状態監視から安全運行を支えるAI機能、異種モビリティを統合するコネクティビティまで、遠隔運行管理の実務に必要な機能を包括的に備えています。

リアルタイム遠隔監視・運行制御機能

  • 複数車両の同時遠隔モニタリング
    1人の遠隔オペレーターが複数台の自動運転車両の位置情報、走行速度、バッテリー残量、ODD(運行設計領域)の状態を単一画面上で常時監視できます。画面レイアウトは現場の運用要件に合わせて最適化され、運行管理業務の省人化を支えます。
  • 低遅延映像ストリーミング伝送
    車両内外に設置された複数台のカメラ映像を、独自のデータ圧縮・間引き技術とセキュアな通信プロトコルによって軽量化して伝送します。一般的な4G LTE回線環境下であっても大幅な遅延を発生させずにリアルタイム映像を受信可能です。
  • 遠隔指示および緊急停止制御
    運行管理画面から車両に対する発車指示、ルート変更指示、ダイヤに合わせた一時停止・発車制御を行えます。万が一の障害物接近やシステム異常時には、遠隔から即時に安全停止や運行制御介入を実行できます。
  • 双方向コミュニケーション・車内アナウンス
    車両側と遠隔監視センター間でリアルタイムの音声通話が可能です。運行状況に応じた車内への一斉アナウンスや個別案内、緊急時の状況確認などを遠隔からスムーズに行うことができます。

安全管理・AI異常検知機能

  • 車内移動・立ち歩き検知AI
    車載カメラ映像をAIがリアルタイムで解析し、走行中における乗客や作業員の立ち歩き、転倒リスク、頭の動きを検知して遠隔監視者へ自動でアラート通知を行います。大型車両の真上視点だけでなく、小型車両やトラックキャビン等の斜め上視点からの映像解析にも対応しています。
  • 運行前後の点呼・車両機器点検管理
    安全運行を維持するために不可欠な走行前の日常点検、機器動作確認、運行前後の点呼記録をシステム上で一元管理します。法制化された運行管理手順をデジタル化し、現場の確認漏れを防止します。
  • 遠隔監視者の二要素認証・本人確認
    車両の遠隔操作や運行指示という重要業務を取り扱うため、オペレーターログイン時に二要素認証による厳格な本人確認を実施します。なりすましや不正アクセスを防止し、遠隔監視センターのセキュリティを担保します。
  • 緊急車両サイレン検知・自動停止連携
    レベル4走行の要件となる緊急車両(救急車・消防車等)の接近サイレン音を検知し、安全に路肩等へ退避・停止する制御機能と連携します。遠隔監視者への通知とともに適切な回避動作を支援します。

外部システム連携・マルチモビリティ接続

  • Dispatcher コネクト(オープン接続アーキテクチャ)
    車両メーカーや制御ソフトウェアを問わず、様々な自動運転車両をセキュアかつ容易にDispatcherへ接続するための共通インターフェース仕様です。特定メーカーの車両に縛られず、異種混在の車両群を束ねて管理できます。
  • ドローン・物流ロボット連携(Dispatcher for Drone等)
    自動運転車両だけでなく、配送用ドローンや自動搬送ロボット(AGV/AMR)などを同一基盤に接続して統合管理できます。陸上輸送モビリティと空の物流ドローンの同時監視・リレー運行管理を実現します。
  • LINE連携・運行情報配信
    LINE公式アカウント等とAPI連携し、車両の現在位置や運行ダイヤ、到着予想時刻をリアルタイムに利用者や現場関係者へ配信・通知できます。オンデマンド配車予約の受付システムとの連携も可能です。

