Web.Autoとは?
「Web.Auto」は、自動運転システムの開発、構築、運用のすべてを包括的にサポートするクラウドネイティブなソフトウェアプラットフォーム(DevOpsプラットフォーム)です。オープンソースの自動運転OS「Autoware」の開発を主導する株式会社ティアフォー(TIER IV, Inc.)が提供しています。
商用トラック、自動運転バス、工場内の無人搬送車(AGV)など、さまざまなモビリティの自動運転化を促進します。自動運転に必要な「シミュレーション」「走行データの管理」「継続的インテグレーション(CI/CD)」といった開発者向けの機能から、「遠隔監視」「車両運行管理」「OTAによるソフトウェア更新」といったサービス事業者向けの運用基盤までを一貫して提供し、社会実装に向けた開発コストと時間の削減という課題を解決します。
主な機能・特徴
- 運行管理システム(FMS:Fleet Management System)
車両のリアルタイムな位置情報や走行状態のモニタリング、移動計画(スケジューリング)の最適化、到着予測(ETA)の計算、配車コントロールなどをWebブラウザ上から統合的に管理できます。 - 遠隔監視・サポート(Remote Monitoring)
自動運転車両の内外に設置されたカメラからのリアルタイム映像監視、音声通話機能、センサー情報の可視化が可能です。異常発生時には遠隔地からの操縦や運用サポートへの切り替えが行えます。 - 自動運転シミュレーション環境
デジタルツイン指向の自動運転シミュレーター(AWSIM)を活用し、現実の走行ログからの事象再現や、約5,000ケースにおよぶシナリオベースでのテストをクラウド上で大規模に実行可能です。 - 高精度3次元地図の管理・編集(Map Management)
自動運転に不可欠なベクトルマップ(高精度3次元地図)の半自動生成や、専用ツール(Vector Map Builder)を用いた経路の編集、停車地点の管理、地図データの配信をスムーズに行えます。 - OTA(Over-The-Air)によるソフトウェア更新
運用中の車両をネットワーク経由で安全かつ迅速にアップデートできます。遠隔からファームウェアの管理と更新を行い、車両のシステムを常に最新・安全な状態に保ちます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
【向いている企業・現場】
自動運転技術を活用したトラック輸送、自動運転バスの運行、屋外での無人搬送を本格的に検討している中堅〜大手企業に向いています。特に、工場や大型倉庫の敷地内において、トラックやフォークリフト、歩行者が混在する屋外の複雑な環境下で搬送の自動化(人手不足解消)を進めたい現場担当者に最適です。また、走行経路の変更が頻繁に発生し、ソフトウェア上で柔軟にルートを再設定したいという課題を持つ企業にも適しています。
【向いていない企業・現場】
屋内限定で単一の固定ルートのみを往復するような単純な搬送業務の場合、本システムのような高度な自動運転プラットフォームはオーバースペックとなりやすく、従来の磁気テープ誘導式AGVやシンプルなAMR(自律走行搬送ロボット)と専用管理ツールを検討した方が費用対効果が見込めます。また、完全無人化を想定しており、車両の異常時や緊急停止時に対応するための遠隔監視担当者(オペレーター)を社内で一切確保できない、または運用を外部委託する予算がない環境にもミスマッチとなります。
料金・プラン・導入方法
Web.Auto自体のSaaSとしての月額利用料金は、公式サイト上で非公開となっており「要問い合わせ」です。
提供形態としては、自社で構築した自動運転システムに組み込むプラットフォーム利用のほか、パートナー企業と連携したパッケージサービスも存在します。例えば、ティアフォーとヤマハ発動機の合弁会社である「eve autonomy」が提供する屋外対応型の自動搬送サブスクリプションサービス「eve auto」では、専用の小型EV車両、自動運転ソフトウェアプラットフォーム(Web.Autoを含む)、専用保険などがパッケージ化されており、車両込みで月額38万円から(※2022年発表時の参考価格)提供されています。自社の用途に合わせて、ソフトウェアのみの導入か、ハードウェア込みのパッケージ導入かを選択できます。
