配送情報シェアリングプラットフォームとは?
配送情報シェアリングプラットフォーム(SISP)は、サプライチェーン上の複数企業間におけるデータの分断に悩む、製造業・小売業・卸売業および物流・倉庫業の企業に向けて、企業間の情報共有による輸配送とセンター業務の最適化を図る共通データプラットフォームです。株式会社日立製作所が提供するこのプラットフォームは、荷主(発荷主・着荷主)と運送会社がクラウド上で商流情報および物流情報を一元的に共有・可視化できる仕組みを構築します。これにより、発注から店舗・拠点への納品までのステータスをシームレスにつなぎ、アナログな確認作業による現場の負荷を軽減するとともに、運行便情報を共有することによる共同配送や、荷主間の往復輸送・混載といったシェアリングの推進を支援します。フィジカルインターネットの構築を見据え、積載率向上や荷待ち時間削減、CO2排出量削減などの物流課題を解決することを目指して開発されました。
主な機能・特徴
日立の「配送情報シェアリングプラットフォーム」には、以下のような特徴的な機能が備わっています。各現場のアナログ業務を省力化し、共通データを通じた業務改革を促すための機能が設計されています。
- クラウド型共通データプラットフォーム
荷主や運送会社、配送拠点などが個々に保有し、属人化しやすい商流・物流データをクラウド上で統合管理する機能です。企業ごとのデータ形式を共通のプラットフォーム上で標準化して連携・共有させることで、これまで分断されがちだった配送状況のデータを全関係者が一つのプラットフォーム上で確認可能にします。 - PCブラウザ(Web画面)でのステータス可視化
プラットフォームにアクセスする役割ごとに、最適な管理画面が提供されます。- 発荷主画面:配送依頼の登録、リアルタイムでの配送状況確認、運賃の確認などが行えます。
- 運送会社画面:配送依頼に対する車両割り付け(配車登録)、他運送会社への配送依頼再委託、配送状況や日々の運賃の確認が可能です。
- 着荷主画面:自拠点へ配送中の荷物の状況や到着予定情報をWeb画面でタイムリーに追跡できます。
- ドライバー用スマートフォンアプリ連携
運行を担当するドライバー向けの専用スマホアプリを提供します。ドライバーが配送依頼に基づき、集荷時や納品時などの実務における作業実績をアプリ上で登録することで、その進捗データが即時にプラットフォームへ同期されます。これにより、事務所での手作業による実績登録や確認の電話が削減されます。 - アナログ配送業務のデジタル化(STEP1)
FAXや電話、Excel等による手作業の配送依頼業務をWeb上でのデータ連携に置き換えます。さらに日々および月次の配送実績(請求・支払い関係)のデータ共有もデジタル化されるため、手入力や再度の確認、紙のやり取りを削減し、事務作業を省力化します。 - 運行便情報の共有と共同配送の策定(STEP2)
運送会社間で自社の運行便情報(車両の空き予定や運行計画など)を共有することが可能です。データに基づいた車両リソースのシェアリング(混載輸送、共同運行、復路を活用した共同輸送など)を支援し、積載効率の向上や欠車、傭車コストの抑制をサポートします。 - 業界標準ガイドラインへの準拠
内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービス」による「物流情報標準化ガイドライン」等に準拠して設計されています。異なる事業者同士であっても、容易にデータを接続・共通化して流通・共同配送に活用できるように配慮されています。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
【向いている企業・現場】
- 多数の荷主・運送会社・拠点が関与する大企業・グループ企業
自社グループ内だけでなく、仕入れ先(メーカー)、卸売業者、3PLなどの物流事業者、店舗、複数のステークホルダーがサプライチェーン全体に関与し、企業間で発生する伝票確認や配送進捗の共有に多くの時間が割かれている企業に向いています。 - 共同配送や輸配送のシェアリングを強力に推進したい企業
配送地域内での積載率低下を解決するため、同業他社や協力企業との間で配送情報や車両の稼働・空き情報を共有し、共同配送網を構築したいと考えている推進部門に向いています。 - アナログな配送手続きや手書き伝票を廃止したい現場
配送依頼書のFAX送信や着信確認、月次実績の手入力を廃止し、ドライバーの実績入力アプリ等と連携して日々および月次の配送管理オペレーションを完全ペーパーレス化したい現場に適しています。
【向いていない企業・現場】
- 小規模で関係者が極めて少ないシンプルな輸送環境
特定の荷主と単一の運送会社が、直接の契約関係のみで完全に決まった決まった運行ルートを行き来しているような小規模の現場では、共通データプラットフォームを導入するコストや社内・他社調整の負担が、得られるメリットを上回る可能性があります。 - 自社専用の自動配車エンジンによる配車最適化のみを重視したい企業