こんな企業・現場に向いている/向いていない

向いている企業・現場

複数メーカーの自動運転車両や異種モビリティを混在させて運用したい企業

  • 車両メーカーごとに監視画面が分かれ、現場オペレーションが煩雑化する課題
    Dispatcherは「Dispatcher コネクト」により、メーカーや車種(EVバス、小型トラック、搬送ロボット等)が異なる30種類以上のモビリティを単一UIで統合管理できます。監視システムの一元化によってオペレーターの教育負担を最小限に抑え、統合された運行体制を構築できます。
  • 陸上輸送とドローン・構内搬送を連携させた複合的な省人化物流を設計したい課題
    「Dispatcher for Drone」などを通じてドローンと地上走行車両を同一プラットフォームで同時監視・制御できます。中継拠点での荷物リレーや複合型配送の実証・実運用をスムーズに進められます。

将来的なレベル4無人運行を見据え、1対多の遠隔監視体制を確立したい事業者

  • ドライバー不足対策として遠隔監視オペレーター1名あたり複数台を効率監視したい課題
    4G回線でも安定して動作する低遅延映像伝送とAI異常検知(乗客・荷台状態の検知、緊急車両検知)により、常時画面を注視し続けなくてもアラート駆動で異常時のみ迅速介入できる運用体制を整えられます。
  • 自治体連携や公道・特定複合施設内での運行許可取得をスムーズに進めたい課題
    国内における多数の実証実績と民間初のレベル4運行許可取得実績に基づき、点呼・ODD確認・セキュリティ管理など法令要件を満たした運行管理業務を標準機能で遂行できます。

向いていない企業・現場

単一メーカーの自動運転トラックのみを導入し、専用の内製管理システムで十分な企業

  • 特定メーカーが提供する専用テレマティクスで要件が完結している状況
    特定の商用車メーカーが自社トラック向けに提供している純正フリートマネジメントシステムや独自遠隔監視基盤で事足りる場合、マルチモビリティ対応を強みとするDispatcherを外部導入するコストメリットが出にくい場合があります。

通信インフラが整備されておらず、クラウド型遠隔監視が困難な山間部・完全閉域環境

  • 4G/5G等のセルラー通信や安定したWi-Fi環境が確保できない現場
    Dispatcherはクラウドを介して遠隔監視・制御を行うSaaS型プラットフォームです。通信環境が一切届かないトンネル内や鉱山深部など、閉域網のローカルサーバのみで完全スタンドアロン運用を行う現場には適合しない場合があります。

類似ツールとの比較

自動運転・運行管理プラットフォームの領域において、Dispatcherと比較されることの多い代表的なシステムとの違いを整理します。

ツール名 特徴 料金 向いている企業
Dispatcher バス・トラック・ドローン等30種以上のモビリティを一元管理できる遠隔監視SaaS。多数の公道定常運行・レベル4実績を保有。 要問い合わせ(SaaS月額課金) 異種モビリティの混在運行や、自治体・複合施設・広域拠点での遠隔集中管理を推進する企業
Web.Auto オープンソース「Autoware」を基盤とし、車両開発からシミュレーション、運行管理・遠隔監視まで包括提供する開発者・事業者向けPF。 要問い合わせ Autowareベースの車両開発を行い、開発段階から運行管理基盤まで一気通貫でカスタマイズしたい企業
T2 自動運転システム 幹線輸送の大型トラックに特化したレベル4自動運転システムおよび遠隔監視基盤。高速道路の長距離無人輸送を目指す。 要問い合わせ 拠点間・高速道路を利用した大型トラックの幹線輸送自動化を最優先課題とする大手物流事業者
先進モビリティ 自動運転システム 東大発の技術をベースにしたトラックの自動運転・車車間通信隊列走行システム。後続無人隊列走行の実績が豊富。 要問い合わせ 高速道路や専用道でのトラック隊列走行による省人化・省エネ輸送を検討している物流企業

幹線道路での大型トラック単一運用や高速道路の隊列走行に特化する場合は、T2や先進モビリティのような車両制御直結型の専用システムが検討対象になります。また、自動運転ソフトウェアそのものを自社開発・カスタマイズしたい技術指向の現場ではWeb.Autoが有力な選択肢です。