導入事例・実績
- 株式会社eve autonomy(ヤマハ発動機株式会社・株式会社ティアフォー)
屋外対応型自動搬送サービス「eve auto」の基盤システムとしてWeb.Autoを導入。ヤマハ発動機の浜北工場をはじめ、プライムポリマー姉崎工場、パナソニック大泉地区コールドチェーン工場、富士電機鈴鹿工場、日本ロジテム上尾営業所、ENEOS根岸製油所など、合計9社以上の実運用環境において、屋外の部品・資材搬送の自動化に活用されています。 - 鳥取市(自動運転バス実証実験)
市内の自動運転バスの実証実験においてWeb.Autoのシステムを利用。FMSコンソールを活用して車両の走行位置や運行状態を可視化したほか、車両に装備したカメラ映像をWeb.Auto経由で遠隔監視員のPCモニターへリアルタイムに配信し、安全な運行管理体制の構築に貢献しました。 - 千葉県君津市(複数モビリティの協調配送実証)
物流の労働力不足や災害時の山間部配送を解決する取り組みとして、自動配送ロボット・自動運転車(トラック・乗用車)・ドローンを協調制御するプラットフォームの実証に採用されています。
導入前に知っておきたいこと
現時点では、Web.Autoを利用しているユーザーや導入企業からの明確な「不満」や「ネガティブな口コミ」などの評価は一般に公開されていません。しかし、自動運転関連の技術カンファレンスや開発者向け情報から、導入にあたって以下の点に注意・対処する必要があることが分かっています。
- ネットワーク帯域の確保と通信安定化の課題
遠隔監視機能を利用して複数のカメラ映像をリアルタイムで送受信するため、クラウドと車両間の通信ネットワーク(4G/5Gなど)の安定性が極めて重要です。山間部、トンネル内、または建物の陰など、通信環境やGNSS(測位衛星)の受信精度が悪化する場所では、通信の遅延や映像の途切れが発生するリスクがあるため、事前の通信環境調査やネットワークの冗長化が必須となります。 - 遠隔監視・運用体制の確保が必要
導入すれば直ちに「完全放置・無人化」ができるわけではありません。鳥取市のバス実証事例等でも報告されているように、システムによる自動運転中であっても、車両の逸脱や障害物による停止などに備え、Web.Autoのコンソール画面を常時確認し、必要に応じて遠隔サポートを行える監視員(オペレーター)の配置が必要です。
類似ツールとの違い・選び方
一般的な「トラックの動態管理システム」や「AGV向けの群制御システム」は、主に車両の位置情報の可視化や単純な指示に特化しています。一方、Web.Autoの最大の違いは、世界で広く利用されているオープンソースの自動運転OS「Autoware」にネイティブ対応し、開発・シミュレーション・地図編集・データ収集・OTA(無線アップデート)までを包含する「自動運転に特化したDevOpsプラットフォーム」である点です。
したがって、「既存のトラックの位置や配送ステータスだけを管理したい」という目的であれば通常の物流動態管理システムを、「自社で高度な自動運転車両を開発・運用し、継続的にソフトウェアをアップデートして賢くしていきたい」という目的であればWeb.Autoを選択するという基準になります。
よくある質問(FAQ)
- Autoware以外の自動運転ソフトウェアでも利用できますか?
- 基本的にはオープンソースの「Autoware」、およびティアフォーが提供する商用ソフトウェアプラットフォーム「Pilot.Auto」を利用して構築された自動運転システム向けに最適化して設計されています。
- 専用のハードウェアや車両を購入する必要がありますか?
- Web.Auto自体はクラウドソフトウェアですが、導入をスムーズに行うために、ティアフォーではコンピューターやセンサー構成を指定した「リファレンスデザイン」を提供しています。また、ハードウェア開発を行わない企業向けには、車両とセットになったパッケージサービス(eve auto等)を利用する方法もあります。
- トラック以外の自動運転にも対応していますか?
- はい。商用トラックだけでなく、小型の自動配送ロボット、工場・倉庫内の無人搬送EV(ランドカー)、路線バス、乗用車タイプの自動運転タクシーなど、多様なモビリティの運行管理と遠隔監視に対応しています。