配送情報シェアリングプラットフォームは、企業間でのデータ一元化や共同輸送のための「情報の共有・可視化」に強みを持っています。自社の車両群に対するAIによる高度な巡回ルート自動算出や、ミリ単位での積載量計算など、自社の配車最適化(TMS)単体の機能のみを追求したい場合は、自社車両管理に特化した他社のTMSを検討した方がよいでしょう。
料金・プラン・導入方法
配送情報シェアリングプラットフォームはSaaS(月額課金)モデルで提供されていますが、料金およびプランの詳細な金額は公式に公開されておらず、「要問い合わせ」となっています。企業の持つサプライチェーンの規模や、接続する拠点数・運送会社数、使用するユーザー・ドライバーアカウント数などに応じて個別の見積もりとなります。
導入を検討する際の見積もり時には、以下のポイントについて提供元へ確認することをおすすめします。
- 初期導入費用(アカウント開設、自社システムへの環境構築、設定支援費用の有無など)
- 月額料金の算出単位(固定料金制か、登録する取引先アカウント数やデータ流通量に応じた従量課金制か)
- 最低利用期間の設定および途中解約時の解約条件の有無
- 既存システム(自社WMS、TMS、基幹システム等)との連携を行う場合、追加のインターフェース構築費用が発生するかどうか
導入の流れ・期間
日立製作所「配送情報シェアリングプラットフォーム」の公式サイトでは、具体的な導入期間や稼働までのスケジュールは明記されていません。システムの構築範囲や、接続対象となる協力企業(メーカー、卸、物流会社など)の数により大きく変動するため、導入期間は要問い合わせとなります。
この種の、複数のステークホルダーを巻き込む共通データプラットフォームにおける一般的な導入フローは、以下の通りです。
- 問い合わせ・ヒアリング
日立製作所の専用窓口から問い合わせを行います。自社の現在のサプライチェーン上の課題や、関与する運送事業者・配送先の概要、他社との連携希望要件について相談します。 - デモ・システム要件の整理
プラットフォームのデモ画面を確認しながら、配送情報シェアリングプラットフォームが持つ機能と現在の業務フローの適合性を検証します。 - 仕様設計・システム構成検討
物流・商流データの連携方法、対象となる運送会社のシステムとの接続性、必要に応じた既存WMS(倉庫管理システム)や基幹システムとのAPI連携・インターフェース設計など、標準化データの取り扱い仕様を固めます。 - 見積もり・ご契約
構築内容と接続社数などに基づく初期費用および月額料金の見積もりが提示され、合意後に契約を締結します。 - 初期設定・システム接続テスト
クラウド環境の設定、ドライバー向けスマートフォンアプリのアカウント設定、外部データ連携の接続テスト、稼働前テストを関係社を巻き込んで実施します。 - 本格稼働・現場展開
実際の配送現場や倉庫、協力企業への周知、操作方法のトレーニングなどを経て、本格運用を開始します。
連携できるシステム・機器
配送情報シェアリングプラットフォームは、物流現場の高度化や省人化を達成するため、以下のようなシステムや機器、データ基盤との連携実績が公表されています。
- 物流センターのWMS(倉庫管理システム)
プラットフォーム上に登録・共有された事前納品通知情報(ASN)などを、物流センターの倉庫管理システム(WMS)へシームレスに送信・同期させることが可能です。これにより、荷受け予定データの転記作業が不要になり、入荷時の検品作業の迅速化に貢献します。 - 物流センター入荷自動化設備・マテハン機器(日立製ロボティクスなど)
入荷予定データや商品の荷姿・確定数などの配送データを、物流センター内の日立オートメーション製「移動式協働ロボット」をはじめとした入荷自動化設備と接続することができます。デパレタイズ・パレタイズといった重労働のパレット載せ替え作業の自動化をデータ面から制御・支援します。 - 物流・商流データ基盤
外部の「物流・商流データ基盤」と接続し、メーカーや卸、物流会社など異なる組織が事前入力した標準化データを配送情報シェアリングプラットフォーム上で一元的に管理・共有する実績があります。 - 動態管理システム・ドライバー携帯端末
車両動態管理システムと組み合わせ、車両の位置情報や運行計画、実績データを共有。またドライバーが所持するスマートフォン用アプリ画面での入力データともシームレスに同期します。
※上記以外の個別の自社基盤システムや特定他社製WMS、TMS、ハンディターミナル等との接続APIの有無、連携可能範囲についての仕様は公式に明記されていないため、問い合わせ時にご確認ください。
導入事例・実績
配送情報シェアリングプラットフォームは、信頼性の高い公的プロジェクトや大企業のサプライチェーン連携で導入され、具体的な効果を創出しています。以下に、公式に発表されている導入事例を詳しく紹介します。