一方で、Dispatcherは特定車種や開発環境に縛られず、既存の自動運転車両やEVモビリティ、ドローンなどを接続して「運行管理・遠隔監視オペレーションの共通化」を図る点に強みがあります。複数拠点で異なるメーカーの車両を配備している企業や、スマートシティ・大規模複合施設・産業拠点などで総合的なモビリティ運行管理を行いたい現場に適しています。

料金・プラン・導入方法

Dispatcherの利用料金は、管理対象となる車両の種類、台数、接続機能、監視拠点の規模等に応じた個別見積もりとなっており、公式サイト等で定額表は公開されていません(要問い合わせ)。

料金モデルはクラウドSaaS(月額課金)を基本とし、導入にあたっては以下の費用要素について見積もり時に確認・検討する必要があります。

  • 接続モビリティ台数に応じた月額ライセンス費用
    管理対象車両(バス、トラック、ドローン、搬送機等)1台あたりの月額利用料モデルが一般的です。
  • 初期導入・環境設定・システム接続支援費用
    車両側とDispatcherを連携させる「Dispatcher コネクト」の設定作業、通信機器の搭載、3Dマップ連携、各種センサーの初期キャリブレーション等の初期費用が発生します。
  • 遠隔監視センター構築および現地サポート費用
    遠隔監視用コンソールの導入支援、監視オペレーターの操作トレーニング、走行ルートの電波環境調査や法的手続きの支援など、実証・定常運行に必要なコンサルティング費用が含まれる場合があります。

導入の流れ・期間

Dispatcherを導入する一般的なステップは以下の通りです。自動運転車両の調達や走行ルートの調査を伴うため、導入期間は対象現場の規模や実証要件により異なります(具体的な期間は要問い合わせ)。

  1. 問い合わせ・要件ヒアリング
    導入予定エリア、対象車両のメーカー・車種、走行ルート、遠隔監視の運用体制(レベル2実証またはレベル4運行等)についての要件を確認します。
  2. デモ・システム適合性確認
    Dispatcherの遠隔監視画面のデモを確認し、対象車両と「Dispatcher コネクト」との通信仕様や連携要件をすり合わせます。
  3. 現地調査・電波環境測定・走行ルート設計
    走行ルートにおける4G/5G通信状況の測定、3D高精度地図(HDマップ)の作成支援、ODD(運行設計領域)の確認を行います。
  4. 見積もり・契約締結
    導入車両台数、利用機能、初期セットアップ支援範囲を確定し、契約を締結します。
  5. 車両接続設定・運行前点検テスト
    車載通信ユニット等の設定を行い、Dispatcher画面上でのリアルタイム映像ストリーミング、制御指示、点検ログ記録の動作検証を実施します。
  6. 実証実験・オペレータートレーニング
    遠隔監視員に対する二要素認証設定や緊急時対応手順のレクチャーを行い、テスト走行を通じて運用体制を確立します。
  7. 本番稼働・定常運行開始
    定常運行へ移行後も、走行データの蓄積や継続的なソフトウェアアップデートによる機能改善が行われます。

導入事例・実績

Dispatcherは、日本全国の自治体や民間複合施設において、多数の自動運転実証実験および定常運行の運行管理システムとして採用されています。

  • 茨城県境町(自治体初の公道定常運行・新スマート物流実証)
    2020年11月より、フランスNavya製の「NAVYA ARMA」やエストニアAuve Tech製の「MiCa」などの自動運転バスを導入し、町内の生活路線バスとして定常運行を開始しました。遠隔監視室にDispatcherを導入して安全管理を行っており、さらにエアロネクストやセイノーホールディングス等と共同で、Dispatcherによる自動運転バスと物流ドローン「AirTruck」の統合管理を行う新スマート物流の実証も実施されています。
  • HANEDA INNOVATION CITY(民間初のレベル4運行許可取得)
    鹿島建設や羽田みらい開発等と共同で、東京都大田区の大規模複合施設「HICity」において自動運転バスの定常運行を実施。Dispatcherを用いて複数台の同時遠隔監視を行い、2024年6月には民間企業主体の事業として国内初となる「自動運転レベル4」の特定自動運行許可および道路使用許可を取得しました。
  • 新潟県弥彦村(自動運転EV「MiCa」の通年運行)
    2024年1月より自動運転EV「MiCa」を用いた通年運行においてDispatcherが採用され、車両の運行監視とともに、LINE公式アカウントを通じて村民へのリアルタイムな車両位置情報・運行ダイヤ配信を実現しています。
  • 千葉県松戸市(グリーンスローモビリティ運行管理)
    地域内の移動を支援するグリーンスローモビリティ車両において、車載スマートフォンとDispatcherを連携させ、LINE公式アカウントや公共施設の大型ディスプレイへのリアルタイム位置情報配信システムとして活用されています。

導入前に知っておきたいこと

Dispatcherの導入を検討するにあたり、公開情報や運行実績から確認できる留意点は以下の通りです。

  • 安定した移動体通信環境の事前確保が必要
    低遅延データプロトコルを採用しているものの、高解像度の遠隔監視映像ストリーミングや遠隔指示を確実に行うためには、走行エリア全域における4G/5Gキャリア電波の安定した受信環境(不感地帯対策)が前提となります。導入前の電波測定や通信インフラの事前調査が必須です。
  • 自動運転システム本体や車両ハードウェアとのインテグレーション調整
    Dispatcherは運行管理・遠隔監視プラットフォームであり、自動運転車両の自律走行アルゴリズムそのものを構築するものではありません。車両メーカーや自動運転OSとのAPI連携(Dispatcher コネクト)に向けた個別接続検証やセッティング作業が必要となります。
  • 法的手続きおよび遠隔監視員の体制整備
    特に公道での実証やレベル4無人運行を目指す場合、警察署や運輸局との協議、保安基準緩和や道路使用許可の取得、遠隔監視員の選任・訓練といった法制度・運用体制の準備が必要となります。

よくある質問(FAQ)

Dispatcherはどのような車種・モビリティに対応していますか?
自動運転バス(NAVYA ARMA、Auve Tech MiCa等)、小型EV、グリーンスローモビリティ、物流向け配送ドローン、物流ロボットなど、30種類を超える多様なモビリティとの接続実績があります。「Dispatcher コネクト」の共通アーキテクチャを通じて、新たな車種への接続も可能です。
遠隔監視を行うための推奨動作環境や端末要件はどうなっていますか?
一般的なPCのWebブラウザ環境から運行管理画面へアクセスして監視・操作が可能です。現場の車両側は車載通信ユニットや連携用スマートフォンを設置してデータを送信します。詳細は要件に応じた確認が必要です。
無料トライアルやデモ体験は可能ですか?
プラットフォームの機能デモや画面操作の紹介は個別問い合わせにて対応しています。車両接続を伴う実機トライアルについては、走行環境や対象車両に応じた事前調整が必要となるため、提供元への問い合わせを推奨します。
1人の監視者で同時に何台まで遠隔監視・運行管理ができますか?
Dispatcherは1対多数の車両監視に対応した設計となっており、HICity等では複数台の同時遠隔監視実績があります。法規制や運行設計領域(ODD)、現場の安全管理基準に応じて運用台数が設定されます。
契約期間やサポート体制はどのようになっていますか?
契約期間、初期導入サポート、保守体制(遠隔監視支援や走行データ分析など)の詳細は要件に応じた個別契約となります。最新のサポートメニューについては公式サイト経由での問い合わせを推奨します。

参照・出典

他の自動運転・隊列走行システムと比較する

Dispatcherの特徴を含む自動運転・隊列走行の11製品を、料金・機能・対象規模で比較できます。

自動運転・隊列走行システム比較11選