1. ウエルシア薬局、PALTAC、センコー、メーカー各社によるサプライチェーン全体の配送効率化プロジェクト
小売、卸、物流会社、システムベンダー、メーカーの複数企業が協力し、ドラッグストア業界で全国初となる物流・商流データ基盤を活用した効率化・省エネ施策に配送情報シェアリングプラットフォームが導入されました。2024年12月から2025年1月の実証実験を経て、2025年2月より「ウエルシア西関東RDC」(神奈川県綾瀬市)において本格的な稼働を開始しています。
- 参画組織と役割:
- ウエルシア薬局:プロジェクト全体の統括、物流センターや自動化設備の提供。
- PALTAC(卸売事業者):ウエルシア薬局からの発注情報をメーカーに連携し、出荷情報を登録。
- センコー(物流・3PL事業者):物流センターの運営および店舗への配送、ドライバー用携帯端末の配備。
- 日立製作所:配送情報シェアリングプラットフォームの構築、および日立オートメーション製の移動式協働ロボットの提供を含む全体IT構築。
- 参画メーカー・委託倉庫:エステー、大塚製薬、牛乳石鹼共進社、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、愛宕倉庫、大塚倉庫など。
- システム接続と運用の流れ:
「物流・商流データ基盤」を介して各メーカーから通知される、確定入荷数・荷姿・納品車両といった「事前納品通知情報」を「配送情報シェアリングプラットフォーム」上で連携。プラットフォームから物流センター内のWMSや移動式協働ロボット等の自動化設備へデータを直接接続させました。 - 導入効果:
トラックのバース(荷降ろし場)での滞留時間削減、入荷検品作業の省力化、紙伝票の廃止や分納確認作業の排除、移動式協働ロボットによるデパレタイズの自動化などを実現。これにより、配送業務全体の効率化と、同センターにおける納品車両のエネルギー消費量をシステム導入前比で約7%削減することを目指して運用されています。経済産業省・国土交通省の「令和6年度 新技術活用サプライチェーン全体輸送効率化・非化石エネルギー転換推進事業」にも採択されました。
2. ウエルシア薬局とツルハによる特定地域(下北エリア)での共同配送
ウエルシアホールディングス株式会社と株式会社ツルハが、店舗密度が低い青森県下北エリアにおける共同配送プロジェクトにおいて、共同配送の基盤システムとして「配送情報シェアリングプラットフォーム(SISP)」を導入しています。
- 運用スキーム:
両社の物流センターからの荷量データを本プラットフォーム上で共有・連携します。運行の予実確認、共同車両の手配、配送のトレース、店舗到着後の空カゴ車荷降・回収管理などのデータを一元化し、共同配送運用スキームの確立と安定稼働に寄与しています。
3. 造船・舶用工業界における3者共同輸送推進の取り組み
荷主(舶用メーカー)、物流会社(ロジスティード株式会社)、着荷主(造船所)の3者が介在する造船・舶用工業界での共同輸送プロジェクトにおいても本プラットフォーム(SISP)が活用されています。
- システム活用方法:
物流情報標準化ガイドラインに準拠したSISPを用い、これまで紙や電話などで行われていたメーカー、ロジスティード、造船所間のアナログな情報のやり取りをデジタル化。
①メーカーからの納品計画情報の登録、②出荷ステータスの共有、③荷姿や製品写真のアップロード、④造船所側の現場・調達担当者からの作業進捗状況の把握などをプラットフォーム上で一元管理できるようにしました。 - 導入効果:
荷物情報の入力作業が簡素化され、物流会社側での効率的な配車業務、および出荷から納品までのステータス可視化により、円滑な共同輸送計画の策定を可能としています。
導入前に知っておきたいこと
導入を具体的に検討するにあたり、以下の点についてあらかじめ考慮しておく必要があります。
- ユーザー・導入企業からの不満・口コミ情報について:
Google検索等を用いた調査(検索クエリ:"配送情報シェアリングプラットフォーム デメリット", "配送情報シェアリングプラットフォーム 課題" など)を行った結果、現時点において、第三者から公開されたシステムに対する直接的な使いづらさ、不満、不具合などのネガティブな口コミや評価報告は確認されていません。 - 関係する取引先・協力会社の巻き込み(合意形成)コスト:
配送情報シェアリングプラットフォームは、自社だけではなく「発荷主」「運送会社(元請・下請)」「着荷主」といった、異なる組織間でのデータ共有によって最大の効果(共同輸送や進捗可視化)を発揮するシステムです。そのため、導入前に協力会社側に対してシステムの趣旨やスマートフォンアプリの操作、PC画面でのデータ入力に関して説明を行い、参加同意および運用のルールを取り決めるための「合意形成コスト」や、現場での運用定着に向けた社外的なサポート体制が必要となる点に留意する必要があります。
類似ツールとの比較
LogiShiftサイト内および市場において紹介実績がある共同配送や輸配送データ連携に関連する類似のツールと、配送情報シェアリングプラットフォームの違いを表で比較します。
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| 配送情報シェアリングプラットフォーム(株式会社日立製作所) | 荷主、運送会社、物流倉庫などのサプライチェーンの枠組み全体で物流・商流データを共通化し、共同輸送、配送トレース、実績共有を実現。物流標準ガイドライン準拠。 | 要問い合わせ(SaaS月額課金) | グループ企業や広範なサプライチェーンのステークホルダーを巻き込んで、データ連携・共同配送の仕組みを構築したい大企業。 |
| 共同配送システム(株式会社ゼンリン) | 複数の物流事業者の荷物を地域の配送事業者が一括してラストワンマイル配送するためのシステム。異なる事業者の配送状況や荷物を1つのシステム・端末で統合管理可能。 | 要問い合わせ | 中山間地域や地方都市などにおいて、ラストワンマイルの配送リソースの共同化やエリア配送の統合管理を行いたい配送事業者・自治体。 |
| 共同輸配送プラットフォーム(日本電気株式会社) | 複数荷主間で共同輸配送の候補を自動で提案するクラウド型マッチングサービス。N対Nのマッチング支援、条件調整用チャット機能、リソースのシェアリング。 | 要問い合わせ | 複数荷主(N対N)間で、幹線輸送などの復路・往路マッチングや車両の空き情報を埋めるため、効率的な調整・交渉機能を利用したい企業。 |
各ツールの選び方の基準:
メーカーから卸売、小売、また物流センターのWMSや自動化設備まで、サプライチェーン全体を巻き込んだ商流・物流データの標準化と、発注〜納品までの配送状況の一気通貫な可視化・共同運行を強力に目指したい場合は、日立の「配送情報シェアリングプラットフォーム」が適しています。特に大企業やグループ企業、業界全体を挙げたプロジェクトでの豊富な活用実績・高いセキュリティ信頼性が強みと言えます。
一方で、ラストワンマイル(近距離エリア)における異なる物流会社同士の荷物を1端末に集約し、地域配送の効率化・過疎地支援を目指すなら、ゼンリンの「共同配送システム」が最適です。また、自社内で固定した共同配送網があるわけではなく、不特定・多数の荷主間で、チャット機能などを用いて自律的に往復便や幹線混載などのマッチング・条件交渉を自動で行いたい場合は、NECの「共同輸配送プラットフォーム」が比較候補になります。
よくある質問(FAQ)
- スマートフォンやタブレットなどで、ドライバーや現場の担当者が状況を確認・入力できますか?
- はい、ドライバー向けの専用スマートフォン用アプリが提供されています。集荷や納品などの配送依頼に対する作業実績をアプリ上で入力することで、リアルタイムで配送状況の登録や、運行便情報の共有が可能となっています。
- デモの実施や、無料でのテスト試用(無料トライアル)は用意されていますか?
- 公式サイトにはデモや無料トライアルの明確な有無に関する具体的な情報は記載されていません。事前に操作感や自社のデータとの親和性を確認したい場合は、日立製作所へ問い合わせを行い、要相談となります。
- WMSや基幹システムなどの既存システムと連携させ、データを自動同期させることは可能ですか?
- 接続連携は可能です。実際にウエルシア薬局の導入事例などでは、物流・商流データ基盤を介した連携や、物流センター内のWMS、移動式協働ロボット等の自動化機器とのデータ連携が行われています。連携仕様やAPIの公開可否については、個別見積もり時に提供元への確認を推奨します。
- 契約期間や途中の解約手続きについてのルールは決められていますか?
- 配送情報シェアリングプラットフォームの契約期間および解約の条件に関する詳細は公開されていません。商流データプラットフォームの特性上、個別のシステム要件や利用形態により設定が異なるため、問い合わせ・契約手続きの際にご確認ください。
- 運送会社が、下請け(協力運送会社)へ配送の再委託をシステム上で管理できますか?
- はい、可能です。PC画面の機能として「配送依頼(再委託)(運送会社⇒運送会社)」の機能が備わっており、元請けから委託された配送業務を下請け会社に本プラットフォームを介して依頼し、その後の実績や状況もデジタル上で共有することができます。
- 運賃は自動で計算・請求処理されますか?
- PC画面を通じて、配送依頼および再委託に対応する運賃、日々や月次の配送実績データの確認・共有は行えます。ただし、自動での直接の決済機能や詳細な料金体系等の仕様、他の請求管理システム等とのAPI連携については公式に明示されていないため、導入交渉時に詳細をお問い合わせください。